はじめに|引き継ぎ書は、退職・異動・休みのたびに要る
引き継ぎ書というと退職のときの書類と思われがちです。けれども社員が仕事を離れる場面は、退職と異動だけではありません。国の調査では、年次有給休暇の取得日数も、男性の育児休業の取得率も、前回の調査より上がっています。
| 場面 | 国の数字 | 引き継ぎで起きること |
|---|---|---|
| 退職 | 2025年の離職率は13.7%、離職者は705万2,600人(厚生労働省 令和7年雇用動向調査。常用労働者5人以上の事業所) | 最終出社日のあとは、本人に聞けなくなる |
| 育児休業 | 取得した人の割合は男性50.9%(前回40.5%)、女性88.3%。男性の取得期間は「1か月〜3か月未満」30.3%が最も多く、「2週間〜1か月未満」28.0%が続く(厚生労働省 令和7年度雇用均等基本調査) | 数週間から数か月、仕事が別の人に移り、戻るときにもう一度引き継ぐ |
| 介護 | 介護をしながら働く人は364.6万人(総務省 令和4年就業構造基本調査)。介護休業は対象家族1人につき3回、通算93日まで | 休みが何回かに分かれ、同じ引き継ぎを繰り返す |
| 年次有給休暇 | 2024年に1人が取った日数は平均12.1日、取得率66.9%で、ともに1984年以降で最も多く・高い。従業員30〜99人の企業では11.3日(厚生労働省 令和7年就労条件総合調査) | 1日〜数日の不在のたびに、進行中の案件が止まる |
休みは、会社の努力で減らすものでもありません。2019年4月から、年次有給休暇が年10日以上ある社員に年5日を取らせることは会社の義務で、違反には30万円以下の罰金があります。2025年4月からは育児・介護休業法の改正で、子の看護等休暇の対象が小学校3年生修了までに広がりました。介護に直面したと申し出た社員には、会社が制度を個別に知らせて意向を確かめることも義務になりました。
引き継ぎ書は、辞めるときに一度だけ書く書類ではなく、休みのたびに出し入れする書類です。属人化した仕事が休み・退職・承継の場面で表に出る話は、属人化にメリットはある?で数字とともに解説しています。
引き継ぎ書の項目テンプレート(10項目)
手本にした各社の項目をまとめ、中小企業の1人の担当者が受け持つ仕事に合わせて10項目にしました。上から順に埋めます。いちばん上に「進行中の案件」を置くのは、後任が初日に動けるようにするためです。
| 項目 | 書くこと | 抜けやすい所 | AIに渡す材料 |
|---|---|---|---|
| 1. 基本情報 | 引き継ぐ人・受ける人・上司、引き継ぎの期間、最終日、この引き継ぎ書の置き場所 | 最終日のあとに聞きたいことが出たときの窓口 | (人が書く) |
| 2. 進行中の案件 | 案件ごとに、今の状態、次にやること、期限、相手と約束していること | 口頭で約束したこと、返事待ちの案件 | メール・チャットの履歴(用途4) |
| 3. 仕事の一覧と暦 | 毎日・毎週・毎月・年に数回の仕事と、その時期 | 決算、更新、棚卸しなど年に1〜2回の仕事 | 1年分の予定表、送ったメールの件名(用途1) |
| 4. 手順と操作 | 手順書があればその場所。なければ、仕事ごとの手順の要点 | 画面やファイルの名前 | 本人が話した内容の文字起こし(用途3) |
| 5. 判断の基準と理由 | 迷ったときに何を見て決めているか、なぜそうしているか、いつもと違うやり方をする相手 | 「状況に応じて」で済ませている所 | 聞き取りの録音(用途2)、日報(用途5) |
| 6. 関係者と連絡の決まり | 社内の部署・社外の取引先と、何の仕事で関わるか、連絡の手段と決まり | 担当替えの連絡が要る相手 | 本人のメモ(用途6) |
| 7. 過去のトラブルと対応 | 起きたこと、どう収めたか、再発を防ぐためにしていること | 小さなクレームや、やり直し | 日報・作業記録(用途5) |
| 8. 資料・データの置き場所 | フォルダの場所、台帳やファイルの名前、紙の書類の保管場所 | 本人のパソコンの中だけにあるファイル | (人が書く) |
| 9. アカウントと権限 | 使っているサービスやシステムの名前と、だれの名義か。パスワードは書かない | 本人の名義で契約しているサービス | (人が書く) |
| 10. 注意点 | 「これだけはしてはいけない」こと、期限を過ぎると困ること | ベテランが当たり前と思っていること | 聞き取りの録音(用途2) |
「終わっていない仕事を先頭に、順序と方法と意見を書く」という並びには、法令の例もあります。地方自治法施行令は、都道府県知事や市町村長が交代するときの引き継ぎを定めています。前任者は書類・帳簿・財産目録をそろえます。そのうえで、処分が終わっていない事項や手を付けていない事項について、処理の順序と方法、それに対する意見を書きます(第124条)。引き継ぎの期限も、知事は退職の日から30日以内、市町村長は20日以内です(第123条)。会社の引き継ぎでも、項目2には「次にやること」だけでなく、担当者の意見(このお客様は先に電話したほうがよい、など)まで書きます。
この記事の10の用途と、使う時期
退職・異動なら、最終出社日の2週間前から引き継ぎを始める日程の例です。休みの場合は、休みの長さに合わせて使う用途を選びます(用途10)。
| 時期 | 用途 | 使う人 |
|---|---|---|
| 1〜2日目 | 1. 担当している仕事を、暦つきで洗い出す | 担当者 |
| 1〜2日目 | 2. ベテランへの聞き取りの質問を作る | 上司・後任 |
| 3〜4日目 | 4. メール・チャットから、進行中の案件の一覧を作る | 担当者 |
| 3〜4日目 | 6. 関係者と連絡の決まりを表にする | 担当者 |
| 5日目 | 5. 日報・作業記録から、例外とトラブルを拾う | 担当者 |
| 5〜6日目 | 3. 話した内容から、引き継ぎ書の下書きを作る | 担当者 |
| 7日目 | 7. 後任の目で読ませて、手が止まる所を出させる | 担当者・上司 |
| 8日目 | 8. 後任が聞きそうな質問と答え(FAQ)を作る | 担当者 |
| 8〜13日目 | 9. 後任が1人でやってみる課題を作り、チェック表で受け取る | 後任・上司 |
| 最終日の前日 | 4をもう一度使い、進行中の案件だけを最新にする | 担当者 |
| 休みの前後 | 10. 休みの前の引き継ぎと、戻った日の1枚を作る | 担当者・代わりの人 |
プロンプトの使い方
- 〔 〕の部分を、自社の言葉や数字に置き換えてから貼ります
- 使うAIサービスは、会社として使ってよいと決めたものにします。決め方は生成AIの社内ルールの作り方で解説しています
- どのプロンプトにも「書かれていないことは書かない」「分からない所は〔要確認〕と書く」という一文を入れています。引き継ぎ書でAIがもっともらしく話を補うと、後任はそれを事実として受け取ってしまうからです
- AIが作った下書きは、担当者本人が元の材料と照らしてから、上司と後任に渡します
引き継ぎ書とAIに入れてはいけない情報
引き継ぎの材料(メール、日報、取引先のメモ)には、お客様や社員の個人情報が多く入っています。個人情報保護委員会は令和5年6月2日、生成AIサービスを使う事業者に向けて注意点を示しました。個人情報を含むプロンプトを入れるなら、利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確かめること。本人の同意なく個人データを入れるなら、サービスの事業者がそれを機械学習に使わないこと等を十分に確かめること、の2つです。
| 情報 | 引き継ぎ書に | AIに貼る前に |
|---|---|---|
| パスワード・暗証番号 | 書かない。会社で決めた方法で、上司から後任へ渡す | 貼らない |
| お客様・取引先の名前と連絡先 | 名前は書いてよい。連絡先は「顧客台帳を見る」と台帳の場所を書く | 「A社」「B様」に置き換え、電話番号・住所・メールアドレスは消す |
| 人の評価やうわさ | 書かない。「〇〇様は書面での連絡を希望」のように、仕事に要る事実だけ書く | 貼らない |
| 社員の健康や家庭の事情 | 書かない | 貼らない |
| まだ決まっていない口約束 | 「未確定」と分けて書き、決まったかどうかを上司が確かめる | 置き換えたうえで貼ってよい |
用途1. 担当している仕事を、暦つきで洗い出す【担当者】
こんな課題を解決
「自分の仕事を全部書き出して」と言われても、思い出せるのは毎日の仕事だけです。決算の資料づくり、保険や契約の更新、年に1回の棚卸しのように、たまにしか来ない仕事ほど抜けます。そして後任がそれに気づくのは、期限を過ぎてからです。
どう解決したか
記憶ではなく記録から洗い出します。担当者の1年分の予定表と、送ったメールの件名の一覧をAIに渡し、仕事の名前・頻度・時期の表にさせます。担当者は表を見て、抜けている仕事を足します。
ポイント
- 材料は3か月分より1年分です。年に1回の仕事は、1年分を見ないと出てきません
- 件名の一覧は、メールソフトの送信済みフォルダから件名だけを書き出せば足ります。本文まで貼る必要はありません
- できた表は、テンプレートの項目3「仕事の一覧と暦」になります。来月・再来月に来る仕事には印を付け、用途9の課題にします
用途2. ベテランへの聞き取りの質問を作る【上司・後任】
こんな課題を解決
長く同じ仕事をしてきた人ほど、自分の判断を説明できません。体で覚えているので、何が当たり前で、何が工夫なのかの区別がつかないからです。「何か伝えておくことはありますか?」と聞いても、「特にないです」で終わります。
どう解決したか
聞く側が質問を用意します。下の12の質問を型にして、用途1の仕事の一覧ごとに、AIに質問を作らせます。聞き取りは1回30分ほどに区切り、本人の了承を得て録音します。録音は用途3で引き継ぎ書の下書きに変えます。
| 質問 | 引き出したいこと(テンプレートの項目) |
|---|---|
| 今、途中になっている仕事は何ですか。あと何をすれば終わりますか | 進行中の案件(2) |
| お客様や取引先と、口頭で約束していることはありますか | 進行中の案件(2) |
| 毎月・毎年、決まった時期にだけやる仕事はありますか | 仕事の一覧と暦(3) |
| この仕事で迷ったとき、何を見て決めていますか | 判断の基準と理由(5) |
| いつもと違うやり方をしているお客様や商品はありますか。それはなぜですか | 判断の基準と理由(5) |
| これまでにいちばん困ったトラブルは何で、どう収めましたか | 過去のトラブルと対応(7) |
| だれに先に伝えないと、話がこじれる相手はいますか | 関係者と連絡の決まり(6) |
| 使っている画面・ファイル・道具はどれで、どこにありますか | 資料・データの置き場所(8) |
| 自分の名前で登録しているサービスや、自分しか入れない画面はありますか | アカウントと権限(9) |
| 「これだけはやってはいけない」ことは何ですか | 注意点(10) |
| 後任がいちばんつまずきそうなのは、どこだと思いますか | 注意点(10) |
| やめてもよい、減らしてもよいと思っている仕事はありますか | 社長・上司が判断する材料 |
ポイント
- 聞き手は後任がいちばんよい役です。分からない所をその場で聞き返せるからです。後任が決まっていなければ上司が聞きます
- 「なぜ」を聞く質問が、判断の理由を引き出す鍵です。答えが「前からそうだから」なら、その仕事は見直しの候補として社長に上げます
- 最後の質問(やめてもよい仕事)の答えは、引き継ぎ書には入れず、社長・上司が判断する材料として別に残します
用途3. 話した内容から、引き継ぎ書の下書きを作る【担当者】
こんな課題を解決
担当者に「引き継ぎ書を書いて」と頼んでも、ふだんの仕事に追われて進みません。書けたとしても「請求書を作成し、送付する」のような手順の見出しだけになりがちです。どの台帳から数字を拾うか、締め日が違うのはどのお客様か、といった中身は、文章にする手間が大きいので省かれます。
どう解決したか
書くのをやめて、話してもらいます。用途2の聞き取りの録音か、担当者が後任に話しかけるつもりで1つの仕事を説明した録音を文字にし、AIにテンプレートの10項目へ振り分けさせます。足りない所は、AIに担当者への質問として出させます。
ポイント
- 録音を文字にすると、取引先の名前や社内の略語、数字が別の言葉に変わることがあります。固有名詞と数字は、担当者が必ず直します。文字起こしの進め方は議事録をAIで作るやり方で解説しています
- 1回の録音は1つの仕事にします。いくつもの仕事を続けて話すと、AIが手順を混ぜてしまうことがあります
- AIが出した質問に担当者が答え、その答えを足して作り直します。答えられない〔要確認〕は、用途2の聞き取りで上司か後任が聞きます
用途4. メール・チャットから、進行中の案件の一覧を作る【担当者】
こんな課題を解決
後任が初日に困るのは、手順よりも「今どうなっているか」です。見積を出して返事待ちの案件、お客様に「来週お電話します」と言ったままの案件。こうした途中の案件は、本人の頭とメールの中にしかありません。
どう解決したか
直近のメールとチャットのやりとりをAIに渡し、終わっていない案件を、状態・次にやること・期限・約束の表にさせます。どのやりとりから拾ったかも書かせ、後任が元のメールを開けるようにします。
ポイント
- 電話や立ち話で約束したことは、メールに残っていません。表を見ながら、担当者が口頭の約束を書き足します
- 最終出社日の前日に、同じプロンプトでもう一度作り、この表だけを最新にします。2週間のあいだに状態が変わった案件を、ここで拾えます
- 表の「次にやること」の横に、担当者の意見(先にこの人に電話したほうがよい、など)を一言足すと、後任が動きやすくなります
用途5. 日報・作業記録から、例外とトラブルを拾う【担当者】
こんな課題を解決
引き継ぎ書に書かれるのは、いつもの手順です。けれども後任が本当に困るのは、いつもと違うことが起きた日です。過去に同じことが起きて、前任者がどう収めたかが分かれば、後任は迷わずに済みます。
どう解決したか
担当者の過去の日報や作業記録をAIに渡し、例外の対応、トラブル、迷った所の3種類の記述だけを、元の文のまま抜き出させます。抜き出した文は、用途2の聞き取りで「このときはなぜこうしたのですか」と聞く材料にもなります。
ポイント
- 抜き出した文は、テンプレートの項目5「判断の基準と理由」と項目7「過去のトラブルと対応」の材料になります
- 〔理由:要確認〕が付いた所こそ、聞き取りで聞く価値があります。理由が分かれば、次からは後任が同じ判断をできます
- 日報が短く、材料にならない会社もあります。日報の形をそろえるところから始めるなら、日報×AI プロンプト&事例10選が使えます
用途6. 関係者と連絡の決まりを表にする【担当者】
こんな課題を解決
後任が取引先に電話して「前の方はいつもメールでしたよ」と言われる。見積を出したら「うちは部長あてにも送ってもらう決まりです」と返される。相手ごとの小さな決まりは、担当者が何年もかけて覚えたもので、どこにも書かれていません。
どう解決したか
担当者が、関わる相手ごとに思いつくことを箇条書きでメモし、AIに表の形へ整えさせます。連絡先そのものは表に入れず、顧客台帳の場所を書きます。
ポイント
- お客様への担当替えのあいさつを、だれが、いつ、どの順でするかは、社長か上司が決めます。大事なお客様には、前任者と後任がそろって伺う、といった判断です
- あいさつのメールの下書きはAIに頼めます。ただし送る前に、前任者が相手との関係に合った言葉かを確かめます
- 人柄の評価やうわさは表に書きません。「書面での連絡を希望」「午前中は電話がつながりにくい」のように、仕事に要る事実だけを残します
用途7. 後任の目で読ませて、手が止まる所を出させる【担当者・上司】
こんな課題を解決
書いた本人が読み返しても、引き継ぎ書の穴には気づけません。本人は中身を知っているので、書かれていないことを頭の中で補って読んでしまうからです。社内の略語や「いつもの所」といった言い方も、本人には当たり前に見えます。
どう解決したか
AIに、その仕事を初めてする後任の立場で引き継ぎ書を読ませ、手が止まる所を質問の形で出させます。AIには書き直させません。質問に担当者が答え、自分で書き足します。
ポイント
- 「書き直さない」と頼むのが大事です。AIが書き直すと、もっともらしい説明が足され、事実と違う文が入るおそれがあります
- AIの点検は、本物の後任が読む代わりにはなりません。後任が決まっているなら、AIの点検のあとに後任にも読んでもらいます
- 上司は、この段階で引き継ぎ書に目を通し、項目2の進行中の案件と、項目6の担当替えの連絡に漏れがないかを確かめます
用途8. 後任が聞きそうな質問と答え(FAQ)を作る【担当者】
こんな課題を解決
引き継ぎ書があっても、後任は最初の1か月、細かいことを何度も聞きたくなります。退職の場合、最終出社日のあとは、その質問に答える人がいなくなります。
どう解決したか
引き継ぎ書をAIに読ませ、後任が聞きそうな質問と答えを作らせます。答えは引き継ぎ書に書かれていることだけで書かせ、答えのない質問は「担当者に確認」と印を付けさせます。その印が、引き継ぎ期間のうちに埋める穴です。
ポイント
- 〔担当者に確認〕の質問は、最終日までに担当者が答え、引き継ぎ書の本文にも書き足します
- できたFAQは、引き継ぎ書の最後に付けます。後任が実際に聞いた質問も足していくと、次にその仕事を引き継ぐ人の材料になります
- 同じ質問が何度も出る手順は、引き継ぎ書ではなく手順書に移します。手順書の作り方はマニュアル作成にAIを使う方法で解説しています
用途9. 後任が1人でやってみる課題を作り、チェック表で受け取る【後任・上司】
こんな課題を解決
引き継ぎ書を受け取り、説明も聞いた。それでも、最終日のあとに1人でやってみると手が止まる。たとえば月末の請求書です。「売上台帳から転記」と読んで分かったつもりでも、どのファイルのどの列を写すのかで止まります。前任者の画面では見えていた共有フォルダに、自分は入れないこともあります。
どう解決したか
前任者がいるうちに、後任が1人でやってみる課題の一覧をAIに作らせます。実物がある仕事は前任者の横で実際にやり、期間中に実物が来ない年に数回の仕事は、手順の読み合わせにします。最後に、後任と上司が下のチェック表で受け取りを確かめます。
| 確かめること | 確かめ方 |
|---|---|
| 進行中の案件すべてに、次にやることと期限がある | 用途4の表を、前任者と1件ずつ読み合わせる |
| 来月・再来月に来る仕事が、自分の予定表に入っている | 用途1の暦と、自分の予定表を突き合わせる |
| 毎日・毎週の仕事を、前任者の横で1回ずつ自分でやった | 用途9の課題の一覧に、日付と前任者の確認を残す |
| 年に数回の仕事の手順を、読み合わせた | 手順書か引き継ぎ書の該当する所に、読み合わせた日を書く |
| 迷ったときの判断の基準と、聞く相手が分かる | 項目5を読み、分からない所を前任者に聞いた |
| 担当替えの連絡が、要る相手すべてに済んでいる(だれが、いつ) | 用途6の表の「担当替えの連絡」の列に、済んだ日を書く |
| 使うアカウントと権限が自分に付いている | 実際にログインし、必要な画面を開く。パスワードは会社で決めた方法で受け取る |
| 資料とデータを、自分で開ける | 項目8の場所を1つずつ開く。前任者のパソコンの中だけにあるファイルがない |
| 〔要確認〕〔担当者に確認〕が残っていない | 引き継ぎ書とFAQを文字で検索する |
| 最終日のあとに分からないことが出たときの窓口が決まっている | 項目1に、上司の名前と聞き方を書く |
ポイント
- 課題は「読む」ではなく「やる」にします。やってみて止まった所が、引き継ぎ書に足りない所です
- チェック表の最後は、上司が後任と一緒に確かめ、引き継ぎを受け取ったことを確認します。引き継ぎの終わりを決めるのは上司です
- 引き継ぎ書は後任に渡して終わりではありません。後任が直しながら使い、次の引き継ぎのときの下書きにします
用途10. 休みの前の引き継ぎと、戻った日の1枚を作る【担当者・代わりの人】
こんな課題を解決
休みの引き継ぎには、退職にはない難しさがあります。出るときに渡し、戻るときにもう一度受け取る、往復の引き継ぎになることです。育休や介護休業で数週間から数か月離れると、戻った人は、休みの間に何が起き、代わりの人が何を決めたのかが分かりません。介護休業は3回まで分けて取れるので、同じ往復が何度か起きます。
どう解決したか
休みの長さで、作るものを変えます。1日〜数日の年次有給休暇なら、用途4の進行中の案件の一覧と、用途6の連絡の決まりだけで足ります。数週間以上の育休や介護休業なら、10項目の引き継ぎ書を作ります。そして戻る日には、代わりの人の対応の記録から、戻った人が読む1枚をAIに作らせます。
ポイント
- 代わりの人には、休みの間「何を、なぜそうしたか」を短く記録してもらいます。この記録がないと、戻った日の1枚は作れません
- 休みに入る前の引き継ぎ書は、捨てずに取っておきます。次の休みのときは、進行中の案件と変わった所だけを直せば使えます
- 休みに入る人の健康や家庭の事情は、引き継ぎ書にもAIにも入れません。引き継ぎ書に書くのは、休みの期間と、戻る予定の日だけです
シス学の場合|引き継ぎ書を「いつでも渡せる」形で持っておく
シス学(システム経営学)は、AIエージェントを活用し、会社を「儲かるシステム」につくり変える経営学です。引き継ぎ書づくりに当てはめると、仕事を次のように分けます。
| 任せ先 | 受け持つ仕事 | 引き継ぎ書での中身 |
|---|---|---|
| AI | 作業 | 予定表・メール・日報・録音から、仕事の一覧、進行中の案件の表、引き継ぎ書の下書き、FAQを作る。後任の目で穴を指摘する |
| 社員(担当者・後任・上司) | 確認 | 担当者が事実と数字を直す。後任が1人でやってみて確かめる。上司がチェック表で受け取る |
| 社長 | 判断 | だれに引き継ぐか、大事なお客様へのあいさつをどうするか、聞き取りで出た「やめてもよい仕事」をやめるかを決める |
シス学が目指す3つのシのうち、引き継ぎ書は「承継価値の向上」に近い仕事です。社長の判断と勝ちパターンを言葉と仕組みに残すことは、社員一人ひとりの仕事でも同じです。引き継ぎ書を毎回ゼロから作る必要はありません。手順は手順書へ、案件は案件の台帳へ、判断の理由は引き継ぎ書の項目5へと、ふだんから置き場所を決めておきます。そうすれば次の引き継ぎは、変わった所を直すだけで済みます。
社員ではなく社長自身の仕事を渡す準備は、事業承継の準備はいつから何を?で別に解説しています。属人化した仕事全体をほどく順番は、属人化を解消するには?にまとめています。
シス学 AIコンサルティングでは、どの仕事の引き継ぎ書から作るかを決め、この記事のようなプロンプトを自社の仕事に合わせて作ります。手順書や台帳への置き場所まで一緒に整えます。料金は、対象の業務と体制をお聞きしたうえで、無料相談でご案内します。まずは30分の無料相談からご相談ください。
まとめ|10の用途に共通する4つのポイント
- 終わっていない仕事を先頭に置く:後任が初日に要るのは、手順より「今どうなっているか」です。進行中の案件の表は、最終日の前日にもう一度作り直します
- 材料は記録から出し、AIに推測させない:予定表、メール、日報、録音という材料があって、はじめてAIは形に整えられます。どのプロンプトにも「書かれていないことは書かない」「〔要確認〕」を入れます
- 判断の理由を残す:手順はたいてい書かれます。抜けるのは「なぜそうしているか」です。聞き取りでは、どの仕事にも「なぜ」を1つ聞きます
- 受け取りは、後任がやってみて確かめる:読んで分かったつもりでは、最終日のあとに止まります。1人でやってみる課題とチェック表で、上司が受け取りを確かめます
最初の1歩は、社内で「この人が来週1週間休んだら困る」という社員を1人選ぶことです。用途4のプロンプトで、その人の直近1か月のメールから進行中の案件の表を作ってみます。表に〔要確認〕がいくつ並ぶかで、その仕事がどれだけ1人の頭の中にあるかが見えます。だれのどの仕事から始めるかを決めるには、業務の棚卸しのやり方が使えます。
よくある質問
引き継ぎ書とマニュアル(手順書)の違いは何ですか?
マニュアルは、だれがやっても同じ結果になるように、仕事の手順を書いたものです。引き継ぎ書は、その人がその時点で受け持っている仕事の状態を渡すもので、進行中の案件、相手との約束、関係者との決まり、判断の理由が中心です。手順の部分は、引き継ぎ書に書いたあと手順書に移しておくと、次の引き継ぎが楽になります。
引き継ぎ書は、どのくらいの量を書けばよいですか?
量よりも、10項目のうち「進行中の案件」「仕事の一覧と暦」「判断の基準と理由」が埋まっているかで見ます。手順は、手順書があればその場所を書くだけで構いません。後任の目で読ませる点検(用途7)で、手が止まる所が出なくなれば十分です。
引き継ぎ書の材料を、AIに入れても大丈夫ですか?
会社として使ってよいと決めたAIサービスを使い、お客様の名前は「A社」などに置き換え、連絡先は消してから貼ります。パスワード、人の評価、社員の健康や家庭の事情は貼りません。個人情報保護委員会は、本人の同意なく個人データを入れるなら、サービスの事業者がそれを機械学習に使わないこと等を十分に確かめるよう求めています。
後任が決まっていないまま、担当者が辞めることになりました。どうすればよいですか?
まず上司が受け取り手になり、用途2の聞き取りをします。引き継ぎ書ができたら、AIに初めての後任の立場で読ませて点検し(用途7)、後任が聞きそうな質問と答えも作っておきます(用途8)。あとから来る人が最初の1か月に迷う所を、前任者がいるうちに埋められます。最終日のあとの窓口は上司にしておきます。
育休や介護休業に入る社員の引き継ぎは、いつから始めればよいですか?
休みに入る日が分かった時点で、用途1の仕事の洗い出しと、用途4の進行中の案件の表から始めます。介護休業は対象家族1人につき3回まで分けて取れるため、引き継ぎ書は一度で捨てず、進行中の案件と変わった所だけを直して使い回せるようにします。戻る日には、用途10の休み明けの1枚を用意します。
無料のAIサービスでも、引き継ぎ書は作れますか?
文章を扱える生成AIのサービスなら、この記事のプロンプトは使えます。ただし無料かどうかより先に、入力した内容がどう扱われるか(学習に使われるか)を利用規約とプライバシーポリシーで確かめ、会社として使ってよいサービスを決めます。お客様の情報が多い仕事では、その確認がとくに大事です。



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