AI研修公開 更新

AI社内研修のやり方|中小企業が自社で回す8ステップと時間割・確認テストの例

会議室で、社員たちがノートPCを前に座り、講師が正面の画面の表を指しながら説明している様子

「外の研修に何十万円も払うより、社内でAIの勉強会を回せないか。」AIに詳しい社員が1人2人いる会社の社長が、よく考えることです。ところが、詳しい社員に「みんなに教えて」と頼むだけでは、たいてい2回目で止まります。何を、何時間で、どこまでできたら終わりにするのかが決まっていないからです。

この記事では、中小企業が社内で生成AIの研修を回すやり方を、準備から定着までの8ステップにまとめました。誰が教えるか、12時間の時間割の例、自社の書類を使った練習問題、確認テスト、研修のあとの4週間を、そのまま使える表とプロンプトで示します。外部の研修に頼む場合との比べ方と、人材開発支援助成金の対象になる研修の条件(厚生労働省の資料で確かめた範囲)も載せています。

自社の業務を題材にした研修を外に頼む場合の中身は、シス学 AI研修のページにまとめています。

AI社内研修が一度きりで終わる理由|題材・教える人の時間・研修のあとが決まっていない

中小企業庁が2026年版中小企業白書の概要として示した資料では、省力化の投資でAIの活用に「取り組んだ」中小企業は30.3%でした。取り組んでいない事業者に理由を聞くと(複数回答)、上位は次の3つです。「活用する業務がイメージできていない」63.4%、「活用を推進する人材が不足している」40.0%、「社内ルール・ガイドラインが整備されていない」26.2%。

同じ白書の本文(第2-2-91図)には、社内の研修や勉強会が効く、という数字もあります。AIの活用に取り組んだ中小企業のうち、社員向けの研修や勉強会を実施している企業(920社)で「想定した効果が得られなかった」は8.6%でした。実施していない企業(789社)では16.1%です。社内で教える場をつくること自体には、意味があります。

それでも社内のAI研修が続かないのは、次の3つが決まっていないからです。

社内のAI研修が止まる3つの理由と、この記事で決めること
止まる理由起きること決めること(ステップ)
題材が自社の仕事ではない「旅行の計画を立てる」「メールを丁寧にする」など、誰の業務でもない例で終わり、翌日の仕事が変わらない変える業務と、自社の書類から作った題材(Step 1・4・6)
教える人の時間が空いていない詳しい社員が本来の仕事の合間に教材をつくり、2回目の準備が間に合わない教える人と、準備の時間(Step 2・5)
研修のあとが空白分からない所を聞く先がなく、1か月後には誰も使っていない確認テストと、研修後4週間の動き方(Step 7・8)

社外の研修を選ぶときの見方は生成AI研修の選び方、社内で誰をどの順に育てるかの全体の設計はAI人材育成とは?で解説しています。この記事は、その中の「社内で研修を1本、最後まで回す」手順に絞ります。

AI社内研修のやり方|準備から定着までの8ステップ

まず全体を1枚で見ます。ここでは、社員10人前後の会社が、2時間の研修を週1回、6回(合計12時間)行う例で書きます。

AI社内研修の8ステップ(2時間×6回の例)
ステップいつ誰ができあがるもの
1. 変える業務と受講者を決める研修の6週間前社長業務ごとの到達点(「〜できる」で書いた1行)
2. 教える人を決める研修の6週間前社長講師1人と補佐1人、準備の時間
3. 入れてよい情報を1枚に決める研修の4週間前社長・講師社内の利用ルール1枚
4. 題材を自社の書類から集める研修の4週間前講師・各部署伏せ字にした書類10〜15件
5. 時間割を組む研修の3週間前講師6回分の時間割
6. 練習問題を作る研修の2週間前講師部署別の練習問題と「できた」の基準
7. 確認テストを作る研修の1週間前講師・社長判断を問うテスト10問と合格ライン
8. 研修後4週間で定着させる研修の翌日から受講者・講師・社長業務別の手順書と、社内の質問集

Step 1:変える業務と受講者を決め、到達点を「〜できる」で書く

最初に決めるのは、研修の中身ではなく「研修が終わったら、どの業務が変わっているか」です。毎週くり返していて、書類やメールが手元に残る業務を、部署ごとに1つ選びます。受講者は、その業務を実際にしている社員です。

次に、到達点を1行で書きます。「AIを理解する」は測れません。「〜できる」の形にすると、研修の最後に、できたかどうかを確かめられます。

到達点の書き方の例(部署ごとに1つ)
部署変える業務到達点(「〜できる」で書く)
営業見積の依頼メールへの対応依頼メールから品名・数量・納期の表と見積書の下書きをAIで作り、単価表と照らして直せる
経理請求書の確認発注書と請求書の金額・数量の違いをAIに洗い出させ、違いの理由を確かめられる
総務社員からの問い合わせ就業規則の該当箇所を示した回答の下書きをAIで作り、条文と照らして直せる
現場日報手書きメモから日報の下書きをAIで作り、数字と固有名詞を確かめて提出できる
社長・管理職会議の記録会議メモから決定事項・担当・期限の表をAIで作り、抜けを直して配れる

どの業務から選べばよいか迷うときは、業務の棚卸しのやり方で仕事を書き出してから選びます。

Step 2:教える人を決め、準備の時間を業務から外す

社内の講師は「いちばんAIに詳しい人」ではなく、次の条件で選びます。補佐を1人付けると、講師が休んでも止まりません。

社内の講師を選ぶチェック表
確かめることなぜ確かめるか
自分の業務で、AIを週に何回も使っている自社の書類で「どこまで任せてよいか」を、実例で説明できるため
社内の利用ルールを守って使っている講師の使い方が、そのまま受講者の手本になるため
ほかの部署の書類の流れを知っている営業・経理・現場など、部署ごとの練習問題を作れるため
「分からない」と言われたとき、手を止めて付き合える研修の大半は、受講者が手を動かす時間になるため
研修の前の数週間、業務から時間を外せる題材集め・練習問題・テストの準備に、まとまった時間が要るため

社長が決めるのは、講師の準備の時間を、ふだんの業務からはっきり外すことです。たとえば「研修までの4週間は、毎週水曜の午後を準備に使う」と社内に伝えます。助成金を使う研修では、社内の人が講師をする場合に別の条件があります(後半の「助成金を使うときの条件」で説明します)。

Step 3:入れてよい情報を、研修の前に1枚に決める

自社の書類を題材にする以上、何をAIに入れてよいかを先に決めます。個人情報保護委員会は、事業者が生成AIを使うときの注意点を2つ挙げています。1つは、個人情報を含む指示文(プロンプト)を入れるなら、利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確かめること。もう1つは、本人の同意なく個人データを入れるなら、サービス側が機械学習に使わないこと等を十分に確かめることです。

  • 使ってよいサービス:会社で契約し、入れた内容を学習に使わない設定にしたものだけ(サービス名を書く)
  • 入れてよい:自社のホームページに出ている情報、社内文書のひな形、伏せ字にした書類
  • 入れない:マイナンバー、健康の情報、パスワード、取引先と外に出さないと約束した情報
  • 必ず人が確かめる:金額・数量・日付・社名・法令の条文。AIの答えには不正確な内容が混ざることがある

この1枚は、研修の1回目にそのまま教材として使います。ルールのひな形と決め方は、生成AIの社内ルールの作り方で解説しています。

Step 4:題材を自社の書類から集め、伏せ字にする

題材は、Step 1で選んだ業務の実物です。各部署から2〜3件ずつ、合わせて10〜15件集めます。そのまま使わず、次の表のように伏せ字にしてから教材にします。

題材の集め方と伏せ字の入れ方
書類伏せる所置き換えの例
見積の依頼メール取引先名・担当者名・メールアドレス「株式会社A」「B様」「(メールアドレス)」
見積書・請求書取引先名・単価社名はA社に、単価は実際と違う数字に(合計の計算が合うように)
日報の手書きメモ現場の住所・施主名「〇〇市の現場」「C様邸」
会議のメモ人事・給与・取引条件の話その部分を消し、「(人事の話・省略)」と書く
社員からの問い合わせ社員名・家族の情報「社員D」「(家族の事情)」

伏せ字の作業そのものもAIに下書きさせられますが、その場合も、伏せ字の前の書類を入れてよいサービスかどうかをStep 3のルールで確かめます。迷ったら、伏せ字は人が手で入れます。

Step 5:時間割を組む(2時間×6回=12時間の例)

1回2時間を、説明20分・練習80分・振り返り20分に分けます。説明を長くすると、手を動かす時間が消えます。毎回の最後に、その回でできあがったものを1つ持ち帰る形にします。

AI社内研修の時間割の例(週1回・2時間×6回)
回中身練習(自社の題材)持ち帰るもの
1回目社内の利用ルール1枚、頼み方の型(役割・材料・条件・出力の形)、答えの確かめ方自社の案内文を、型どおりの頼み方で書き直させる頼み方の型を書いたカード
2回目メール・文書の下書き伏せ字にした依頼メールから、返信文と社内連絡を作る返信文の頼み方(部署ごと)
3回目表にまとめる・照らし合わせる依頼メールを品名・数量・納期の表にする/発注書と請求書の違いを洗い出す照合の頼み方と、人が確かめる項目の一覧
4回目要約と記録会議メモから決定事項の表を、手書きメモから日報の下書きを作る議事録・日報の頼み方
5回目部署別の実践Step 1で決めた自分の業務を、AIを使って最初から最後まで終わらせる自分の業務の手順書の下書き(1枚)
6回目発表と確認テスト手順書を1人3分で発表し、ほかの人が同じ手順で再現できるか試す。確認テストを受ける研修後4週間で載せ替える業務の名前

議事録・日報・見積書のそれぞれの頼み方は、議事録×AI、日報×AI、見積書×AIの記事に、そのまま使えるプロンプトがあります。練習の材料として使えます。

Step 6:練習問題を作り、「できた」の基準を決める

練習問題は「題材」「指示」「できたの基準」の3つで1組にします。基準がないと、受講者はAIの最初の答えで満足してしまいます。

練習問題の例(部署別)
部署題材受講者への指示できたの基準
営業伏せ字にした見積の依頼メール3通品名・数量・納期・希望の金額を表にし、メールにない項目は「要確認」と書かせる表の数字が元のメールと全部合っている。推測で埋めた欄がない
経理数字を変えた発注書と請求書(違いを2か所入れておく)2つの書類の違いを、項目・発注書の値・請求書の値の表で出させる入れておいた2か所の違いを、両方見つけている
総務社員からの質問3件と、就業規則の該当ページ就業規則の条文番号を示した回答を作らせる回答の根拠の条文番号が、実際の条文と合っている
現場手書きの作業メモの写真(伏せ字済み)日報の様式に合わせた下書きを作らせる時間・数量・天気など数字の項目が、メモと合っている
全員AIが作った、わざと誤りを3つ入れた見積書誤りを探して直す3つとも見つけ、どの資料で確かめたかを言える

最後の行の「誤りを探す練習」は、全員に入れます。AIの答えを確かめる力は、AIを使うどの業務でも要るからです。

Step 7:確認テストを作る(用語でなく、判断を問う)

確認テストは「生成AIとは何か」のような用語の問題にしません。自社の場面を2〜3行で書き、どうするかを選ばせます。正解は自社のルールで決まるので、Step 3の1枚を読んでいないと答えられません。

確認テストの問題の例(正解は、Step 3のルールの例に合わせたもの)
場面選択肢正解と理由
取引先から届いた図面のPDFに、社名と単価が入っている。見積の下書きにAIを使いたいア:そのまま入れる イ:社名と単価を伏せて入れる ウ:会社で契約したサービスなら入れる エ:入れないイかウ(自社のルールで決まる)。ルールに書いていない場合は、講師か社長に聞く
AIが作った請求書の合計金額が、表の数字の足し算と合わないア:AIにもう一度計算させて、その答えを使う イ:元の数字で計算し直して確かめるイ。数字は必ず人が元の資料で確かめる
社員の休職の相談メールを、回答の下書きのためにAIに入れたいア:名前を消せば入れてよい イ:健康の情報が含まれるので入れないイ。健康の情報は「入れない」に入る
AIの回答に、就業規則にない休暇の名前が出てきたア:そのまま回答する イ:就業規則の条文を確かめ、ない場合は消すイ。AIの答えには不正確な内容が混ざることがある

問題は10問ほどにし、合格ラインを決めます。たとえば「8割以上で合格、不合格なら答えを見直して何度でも受け直せる」とします。テストの目的は落とすことではなく、同じ問題で2回つまずいた人を見つけて、講師が個別に教えることです。

Step 8:研修のあと4週間で、業務を1つずつ載せ替える

研修で覚えたことは、翌日から業務で使わないと消えます。研修の手間の半分は、終わったあとの4週間に回すつもりで計画します。

研修後4週間と3か月後にやること
いつ受講者講師社長
1週目6回目で決めた業務を1つだけ、AIを使うやり方に変える社内チャットに質問の場所をつくり、その日のうちに答える朝礼などで「この業務はAIで下書きしてよい」と伝える
2週目やってみた結果(うまくいかなかった所も)を、手順書に書き足して出す手順書を読み、ほかの人が再現できるかを確かめる—
3週目詰まった所を質問として出す同じ質問が3人から出たら、手順書か社内ルールに足す—
4週目講師と15分話し、次に載せ替える業務を1つ決める業務ごとの手順書と質問集を、共有フォルダにまとめる手順書の一覧を見て、次の研修で扱う業務を決める
3か月後自分の手順書を、新しく入った人に使ってもらう手順書を使った人が、同じ結果を出せたかを確かめる変えた業務の作業時間を、研修の前と比べる

手順書の書き方はマニュアル作成×AI、集まった質問を社内で引ける形にする方法は社内FAQ×AIで解説しています。

そのまま使えるプロンプト6つ|研修の準備をAIに下書きさせる

講師の準備でいちばん時間がかかるのは、時間割・練習問題・テストの下書きです。ここはAIに任せ、講師は自社に合っているかを確かめる役に回ります。〔 〕の中を自社の内容に書き換えて使ってください。会社の書類を入れるときは、Step 3のルールで入れてよいサービスかを確かめます。

どのプロンプトも、AIの下書きをそのまま配りません。講師が「自社の書類で本当にこの手順になるか」を1つずつ試してから教材にします。業務別のプロンプトをもっと見たい場合は、業務効率化のプロンプト集にまとめています。

社内でやるか、外部に頼むか|比べる6つの軸と、助成金を使うときの条件

社内の研修と外部の研修は、どちらが上というものではありません。次の6つの軸で、自社にどちらが合うかを決めます。

社内でやる場合と外部に頼む場合の比べ方
比べる軸社内でやるのが向く場合外部に頼むのが向く場合
教える人自分の業務でAIを使いこなしている社員がいて、準備の時間を外せる社内に教えられる人がいない/いても準備の時間がとれない
題材自社の書類を、社外に見せずに扱いたい自社の書類を題材にする研修を、外の講師と一緒に組みたい
始める速さ時期を選べる。部署ごとに少しずつ広げたい数週間のうちに、全社の使い方をそろえたい
教材の残り方時間割・練習問題・手順書が、最初から社内に残る研修のあとも教材を社内で使ってよいかを、契約で確かめる必要がある
お金の出方外への支払いは少ないが、講師と受講者の業務時間がかかる受講料がかかる。金額の帯はAI研修の費用相場で比べられる
助成金社内の人が講師をする場合は講師の条件がある(下の表)。講師の人件費は経費助成の対象経費の一覧にない社外の講師(部外講師)は、その分野の講師経験3年以上などでも条件を満たせる。部外講師の謝金や受講料は経費助成の対象になりうる

中小企業では、組み合わせる形も現実的です。最初の1回(ルールと頼み方の型、自社の書類での練習の組み方)は外部の講師と一緒に作り、2回目以降と新しく入った人への研修は社内の講師が回す、という分け方です。外部に頼むときは、研修のあとも教材と練習問題を社内で使ってよいか、自社の書類を使う練習が入るか、研修後に質問できる期間があるかを、申し込む前に確かめます。

助成金を使うときの条件|10時間以上・職務に直結・汎用的なプロンプト研修は対象外

社内で企画して行う研修も、厚生労働省の人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の「事業内訓練」として対象になりえます。中小企業の経費助成率は75%、賃金助成は受講者1人1時間1,000円(所定労働時間内に行った研修の時間)で、令和8年度末までの時限措置です。対象は、雇用保険の被保険者である社員です。社内の研修で特に確かめたい条件を、詳細版パンフレット(令和8年8月3日現在)と変更点のリーフレットから抜き出しました。

社内で行うAI研修が助成金の対象になるかのチェック表(事業展開等リスキリング支援コース・事業内訓練)
確かめること厚生労働省の資料にある中身
時間実訓練時間が10時間以上。昼食などの食事を伴う休憩や移動時間は数えない。小休止(1回30分以下)は1日累計60分まで、開講式・オリエンテーションは累計60分まで数えられる。研修の前後に配る予習・復習・宿題・確認テストの時間は数えない
職務に直接関連する受講者の職務に直接関連する訓練であること。令和8年8月3日以降に出す計画届では、DX化に関する訓練でも、職務に間接的にしか必要でない内容や、職業人として共通に必要な内容は対象外
生成AIの例対象:生成AIで商品提案書の構成案づくり・文章生成・修正の方法を学ぶ、営業担当者向けの訓練。対象外:生成AIを使うための汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練。DXの概念・デジタル技術の概要・データ活用の考え方を学ぶだけの訓練も対象外
通常の事業活動に当たる中身品質管理のマニュアル等の作成、社内制度・組織・人事規則の説明、自社の業務で使う機器・端末の操作説明などは対象外。カリキュラムの一部に入っていれば、その時間を除いて10時間以上が必要。自社の業務の情報を題材にしても成果物づくりにつながらなければ対象外にならない、という扱いは事業外訓練に限ると書かれている
受講者の選び方訓練の内容に沿って受講者を選ぶ。厚生労働省の例では、CO₂排出量の算定の訓練を人事や営業の担当者が受けると対象外
実施方法事業内訓練は、通学(対面)か同時双方向のオンラインに限る。eラーニングや定額制のサービスは事業内訓練の対象にならない
場所ふだんの仕事と分けて行う(OFF-JT)。営業中の就労の場で行うもの、現場実習や営業同行のように通常の業務と区別できないものは対象外
教材と講師文章や図表で内容を表した教材(テキスト)を使う。ビデオを見るだけの講座は対象外。講師には要件がある(下の表)
受講時間受講者が実訓練時間の8割以上を受講する
会社の準備計画届を出す日までに、職業能力開発推進者(研修や人事の担当課長など)を選び、事業内職業能力開発計画を作って社員に知らせておく
手続き研修を始める日の6か月前から1か月前までに計画届を労働局へ出し、計画どおりに行う。年次有給休暇を使わせて受ける研修は対象外
経費経費は支給申請までに会社が全額負担する(社員に一部でも負担させると不支給)。事業内訓練の対象経費は、部外講師の謝金(実訓練時間1時間あたり3万円まで・税込)と旅費、会場や備品の借上費、教科書・教材の購入費など。繰り返し使える教材(パソコンのソフトや学習ビデオなど)や、AIツールの導入費用は対象外

この記事の時間割(2時間×6回)で助成金を使うなら、数え方に注意します。1回目の社内の利用ルールの説明は「社内制度の説明」に、5回目の手順書の下書きは「マニュアル等の作成」に当たると見られるおそれがあります。その時間を除くと、12時間が10時間を割ることもあります。計画届を出す前に、時間割を労働局に見せて、どの時間が数えられるかを確かめてください。

社内の人が講師をするときの講師要件

事業内訓練では、講師が「部内講師」(自社の役員や社員で、研修の日の出勤状況を確かめられる人)か「部外講師」(社外の人)かで、満たすべき条件が違います。詳細版パンフレットの表を、部内講師に当てはまるものに絞ると次のとおりです。どれか1つに当たる必要があります。

部内講師(社内の講師)が満たすべき条件(どれか1つ)
条件部内講師部外講師
研修の内容に直接関係する職種の職業訓練指導員免許を持つ○○
研修の内容に直接関係する職種の1級の技能検定に合格している○○
研修の科目・職種の内容に専門的な知識・技能があり、その分野の職務の実務経験が10年以上(講師の経験は含まない)○○
研修で取得を目標とするITSSレベル3・4、DSS-Pレベル3・4の資格を持つ○○
研修の科目・職種の内容に専門的な知識・技能があり、その分野の指導員・講師の経験が3年以上—○
公共職業能力開発施設・大学などに所属する指導員等—○

生成AIは新しい分野なので、社内の講師がこのどれかに当たるかは、研修を組む前に管轄の労働局へ確かめます。部内講師の場合、研修の日の出勤簿やタイムカードの写しも求められます。また、助成金は審査で決まり、受給を保証するものではありません。外部の研修を使う場合は、受講料をいったん会社が全額払うこと、助成金の有無で受講料が変わらないことも確かめます。助成率・上限額の詳しい条件はAI研修に使える助成金、申請の手順はAI研修の助成金申請のやり方で解説しています。

AI社内研修でよくある失敗と防ぎ方

失敗1:詳しい社員1人に「全部任せた」で終わる

講師役の社員は、本来の仕事を抱えたまま教材をつくることになり、2回目の準備が間に合いません。防ぎ方:Step 2のとおり、準備の曜日と時間を業務から外し、補佐を1人付けます。題材集めは各部署の仕事にし、講師1人に集めさせません。

失敗2:練習の題材が、自社の仕事ではない

「旅行の計画を立てる」「キャッチコピーを考える」のような題材は盛り上がりますが、翌日の業務は変わりません。助成金を使う場合は、汎用的なプロンプトの作り方だけの研修は対象外にもなります。防ぎ方:題材はStep 4で集めた自社の書類だけにし、練習問題は部署ごとに作ります。

失敗3:本物の書類を、伏せ字にしないまま入れる

研修の場で、取引先名や単価の入った見積書を、個人で登録した無料のサービスに貼ってしまう。研修が情報を外に出すきっかけになります。防ぎ方:1回目にStep 3のルール1枚を配り、教材はすべて伏せ字にしたものだけにします。会社で契約したサービスの画面で練習します。

失敗4:確認テストが用語の問題で、全員が合格する

「プロンプトとは何か」を問うテストは正答率が高く出ますが、自社の書類を前にして手が止まる人は見つかりません。防ぎ方:Step 7のように、自社の場面で「どうするか」を選ばせる問題にし、同じ問題で2回つまずいた人に講師が個別に付きます。

失敗5:研修の資料が共有フォルダに埋もれ、質問は口頭で消える

研修の資料をPDFで配っただけでは、半年後には誰も開きません。口頭で答えた質問も、次に同じことを聞かれたときには残っていません。防ぎ方:質問は社内チャットの決まった場所で受け、答えを手順書か社内ルールに書き足します。業務ごとの手順書を1つのフォルダにまとめ、新しく入った人の研修にそのまま使います。

失敗6:助成金を、研修のあとで思い出す

計画届は研修を始める日の1か月前までに出す書類です。研修が終わってから気づいても、申請できません。職業能力開発推進者の選任と事業内職業能力開発計画も、計画届を出す日までに要ります。防ぎ方:Step 1で業務と受講者を決めた時点で、助成金を使うかどうかを決めます。使うなら、講師要件と、対象外の時間を除いて10時間以上ある時間割を前提に組み、労働局か社会保険労務士に早めに相談します。

シス学の場合|研修の準備も「作業・確認・判断」に分け、社内に残る教材をお渡しします

シス学(システム経営学)は、AIエージェントを活用し、会社を「儲かるシステム」につくり変える経営学です。手順と判断の基準を仕組みに移し、下書きや転記はAIが、確かめる仕事は社員が受け持ちます。社内研修の準備も、次のように分けると、講師1人に仕事が集まりません。

社内研修の準備の分け方(例)
受け持つ人仕事中身
AI作業書類の伏せ字、時間割・練習問題・確認テストの下書き、研修後の質問の整理(この記事のプロンプト1〜6)
社員(講師・補佐)確認伏せ字の漏れがないか、練習問題の正解が自社の書類で本当に合っているか、受講の記録がそろっているかを確かめる
社長判断どの業務を研修で変えるか、合格ライン、講師の準備の時間、外部に頼むか・助成金を使うかを決める

シス学 AI研修は、社員が毎日行っている業務を題材に、AIで仕事を終わらせるところまで練習する研修です。研修資料・ワークシート、業務別の手順書・指示文の型、社内AI利用ルール案をお渡しし、研修後の質問対応と利用状況の確認で定着を支えます。お渡しした資料は、2回目以降を社内の講師で回すための教材としても使えます。

助成金を使う場合は、10時間以上で、受講者の職務に合わせた内容にして、対象になりうる形に研修を組むことができます。対象になるかどうかは管轄の労働局が判断し、申請の手続きは社会保険労務士にご依頼ください。料金は、対象の業務と体制をお聞きしたうえで、無料相談でご案内します。社内で回すか外に頼むかの判断から、まずは30分の無料相談でご相談ください。

まとめ

  • 社内のAI研修が止まる理由は、題材が自社の仕事でない、教える人の時間がない、研修のあとが空白、の3つ
  • 8ステップ:変える業務と到達点 → 教える人 → 入れてよい情報 → 自社の書類の題材 → 時間割 → 練習問題 → 確認テスト → 研修後4週間
  • 時間割は1回2時間を説明20分・練習80分・振り返り20分に。毎回、持ち帰るものを1つ決める
  • 確認テストは用語でなく、自社の場面での判断を問う。研修後4週間は、業務を1つずつ載せ替える
  • 助成金を使うなら、対象外の時間を除いて10時間以上・職務に直結・社内の講師には要件あり。汎用的なプロンプト研修や、マニュアルづくり・社内制度の説明の時間は対象外。計画届は研修開始の1か月前まで

最初の1歩として、明日、各部署の責任者に「毎週くり返している書類を1つ、伏せ字にしてもよい形で出してほしい」と頼んでみてください。集まった書類の数と種類で、社内で回せるか、外部の力を借りるかが見えてきます。

よくある質問

AIに詳しい社員がいなくても、社内でAI研修はできますか?

できますが、最初の1回は外部の講師と一緒に組むほうが早く進みます。ルールと頼み方の型、自社の書類を使った練習の組み方を一度つくれば、2回目以降は自分の業務でAIを使っている社員が講師として回せます。講師の準備の時間は、業務からはっきり外してください。

社内のAI研修は、何時間くらいあればよいですか?

この記事では、2時間×6回の12時間を例にしました。1回で詰め込むより、週1回に分けて、間の1週間に自分の業務で試すほうが身につきます。助成金を使う場合は、休憩や移動を除いた実訓練時間が10時間以上必要です。

研修で自社の書類を使っても大丈夫ですか?

使う前に、入れてよい情報と使ってよいサービスを1枚に決めます。取引先名・個人名・単価は伏せ字にし、会社で契約して入力内容を学習に使わない設定にしたサービスで練習します。個人情報保護委員会は、個人情報を入れる場合に利用目的の範囲内かを確かめることなどを注意点に挙げています。

社内の社員が講師をする研修でも、助成金の対象になりますか?

事業内訓練として対象になりえますが、社内の講師(部内講師)には要件があります。職業訓練指導員免許、1級の技能検定、その分野の実務経験10年以上、ITSS・DSS-Pレベル3・4の資格のどれかに当たる必要があります。当たるかどうかは、研修を組む前に管轄の労働局へ確かめてください。助成金は審査で決まり、受給を保証するものではありません。

プロンプトの書き方を全員で学ぶ研修は、助成金の対象になりますか?

令和8年8月3日以降に出す計画届では、生成AIを使うための汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練は、対象外の例として示されています。営業担当者が生成AIで提案書の構成案づくりや修正の方法を学ぶ訓練のように、受講者の業務に直結した内容にする必要があります。

社内ルールの説明や、手順書をつくる時間も10時間に数えられますか?

数えられない場合があります。厚生労働省の資料では、社内制度や人事規則の説明、マニュアル等の作成は「通常の事業活動」として対象外です。カリキュラムの一部に入っていれば、その時間を除いて10時間以上が必要です。研修の前後に配る宿題や確認テストの時間も数えません。どの時間が数えられるかは、計画届の前に労働局へ確かめてください。

出典・参考

CONTACT

社長の時間を、AIでつくりませんか。

どこをAIで仕組みにできるか、一緒に整理します。

オンライン対応/相談だけでも大丈夫です

課題が具体的な方

日時を選んで無料相談を予約平日10〜17時・30分・オンライン日時を決めずにフォームで相談する

まずは情報収集の方

サービス資料をダウンロード
サービス資料の表紙PDF・11ページ/3項目の入力ですぐに読めます

メールでのお問い合わせ:musashi@むさしAI研修.com

運営:株式会社むさしAI研修(東京都渋谷区)