社員の「これどうするの?」は、なぜ社長に集まるのか
社員の質問が社長に集まるのは、社員の力が足りないからではありません。多くの場合、次のどれかが起きています。
- 答えが書かれていない:やり方が社長やベテランの頭の中にだけあり、聞くしかない
- 書いてあっても見つからない:就業規則や手順書が共有フォルダの奥にあり、正式な名前を知らないと探せない
- 書いてあることが古い:手順が変わったのに直されておらず、結局「今はどうですか?」と聞くことになる
- 聞いたほうが早い:探すより社長に聞くほうが早いので、全員がそうする
- 決める人が社長しかいない:値引き、例外の対応、取引先への約束など、基準がないので毎回社長が決めている
社外のお客様からの問い合わせと違い、社内の質問は記録に残りません。口頭やチャットで聞かれ、その場で答えて終わるため、同じ質問が何度も来ていることに社長自身も気づきにくいのが特徴です。
社内ヘルプデスクで生成AIを使う会社は50.9%、効果を感じるのは42.7%
総務省の「令和8年版 情報通信白書」は、日本の企業に、業務の種類ごとの生成AIの活用状況を尋ねています。社内の質問に答える「社内ヘルプデスク」の結果は次のとおりです。
| 答え | 割合 |
|---|---|
| 業務の流れがAI中心に変わっている | 11.9% |
| 部署内の特定の業務で活用している | 20.7% |
| 社員が個人の作業の効率化で活用している | 18.3% |
| (上の3つの合計) | 50.9% |
| 未導入 | 28.8% |
| 活用の効果を感じる | 42.7% |
効果を感じる割合42.7%は、調べた業務の種類の中で2番目に高い数字です(最も高いのは「議事録・メール作成補助」の72.3%)。お客様向けの「カスタマーサポート」は33.8%でした。社内の質問は、答えのもとになる資料が社内にそろっていれば、AIが役に立ちやすい仕事だといえます。
社長に来る質問は3つに分かれる
| 種類 | 質問の例 | どうするか |
|---|---|---|
| A 答えが資料にある | 「有給休暇は何日前までに申請しますか?」 | FAQにして、資料の場所と一緒に答える |
| B 答えが人の頭の中にある | 「〔取引先〕の請求書は、どの形式で送りますか?」 | 知っている人に聞き取り、手順書にしてからFAQにする |
| C 社長が決めている | 「この見積、〔5〕%値引きしてもいいですか?」 | 社長が基準を決めて書く。基準を超えるものは社長に回す |
AとBが社員だけで答えられるようになれば、社長に届くのはCだけになります。さらにCも「〔5〕%までは担当者が決めてよい」のように基準を書けば、社長に回る件数は減っていきます。お客様からの問い合わせにAIを使う方法は問い合わせ対応をAIで自動化するやり方で解説しています。この記事は、社員からの質問(社内)を扱います。
社内FAQとナレッジ共有の違い|どちらから始めるか
| 比べる所 | 社内FAQ(この記事) | ナレッジ共有 |
|---|---|---|
| 作るもの | よく聞かれる質問と、その答えの組 | 手順・判断の基準・お客様の情報・過去の見積を集めた置き場所 |
| 答えの形 | 決まった答えを、結論から短く返す | 資料を探し、何本もの資料をつないで答える |
| 向いている質問 | 「有給は何日前までに申請?」のように、答えが1つに決まるもの | 「似た工事、前はいくらで出した?」のように、資料を探して比べるもの |
| 始める目安 | 同じ質問が何度も来る | 「あの資料どこ?」「前はどうした?」が多い |
社員の質問を集めてみて、過去の見積やお客様ごとの条件を探すものばかりなら、先にナレッジ共有の置き場所を作るほうが近道です。その進め方はナレッジ共有AIとは?で解説しています。
社内FAQチャットボットの部品は3つ|手を入れるのは「答えのもと」だけ
社内FAQをAIで答えられるようにする仕組みは、どの製品で作っても、次の3つの部品でできています。
| 部品 | 中身 | 自社で手を入れるか |
|---|---|---|
| 答えのもと | FAQ、手順書、就業規則などの社内の資料 | 入れる。答えの正しさはここで決まる |
| AI | 質問を読み、答えのもとから答えの文章を作る | ほぼ入れない。答え方の決まり(指示文)だけ書く |
| 入口 | 社員が質問を打ち込む場所(社内チャット、ポータルなど) | 置き場所を選ぶ |
AIの性能をいくら上げても、答えのもとに書かれていないことには正しく答えられません。時間をかけるべきなのは、答えのもとをそろえることです。
答え方の仕組みは2つ|資料の量で決まる
| 仕組み | どう動くか | 向いている量 |
|---|---|---|
| 全部を読ませる形 | 質問のたびに、登録した資料をまとめてAIに渡す | FAQと手順書が少ないうち(数十件程度) |
| 探して読ませる形(RAG) | 資料を細かく分けて登録し、質問に関係する部分だけを探してAIに渡す | 資料が多く、一度に渡しきれないとき |
中小企業が最初に作るFAQは、数十件から始まることが多いので、まずは全部を読ませる形で十分です。資料が増えたときに、探して読ませる形へ自動で切り替える製品もあります。たとえば Claude のプロジェクトは、有料プランで資料が多くなると、自動で検索の仕組み(RAG)に切り替わると説明しています。
使われるFAQと、使われないFAQの違い
| 比べる所 | 使われないFAQ | 使われるFAQ |
|---|---|---|
| 探し方 | 正式な名前を知らないと見つからない | 社員がふだん使う言い回しで引ける |
| 答え方 | 資料が置いてあるだけ | 質問に、結論から答える |
| 根拠 | どこに書いてあるかわからない | 資料の名前と箇所が付き、元の資料で確かめられる |
| 新しさ | 直す人がいず、古いまま | 直す担当がいて、更新日が書いてある |
| 置き場所 | 共有フォルダの奥 | 毎日開くチャットや画面から1〜2回の操作で届く |
| 見る場所 | 会社のパソコンでしか開けない | 現場でもスマートフォンで見られる |
| 結果 | 結局、社長に聞く | 社員が自分で片づける |
社内FAQをAIで作る6つのステップ
順番を入れ替えないことが大事です。答えのもとがそろう前にチャットボットを作ると、AIは根拠なしに答えるか、「わかりません」をくり返し、社員はすぐに使わなくなります。各ステップで使うプロンプトの全文は、次の次の章にまとめています。
| ステップ | やること | 担当 | できあがるもの |
|---|---|---|---|
| 1 | 社員の質問を30件集め、3つに分ける | 社長・総務+AI | 質問の一覧(A・B・C) |
| 2 | 答えのもと(手順書・規程・基準)をそろえる | 担当者・社長 | 手順書、判断の基準 |
| 3 | FAQ(質問と答え)の形にする | AI+担当者 | FAQの項目 |
| 4 | AIの答え方の決まりを、最初の指示文で決める | 総務 | チャットボットの指示文 |
| 5 | 試験の質問で確かめ、外れた答えを直す | 担当者 | 答え合わせの表 |
| 6 | 社員が毎日開く場所に入口を置き、直す担当を決める | 社長・総務 | 入口、更新の決まり |
Step 1:社員の質問を30件集め、3つに分ける
まず、社員が実際に聞いた質問を、聞かれた言葉のまま30件集めます。「交通費精算の手順」ではなく、「電車で行った客先の交通費はどう出しますか?」のように、社員の言い回しのまま残すのがこつです。この言い回しが、あとでFAQを引くときの手がかりになります。集め方は次の3つです。
- 社内チャット・メールの履歴:過去〔3か月〕分から、「〜はどうすればいいですか」「〜はどこにありますか」を拾う
- 社長とベテランの「質問メモ」:〔2週間〕、聞かれた質問を紙1枚に書き、同じ質問には正の字を付ける
- 新しく入った社員への聞き取り:入社して最初の1か月で困ったこと、誰に聞いたかを聞く
集めた質問から、社員やお客様の名前は消します。そのうえでAIに、前の章の3つ(A 資料にある/B 人の頭の中にある/C 社長が決めている)に分けさせ、件数を数えさせます(プロンプト1)。AIの仕分けは下書きです。どれがCに当たるかは、社長が最後に確かめます。
Step 2:答えのもと(手順書・規程・基準)をそろえる
30件のそれぞれに、答えの根拠になる資料があるかを確かめます。種類ごとに、そろえ方が違います。
| 種類 | そろえるもの | そろえ方 |
|---|---|---|
| A 資料にある | 就業規則、経費の決まり、手順書の該当の箇所 | 資料の名前と箇所(第〇条、〇ページ)を書き出す。古ければ直す |
| B 人の頭の中にある | 手順書 | 知っている人に口で説明してもらい、録音して文字にし、AIで手順書の形に整える(プロンプト2で聞く項目を作る) |
| C 社長が決めている | 判断の基準 | 社長が「〔条件〕なら担当者が決めてよい。〔条件〕を超えたら社長に回す」の形で書く |
Bの手順書づくりは、この記事の中でいちばん時間がかかる所です。書き方の詳しい手順はマニュアル作成にAIを使う方法で解説しています。全部をそろえてから次へ進む必要はありません。30件のうち、根拠の資料がそろったものから次のステップへ進めます。
Step 3:FAQ(質問と答え)の形にする
答えのもとがそろった質問から、FAQの項目にしていきます。下書きはAIに作らせられます(プロンプト3)。1つの項目に書くことは次のとおりです。
| 項目 | 書くこと | 例 |
|---|---|---|
| 質問 | 社員が実際に使う言い回しを3つほど | 「客先までの電車代はどう出す?」「交通費の精算のしかた」「立て替えた電車代」 |
| 答え | 結論を1文目に。手順は番号つきで | 〔月末〕までに〔経費精算の表〕に入力し、〔上長〕の確認を受けます。1.〜 2.〜 |
| 根拠 | 資料の名前と箇所 | 〔旅費規程〕第〇条 |
| 例外と聞く先 | 答えのとおりにいかないときに誰に聞くか | タクシーを使ったときは、事前に〔総務の担当者〕へ |
| 更新日と担当 | いつ、誰が直したか | 〔日付〕〔担当者名〕 |
AIの下書きは、必ずその仕事をしている担当者が読み、今のやり方と合っているかを確かめます。答えを決めるのはAIではなく、担当者と社長です。できたFAQは、1つのファイル(表計算ソフトの表や、共有の文書)にまとめ、置き場所を1か所に決めます。
Step 4:AIの答え方の決まりを、最初の指示文で決める
FAQと手順書をAIに登録し、答え方の決まりを最初の指示文(プロンプト4)に書きます。製品によって、「指示」「カスタム指示」などと呼び名が違います。書く決まりは次の5つです。
- 答えの根拠にしてよいのは、登録した社内の資料だけ
- 資料にないことは推測せず、「見つかりません」と答えて聞く先を案内する
- 答えの最後に、根拠にした資料の名前と箇所を3件まで書く
- 社長が決める種類(値引き、金額、人事、取引先への約束、規程にない例外)には答えを出さず、社長に回す
- 新しく入った社員にもわかる言葉で、結論から書く
4番目の決まりが、社長に質問が集まる悩みを解く要です。AIが「判断」まで答えてしまうと、社長の知らないところで値引きや約束が決まります。AIには、判断に必要な情報(何を、いつまでに、いくら)を整理させるところまでを任せます。
Step 5:試験の質問で確かめ、外れた答えを直す
社員に公開する前に、Step 1で集めた30件を試験の質問として、チャットボットに1問ずつ聞きます。担当者が正しい答えを横に書き、答え合わせの表を作ります(プロンプト5)。
| 結果 | 直す所 |
|---|---|
| 合っている | そのまま |
| 一部違う・古い | 答えのもと(FAQ・手順書)を直す |
| 見つからないと答えた | 質問の言い回しをFAQに足す。資料がなければStep 2に戻る |
| 答えるべきでないのに答えた | 指示文の4番目の決まりに、その種類を書き足す |
直すのは、ほとんどの場合AIではなく答えのもとです。30問のうち、社内で決めた割合(たとえば〔9割〕)が「合っている」になってから公開すると、最初の印象で「使えない」と思われずにすみます。
Step 6:社員が毎日開く場所に入口を置き、直す担当を決める
入口は、社員が毎日開いている社内チャットやポータルに置きます。専用のURLを配るだけでは、困ったときに思い出してもらえません。置いたら、次の3つを行います。
- 社内チャットの目立つ場所に固定(ピン留め)し、1〜2回の操作で質問できるようにする
- 入口に「よくある質問の例」を5つほど並べ、最初の1問を打ちやすくする
- 朝礼や全体連絡で「〔経費・休み・手順〕の質問は、まずここで」と一度伝える
あわせて、FAQを直す担当を1人決めます。毎週〔金曜〕に、「見つかりません」と返した質問と、社員が「役に立たなかった」とした答えを見て、FAQを足し、手順書を直します(プロンプト6)。規程や手順が変わった日には、その日のうちに直すことも決まりにします。
AIに間違った答えをさせない3つの決まり|精度より先に、間違いに気づける形にする
個人情報保護委員会は、生成AIサービスの答えには不正確な内容が含まれることがあると注意を呼びかけています。社内のチャットボットでも、間違いをゼロにすることはできません。そこで、間違えにくくするだけでなく、間違えたときに社員が気づける形にしておきます。
決まり1:社内の資料の外を根拠にさせない
指示文で「登録した資料だけを根拠にする」「資料にないことは答えない」と決めます。製品の設定で縛れるものもあります。たとえば Microsoft 365 Copilot のエージェント ビルダーには「指定したソースのみを使用する」という設定があります。指定した資料に関係する情報が見つからないときは、見つからないと返すと説明されています。ただし Microsoft は、この設定は一般的な知識を完全に止めるものではなく、登録した資料を優先させるものだとしています。
決まり2:答えに出典を付け、元の資料を開かせる
答えの下に、根拠にした資料の名前と箇所を付けさせます。社員は、大事な手続きのときほど元の資料を開いて確かめられます。Gemini Notebook(旧 NotebookLM)のように、答えに引用元を示すことを機能として説明している製品もあります。そうでない製品では、指示文で出典を書くよう頼みます(OpenAI のヘルプも、出典を示させたいときは指示文にそう書き、形も指定するよう案内しています)。
決まり3:最後に決めるのは人。判断の質問は社長に回す
入口に「AIの答えは下書きです。お金・人事・お客様への約束にかかわることは、〔担当者・社長〕に確かめてください」と常に表示します。AIの答えをもとに起きた間違いを誰が直すのか(FAQの担当か、その仕事の責任者か)も、公開の前に決めておきます。
社内FAQづくりにそのまま使えるプロンプト6つ
会社として使ってよいと決めた生成AIに、そのまま貼って使えます。〔 〕の中を自社の内容に置き換えてください。社員やお客様の名前、給与などの個人の情報は、貼る前に消すか置き換えます。
どのプロンプトの結果も、AIが作った下書きです。FAQに入れる前、社員に公開する前に、必ず担当者が確かめます。Cに分けられたものは、社長が基準を決めるまでFAQに入れません。
社内チャットボットの道具の選び方|今の契約の中で作れるかを先に見る
社内FAQのチャットボットは、専用の製品を買わなくても、会社で契約している生成AIの機能で作れることがあります。主な4つの製品の、社内FAQに関係する機能を、各社の公式ヘルプ・公式ページで確かめた範囲で並べます(2026年10月23日に確認)。特定の製品をすすめるものではありません。
| 製品と機能 | 答えのもとの登録 | 社内での共有 | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| ChatGPT のカスタムGPT | 1つのGPTに20ファイルまで、1ファイル512MBまで(ナレッジ) | Business・Enterprise・Edu のワークスペースで、設定と権限が許せば作成・公開できる | 個人向けのプラン(Free・Go・Plus・Pro)では新しく作れない。OpenAI は、カスタムGPTを2026年12月11日に提供終了し、プラグインへ移行する予定と案内している(すべてのプランが対象。延期が承認された一部の Enterprise ワークスペースは2027年2月11日)。移行すると、ナレッジのファイルはプラグインの参照ファイルにコピーされる |
| Claude のプロジェクト | 資料・文章などをプロジェクトのナレッジに追加し、指示も設定できる | Team・Enterprise プランで、組織内のメンバーと共有できる(閲覧のみ・編集可を選べる) | 資料が多いときの検索の仕組み(RAG)は有料プランのみ。無料ではプロジェクトは5つまで |
| Gemini Notebook(旧 NotebookLM) | Googleドキュメント、PDF、Word、CSVなどをソースにできる(無料ユーザーは1つのノートブックに50ソースまで) | ノートブックをチームと共有できる(閲覧者・編集者) | 答えに引用元を示す。アップロードしたソースは共有しない限り非公開で、モデルのトレーニングに使われないと説明。すべての Workspace プランで利用できる |
| Microsoft 365 Copilot のエージェント ビルダー | SharePoint のファイルは100まで、OneDrive は50まで、端末からのアップロードは20ファイルまで | 作ったエージェントを共有できる。使える機能はライセンスによって違う | SharePoint・OneDrive の資料は、元のアクセス許可に従う。端末からアップロードしたファイルは、エージェントを使える全員がその中身にアクセスできる |
表のとおり、機能の名前や続け方は数か月で変わります。NotebookLM が Gemini Notebook に名前を変えたことや、カスタムGPTの提供終了の予定がその例です。これから ChatGPT で作る場合は、カスタムGPTではなく、移行先のプラグインで作れるかを先に確かめます。作り始める前と、毎年の契約の更新の前に、各社の公式ヘルプで今の状態を確かめてください。
選ぶ前に確かめる4つのこと
- 今の契約で使えるか:会社ですでに契約している業務用プランに、上の機能が含まれているか。質問する社員全員に席(ライセンス)が要るか
- 入れたデータの扱い:入力した内容や資料が学習に使われないことを、各社の公式の説明で確かめる。個人情報保護委員会は、個人データを含む入力をするときは、提供する事業者がそのデータを機械学習に使わないこと等を十分に確かめるよう求めている
- 誰が何を見られるか:給与・人事評価・取引の条件など、一部の人しか見てはいけない資料を、全員が使うチャットボットに入れない
- 資料の量:FAQと手順書が何件になるか。登録できる数の上限に収まるか
データの扱いの確かめ方は、ChatGPTを業務で使うときの注意点とClaudeの業務利用でも解説しています。社内で使ってよいAIと入れてはいけない情報の決め方は、生成AIの社内ルールの作り方にまとめています。
社内FAQ・社内チャットボットでよくある失敗
失敗1:入口が遠く、困ったときに思い出されない
専用のURLをメールで1回配っただけでは、2週間後には誰も開きません。対策:社員が毎日開く社内チャットに入口を固定し、質問までの操作を1〜2回にします。
失敗2:最初の1問が思いつかず、閉じられる
空欄の入力欄だけが出ると、何を聞いてよいかわからず閉じてしまいます。対策:Step 1で集めた質問から、よく聞かれる5つを例として入口に並べます。
失敗3:外れた答えが直されず、二度と使われない
1回外れた答えを見た社員は、また社長に聞くようになります。対策:Step 6のとおり、毎週「見つからない」「役に立たない」の記録を見てFAQを直します。直したことを社員に伝えると、また使ってもらえます。
失敗4:社長が決めることまで、AIに答えさせてしまう
値引きや例外の対応までAIが答えると、社長の知らない約束が生まれます。対策:指示文の決まりで「判断の質問は社長に回す」と書き、Step 5の試験に判断の質問を必ず混ぜて確かめます。
失敗5:見せてはいけない資料まで入れてしまう
便利だからと給与表や人事評価、取引先との契約の条件まで登録すると、チャットボットを使える全員が、その中身を聞き出せるおそれがあります。対策:登録する資料の一覧を作り、社長が「全員が見てよいか」を1件ずつ確かめてから入れます。
シス学の場合|社員の質問を「作業・確認・判断」に分ける
シス学(システム経営学)は、AIエージェントを活用し、会社を「儲かるシステム」につくり変える経営学です。シス学では、仕事を「作業・確認・判断」に分けて考えます。社員の質問に答える仕事に当てはめると、次のようになります。
| 任せ先 | 受け持つ仕事 | 社内FAQでは |
|---|---|---|
| AI | 作業 | 質問の仕分け、FAQと手順書の下書き、資料をもとにした答えの下書き、答えられなかった質問の集計 |
| 社員 | 確認 | 下書きが今のやり方と合っているかを確かめる。FAQを直し、例外の質問に対応する |
| 社長 | 判断 | 値引き・例外・約束を決める。「ここまでは担当者が決めてよい」という基準を書き、FAQに入れる資料を決める |
これまで社長に集まっていた「確認」の質問は、FAQとAIと社員で片づけられるようになります。社長の手元には「判断」が残り、その判断も基準を書くたびに担当者に渡せます。社長がいなくても回る会社(時間創出)に向けた、最初の仕組みの1つです。
シス学 AIコンサルティングでは、月ごとの打ち合わせで一緒に進めます。社長に集まっている質問の書き出しと仕分けから、判断の基準づくり、手順書、社内チャットボットの組み立てまでが対象です。社長の仕事の分け方全体は社長がいないと回らない会社から抜け出す方法、特定の人しか知らない仕事のほどき方は属人化を解消するには?で解説しています。
まずは無料相談から。料金は、対象の業務と体制をお聞きしたうえで、無料相談でご案内します。全国オンラインで対応しています。30分の無料相談で、御社の社員の質問のどこからFAQにできるかを一緒に整理します。
まとめ
- 社員の質問は「資料にある・人の頭の中にある・社長が決める」の3つに分かれる。前の2つをFAQにすると、社長に届く質問を判断の質問に絞っていける
- 順番は、質問集め → 答えのもと → FAQ → 指示文 → 試験 → 入口と更新。答えのもとがそろう前にチャットボットを作らない
- AIには、資料の外を根拠にさせない・出典を付けさせる・判断の質問は社長に回させる
- 道具は、今の契約で作れるか、入れたデータの扱い、誰が何を見られるかを、公式ヘルプで確かめてから選ぶ
- 入口は毎日開く場所に置き、直す担当を決めて毎週直す
まずは明日から2週間、社長が社員から聞かれた質問を、聞かれた言葉のまま紙1枚に書き、同じ質問には正の字を付けてみてください。正の字が多い質問の上から3つが、最初にFAQにする候補です。お客様からの問い合わせも同じ仕組みで扱いたい場合は、問い合わせ対応をAIで自動化するやり方をご覧ください。
よくある質問
社内FAQとマニュアル(手順書)は、何が違いますか?
マニュアルは、1つの仕事のやり方を最初から最後まで書いたものです。社内FAQは、社員がよく聞く質問に、結論から短く答え、詳しくはマニュアルのどこを見ればよいかを示すものです。FAQの答えのもとがマニュアルなので、マニュアルがない仕事は、先に手順書を作ってからFAQにします。
社内FAQのチャットボットは、何件くらいの質問から作ればよいですか?
この記事では、社員が実際に聞いた質問30件から始める方法を紹介しました。最初から全部をそろえる必要はありません。答えのもとがそろった質問から公開し、「見つからない」と返した質問を毎週足していくと、答えられる範囲が少しずつ広がります。
AIのチャットボットは、間違った答えをしませんか?
間違いをゼロにはできません。個人情報保護委員会も、生成AIの答えには不正確な内容が含まれることがあると注意を呼びかけています。決めておくことは3つです。登録した資料だけを根拠にさせる、答えに出典を付けさせる、判断の質問は社長に回させる。こうしておくと間違いが減り、間違えたときに社員が気づきやすくなります。
就業規則や社内の資料をAIに入れても大丈夫ですか?
入れる前に、使う製品で入力した内容や資料が学習に使われないことを、各社の公式の説明で確かめます。あわせて、給与や人事評価など一部の人しか見てはいけない資料は、全員が使うチャットボットに入れません。製品によっては、アップロードした資料の中身を、使える全員が見られるものがあります。
専用のチャットボットの製品を買う必要がありますか?
必ずしも必要ではありません。会社で契約している生成AIの業務用プランに、資料を登録して社内で共有できる機能があれば、それで始められることがあります。機能の名前や提供の続け方は変わることがあるので、作る前に各社の公式ヘルプで確かめてください。
FAQを作っても、社員が結局社長に聞いてきます。どうすればよいですか?
入口が遠い、最初の1問が思いつかない、外れた答えが直されていない、のどれかであることが多いです。社員が毎日開く社内チャットに入口を固定し、質問の例を並べ、毎週直します。社長も、聞かれたら「まずFAQで引いてみて」と返し、見つからなかった質問をFAQに足していきます。




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