マニュアル作成にAIを使うとは?向いている作業・向かない作業
マニュアル作成にAIを使うとは、手順書の「下書き」「整理」「更新」をAIに手伝わせることです。何を書くか、どの手順が正しいかを決めるのは、その仕事をしている人です。
マニュアルは、うまくいったやり方を、誰がやっても同じ品質で再現できるようにするための道具です。2026年版小規模企業白書によると、小規模事業者で社内ノウハウの蓄積・共有に取り組んでいるのは、全体で約5割でした。有効だった取組と効果は、次のとおりです。
| 項目 | 白書の記述 |
|---|---|
| 取り組んでいる事業者 | 全体で約5割。運輸業・郵便業、情報通信業、建設業、製造業では、過半数が取り組んでいる(第2-1-48図) |
| 有効だった取組 | 「マニュアルや手順書の整備」が最も高い。次いで「社員同士の交流機会の提供」「社内勉強会・研修の実施」(第2-1-49図) |
| 得られた効果 | 「担当者不在時でも業務が滞りなく遂行できるようになった」が最も高い。次いで「業務の引継ぎが円滑に行えるようになった」「製品・商品・サービスの品質が安定した」(第2-1-50図) |
| 取り組んでいる事業者の傾向 | 売上高と営業利益率が「増加」「上昇」と答えた割合が高い。白書は、一概にはいえないが、属人化の防止や業務効率化につながっている可能性があるとしている(第2-1-51図) |
マニュアルの整備は、事業承継の準備でも挙げられています。中小企業庁の事業承継ガイドラインは、承継の前に経営体制を総点検する例として、各種の規程類やマニュアルを整備し、業務が効率よく流れる体制をつくることを示しています。
AIに向く作業と、人が決めること
| 作業 | AIに向くか | 理由 |
|---|---|---|
| 口頭の説明を録音し、文字にする | 向く | 話すほうが、書くより早く出てくる。AIのサービスで文字にできる |
| メモや箇条書きを、手順の文章に整える | 向く | 材料があれば、下書きまでは短時間で進む |
| 手順書のひな形(項目の並べ方)を作る | 向く | 項目の案を出させて、自社向けに直す |
| 誤字、表記のゆれ、手順の抜けを探す | 向く | 人が見落としやすい点を、先に指摘させる |
| 手順そのものを決める | 人が行う | 現場でどうやっているかを知っているのは、担当者 |
| 例外の判断の基準を決める | 人が行う | 何を大事にするかは、会社が決める |
| 手順書どおりに動くか確かめる | 人が行う | 実際にやってみないと、ずれに気づけない |
AIに頼む前に決めること|対象の仕事、読む人、使う場面
全部の仕事のマニュアルを作ろうとすると、終わりません。1つの仕事に絞って、次の5つを先に決めます。
| 決めること | 考え方 | 見積書の例 |
|---|---|---|
| 対象の仕事 | 頻度が高く、担当者が限られている仕事から | お客様への見積書を作る |
| 読む人 | その仕事を初めてやる人。新しい担当者、他部署の応援、後継者 | 営業事務の新しい担当者 |
| 使う場面 | 机で読むか、作業しながら横で見るか | 作業しながら、画面の横で見る |
| 形 | 文章、チェックリスト、画面の写真つき、動画 | チェックリストと、画面の写真 |
| 更新する人と時期 | 担当者を決め、見直す時期を決める | 営業事務の担当者。3か月に1回 |
対象の仕事は、業務の棚卸しで、時間がかかっている仕事や、担当者が限られている仕事を選ぶと、決めやすくなります。
先に「作業・確認・判断」に分ける
1つの仕事を、作業(下書きや転記)、確認(結果が合っているかを見る)、判断(決まりに書けない例外を決める)に分けておきます。手順書に書くのは、おもに作業と確認です。判断は、基準を条件と数字で書きます。
手順書に書く項目|1つの仕事を1枚で
手順書は、1つの仕事を1枚にまとめます。次の項目があれば、初めての人でも動けます。
| 項目 | 書くこと | 見積書の見本 |
|---|---|---|
| 仕事の名前 | 「〇〇を△△する」と、動詞で書く | お客様への見積書を作る |
| 終わりの状態 | 何のために行い、どうなれば終わりか | 依頼内容に合った金額と条件が入り、社長の確認に回せる状態 |
| いつ・誰が | 頻度、担当、期限 | 依頼を受けた当日中に、営業事務が |
| 準備するもの | 見る資料、使うツール | 依頼のメール、過去の見積書、単価表 |
| 手順 | 1つの手順に1つの動作。画面の写真を添える | 1 依頼のメールで、条件を確認する 2 単価表から、単価を選ぶ 3 見積書の画面に、金額を入力する |
| 確認すること | 誰が、何を、何と照らすか | 数量、宛名、金額を、依頼のメールと照らす |
| 判断が必要なとき | 基準と、迷ったときに聞く相手 | 値引きの依頼があった場合は、社長に確認する |
| よくある間違い | 過去に起きたミス | 古い単価表を使ってしまう |
| 更新の記録 | 更新した日と、直した人 | 手順書の末尾に残す |
手順は、動詞で書きます。画面の操作は、画面の写真を添えると、初めての人でも迷いません。
判断が必要な場面は、「状況に応じて判断する」と書かずに、誰に、何を、いつ聞くかを書きます。基準が決まっている判断は、「納期が3日以内の注文は、社長に確認する」のように、条件と数字で書きます。
AIでマニュアルを作る6つの手順
- 材料を集める:その仕事をしている担当者の説明、過去の完成物(過去の見積書など)、やりとりしたメールやLINE、画面を操作する様子の録画やスクリーンショット
- 担当者に、口で説明してもらう:画面を操作しながら、手順と、迷ったときの判断を話してもらい、録音する。AIのサービスで文字にする
- AIに下書きを頼む:材料と、手順書の項目、形を伝える(次の章)
- 担当者が、実際の手順と照らして直す:手順書を上から順に読み、実際の画面で操作しながら、抜け、順番の違い、画面の名前の違いを直す
- 初めての人に、手順書だけで試してもらう:説明なしで1回やってもらい、つまずいた所を直す
- 置き場所と更新の担当を決める:全員が見られる場所に置き、更新する人と、見直す時期(3か月に1回など)を、手順書に書く
4番目と5番目は、飛ばさないでください。AIの下書きは、もっともらしく読めても、実際の画面や社内の決まりと合っているとは限らないからです。
AIへの頼み方の例|材料を渡して、形を指定する
AIに頼むときは、材料、形、分からないときの扱いの3つを書くと、使える下書きが出やすくなります。
| 部品 | 書くこと | 例 |
|---|---|---|
| 目的と読む人 | 何のための手順書か、誰が読むか | 「営業事務の新しい担当者が、見積書を初めて作るときの手順書の下書きを作ってください」 |
| 材料 | 担当者の説明の文字起こし、メモ | 「次の文章は、担当者が見積書の作り方を口で説明した内容です」 |
| 形 | 項目の並び、1つの手順の長さ | 「項目は、準備するもの、手順、確認すること、判断が必要なときの相談先の順にしてください。手順は番号をつけ、1つの手順は1文にしてください」 |
| 分からないときの扱い | 推測させない | 「文章に書かれていないことは書かずに、不明な点は最後に質問としてまとめてください」 |
AIから質問が返ってきたら、担当者が答えて、下書きを作り直します。
更新にもAIを使う
手順が変わったときは、変更点のメモと、今の手順書を渡して、新しい版の案を作らせます。変わった箇所に印を付けるよう頼むと、確認がしやすくなります。更新した日と、直した人は、手順書の末尾に残します。
AIが作った手順書を確かめるポイントと、入力してよい情報
生成AIが作る文章には、誤りが含まれることがあります。IPA(情報処理推進機構)のガイドラインも、生成物には誤りが含まれる可能性があるため、常に正確性を確認する必要があるとしています。
確かめるポイント
| ポイント | 確かめ方 |
|---|---|
| 実際の手順と合っているか | 担当者が、手順書を上から順に読み、実際の画面で操作する |
| 材料にないことが書かれていないか | 実在しない画面の名前やボタンの名前、もっともらしい手順が混ざることがある。材料と照らす |
| 抜けがないか | 準備するもの、例外の場合、確認の項目がそろっているかを見る |
| 判断の基準が書かれているか | 「適切に判断する」のような言い方が残っていないか。条件や数字で書き直す |
| 初めての人が読めるか | 社内だけで通じる略語や専門用語に、説明が付いているかを見る |
入力してよい情報を、先に決める
IPAのガイドラインは、生成AIへの入力を制限することが推奨される情報として、著作権で保護された情報、個人情報、組織の機密情報を挙げています。
個人情報保護委員会も、個人情報を取り扱う事業者に、確認を呼びかけています。個人情報を含む入力を行う場合は、利用目的の達成に必要な範囲内かどうかを確かめます。サービスを提供する事業者が入力内容を機械学習に利用しないかどうかも、確かめます。
- 取引先の名前、担当者の名前、金額は、「A社」「単価」のように置き換えて渡す
- 社員やお客様の氏名、住所、電話番号は、入れない
- 使うAIサービスは、会社として決める。利用規約とプライバシーポリシーで、入力した内容の扱いを確かめる
- 画面の写真や録画には、取引先の情報が映っていないかを確かめてから渡す
マニュアル作成でよくある失敗と対策
失敗1:AIの下書きを、そのまま配る
もっともらしく読めるため、確かめずに配ってしまうことがあります。対策:担当者が実際の画面で操作して直し、初めての人に手順書だけで試してもらってから配ります。
失敗2:細かく書きすぎて、読まれない
すべての操作を文章にすると、長くなり、読まれなくなります。対策:1つの仕事を1枚にまとめ、画面の操作は写真で見せます。最後に、困ったときの相談先を書きます。
失敗3:判断の部分が「状況に応じて」で終わる
判断の基準が書かれていないと、結局は社長に確認が集まります。対策:基準を条件と数字で書きます。基準が書けない判断は、社長に確認する場面として、手順書に明記します。社長のところに仕事が集まる仕組みは、社長がいないと回らない会社から抜け出す方法で解説しています。
失敗4:作って終わりで、更新されない
手順が変わっても、手順書が古いままだと、使われなくなります。対策:更新する担当者と、見直す時期(3か月に1回など)を、手順書に書きます。手順が変わったときは、直した人がその場で1行足します。
失敗5:担当者が、書き出しに協力してくれない
特定の人しか手順を知らない仕事ほど、本人が手放したがらないことがあります。対策:担当者の仕事を取り上げるためではなく、担当者が休んだときに困らないために行うと、最初に伝えます。手順を話す役は、その担当者にお願いします。ほどき方は、属人化を解消するには?で解説しています。
シス学の進め方|マニュアルを「仕組み」にします
シス学(システムAI経営学)は、社長の頭の中にある判断と勝ちパターンを、AIでマニュアルにし、AIエージェントで仕組みにして、誰がやっても回る会社をつくる経営の方法です。株式会社むさしAI研修のAI導入支援ブランドとして提供しています。旗の言葉は「世界は、システムでできている。」、掲げる言葉は「AIエージェントで売上を上げる」です。
シス学が会社に進めるやり方は、AIで会社をシステム化し、再現性を高めることです。具体的には、次の3つです。
- 手順と判断の基準を仕組みに移し、下書きや転記はAIが、確かめる仕事は社員が受け持ちます。
- うまくいったやり方(勝ちパターン)を、誰がやっても同じ品質で、何度でも再現できるようにします。ミスも減ります。
- 新たな勝ちパターンのつくり方も仕組みにして、
進化し続けられるようにします。
このやり方で、次の「シス学で叶える3つのシ」を目指します。
- 1つ目のシ:収益改善:高収益体質へ。削れた作業時間と、新たな勝ちパターンで伸びた分の両方を、数字で確かめます。
- 2つ目のシ:時間創出:社長がいなくても回る会社へ。社長は判断と次の一手に、社員はお客様への対応と自分の成長に、時間を使えるようにします。
- 3つ目のシ:承継価値の向上:いつでも、高い価値で次へ引き継げる会社へ。
この記事で扱ったマニュアルづくりは、やり方の1つ目と2つ目に当たります。手順と判断の基準が仕組みとして残れば、担当者が休んだ日の穴埋めや、社長への確認を、減らしていくことを目指せます。
シス学 AI戦略では、どの仕事から手順書にするかを、棚卸しと仕分けから一緒に決めます。社員が自分の仕事の手順書を、AIを使って作り、直せるようにするAI研修、手順書どおりに進む作業を自動化するAI開発も、同じチームで担当します。
全国オンラインで対応し、初回のご相談は無料です。費用は、業務の内容を伺ってお見積もりします。日時を選んで無料相談を予約できます。
まとめ
- マニュアルづくりでAIが手伝えるのは、文字起こし、手順の下書き、抜けの指摘。手順そのものと判断の基準は、担当者と会社が決める
- 1つの仕事に絞り、読む人と使う場面を決めてから、材料を集めてAIに頼む
- AIの下書きは、担当者が実際の画面で確かめ、初めての人に手順書だけで試してもらう
- 取引先の名前や個人情報は、入力してよい範囲を先に決める
まずは、毎週やっている仕事を1つ選び、やり方を口で説明して録音してみてください。それが、手順書の最初の材料になります。選び方は、業務の棚卸しで解説しています。社長の仕事を後継者へ渡す準備としても使えます。詳しくは、事業承継の準備で解説しています。
よくある質問
AIでマニュアルは作れますか?
作れます。ただし、AIが得意なのは、話した内容の文字起こし、メモの手順への整理、下書き、抜けの指摘です。手順そのものは、担当者の説明や過去の書類といった材料から作ります。できあがったものは、担当者が実際の画面で確かめ、初めての人に試してもらってから配ります。
マニュアル作成に使うAIは、どれを選べばよいですか?
文章を扱える生成AIのサービスなら、下書きは作れます。サービス名より先に、入力した内容がどう扱われるか(学習に使われないか)と、会社として使ってよいサービスかを確かめます。個人情報や機密情報を入れる場合は、利用規約とプライバシーポリシーを確認します。
画面の録画やスクリーンショットからも、マニュアルを作れますか?
画像や録画を読み取って、手順の文章に整えられるサービスもあります。使えるかどうかは、サービスによって違います。画面に取引先の名前や個人情報が映っていないかを、渡す前に確かめます。
AIが作ったマニュアルの間違いは、どう防ぎますか?
担当者が手順書を上から読み、実際の画面で操作して確かめます。材料にないことが書かれていないか、判断の基準が書かれているかも見ます。最後に、初めての人に、手順書だけで仕事をしてもらうのが、いちばん確かな確認です。
マニュアルの更新は、どうすればよいですか?
手順書に、更新する担当者と、見直す時期(たとえば3か月に1回)を書いておきます。手順が変わったときは、変更点のメモと今の手順書をAIに渡して新しい版の案を作らせ、担当者が確かめます。




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