はじめに|ExcelでAIを使う5つの方法と、入れてはいけない情報
ExcelでAIを使う方法は、大きく分けて次の5つです。1つ目はExcelの外で使うチャットのAIで、表の中身ではなく「どの列に何があるか」だけを伝えて、式や手順を出させます。2〜4つ目はExcelの中にAIが入る方法、5つ目はGoogleスプレッドシートのセルにAIの関数を入れる方法です。
| 方法 | 使える条件(公式ページの記載) | できること | 公式ページにある注意 |
|---|---|---|---|
| A. チャットのAI(ChatGPT・Claude・Gemini・Copilot Chatなど) | 各サービスのアカウント。会社で使ってよいツールかを先に決める | 列の形を伝えて、式・手順・VBAのコード案を出させる。ブックは変わらない | 出てきた式を自分で貼り、数件で検算する |
| B. ExcelのCopilot(Microsoft) | 会社では、有料のMicrosoft 365 Copilot。または、無料のCopilot Chatの対象になる法人向けMicrosoft 365(Business Basic・Standard・Premium、E3・E5など)。個人では、AIクレジットを含むMicrosoft 365 Personal・Family、Microsoft 365 Premium。会社の設定でも変わる | 右下のCopilotのアイコンから、編集・計画・チャットの3つのモードで、シートの編集、数式、グラフ、ピボットテーブル、他のブックからの取り込みなど | 編集は計算方法が「自動」のときだけ。保存した変更はアクセス権のある全員に見える |
| C. ChatGPT for Excel(OpenAI) | ChatGPTの無料版・Go・Plus・Pro・Business・Enterprise・Edu・K-12。無料版とGoは利用に制限あり。Business・Enterpriseは、2026年6月2日までの無料プレビューのあと、プランのクレジットを使う | Microsoft Marketplaceから追加し、サイドバーでブックの作成・更新・説明。Googleスプレッドシート用もある | VBAやマクロは完全には対応しない場合がある。大事な作業は先にファイルを複製する |
| D. Claude for Excel(Anthropic) | ClaudeのPro・Max・Team・Enterprise。Web版、Microsoft 365のWindows版、Mac版(16.46以降)。買い切りのExcel 2016・2019、iPad、Androidでは動かない | セル単位の根拠つきの説明、式のつながりを保った値の変更、エラーの原因探し、並べ替え・ピボット・入力規則など | マクロ・VBAとデータテーブルは対応外。外から来たファイルには隠れた指示が入っていることがあり、信頼できるブックだけで使う |
| E. GoogleスプレッドシートのAI関数 | Google WorkspaceのBusiness Standard・Plus、Enterprise Standard・Plus。個人はGoogle AI Pro・Ultra。Business Starterは対象外。管理者設定や言語設定で使えない場合がある | セルに =AI() または =Gemini() を入れ、指示と範囲を渡して文章の生成・要約・分類 | 答えは文字だけ。元に戻す操作はできない。複数セルを選んで生成するときは最初の350セルまで |
Microsoftのページでは、有料版を「商用 Microsoft Copilot」と書いています。これは、この記事とCopilotの導入費用と進め方でいう「Microsoft 365 Copilot」(有料)のことです。自社のプランが無料のCopilot Chatの対象かは、そちらのStep 1の表で確かめられます。
「ExcelのAI関数」は、2026年9月14日で終わっています
Excelには、セルにAIへの指示を書くCOPILOT関数(例:=COPILOT("このフィードバックを要約してください", A2:A20))がありました。使えたのは、FrontierプログラムとMicrosoft 365 Insiderプログラムに参加した人だけです。Microsoftのサポートページには、2026年9月14日以降はExcelでCOPILOT関数を使えなくなると書かれています。
計算済みの結果は、保存された値としてブックに残ります。ただし、そのセルを計算し直すと #NAME? エラーになります。COPILOT関数を使う手順を社内の手順書に書いていたら、書き直しが要ります。Microsoftは代わりに、右下のCopilotのアイコンから、やりたいことを言葉で頼む方法を案内しています。セルの中でAIの関数を使いたいときは、方法EのGoogleスプレッドシートのAI関数が候補になります。
自分の環境で使える方法の確かめ方
- Excelの右下にCopilotのアイコンがあるかを見る。Microsoftのページでは、表示されないときはサブスクリプションに含まれていないか、組織の設定で使えない可能性がある、とされています
- 会社で契約しているAI(ChatGPT・Claude・Geminiなど)と、そのプラン名を情報システムの担当者か社長に確かめる
- アドイン(方法C・D)を入れてよいかを確かめる。どちらの会社の手順にも、管理者が会社全体に配る方法が書かれています。各自が勝手に入れると、誰が何を使っているか分からなくなります
- どれも使えないときは、方法Aから始める。方法Aは表の中身をAIに渡さずに済むため、最初の練習に向いています
試す手順は「準備・指示・確認」の3つ
| ステップ | やること | 理由 |
|---|---|---|
| 1. 準備 | ブックを複製し、見出しが1行目にある表の形にする。Copilotで編集するなら、計算方法を「自動」にし、.xlsx で保存する | Microsoftのページでは、編集は計算方法が「自動」のときだけで、Strict Open XMLなどの形式は対応しないとされています |
| 2. 指示 | 下のプロンプトの〔 〕を自社の列名・条件に置き換えて貼る | 列の名前と答えの形を決めると、毎回同じ形で返ってきます |
| 3. 確認 | 出てきた式・表を数件で検算する。違えば、どこが違うかを伝えて言い直すか、元に戻す | MicrosoftとOpenAIのページには、AIの答えは誤ることがあり、使う前に確かめるよう書かれています。Anthropicのページも、人が確かめずに最終の成果物に使うことはすすめていません |
入れてはいけない情報
個人情報保護委員会は、令和5年6月2日の「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」で、事業者に次の2点を求めています。1つは、個人情報を含むプロンプトを入れるときは、利用目的を達成するのに必要な範囲内かを十分に確かめること。もう1つは、本人の同意なく個人データを入れるなら、サービスの事業者がそのデータを機械学習に使わないことなどを十分に確かめることです。
この記事のプロンプトは、方法Aで使うときは列の名前と数件の見本だけを渡し、お客様や社員の名前は「A社」「社員1」のように置き換える形にしています。Excelの中のAI(方法B〜D)は、ブックの中身を読みます。顧客名簿や給与の表で使ってよいかは、契約しているプランのデータの扱いと社内のルールで先に決めておきます。ルールの決め方は生成AIの社内ルールの作り方で解説しています。
部署ごとのプロンプトは業務効率化×AI プロンプト&事例15選にまとめています。請求と入金を照らし合わせる式は、そちらの用途4で紹介しているため、この記事では扱いません。
用途1【数式・関数】やりたい集計を言葉で伝えて、式を作ってもらう
こんな課題を解決
担当者別・月別の売上の合計を出したいのに、SUMIFSの引数の順番が分からず、電卓で足しています。関数を知っている社員が1人しかおらず、その人に頼みが集まります。
どう解決したか
表の中身ではなく、列の名前と場所、やりたい集計、答えを置く場所をAIに伝えて、式と貼る場所を出させます。方法Aでも、Excelの中のAI(方法B〜D)でも同じ頼み方で使えます。
ポイント
- Excelのバージョンを書くと、そのExcelで使えない関数を出されにくくなる
- 担当者1人・1か月分を、フィルターで絞った合計と比べて検算する
- どの数字を「売上」とするか(税抜か税込か、返品を引くか)は、社長と経理が決める
用途2【数式・関数】引き継いだブックの式を、1つずつ説明させる
こんな課題を解決
前の担当者が作った長い式が読めず、どこを直してよいか分かりません。触ると壊れそうで、毎月同じブックを「中身の分からないまま」使っています。
どう解決したか
式をそのまま貼り、何を計算しているか、参照している先、壊れやすい所を説明させます。Claude for Excelは、答えにセル単位の根拠がつき、クリックで参照先に飛べる、とドキュメントに書かれています。方法Aなら、式だけを貼れば中身の数字を渡さずに済みます。
ポイント
- 書き直した式は、元の式と同じ結果になるかを、複製したブックで並べて確かめる
- 説明は、ブックの「説明」シートに貼って残す。次の人への引き継ぎになる
- 引き継ぎ全体の書き方は引き継ぎ書をAIで作る方法で解説しています
用途3【数式・関数】別のシートの単価表から、単価を引いてくる
こんな課題を解決
受注の一覧に、商品ごとの単価を単価表から目で探して打ち込んでいます。打ち間違いがあっても気づけず、請求の金額がずれます。
どう解決したか
2つの表の列の形と、見つからないときの扱いを伝えて、検索の式(XLOOKUP、使えなければINDEXとMATCH)を作らせます。「見つからないときは空にせず『単価なし』と出す」と決めておくと、打ち漏れが目で見つかります。
ポイント
- 「単価なし」が出た行を一覧にして、単価表の抜けを直す
- 単価が変わった日の前後の受注で、正しい単価が入っているかを確かめる
- 特別な単価(値引き・個別の条件)を認めるかは、社長が決める
用途4【数式・関数】#N/A・#REF!・#DIV/0! の原因と直し方を聞く
こんな課題を解決
月末の集計表にエラーが出て、原因が分からないまま、エラーのセルを手で上書きしています。上書きした所は、翌月も同じエラーが出ます。
どう解決したか
エラーの出ているセル、式、参照先の様子を伝えて、考えられる原因を先に並べさせ、確かめる順番を決めてから直します。いきなり式を書き直させると、別の所が壊れることがあります。Claude for Excelのドキュメントには、#REF! や #DIV/0! の原因を探す使い方の例が載っています。
ポイント
- エラーを IFERROR で隠すだけの直し方は、原因が分かるまで使わない
- 直したあと、エラーのなかった行の数字が変わっていないかを確かめる
- 原因と直し方は、ブックの「説明」シートに1行で残す
用途5【数式・関数】締め日・支払日・期限を、式で出す
こんな課題を解決
「月末締め翌月末払い」「20日締め翌月10日払い」など、取引先ごとに違う支払日をカレンダーで数えています。土日や祝日に当たったときの扱いも、人によって違います。
どう解決したか
取引先ごとの締め日・支払日の決まりを表にして、支払日を出す式を作らせます。休日に当たったときに前の営業日にするか後ろにするかは、AIに決めさせず、会社の決まりとして書いて渡します。
ポイント
- ③の例の正しい支払日は、経理担当が自分でカレンダーを見て確かめる
- 祝日の表は毎年更新する。更新する人と時期を決めておく
- 支払条件を変えるかどうかは、社長と取引先とで決める
用途6【データ整理】氏名・住所・日時を、決まった列に分ける
こんな課題を解決
「氏名」が1つの列に入っていて名字で並べ替えられない、住所から都道府県だけを取り出したい、といった整理に、1件ずつのコピーと貼り付けで半日かかります。
どう解決したか
方法Aでは、本物の名簿ではなく、形だけまねた見本の数行を渡して、分けるための式か手順を出させます。Excelの中のAIなら、列を指定して「分けて」と頼めますが、名簿の中身をAIが読むことになるため、使ってよいかを先に決めておきます。
ポイント
- 見本には、分けにくい例(市と区が続くもの、都道府県なしなど)を入れておく
- 「要確認」の行だけを、人が目で見て直す
- 名簿をExcelの中のAIに読ませてよいかは、社内のルールで決める
用途7【データ整理】取引先名の表記ゆれをそろえ、重複に印を付ける
こんな課題を解決
同じ取引先が「(株)山田商店」「株式会社 山田商店」「㈱ヤマダ商店」と別々に入っていて、取引先ごとの合計が正しく出ません。重複したまま案内を送ってしまうこともあります。
どう解決したか
そろえ方の決まり(会社の種類の書き方、空白、全角・半角)を先に決めて渡し、そろえた名前の列と重複の印の列を足させます。元の列は残し、そろえた名前は新しい列に入れます。
ポイント
- 「重複」「同じ会社か確認」の行は、取引先コードや住所で人が確かめる
- どちらの行を残すか(名簿の正本)は、担当者と上司が決める
- そろえる決まりは、入力のルールとして手順書に残し、次から入力の時点でそろえる
用途8【データ整理】システムから出したCSVを、毎月同じ形に整える
こんな課題を解決
販売管理や会計のシステムから出したCSVを、毎月、列を消す・並べ替える・日付の形を直す、と同じ手作業で整えています。担当者が休むと、その月の集計が止まります。
どう解決したか
毎月やっている手作業を箇条書きで渡し、Excelの「データの取得(Power Query)」で同じ処理を組む手順を出させます。一度組めば、翌月はファイルを差し替えて更新するだけになります。毎月同じ形のCSVを整える作業なら、VBAを書かなくても、この方法で足りることが多くあります。
ポイント
- 渡すのは列名と手作業の手順だけ。中身の取引のデータは渡さない
- 組んだあとの最初の月は、手作業の結果と行数・合計金額が合うかを確かめる
- システムの出力の形が変わったら止まる。変わったときに誰が直すかを決めておく
用途9【データ整理】ドロップダウンと入力チェックで、入力ミスを防ぐ
こんな課題を解決
共有のExcelに、社員がそれぞれの書き方で入力するため、「済」「済み」「完了」が混ざり、集計できません。日付の欄に文字が入っていることもあります。
どう解決したか
列ごとに入れてよい値の決まりを渡し、ドロップダウン(入力規則)と、決まりに合わない入力に色を付ける設定の手順を出させます。Claude for Excelのドキュメントには、入力規則のドロップダウンを作れると書かれています。
ポイント
- 選ぶ値(状況の種類など)は、AIに考えさせず、現場の責任者が決める
- 設定のあと、決まりに合わない値を実際に入れてみて、止まるかを確かめる
- 既存の行で色が付いたものは、入力した人に確かめて直す
用途10【集計・グラフ】ピボットテーブルで、月×商品の集計表を作る
こんな課題を解決
月×商品、担当者×得意先の集計を、毎回SUMIFの式を書いて作っています。社長に「この切り口でも見たい」と言われるたびに、表を一から作り直します。
どう解決したか
ピボットテーブルの作り方と、見たい切り口ごとの設定を出させます。ExcelのCopilotは、元のデータへのリンクを保ったままピボットテーブルを作り、編集できる、とMicrosoftのページに書かれています。方法Aなら、手順を聞いて自分で作ります。
ポイント
- ピボットの合計と、元の表の金額の合計が一致するかを確かめる
- 元のデータを「テーブル」にしておくと、行を足しても範囲から漏れにくい
- どの切り口で毎月見るかは、社長が決める
用途11【集計・グラフ】グラフを作り、報告に添える一言を下書きする
こんな課題を解決
月次の報告のたびに、グラフの種類や色、軸の設定に時間を取られます。グラフを貼っても、何を読み取ればよいかの説明がありません。
どう解決したか
何を比べたいかを伝えて、グラフの種類と作り方を決めさせ、あわせてグラフから読み取れることを短い文にさせます。OpenAIのヘルプにも、ChatGPT for Excelで「3つのタブ全体の傾向を要約し、異常な点を指摘して」と頼む例が載っています。
ポイント
- AIは計算を間違えることがある。③の金額と率は、元の数字で検算する
- 増えた・減った理由は、担当者に聞いて人が書く
- 報告の文の作り方は資料作成×AI プロンプト&事例15選で紹介しています
用途12【集計・グラフ】期限切れ・上位・マイナスに、自動で色を付ける
こんな課題を解決
期限が過ぎた請求や、在庫が少ない商品を、毎朝表を目で追って探しています。見落としが、そのまま回収の遅れや欠品になります。
どう解決したか
色を付けたい条件を言葉で渡し、条件付き書式の設定と、その条件で絞り込むフィルターの手順を出させます。ExcelのCopilotは、条件付き書式の適用や強調表示・並べ替え・フィルターができる、とMicrosoftのページに書かれています。
ポイント
- 色が付くべき行に付いているかを、期日の境目(今日・7日後)の行で確かめる
- 赤くなった取引先に連絡するのは担当者。回収の進め方は社長が決める
- 色の決まりを社内でそろえ、どの表でも同じ意味にする
用途13【分析】入力ミスと思われる数字を探して、一覧にする
こんな課題を解決
数量の桁が1つ多い、単価が0、日付が未来、といった入力ミスが、集計した後になって見つかります。月末に原因を探すのに時間がかかります。
どう解決したか
「おかしい」と考える条件を先に決めて渡し、その条件に当たる行に印を付ける式を作らせます。Microsoftのページには、ExcelのCopilotはデータについての質問に、傾向や外れ値の形で答えられると書かれています。ただし、何をミスとみなすかは会社が決めておきます。
ポイント
- 印が付いた行だけを、伝票と照らし合わせて人が確かめる。印が付いても正しい取引はある
- ④の「5倍」などの線は、実際の取引を見て経理と社長が決める
- 売上・アンケートなどの分析の問いの立て方は、経営の数字の見方と合わせて経営にAIを使う方法で解説しています
用途14【分析】アンケートやクレームの自由記述を、種類に分ける
こんな課題を解決
お客様アンケートの自由記述が数百件たまり、読み切れません。どんな声が多いかを社長に聞かれても、印象でしか答えられません。
どう解決したか
分ける種類を先に決めて渡し、1件ずつに種類を付けさせてから、種類ごとの件数を数えます。GoogleスプレッドシートならAI関数をセルに入れて使えます(複数セルを選んで生成するときは最初の350セルまで)。Excelでは、終了したCOPILOT関数の代わりに、右下のCopilotに言葉で頼みます。Microsoftのページにも、感情の分類を新しい列に入れる例が、COPILOT関数の置き換えとして載っています。
ポイント
- 自由記述に名前や電話番号が書かれていたら、渡す前に消す
- 「その他」と、ほかの種類から20件ほどを抜き出して、人が分け方を確かめる
- どの声に手を打つかは、件数だけでなく中身を見て社長が決める
用途15【表・帳票づくり】経費や在庫の管理表を、一から作ってもらう
こんな課題を解決
経費の管理や在庫の数を、紙のノートや形のばらばらなExcelで付けています。表を一から作る時間がなく、項目もこれで足りているのか分かりません。
どう解決したか
何を記録したいかと、月末に何を見たいかを伝えて、列の構成、合計や差額の式、入力のルールまで入った表を作らせます。ExcelのCopilotは、ダッシュボードや計画ツール、テンプレートをゼロから作れる、とMicrosoftのページに書かれています。方法Aなら、列の構成と式を出させて自分で作ります。
ポイント
- 勘定の種類と予算は、経理と社長が決めて入れる
- 見本の行で、合計と差額が正しく出るかを確かめてから使い始める
- 税金や会計の処理として正しい分け方かは、担当者と税理士が確かめる
用途16【表・帳票づくり】見積書・請求書の計算の部分を整える
こんな課題を解決
Excelの見積書で、小計・消費税・合計の計算を手で直すことがあり、端数の扱いが人によって違います。合計が1円ずれて、お客様から問い合わせが来たこともあります。
どう解決したか
会社として決めた端数の扱いと税率の区分を渡し、明細の金額、税率ごとの小計、消費税、合計の式を作らせます。端数を切り捨てるか四捨五入するかは、AIに選ばせず、会社の決まりとして書きます。
ポイント
- 見本の合計は、電卓で経理担当が確かめる
- 端数の扱いや請求書の書き方が、取引先との約束や制度に合っているかは、経理と税理士が確かめる
- 見積の中身(単価・値引き)を作る使い方は見積書をAIで作成するやり方で紹介しています
用途17【表・帳票づくり】数字を変えると利益が変わる、予算の試算表を作る
こんな課題を解決
「売上が1割落ちたら」「仕入れが5%上がったら」と社長に聞かれるたびに、表を作り直して計算しています。答えが出るまでに数日かかり、判断が遅れます。
どう解決したか
前提の数字(売上・変動費率・固定費)を1か所にまとめ、そこを変えると営業利益が計算し直される表を作らせます。OpenAIのヘルプにも、基本・上振れ・下振れのケースを比べるシナリオのタブを作らせる例が載っています。
ポイント
- 前提の数字は、AIではなく経理が会計の数字から入れる
- 前提を1つずつ変えて、営業利益が手計算と同じ向き・大きさで動くかを確かめる
- どの前提で来期の計画を立てるかは、社長が決める
用途18【マクロ・VBA】複数のファイルを1つにまとめるVBAのコード案を作る
こんな課題を解決
支店や担当者から毎月届く同じ形のExcelを、1つずつ開いてコピーし、1枚の表にまとめています。ファイルが多い月は、まとめるだけで半日かかります。
どう解決したか
やりたいことを手順に分けて渡し、VBAのコード案と、動かす前の準備を出させます。Anthropicのページでは、Claude for ExcelはマクロとVBAの操作に対応していません。OpenAIのページでも、ChatGPT for ExcelはVBAやマクロに完全には対応しない場合があるとされています。VBAは方法Aでコード案を出させ、自分で貼って動かすのが確実です。
ポイント
- 最初は、複製したフォルダと2〜3個のファイルで動かし、行数と合計が合うかを確かめる
- マクロの入ったブックは .xlsm で保存する。外から届いたマクロ入りのファイルは開かない、など社内の決まりを守る
- 関数・マクロ記録・VBA・外部ツールのどれで自動化するかは、作業の回数と例外の多さで選ぶ。迷ったら、まず関数とピボットで足りるかを試す
用途19【マクロ・VBA】前の担当者が残したマクロを読み解き、直す
こんな課題を解決
退職した社員が作ったマクロが、エラーで止まるようになりました。社内に読める人がおらず、ボタンを押す以外に使い方が分かりません。
どう解決したか
コードを貼り、何をしているかを処理の順に説明させ、エラーの原因の候補を先に挙げさせてから直します。原因が分からないまま書き直させると、ほかの処理まで変わってしまうことがあるためです。
ポイント
- 直したマクロは、複製したブックで動かし、前と同じ結果になるかを確かめる
- ②の説明は、マクロの説明書としてブックと同じフォルダに残す
- このマクロを使い続けるか、別の仕組みに置き換えるかは、社長が決める
用途20【操作の手順】毎月のExcel作業を、誰でもできる手順書にする
こんな課題を解決
月末の集計のやり方が担当者の頭の中にしかなく、休んだり辞めたりすると、誰も同じ表を作れません。手順書を書く時間もありません。
どう解決したか
担当者がいつもの作業を話した内容やメモをAIに渡し、画面の操作の順番と、確かめる所が入った手順書の形に整えさせます。上の用途1〜19で作った式や設定も、この手順書に書き込みます。
ポイント
- 下書きを、担当者以外の社員が手順どおりに試し、つまずいた所を直す
- 画面の写真を足すと迷いにくくなる。手順書の作り方はマニュアル作成にAIを使う方法で解説しています
- どの作業から手順書にするかは、仕事を洗い出してから社長が選ぶ
シス学の場合|毎月のExcel作業を、社員が回せる形にする
シス学(システム経営学)は、AIエージェントを活用し、会社を「儲かるシステム」につくり変える経営学です。手順と判断の基準を仕組みに移し、下書きや転記はAIが、確かめる仕事は社員が受け持ちます。
この記事の用途8(システムから出したCSVを整える)と用途10(ピボットの集計)を、毎月の売上の集計に当てはめると、次のようになります。
| 任せ先 | 受け持つ仕事 | 毎月の売上の集計では |
|---|---|---|
| AI | 作業 | CSVを整える手順と集計の式・ピボットの設定を作る。毎月の手作業は、組んだ仕組みで更新する |
| 社員 | 確認 | 行数と合計金額が元のデータと合うかを確かめ、入力ミスの印が付いた行を伝票と照らし合わせる |
| 社長 | 判断 | どの数字を「売上」とするか、どの切り口で毎月見るか、数字を見て次の月に何をするかを決める |
社員がプロンプトを自社のExcelで使い続けるために、次の3つを決めておきます。
- 自社のブックの列名と決まり(締め日、端数、表記のそろえ方)に合わせて、〔 〕を埋めたプロンプトを作る
- 確かめる人と、確かめる項目を決める(用途8なら、経理担当が行数と合計金額を見る)
- 作った式・設定・確かめ方を、用途20の手順書に残す
シス学 AI研修では、文書作成、資料の要約、データ集計、メール対応などを題材にします。部署ごとの実務のワークで、その場で業務を終わらせます。
厚生労働省は、人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の令和8年8月3日からの変更点で、例を示しています。生成AIで商品提案書の構成案づくり・文章の生成・修正のしかたを学ぶ営業担当者向けの訓練は「助成対象」です。汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練は「助成対象外」です(経過措置があります)。自社のExcel業務を題材にする研修は、具体的な業務に結びつけて組みます。対象になるかどうかは労働局の審査で決まり、受給を保証するものではありません。くわしくはAI研修に使える助成金で解説しています。
料金は、対象の業務と体制をお聞きしたうえで、無料相談でご案内します。まずは30分の無料相談から。全国オンラインで対応します。
まとめ|20のプロンプトに共通すること
| 分類 | 用途 | AIに任せる作業 | 人が確かめ・決めること |
|---|---|---|---|
| 数式・関数 | 1. 集計の式 | 列の形から式と貼り方 | 1人・1か月分で検算/売上の定義(社長) |
| 数式・関数 | 2. 式の説明 | 式を分けて説明、書き直し案 | 元の式と同じ結果か |
| 数式・関数 | 3. 単価を引く | 検索の式と「単価なし」の表示 | 単価表の抜け/特別単価(社長) |
| 数式・関数 | 4. エラーの原因 | 原因の候補と確かめ方 | ほかの行が変わっていないか |
| 数式・関数 | 5. 支払日 | 締め日・休日を考えた式 | 例の日付をカレンダーで確かめる |
| データ整理 | 6. 列を分ける | 分ける式と「要確認」の印 | 要確認の行を目で直す |
| データ整理 | 7. 表記ゆれ | そろえた名前と重複の印 | どの行を残すか |
| データ整理 | 8. CSVを整える | Power Queryの手順 | 最初の月は行数と合計を照合 |
| データ整理 | 9. 入力チェック | ドロップダウンと色付けの設定 | 選ぶ値は現場の責任者が決める |
| 集計・グラフ | 10. ピボット | 切り口ごとの設定 | 合計の一致/見る切り口(社長) |
| 集計・グラフ | 11. グラフと一言 | グラフの作り方と読み取り | 金額と率の検算、理由は人が書く |
| 集計・グラフ | 12. 色付け | 条件付き書式とフィルター | 境目の日付で確かめる |
| 分析 | 13. 入力ミス探し | 条件に当たる行の印 | 伝票との照合/線の決め方 |
| 分析 | 14. 自由記述の分類 | 種類付けと件数 | 抜き取りで分け方を確かめる |
| 表・帳票 | 15. 管理表 | 列の構成と式 | 勘定の種類と予算(社長) |
| 表・帳票 | 16. 見積の計算 | 税率ごとの小計・消費税の式 | 端数の決まりと検算 |
| 表・帳票 | 17. 予算の試算 | 前提を変えると動く表 | どの前提で計画するか(社長) |
| マクロ・VBA | 18. ファイルの集約 | VBAのコード案 | 複製で試し、行数と合計を照合 |
| マクロ・VBA | 19. マクロの読み解き | 処理の説明とエラーの原因 | 使い続けるか(社長) |
| 操作の手順 | 20. 手順書 | 話した内容を手順書に整える | 別の社員が試して直す |
20のプロンプトには、共通する書き方があります。
- 列の形だけを渡す:シート名・列の名前・行の範囲を書き、中身の数字や名前は渡さない(Excelの中のAIを使うときは、使ってよいデータかを先に決める)
- 会社の決まりは人が書く:締め日、端数、表記のそろえ方、「おかしい」とみなす線は、AIに選ばせずに渡す
- 答えの形を決める:「式→入れるセル→意味→検算のしかた」の順など、毎回同じ形で返させる
- 原因が先、直すのは後:エラーやマクロは、原因の候補を挙げさせてから直させる
- 複製で試し、数件で検算する:MicrosoftとOpenAIのページには、AIの答えは誤ることがあると書かれている。行数と合計が合うかを社員が確かめ、方針は社長が決める
明日できる最初の1歩は、毎月いちばん時間がかかっているExcelの作業を1つ選び、用途1か用途8のプロンプトの〔 〕を、その表の列名で埋めて試すことです。うまくいったら、用途20で手順書に残し、ほかの社員にも渡します。AIを使った業務改善の全体の進め方は、業務改善にAIを使う方法にまとめています。
よくある質問
無料でもExcelでAIは使えますか?
Excelの外のチャットのAIに、列の形を伝えて式や手順を出させる使い方なら、各サービスの無料の範囲でも試せます。ChatGPT for Excelは、OpenAIのヘルプでは無料版でも使えますが、利用に制限があるとされています。ExcelのCopilotは、会社なら無料のCopilot Chatの対象になる法人向けMicrosoft 365で使える場合があります(会社の設定による)。有料のMicrosoft 365 Copilotがあれば使えます。料金は各社の公式ページで確かめてください。
Excelに「AI関数」はありますか?
ExcelのCOPILOT関数は、Microsoftのサポートページによると、2026年9月14日以降は使えなくなりました。計算し直すと #NAME? エラーになります。Microsoftは代わりに、右下のCopilotのアイコンから言葉で頼む方法を案内しています。Googleスプレッドシートには、=AI() または =Gemini() でセルにAIの指示を書くAI関数があります。使えるのは、Google WorkspaceのBusiness Standard以上などの対象のプランです(Business Starterは対象外)。
会社の顧客名簿や売上のデータをAIに入れても大丈夫ですか?
個人情報保護委員会は、個人情報を含むプロンプトを入れるときは、利用目的の範囲内かを十分に確かめるよう求めています。本人の同意なく個人データを入れるなら、サービスの事業者が機械学習に使わないことなどを確かめる必要があります。この記事のプロンプトは、列の形と架空の見本だけを渡す形にしています。Excelの中のAIはブックの中身を読むため、使ってよいデータを、契約しているプランのデータの扱いと社内のルールで先に決めてください。
AIが作った式やマクロが間違っていたら、どうすればよいですか?
MicrosoftとOpenAIのページには、AIの答えには誤りが含まれることがあり、使う前に確かめるよう書かれています。Anthropicのページも、人が確かめずに最終の成果物に使うことはすすめていません。まずブックを複製して試し、数件の検算と、行数・合計金額の照合をしてから本番に使います。違っていたら、どの行がどう違うかをAIに伝えて直させます。ExcelのCopilotで保存した変更は、アクセス権のある全員に見えるとされているため、共有のブックでは特に注意してください。
VBAのマクロもAIに作らせられますか?
コードの案を作らせることはできます。ただし、Claude for ExcelはマクロとVBAの操作に対応していません。ChatGPT for Excelも、VBAやマクロに完全には対応しない場合があると、OpenAIのページに書かれています。チャットのAIにコード案と説明を出させ、複製したブックで自分で動かして確かめる使い方が確実です(用途18・19)。
どの用途から始めればよいですか?
毎月決まって時間がかかる作業から始めると、効果を確かめやすくなります。中身の数字を渡さずに試せる用途1(集計の式)、用途2(式の説明)、用途8(CSVを整える)がおすすめです。1つの表でうまくいったら、用途20で手順書に残し、ほかの社員と同じやり方にそろえます。


PDF・11ページ/3項目の入力ですぐに読めます