はじめに|日報のAI活用は「書く側」と「読む側」に分けて考える
中小企業庁が2026年版中小企業白書の概要として示した資料に、AI活用に取り組んでいない中小企業へ理由を聞いた結果があります。対象は2019年以降に省力化投資をした企業で、n=3,888、複数回答です。最も多いのは「活用する業務がイメージできていない」で63.4%でした。
- 活用する業務がイメージできていない:63.4%
- 活用を推進する人材が不足している:40.0%
- 社内ルール・ガイドラインが整備されていない:26.2%
- セキュリティ・情報漏えいへの不安がある:14.5%
- 必要な予算を確保できない:13.8%
日報は、1つ目の「業務のイメージ」を持ちやすい書類です。毎日書かれ、形が決まっていて、社内の書類なので、出す前の確認で直せます。3つ目と4つ目(社内ルールと情報漏えい)への備えは、この節の「プロンプトの使い方」と「日報に入れてはいけない情報」で扱います。
| 用途 | 使う人 | 日報の種類 |
|---|---|---|
| 1. 日報のひな形を決める | 社長・管理職 | すべて |
| 2. 走り書きのメモから日報を作る | 社員(書く側) | すべて |
| 3. 話した内容から現場日報を作る | 社員(書く側) | 現場日報 |
| 4. 商談メモから営業日報を作る | 社員(書く側) | 営業日報 |
| 5. 数字と不具合を作業日報にそろえる | 社員(書く側) | 作業日報 |
| 6. 出す前に日報を自分で点検する | 社員(書く側) | すべて |
| 7. 全員分の日報を、社長向けに1枚にまとめる | 社長・管理職(読む側) | すべて |
| 8. 気になる点(トラブルの芽)を拾う | 社長・管理職(読む側) | すべて |
| 9. 1週間・1か月分を分析する | 社長・管理職(読む側) | 営業日報・作業日報・現場日報 |
| 10. 部下へのコメントの下書きを作る | 管理職(読む側) | すべて |
プロンプトの使い方
- 〔 〕の部分を、自社の言葉や数字に置き換えてから貼ります
- 使うAIサービスは、会社として使ってよいと決めたものにします。社内のルールの決め方は生成AIの社内ルールの作り方で解説しています
- どのプロンプトにも「書かれていないことは書かない」「分からない所は〔要確認〕と書く」という一文を入れています。AIがもっともらしく話を補うのを防ぐためです
- AIの出力は、そのまま提出・共有しません。書いた本人か、元の日報を持っている人が、必ず確かめます
日報に入れてはいけない情報
日報には、お客様の名前や電話番号、社員の健康のことなど、個人情報が入りやすくなります。個人情報保護委員会は令和5年6月2日、生成AIサービスを使う事業者への注意点を示しました。1つ目は、個人情報を含むプロンプトを入れるなら、利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確かめることです。2つ目は、本人の同意なく個人データを入れるなら、サービスの事業者がそれを機械学習に使わないこと等を十分に確かめることです。
- お客様や取引先の名前は「A社」「B様」のように置き換えてから貼る
- 住所、電話番号、メールアドレスは消してから貼る
- 社員の病気やけが、家庭の事情など、配慮が必要な情報は貼らない
- 使うサービスの利用規約とプライバシーポリシーで、入力した内容の扱い(学習に使われるか)を確かめる
用途1. 日報のひな形を決める【社長・管理職】
こんな課題を解決
日報の書き方が人によってばらばらで、ある人は1行、ある人は感想ばかり。読む側は、欲しい情報を探すのに時間がかかります。書式が決まっていないと、後でAIにまとめさせるときも、うまく比べられません。
どう解決したか
社長や管理職が「日報を読んで何を知りたいか」を書き出し、AIに日報のひな形の案を作らせます。項目を決めるのは社長です。AIには、項目の並べ方と、書く人への記入例を作らせます。
ポイント
- 項目は、社長が「読んで動けること」に絞ります。項目が多いほど、書く時間が延びます
- 「事実」と「感想」の欄を分けておくと、後で用途7〜9のようにAIでまとめるときに、事実だけを拾いやすくなります
- 決めたひな形は、社員に1週間使ってもらい、書きにくい所を聞いて直します
用途2. 走り書きのメモから日報を作る【書く側・全社】
こんな課題を解決
一日の終わりに、日報の文章を考えるのに時間がかかる。メモは手帳やスマートフォンに残っているのに、それを文章に直す作業が重い。疲れている日ほど、日報が短く、中身の薄いものになります。
どう解決したか
日中に取った箇条書きのメモを、そのままAIに渡し、用途1で決めたひな形の形に整えさせます。社員は、出てきた下書きを読み、事実と違う所を直してから提出します。
ポイント
- メモは、きれいに書く必要はありません。時刻、相手(A社など)、やったこと、数字だけでも下書きになります
- 〔要確認〕が出た所は、自分で書き足します。ここがAIに任せられない部分です
- 提出する前に、数字と相手の名前だけは、元のメモと必ず照らします
用途3. 話した内容から現場日報を作る【書く側・現場日報】
こんな課題を解決
建設や設備工事、点検など、現場に出ている社員は、事務所に戻ってから日報を書くことになります。手が汚れていたり、移動が続いたりして、その場でメモを取る余裕がありません。結果として、日報が後回しになり、内容も記憶頼みになります。
どう解決したか
帰りの車を降りたあとや休憩中に、その日の作業を口で話して、スマートフォンの音声入力や文字起こしの機能で文字にします。その文字をAIに渡して、現場日報の形に整えさせます。話し言葉の言いよどみや、言い直しも、AIが整えます。
ポイント
- 音声を文字にすると、現場名や人の名前、専門用語が別の言葉に変わることがあります。固有名詞と数字は、提出前に本人が直します
- 話すときは「現場名、天候、人数、作業、気づいたこと、明日」の順で話すと決めておくと、抜けが減ります
- ヒヤリハットは、AIが「重要でない」と省かないよう、プロンプトに「省かない」と書いておきます
用途4. 商談メモから営業日報を作る【書く側・営業日報】
こんな課題を解決
営業日報が「A社訪問。好感触。」のような一言で終わり、上司が読んでも、何が決まり、次に何をするのかが分かりません。結局、上司が口頭で聞き直すことになり、書く側と読む側の両方の時間が取られます。
どう解決したか
商談中や商談後に取ったメモをAIに渡し、決まったこと、お客様の困りごと、次の一手、期限に分けて整理させます。営業担当者は、出てきた下書きを読み、お客様と約束した内容と違う所を直します。
ポイント
- お客様の名前や担当者の名前は、貼る前に「A社」「B様」に置き換えます
- 「次の一手」と「期限」の欄があると、上司が読んですぐに動けます。期限のない次の一手は、ここで見つかります
- 金額や約束した日付は、本人が商談の記録やメールと照らしてから提出します
用途5. 数字と不具合を作業日報にそろえる【書く側・作業日報】
こんな課題を解決
製造や加工、配送などの作業日報で、数字の書き方が人によって違う。「10個」「10ヶ」「十」が混ざり、不良や不具合の書き方もばらばらです。月末に集計しようとすると、手で直す作業が発生します。
どう解決したか
作業者のメモをAIに渡し、決まった表の形(作業、数量、時間、不良・不具合)にそろえさせます。表の形がそろえば、表計算ソフトに貼って集計できます。数字が合っているかは、作業者と班長が確かめます。
ポイント
- 列の名前と単位を会社で決めておくと、毎日同じ形の表ができ、月末の集計がそのまま進みます
- 「数字を計算で補わない」と書いておくのが大事です。AIは、合計などを気を利かせて書き足すことがあります
- 不良の数は、班長が実物や検査の記録と照らします
用途6. 出す前に日報を自分で点検する【書く側・全社】
こんな課題を解決
提出した日報に、上司から「で、結局どうなったの?」「明日は何をするの?」と聞き返される。書いた本人は分かっているつもりでも、読む人に必要なことが抜けています。
どう解決したか
書き終えた日報をAIに渡し、上司の目で読んだときに足りない所を、質問の形で出させます。AIに書き直させるのではなく、足りない所に本人が気づき、自分で書き足す使い方です。
ポイント
- 「書き直さないで」と頼むのがこの用途の要です。本人が足りない所に気づいて書き足すので、書き方の練習にもなります
- 新しく入った社員の最初の数か月に使うと、上司が毎回する「結果は?」「期限は?」の指摘を、AIの質問で先に済ませられます
- AIの質問がずれているときは、無視してかまいません。読むのは上司であり、AIではありません
用途7. 全員分の日報を、社長向けに1枚にまとめる【読む側・社長】
こんな課題を解決
社員が10人いれば、日報は毎日10通届きます。1通を2分で読んでも、毎日20分です。読まずにためると、日報は「出すだけの書類」になり、書く側の中身も薄くなっていきます。
どう解決したか
その日に届いた日報をまとめてAIに渡し、社長が知りたい項目だけを1枚に要約させます。社長は、まず要約を読み、気になった人の日報だけを元の文章で読みます。
ポイント
- 「誰の日報から取ったか」を必ず書かせます。気になった所を、元の日報で確かめられるようにするためです
- 要約は、元の日報の代わりではありません。判断する前に、該当する人の日報を元の文章で読みます
- 社員には「日報はAIで要約してから読む。判断の前には元の日報を読む」と、使い方を先に伝えておきます
用途8. 気になる点(トラブルの芽)を拾う【読む側・社長・管理職】
こんな課題を解決
お客様の不満や、作業の遅れ、ヒヤリハットが、日報の中に一言だけ書かれていることがあります。「少しお叱りを受けた」「段取りが合わず待ちが出た」。こうした一言を見落とすと、後で大きなクレームや事故になってから気づくことになります。
どう解決したか
日報をAIに渡し、あらかじめ決めた「気になる点」の種類に当てはまる記述だけを、元の文のまま抜き出させます。AIに「重大かどうか」を決めさせるのではなく、拾い出しだけを任せ、重さの判断は管理職と社長が行います。
ポイント
- 「元の文のまま」「言い換えない」と書くのが大事です。要約すると、書いた人の温度感が消えてしまいます
- AIは拾い漏らすこともあります。安全や品質のように見落とせないものは、AIの拾い出しとは別に、担当者が元の日報を確認する決まりを残します
- 拾った点に誰がいつまでに対応するかを決めるのは、管理職と社長の仕事です
用途9. 1週間・1か月分の日報を分析する【読む側・社長】
こんな課題を解決
日報は毎日読んでいても、1日ずつでは見えないことがあります。同じお客様からの同じ要望、同じ工程でくり返す不具合、何週間も「検討中」のまま止まっている案件。こうした傾向は、まとめて見たときに初めて分かります。
どう解決したか
1週間分、または1か月分の日報をまとめてAIに渡し、くり返し出てくる話題や、止まっている案件を一覧にさせます。営業日報なら案件の進み具合、作業日報や現場日報なら不具合やヒヤリハットのくり返しを見ます。
ポイント
- AIには「数える」「並べる」までを頼み、「なぜそうなったか」は聞きません。原因は、現場を知っている社員と話して確かめます
- 量が多いと、AIが一度に読み切れないことがあります。1週間ずつに分けて頼み、最後にまとめると漏れが減ります
- 回数や日付は、気になったものだけでも元の日報と照らします
用途10. 部下へのコメントの下書きを作る【読む側・管理職】
こんな課題を解決
日報にコメントを返すことになっているが、部下が多いと「確認しました」だけになってしまう。返事がないと、部下は日報を書く意味を感じなくなります。
どう解決したか
部下の日報と、管理職が伝えたいことの一言メモをAIに渡し、コメントの下書きを作らせます。何を伝えるかは管理職が決め、AIには言い方を整える作業だけを頼みます。
ポイント
- 伝えたいことのメモは、管理職が自分で書きます。ここをAIに考えさせると、上司の判断ではなくなります
- 下書きは、そのまま送らずに読み直し、自分の言葉に直してから返します
- 評価や処遇にかかわる内容は、AIに渡さず、管理職が直接伝えます
シス学の場合|日報を「作業・確認・判断」に分けて仕組みにする
シス学(システム経営学)は、AIエージェントを活用し、会社を「儲かるシステム」につくり変える経営学です。ソフトを入れることではなく、仕組み(システム)で回る会社をつくる経営です。日報に当てはめると、次のように分けます。
| 任せ先 | 受け持つ仕事 | 日報での中身 |
|---|---|---|
| AI | 作業 | メモや話した内容から日報を下書きする。全員分を要約し、気になる記述を拾い出す |
| 社員・管理職 | 確認 | 書いた本人が事実と数字を確かめる。管理職が、拾い出された点を元の日報で確かめる |
| 社長 | 判断 | どの案件・どのトラブルを優先するか、誰が動くかを決める |
シス学の3つのシのうち、日報は「時間創出」につながります。社長に集まっていた下書きや確認を、AIと社員に渡します。日報でいえば、社長が毎日読むのは用途7の1枚と、判断が要る人の元の日報だけにします。
シス学 AI研修では、社員が自分の日報やふだんの仕事を題材に、この記事のようなプロンプトを自社向けに作り、確かめるところまで練習します。研修の内容によっては、厚生労働省の人材開発支援助成金の対象となる場合があります。
- 対象になるかどうかは労働局の審査で決まり、受給を保証するものではありません
- 対象は雇用保険の被保険者です
- 計画届は、研修開始の6か月前から1か月前までに出します
- 受講料は、いったん全額を会社が支払います。助成金の有無で受講料は変えません
- 事業展開等リスキリング支援コースは、令和8年度末までの時限措置です
詳しくはAI研修に使える助成金で解説しています。まずは無料相談から。料金は、対象の業務と体制をお聞きしたうえで、無料相談でご案内します。30分の無料相談を予約できます。
まとめ|10の用途に共通する4つのポイント
- 材料は人が出す:AIは、その日に何があったかを知りません。メモ、話した内容、届いた日報という材料があって、はじめて形に整えられます
- 推測させない:どのプロンプトにも「書かれていないことは書かない」「分からない所は〔要確認〕」と書きます。数字を補わせない、言い換えさせない、原因を推測させない、も同じ考え方です
- 出力は人が確かめる:書く側は本人が元のメモと、読む側は管理職が元の日報と照らします。要約は、元の日報の代わりにはしません
- 判断は人が行う:何を優先するか、誰が動くか、部下に何を伝えるかは、社長と管理職が決めます
最初の1歩は、用途1でひな形を決め、用途2か用途7のどちらか1つを1週間だけ試すことです。試す前の3日と試した1週間で、「1人が日報を書く時間(分)」か「社長が全員分を読む時間(分)」を記録します。数字で比べると、続けるか広げるかを決めやすくなります。
どの仕事からAIに任せるかの決め方は、業務改善にAIを使う方法で解説しています。
よくある質問
日報をAIで作ると、手抜きになりませんか?
AIに任せるのは、メモを文章に整える作業です。その日に何があったかという材料は本人が出し、できた下書きの事実と数字も本人が確かめます。文章を考える時間が減る分、中身の確認と、次の行動を書くことに時間を使えます。
日報をAIで分析すると、何が分かりますか?
1週間や1か月分をまとめて渡すと、くり返し出てくるお客様の要望や不具合、状態が変わらないまま止まっている案件などを一覧にできます。ただし、AIに頼むのは数えることと並べることまでです。原因は、現場を知っている社員と話して確かめます。
日報にお客様の名前が入っていますが、そのままAIに貼ってもよいですか?
貼る前に「A社」「B様」のように置き換えるのが安全です。個人情報保護委員会は、個人情報を含むプロンプトを入れるなら、利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確かめるよう求めています。本人の同意なく個人データを入れるなら、サービスの事業者がそれを機械学習に使わないこと等を十分に確かめることも求めています。
日報に使うAIは、どのサービスを選べばよいですか?
文章を扱える生成AIのサービスなら、この記事のプロンプトは使えます。サービス名より先に、入力した内容がどう扱われるか(学習に使われないか)を利用規約とプライバシーポリシーで確かめ、会社として使ってよいサービスを決めます。
話した内容から日報を作ることはできますか?
できます。スマートフォンの音声入力や文字起こしの機能で文字にし、その文字をAIに渡して日報の形に整えさせます。現場名や人の名前、数字は別の言葉に変わることがあるため、提出前に本人が直します。
AIがまとめた要約だけを読めば、元の日報は読まなくてよいですか?
おすすめしません。AIは要約のときに意味を変えたり、大事な一言を落としたりすることがあります。要約で全体をつかみ、判断が必要な所や気になった所は、元の日報で確かめます。そのために、要約には「誰の日報から取ったか」を必ず書かせます。




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