はじめに|資料作成でAIに任せる工程と、人が確かめる工程
中小企業庁は、2026年版中小企業白書の概要の資料でAIの活用を取り上げています。2019年以降の省力化の投資でAIの活用に「取り組んだ」中小企業は、30.3%(回答5,645の事業者)でした。取り組んだ事業者に部門ごとの状況を聞くと、「活用している」はバックオフィス部門で73.4%、営業・販売・顧客対応部門で68.2%です。提案書や報告書、会議資料を多く作るのは、この2つの部門です。
一方、取り組んでいない事業者の理由で最も多いのは「活用する業務がイメージできていない」(63.4%)でした。この記事は、資料作成という1つの仕事に絞り、使う場面を15に分けて具体的に示します。
資料作成の4つの工程と、任せ方
| 工程 | AIに任せる作業 | 社員が確かめること | 社長が決めること |
|---|---|---|---|
| 1. 構成 | 聞く項目、話の筋、ページごとの見出しの案を出す | 読み手(お客様・社内)に合っているか | 何をいちばん伝えるか(提案の柱) |
| 2. 下書き | 見出しごとの本文、言い換え、要約 | 事実・数字・固有名詞が元の資料と合うか | 出してよい表現か(約束・言い過ぎ) |
| 3. 図表のたたき台 | 図にする所、図の形、グラフの種類、表の項目 | 元の数字と合うか、誤解を生まないか | 社外に見せる数字と比べ方 |
| 4. 確認 | 数字・言い過ぎ・抜けの点検の一覧を出す | 一覧の項目を元の資料で確かめる | 出すかどうか、金額と条件 |
金額、納期、効果の数字は、AIに作らせません。15のプロンプトでは、こうした数字を〔 〕のまま空けさせ、担当者が見積書や記録から入れる形にしています。
プロンプトの使い方
- 〔 〕の中を、自社の内容に置き換えてから貼り付けます
- 答えの形(項目の順番、文字数、表にするか)を決めておくと、毎回同じ形で返ってきます
- どのプロンプトにも「書いていないことは推測せず『要確認』と書く」と入れています。15に共通する書き方は、最後の「まとめ」に6つに整理しました
入れてはいけない情報
個人情報保護委員会は、令和5年6月2日の「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」で、事業者向けに次の2つの注意点を挙げています。
- 個人情報を含むプロンプトを入れるときは、その個人情報の利用目的を達成するのに必要な範囲内かを、十分に確かめる
- 本人の同意なく個人データを入れ、それが答えの出力以外の目的で扱われると、個人情報保護法に違反する可能性がある。入れるなら、サービスを提供する事業者がそのデータを機械学習に使わないことなどを、十分に確かめる
同じ資料は、一般の利用者向けに、答えに不正確な内容が含まれることがあること、利用規約やプライバシーポリシーなどを十分に確かめることも挙げています。資料作成では、お客様の名前を「A社」「担当者B様」に置き換え、金額の内訳や社内の非公開の数字は、入れてよいツールかを先に決めてから扱います。決め方は生成AIの社内ルールの作り方で解説しています。
AIが作った図や画像、他社の資料を使うとき
文化庁の「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日)は、業務でAIを使う人に向けて、次の点を挙げています。
- 著作権の侵害になるには、既存の著作物との「類似性」と「依拠性」の両方が必要。AIの生成物を使う前に、まず既存の著作物と似ていないかを確かめる(インターネットの文章検索・画像検索の活用など)
- 既存の著作物そのものや、作品の題名・キャラクター名などをプロンプトに入れると、依拠性が認められやすくなると考えられる
- 依拠性がないことを説明できるよう、生成に使ったプロンプトなど、生成の過程を確かめられる状態にしておくよう努める
- 既存の著作物をAIに入れることは、原則として著作権法第30条の4が適用されると考えられる。ただし「入れた著作物と似たものを作らせる」目的で入れる場合は、適用されないことがあり、そのときは権利者の許諾が必要
実務では、次の3つを社内で決めておきます。
- 他社の提案書やイラストを貼って「これと同じように作って」と頼まない
- 社外に出す資料の図や画像は、画像検索で似たものがないかを確かめる
- 使ったプロンプトを、資料と同じフォルダに残す
スライドを作る機能を使う場合(2026年10月23日に公式ページで確認)
文章で答えるチャットのAIのほかに、スライドの形で下書きを作る機能もあります。代表的な2つについて、各社の公式ページに書かれていることは次のとおりです。どれを使うかは、社内で使ってよいツールと契約に合わせて決めます。
| 機能 | 公式ページに書かれていること | 使うのに必要なもの(公式の記載) |
|---|---|---|
| PowerPointのCopilot(Microsoft サポート) | 伝えたい内容を入力すると、最初の下書きを作る。テンプレート(.potx)を開いてから作成を頼める。Word文書から下書きを作る。スライドや画像の追加、デザインの変更、要約もできる | 対象となるMicrosoft 365サブスクリプションまたはMicrosoft Copilotライセンス(有料の「Microsoft 365 Copilot」の新しい名前)。Word文書からの作成は、Microsoft Copilot(職場)ライセンス |
| Googleスライドの Gemini(Google Workspace 公式ブログ 2026年7月29日、Google Workspace Updates 2026年6月30日) | 説明と参照ファイル(Googleドキュメント、スプレッドシート、PDF、以前の資料など)から作る。既存の資料を選ぶとそのスタイルに合わせる。作る前に構成案を示し、確認・修正してから作らせられる。作ったスライドはすべて編集できる | Google WorkspaceのBusiness Standard、Business Plus、Enterprise Standard、Enterprise Plus、またはGoogle AI Pro・AI Ultra(Business Starterは一覧にない)。提供開始時の対応言語は英語(米国)のみ |
Microsoftのヘルプは、生成される情報を必ず確認し、検証するよう書いています。スライドの形で出てきても、確かめる中身(数字、固有名詞、約束になる表現)は同じです。この記事の用途2・3のプロンプトは、こうした機能への指示の文としても使えます。
Copilotを使うのに今の契約へ何を足せばよいか、無料のCopilot Chatとの違いは、Copilotの導入費用と進め方で解説しています。Googleスライドの機能は、日本語で使えるようになったかを、使う前に公式の案内で確かめてください。
見積書・事業計画書・議事録は、別の記事で
- 見積書×AI:過去の見積と単価表から明細の下書きを作り、数量と条件を確かめる
- 事業計画書×AI:融資や補助金の申請に出す事業計画書の作り方
- 議事録×AI:会議のあとに、決まったことと宿題をまとめる
- 部署別のプロンプト集:営業・経理・総務・人事・現場・社長の15の用途(提案書の基本の構成案は用途2)
用途1【提案書】訪問の前に、お客様に聞くことの一覧を作る
こんな課題を解決
提案書を書き始めてから「予算」「決める人」「いつまでに」が分からないことに気づき、聞き直しになります。聞く項目が担当者ごとにばらばらで、提案書の出来も人によって変わります。
どう解決したか
商談の前に、お客様の業種と自社の商品を伝え、提案書を書くのに必要な質問の一覧を作らせます。質問ごとに「答えを提案書のどのページに使うか」を添えさせるので、聞き漏れがそのまま提案書の穴になることが、訪問の前に見えます。
ポイント
- 聞く順番と言い回しは、提案の通りがよい営業担当が読んで直す
- 訪問のあと、聞けなかった質問に印を付け、次の連絡で確かめる
- どのお客様に時間をかけるかは、社長と営業の責任者が決める
- 営業の仕事ごとの任せ方はシス学 AI営業で紹介しています
用途2【提案書】聞いた内容から、提案の筋を3つ出して比べる
こんな課題を解決
提案書がいつも「会社紹介→商品説明→料金」の順になり、お客様の困りごとから話が始まりません。どの順番がよいか迷っているうちに、時間が過ぎます。
どう解決したか
ヒアリングのメモを渡し、話の筋が違う構成案を3つ出させ、それぞれ「向くお客様」と「弱い所」を書かせます。AIは案を並べるだけで、選ぶのは人です。構成案を1つだけ作る基本のプロンプトは、部署別のプロンプト集の用途2にあります。
ポイント
- 3つの案から選ぶのは、お客様に会った営業担当
- 選んだ案と、選んだ理由を一言残しておくと、次の似たお客様で使える
- 値引きや特別な条件を提案に入れるかは、社長が決める
用途3【提案書】ページごとの下書きを「見出し1行+本文3行」で作る
こんな課題を解決
1ページに文字を詰め込み、読まれません。逆に、単語だけの箇条書きで、何を言いたいページなのかが伝わらないこともあります。
どう解決したか
用途2で選んだ構成案と商品の説明を渡し、1ページに言いたいことを1つに絞った「見出し(言い切りの文)+本文3行+入れる図の案」で下書きを作らせます。見出しを言い切りの文にすると、見出しだけを続けて読めば話の筋が分かります。
ポイント
- 書いてあることが、自社の商品で本当にできることかを営業担当が確かめる
- 〔 〕の金額・納期・効果は担当が見積書や記録から入れ、金額と条件は社長が決める
- スライドを作る機能を使う場合も、この見出しと本文を指示に貼り付けて使える
用途4【提案書】お客様から出そうな質問と、答えの案を用意する
こんな課題を解決
提案の場で「ほかより高いのでは」「今のやり方で困っていない」と言われ、答えに詰まります。同じ質問への答え方が、担当者ごとに違います。
どう解決したか
仕上がりに近い提案書を渡し、まずお客様の立場で質問や反対の意見を挙げさせ、次に営業の立場で答えの案を書かせます。答えには社内で決まっていることだけを使わせ、決まっていないことは「社内で確認」と出させます。
ポイント
- 答えの案は営業の責任者が読み、言い過ぎや約束になっていないかを確かめる
- 「社内で確認」が出た項目は、社内で決めて提案書や説明資料に足す
- 値引きで応じるかどうかは、社長が決める
用途5【社内報告】プロジェクトの進み具合を、1枚の報告にまとめる
こんな課題を解決
進み具合の報告が長く、何が遅れていて、社長に何を決めてほしいのかが伝わりません。報告を書くのに、担当者が半日かけています。
どう解決したか
担当者のメモと作業の一覧を渡し、「結論→予定との差→理由→打てる手→決めてほしいこと」の順で1枚にまとめさせます。月ごとの数字の報告は部署別のプロンプト集の用途6で扱っています。
ポイント
- 表の日付と日数を、担当者が元の作業の一覧と照らして確かめる
- 打てる手のうちどれを取るかは、社長が決める
- 毎回同じ順番で出すと、社長は①と⑤から読めば足りるようになる
用途6【社内報告】社内の決裁をもらう企画書・稟議書の下書きを作る
こんな課題を解決
新しい道具を買う、仕事のやり方を変える、といった社内の企画を通す書類が書けず、話が止まります。必要な項目が抜けて、差し戻されることもあります。
どう解決したか
やりたいことを箇条書きで渡し、決裁する人が判断に使う項目(目的、今の困りごと、案、ほかの案との比べ、費用、効果の確かめ方、心配な点)の順で下書きにさせます。「やらない」を含めたほかの案と並べさせると、比べて決めやすくなります。融資や補助金に出す事業計画書は事業計画書×AIで扱います。
ポイント
- 費用は見積書から、効果の数字は自社の記録から、担当者が入れる
- ④の比べ方が一方に寄っていないかを、上司が確かめる
- やるかどうかは、決裁する人(社長)が決める
用途7【会議資料】会議の前に配る1枚(目的・議題・決めること)を作る
こんな課題を解決
会議の目的がはっきりせず、話が広がって時間が延びます。決めることが決まらないまま、次の会議に持ち越されます。
どう解決したか
議題の候補と前回の宿題を渡し、目的、決めること、議題ごとの時間、事前に読んでほしいことを1枚にさせます。決めることが多すぎるときは、優先する3つと次回に回す案に分けさせます。会議のあとの記録は議事録×AIで扱っています。
ポイント
- 前回の宿題の状況は、担当者に確かめてから書き入れる
- 決めることと決める人は、会議を開く人(社長や部門の責任者)が確かめる
- 次回に回す案をそのまま回すかどうかは、会議を開く人が決める
用途8【会議資料】長い資料を、会議で読む1枚の要約にする
こんな課題を解決
取引先の資料や業界の報告書、社内の長い報告が配られても、会議の前に読み切れません。読んだ人と読んでいない人で、話がかみ合いません。
どう解決したか
元の資料を渡し、結論と自社に関係する所を、元のページや見出しを添えて1枚にまとめさせます。元のページが書いてあるので、気になる所だけ元の資料を開いて確かめられます。
ポイント
- 数字と元のページを、担当者が元の資料で確かめる
- 取引先から受け取った資料は、AIに入れてよいかを、秘密保持の約束と社内のルールで先に確かめる
- 要約をもとに何を決めるかは、会議を開く人が決める
用途9【説明資料】専門用語の多い説明を、お客様向けにやさしく書き直す
こんな課題を解決
社内で使っている言葉のまま説明資料を作り、お客様に伝わりません。同じことを聞く電話が何度もかかってきます。
どう解決したか
社内向けの説明と、読む人(年代や知識の程度)を渡し、言い換えた説明と、言い換えた言葉の一覧を作らせます。一覧があるので、言い換えで意味が変わっていないかを1語ずつ確かめられます。
ポイント
- 言い換えで意味が変わっていないかを、その分野に詳しい社員が一覧で確かめる
- 保証・料金・解約などの条件は、契約書や約款の文言と合っているかを確かめる
- お客様に何を約束するかは、社長が決める
用途10【説明資料】プランや商品の違いを比べる表のたたき台を作る
こんな課題を解決
商品やプランの違いを口で説明していて、担当者によって説明が違います。比べる表を作ろうとしても、何を並べればよいかが決まりません。
どう解決したか
商品ごとの仕様書やパンフレットの文章を渡し、お客様が選ぶときに比べる項目を挙げさせて、表のたたき台を作らせます。資料にない欄は空欄のまま「要確認」と残させ、推測で埋めさせません。
ポイント
- 料金、税込・税別、条件を、担当者が最新の料金表で確かめる
- 他社の商品と並べる場合は、他社の公式の情報で確かめられた項目だけにし、他社を悪く書かない
- どのプランを勧めるかの方針は、社長が決める
用途11【研修資料】研修の時間割と、各回で教えることを決める
こんな課題を解決
新人や現場の社員向けの研修を、教える人の頭の中の順番で行っていて、回によって中身が違います。教える側の準備にも時間がかかります。
どう解決したか
教えたい業務、受講者の様子、使える時間を渡し、「終わったときにできるようになること」から逆にたどって、回ごとの目標・教えること・練習・確かめ方を表にさせます。手順書そのものの作り方はマニュアル作成にAIを使う方法で解説しています。
ポイント
- 中身が今の社内のやり方と合っているかを、教える社員が確かめる
- 練習の題材にお客様の実際のデータを使うときは、名前や連絡先を置き換える
- 誰を受講者にするか、業務時間の中で行うかは、社長が決める
用途12【研修資料】教えた内容から、理解を確かめる問題を作る
こんな課題を解決
研修のあと、分かったかどうかを確かめないまま現場に出し、同じ間違いが続きます。
どう解決したか
研修資料や手順書を渡し、言葉を覚えたかを問う問題だけでなく、「この場面ならどうするか」を問う問題も作らせます。正解の根拠が資料のどこにあるかを書かせるので、正解の確認がすぐにできます。
ポイント
- 正解が今の手順と合っているかを、教える社員が確かめる
- 間違いが多かった問題は、研修資料や手順書の書き方を直す合図にする
- 合格の基準と、現場に出す時期は、上司と社長が決める
用途13【図表】文章の資料から、図にする所と図の形を決める
こんな課題を解決
文章ばかりの資料になり、読み手が要点をつかめません。図を入れようとしても、どこを、どんな図にすればよいかが分かりません。
どう解決したか
下書きを渡し、図にすると伝わりやすい所と、図の形(流れ図・比較表・時間の流れ・関係図)、図に入れる言葉を書かせます。図そのものは、PowerPointなどで人が作るか、スライドを作る機能に指示として渡します。
ポイント
- 図に入れた言葉が本文と食い違っていないかを、担当者が確かめる
- 他社の図やイラストを貼って「同じように」と頼まない(理由は「はじめに」の著作権の項)
- お客様に出す図に数字を入れるときは、元の資料と照らして確かめる
用途14【図表】表の数字から、グラフの種類と言いたいことを決める
こんな課題を解決
Excelの数字をそのままグラフにして、何を言いたいグラフなのかが伝わりません。グラフの種類を毎回迷います。
どう解決したか
表の数字と、グラフで伝えたいことを渡し、グラフの種類、軸、目立たせる所、グラフの上に置く一言の案を出させます。誤解を生みやすい見せ方も挙げさせます。割合や増え方を計算した場合は、計算のしかたも書かせ、人が検算します。
ポイント
- 計算した数字は、担当者が元の表で検算する
- 売上や原価など経営の数字は、入れてよいツールかを先に確かめる
- どの数字を社外に見せるかは、社長が決める
用途15【確認】出す前に、数字・言い過ぎ・抜けを点検する一覧を作る
こんな課題を解決
数字の食い違いや、前に作った資料の会社名の残りに、送ったあとで気づきます。確かめる人によって、見る所が違います。
どう解決したか
仕上がった資料と元の資料を渡し、資料は直させずに「気になる所の一覧」だけを出させます。一覧の項目を、社員が元の資料で1つずつ確かめます。AIの点検は2人目の目として使い、AIが挙げなかった所も人が見ます。
ポイント
- 一覧の項目は社員が元の資料で確かめる。金額・日付・宛名は、AIが挙げなくても必ず人が見る
- 言い過ぎの表現を直すか残すかは、営業の責任者が決める
- 出すかどうか、最後の金額と条件は、社長が決める
シス学の場合|提案書づくりを「作業・確認・判断」に分けて、社員が回せる形にする
シス学(システム経営学)は、AIエージェントを活用し、会社を「儲かるシステム」につくり変える経営学です。手順と判断の基準を仕組みに移し、下書きや転記はAIが、確かめる仕事は社員が受け持ちます。
この記事の用途1〜4と用途15(提案書)に当てはめると、次のようになります。
| 任せ先 | 受け持つ仕事 | 提案書づくりでは |
|---|---|---|
| AI | 作業 | 聞く質問の一覧、構成案3つ、ページごとの下書き、出そうな質問と答えの案、点検の一覧を出す |
| 社員 | 確認 | お客様に合う構成を選び、商品でできること・数字・宛名を元の資料で確かめ、「要確認」の所を埋める |
| 社長 | 判断 | 提案の柱、金額と条件、値引きをするか、出すかどうかを決める |
社長に集まっていた提案書の下書きや手直しをAIと社員に渡し、社長の手元には判断を残します。社員が続けて使えるように、次の3つを決めておきます。
- 自社の「資料の約束事」を1枚にして、プロンプトと一緒に毎回貼る(作り方は下のまとめ)
- 確かめる人と項目を決める(提案書なら、営業担当が数字と宛名、営業の責任者が言い過ぎを見る)
- よく通った提案書の構成と、使ったプロンプトを手順書に残す
シス学 AI研修では、文書作成、資料の要約、データ集計、メール対応など、部署ごとの実務を題材にしたワークで練習します。社員が自分の仕事をAIで終わらせるところまでが目標です。研修のあとは、業務別の手順書と指示文の型、社内のAI利用ルールを整えます。
厚生労働省は、人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の令和8年8月3日からの変更点として、次の例を示しています(経過措置があります)。
- 助成の対象:生成AIで商品提案書の構成案づくり、文章の生成、修正のしかたを学ぶ、営業担当者向けの訓練(営業担当者の具体的な業務に直結しているため)
- 助成の対象外:生成AIを使うための汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練(特定の業務への具体的な適用を伴わないため)
シス学 AI研修は受講者の職務に合わせた内容で組むため、助成金の対象となる場合があります。使うときは、次の点に気をつけてください。
- 対象になるかどうかは労働局の審査で決まり、受給を保証するものではありません
- 対象は、雇用保険の被保険者である社員です
- 計画届は、研修を始める日の6か月前から1か月前までに出します
- 受講料は、いったん全額を会社が支払います。シス学は、助成金を使うかどうかで受講料を変えません
- このコースは、令和8年度末までの時限措置です
くわしくはAI研修に使える助成金で解説しています。料金は、対象の業務と体制をお聞きしたうえで、無料相談でご案内します。まずは30分の無料相談から。全国オンラインで対応します。
まとめ|15のプロンプトに共通すること
| 資料 | 用途 | AIに任せる作業 | 人が確かめ・決めること |
|---|---|---|---|
| 提案書 | 1. 聞くことの一覧 | 質問と、使うページ | 聞き方を直す・時間をかけるお客様(社長) |
| 提案書 | 2. 筋を3つ | 構成案3つと向き・弱み | 選ぶのは営業担当 |
| 提案書 | 3. ページごとの下書き | 見出し1行+本文3行 | できること・金額と条件(社長) |
| 提案書 | 4. 質問と答え | 質問10個と答えの案 | 言い過ぎ・値引き(社長) |
| 社内報告 | 5. 進み具合の報告 | 結論から1枚に | 日付の照合・打つ手(社長) |
| 社内報告 | 6. 企画書・稟議書 | 決裁の項目順の下書き | 費用と効果の数字・やるか(社長) |
| 会議資料 | 7. 会議の前の1枚 | 目的・決めること・時間 | 宿題の状況・回す案 |
| 会議資料 | 8. 長い資料の要約 | 結論と元のページ | 数字の照合・入れてよい資料か |
| 説明資料 | 9. やさしい言い換え | 言い換えと語の一覧 | 意味のずれ・約束(社長) |
| 説明資料 | 10. 比べる表 | 比べる項目と表 | 料金と条件・勧め方(社長) |
| 研修資料 | 11. 研修の時間割 | 回ごとの目標と練習 | 今のやり方と合うか・受講者(社長) |
| 研修資料 | 12. 確かめる問題 | 問題・正解・根拠 | 正解の確認・合格の基準 |
| 図表 | 13. 図にする所 | 図の形と図の言葉 | 本文との食い違い |
| 図表 | 14. グラフ | 種類・軸・一言 | 検算・社外に見せる数字(社長) |
| 確認 | 15. 出す前の点検 | 気になる所の一覧 | 元の資料で確かめる・出すか(社長) |
- 工程を分ける:構成→下書き→図表→確認と、1回に1つの工程だけを頼む
- 材料は人が用意する:ヒアリングのメモ、商品の説明、手順書など、確かめた材料を貼る。「調べて」と頼むと、古い情報や別の会社の情報が混ざることがある
- 数字は空ける:金額・納期・効果は〔 〕のまま出させ、人が記録から入れる
- 推測させない:書いていないことは「要確認」と書かせ、もっともらしい作り話を防ぐ
- 点検は直させずに一覧で:AIに書き直させると、どこが変わったか分からなくなる
- 最後は人:数字と宛名は社員が確かめ、金額・条件・出すかどうかは社長が決める
自社の「資料の約束事」を1枚にして、毎回貼る
中小企業庁の同じ資料では、社内のノウハウの蓄積・共有に取り組む小規模事業者に、有効だった取組を聞いています。1位は「マニュアルや手順書の整備」(39.1%、複数回答、n=3,537)でした。資料作成でも、よく通った資料の書き方を1枚に書き残しておくと、誰が作っても同じ形に近づきます。
約束事ができたら、用途3や用途15のプロンプトの最後に「次の約束事に沿ってください:〔約束事を貼り付け〕」と足します。約束事を決めるのは社長か営業の責任者で、直すたびに日付を書き足します。
まずは、来週の会議か、今月出す提案書を1つ選び、用途7(会議の前の1枚)か用途2(提案の筋を3つ)の〔 〕を埋めて試してみてください。うまくいったら自社の言葉に直し、社内で共有します。AIを使った業務改善の全体の進め方は、業務改善にAIを使う方法にまとめています。
よくある質問
ChatGPT以外の生成AIでも、このプロンプトは使えますか?
使えます。どのプロンプトも文章で指示する形で書いているため、Claude、Gemini、Copilotなどでも同じように試せます。答えの出方はツールによって違うため、自社で使うツールで試し、答えの形を確かめてから社内で共有してください。会社で使ってよいツールは、先に決めておきます。
PowerPointのCopilotやGoogleスライドのGeminiを使えば、資料は全部AIで作れますか?
スライドの下書きまでは作れますが、中身の確認は人の仕事です。Microsoftのヘルプは、PowerPointのCopilotが最初の下書きを作ると説明し、生成される情報を必ず確認・検証するよう書いています。Googleの発表では、Geminiは作る前に構成案を示し、確認・修正してから作らせる流れです。使うには対象のプランやライセンスが必要です。Googleスライドの機能は、提供開始時は英語(米国)のみとされています(2026年10月23日に確認)。
お客様の名前や金額を入れても大丈夫ですか?
個人情報保護委員会は、生成AIに個人情報を含むプロンプトを入れるときは、利用目的の範囲内かを十分に確かめるよう求めています。本人の同意なく個人データを入れる場合は、サービスを提供する事業者が機械学習に使わないことなどを確かめる必要があります。この記事のプロンプトは、名前を「A社」「担当者B様」に置き換え、金額は〔 〕のまま空けて人が入れる形にしています。入れてよい情報は、社内のルールで先に決めてください。
AIが作った図や画像を、社外に出す資料に使っても大丈夫ですか?
文化庁の「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」は、著作権の侵害には既存の著作物との「類似性」と「依拠性」の両方が必要だとしています。そのうえで、使う前に既存の著作物と似ていないかを、インターネットの画像検索などで確かめるよう挙げています。他社の資料やイラストを貼って「同じように」と頼まないこと、使ったプロンプトを残しておくことも、あわせて決めておきます。
どの資料から始めればよいですか?
社内向けの資料(用途7の会議の前の1枚や、用途5の進み具合の報告)から始めると、間違いがあっても社外に出る前に気づけます。慣れたら提案書(用途1〜4)に広げ、社外に出す資料には必ず用途15の点検を通します。中小企業庁の資料でも、AIの活用に取り組んだ事業者で「活用している」の割合が高い部門は2つでした。バックオフィス部門(73.4%)と、営業・販売・顧客対応部門(68.2%)です。
プロンプト集を社員に配れば、資料作成は速くなりますか?
配るだけでは、自社の資料の形やルールに合わない所が残ります。自社の「資料の約束事」を1枚にする、確かめる人と項目を決める、よく通った資料とプロンプトを手順書に残す、の3つを先に決めておくと、使い続けやすくなります。社員が自分の資料を題材に練習する研修も、選択肢の一つです。

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