AI導入公開

AI内製化とは?中小企業が自社で回す仕事と外に頼む仕事の線引き・進め方を解説

事務所で、座った社員のノートPCの画面を、横に立った上司が指さしながら一緒に確かめている様子

「AIの仕組みを外に作ってもらったが、担当者が辞めたら誰も直せない」「毎回外注していたら、費用も時間もかかりすぎる」。AIを使い始めた会社が次に考えるのが、自社で回せるようにする「内製化」です。

ただ、中小企業が全部を社内でまかなうのは現実的ではありません。中小機構の調査では、AI・ITの推進に専任の担当者がいる中小企業は3.0%でした。大事なのは「全部自社か、全部外注か」ではなく、どの仕事を社内に残し、どの仕事を外に頼み、外に頼んだものをいつ社内で引き取るかの線引きです。

外部の力を借りながら社内に力を残す月額の支援は、シス学 AIコンサルティングでご用意しています。

AI内製化とは?AIで変えた仕事を、社員が直し続けられる状態にすること

AI内製化とは、AIを使った仕事のやり方を、外部に頼りきらずに社内の人が決め、使い、直し続けられる状態にすることです。全部の仕組みを社員がプログラムで作ることではありません。外部に作ってもらった仕組みでも、指示文(プロンプト)や手順書を社員が書き換えられ、業務が変わったときに社内で直せれば、内製化できていると言えます。

中小企業白書(2026年版)は、デジタル化・AI導入補助金に名前を変えた理由を説明しています。ITツールの導入にとどまらず、導入後に自社内でデジタル化を続けていくことが大事だと指摘されている、というものです。国の支援の考え方も、「入れて終わり」から「社内で続ける」に移っています。

AIの進め方は3つの形に分かれる

AIの進め方の3つの形と、社内に残るもの
形外部がすること社内がすること社内に残るもの向いている会社
全部外注業務の整理、仕組みの開発、設定、保守まで使う、問題を伝える動く仕組み(直す力は外部に残る)仕組みが大きく、変更が少ない業務
内製化支援(ハイブリッド)教える、一緒に作る、詰まった所を手伝う、引き渡す業務を選ぶ、試す、手順書と指示文を書く、確かめる手順書、指示文、設定の分かる人、直す習慣AIで変えたい業務が複数あり、社内に推進役を置ける会社
全部自社(なし。公的な無料相談などを使う)選ぶ、作る、直す、教えるのすべてすべて業務が1つに絞れていて、試す時間を取れる人がいる会社

「AI内製化支援」は、真ん中の形のことです。外部の専門家が作業を代わりにするだけでなく、社員と一緒に作り、最後に社内で回せる形で引き渡すまでを受け持ちます。外部に頼む種類(コンサル・研修・開発・顧問)の違いはAI導入支援とは?で解説しています。

なぜ今AI内製化なのか|推進の担当者がいない会社が85.9%

中小企業基盤整備機構(中小機構)は、2025年11〜12月に中小企業1,668社から回答を得た調査をまとめています。AIを入れるときの壁は、「お金」と同じくらい「社内の力」にあります。

中小企業のAI導入と運用の課題(中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」令和8年3月)
項目数字報告書のページ
AI導入の阻害要因「導入にあたっての高コスト」46.9%19ページ
AI導入の阻害要因「社内のAIノウハウ不足」42.0%19ページ
AI導入の阻害要因「社内のAI人材不足」38.8%19ページ
推進する担当部署が「特定の部署はなく、経営者・現場が個別に推進」(n=1,605)88.0%(専任の部署は2.3%)22ページ
推進する担当者が「特定の担当者はおらず、経営者・現場従業員が個別に推進」(n=1,568)85.9%(専任の担当者は3.0%)22ページ
AI導入後の運用課題「ランニングコストが高い」(n=1,587。最多)44.0%21ページ
AI導入後の運用課題「運用担当者の負荷が重い」(n=1,587)29.1%21・41ページ
AI導入後の運用課題「導入製品のアップデート対応への負担」13.0%41ページ

同じ報告書の41ページには、運用の課題の自由回答として「利用者のスキルによるばらつき」「設定の属人化」「継続更新に対応できる人材の不在」が挙がっています。報告書の分析では、AIは一律のマニュアルで完結しやすいITツールと違い、利用者の指示(プロンプト等)次第で精度が変わります。そのため、利用者のスキルやノウハウに頼る面が強い、としています。

入れただけでは使われない、という数字もあります。AIを全社的に導入した企業(57社)では、「従業員による活用が進まない」が40.4%でした。ITツールの同じ回答より10ポイント以上高い数字です(報告書41ページ)。直す人が社外にしかいないと、直すたびに依頼と見積もりが要ります。直さなくなった仕組みから、使われなくなります。

AI内製化支援でできること|段階ごとに頼めることと、社内が受け取るもの

中小機構の調査では、AI・ITの導入を進めるために必要な公的支援を項目ごとに聞いています(報告書23ページ)。「必要である」は、「従業員向けの教育・研修」が67.7%、「実証実験や試行導入の機会」が61.3%、「専門家の派遣や導入相談」が59.8%でした。内製化支援は、この3つを、社内に力が残る形で組み合わせたものです。

AI内製化支援の段階と、社内に引き渡してもらうもの
段階外部に頼めること社内が受け取るもの社内で引き取る人
1. 業務の選定業務の聞き取り、AIに任せる候補の洗い出し、優先順位づけ線引きの表(どの業務を自社・外部で受け持つか)社長
2. 試作1つの業務での試し方の設計、指示文の最初の型、効果の測り方指示文、試した記録、効果を測る数字推進役
3. 社内展開社内向けの説明、手順書のひな形、社内ルールの案手順書、1枚の社内ルール推進役・現場の担当者
4. 研修推進役と現場の担当者への研修(自社の業務を題材にする)教えられる人(2人目の推進役)推進役
5. 定着月ごとの数字の確認、詰まった所の相談月次の確認の場と、外部がいなくても回る記録社長・推進役

大事なのは右の2列です。外部が作業をしても、社内が受け取るものと引き取る人が決まっていなければ、契約が終わると元に戻ります。費用は頼む範囲と期間で決まります。月額の相談・伴走の公開料金はAIコンサルの費用相場、仕組みを作ってもらう開発の公開料金はAI開発の費用相場にまとめています。

AI内製化のメリット・デメリット|残るのは「直す力」、かかるのは「社員の時間」

AI内製化のメリットとデメリット(例は中小企業白書2026年版の事例2-2-14・2-2-15)
中身白書の事例に書かれていること
メリット1:直すのが速い現場の要望を、依頼や見積もりを待たずに反映できる高瀬金型は「午前中に出された改善要望を午後に実装する」スピード感で、使いやすさを追求した
メリット2:外注費がかからない開発や変更のたびの外注費がかからない(社員の時間とAIの利用料はかかる)岡田研磨は、同様のシステムを外注すれば約8,000万円かかるところ、内製ではAIの月額利用料のみ(外注した場合との比較で、払っていたお金が減ったわけではない)
メリット3:やり方が会社に残る手順書と指示文が社内にたまり、教育にも使える岡田研磨は、手順書管理システム「Knowledge Board」の導入後わずか4か月で、手順書が150件程度から240件ほど増加した
デメリット1:社員の時間がかかる覚える時間、試す時間を、ふだんの仕事から取り出す必要がある岡田研磨の専務は、約2年間・トータル1,000時間以上AIとの対話を重ねてから統合管理システムを完成させた
デメリット2:作った人に寄りやすい1人で作ると、その人しか直せない「新しい属人化」が起きる(中小機構の調査の自由回答に「設定の属人化」)
デメリット3:確かめる責任も自社に来る情報の扱い、答えの誤り、ルール違反を自社で防ぐ必要がある(失敗4の、個人情報保護委員会の注意喚起を参照)

高瀬金型は、システムの年間ランニングコストは人件費二人分相当だが、仮に二人を雇ってもこの効果には及ばない、としています。内製化しても費用はゼロになりません。比べるのは「外注費」と「社員の時間+AIの利用料」です。そのうえで「直す速さ」と「会社に残るもの」を足して判断します。

自社で回す仕事・外に頼む仕事の線引き|判断の材料が社内にあるかで分ける

線引きは会社単位ではなく、仕事単位で決めます。目安は「その仕事の判断に要る材料が、社内にそろっているか」です。自社の業務の流れ、取引先ごとの事情、社長の判断の基準は社内にしかありません。逆に、他社の進み具合、セキュリティの設定、システム同士をつなぐ技術は、社外のほうが詳しい分野です。

AI内製化の線引きの目安(中小企業の例)
仕事自社で持つ外に頼む理由
どの業務をAIに任せるか決める◎相談だけ業務の流れと優先順位を知っているのは社内
指示文(プロンプト)を書き、直す◎最初の型づくり業務が変わるたびに直す。外にあると直さなくなる
手順書を書き、更新する◎ひな形づくり手順の正しさを確かめられるのは担当者
AIの答えを確かめる◎―数字や固有名詞が正しいかは、元の資料を持つ社内でしか確かめられない
使ってよい情報のルール◎(決める)◎(案と点検)決めるのは社長。公的な資料の読み込みは外部が速い
ツール・サービスの選定○◎料金や機能の比較、他社の使い方の調べ物は外部が速い
システム同士をつなぐ開発△◎技術の専門性が要る。作ったあとの直し方は引き渡してもらう
社員への研修○(社内の勉強会)◎(最初の推進役)教える人がいない最初だけ外部、2人目からは社内で教える

◎は主に受け持つ側、○は一部、△は最初は難しい、の意味です。外に頼む仕事も、「頼みっぱなし」にせず、社内で引き取る時期を決めておきます。

外部を入れずに自社で始めてよい条件

  • AIで変えたい業務を、業務名で1行に書ける(「受注メールの転記」など。「全社の効率化」は業務名ではない)
  • 試す人が社内に1人いて、毎週の決まった時間をふだんの仕事から取り出せる
  • すでに会社で契約しているAIや、無料で使える枠で、まだ自社の業務を試していない

3つとも当てはまるなら、まず自社で試し、詰まった所だけを外へ持ち出すほうが早く進みます。主なAIの無料・法人向けの範囲は中小企業向けAIツールの選び方と法人向け生成AIの比較にまとめています。

外部を入れたほうが早い条件

  • 試し始めて数か月たっても、本番の業務で使える形が1つもできていない
  • 同業の進み具合や、失敗した例など、社外の実例が判断の材料になる
  • お客様に直接届く文面や、基幹システムへの登録など、間違えたときの影響が社外に出る仕事を変える

この場合も、全体を丸ごと預ける必要はありません。詰まった論点と、技術が要る部分だけを頼み、終わったあとに社内の誰が引き取るかを先に決めます。

内製化支援の相手を選ぶときに聞くこと

内製化を目的に外部へ頼むときの確認項目
確かめること聞き方の例
引き渡すものが決まっているか「契約が終わったとき、手順書・指示文・設定の一覧は、自社に何が残りますか?」
社員が手を動かす時間があるか「作業は御社がするのですか、それとも社員と一緒に作りますか?」
作った物を社内で直せるか「業務が変わったとき、社内でどこまで直せる作りにしますか?」
研修が自社の業務を題材にしているか「研修では、うちの書類やメールを題材にできますか?」
支援を減らしていく計画があるか「何か月目から、支援の量を減らす想定ですか?」
アカウントと設定の持ち主「AIサービスの契約と管理者の権限は、自社の名義にできますか?」

「全部こちらでやります」という答えは、早く動く代わりに社内に力が残りにくい形です。内製化が目的なら、社員に宿題が出る支援のほうが合っています。

AI・DX内製化の事例|中小企業白書に載った3社

中小企業白書(2026年版)の第2部第2章第2節には、社内の人が中心になって仕組みをつくり、直し続けている中小企業の事例が載っています。3社とも、外部の専門家に丸投げせず、現場を知る社員が担い手になっている点が共通です。

事例1 岡田研磨株式会社(金属製品製造業・従業員85名・資本金5,000万円・石川県金沢市)

  • 課題:図面などの情報を紙やExcelで管理していた。工場の資料を事務担当者が別の資料へ転記・集計し、資料を探すのに1~2時間掛かることもあった
  • 誰が:前職のIT企業で営業を担当していた専務(エンジニアではない)。2023年末に生成AIがプログラムを作るのを見て、社内アプリを自作する方針を選んだ
  • 内製したもの:約2年間・トータル1,000時間以上の対話を重ね、統合管理システム「OKADA Board」を自作。約30種類以上のアプリで、検査実績・品質報告・在庫・生産進捗・労務・原価のデータを一元化した。AIを使った手順書管理システム「Knowledge Board」も開発
  • 広げ方:各部門の若手でDX推進チームをつくり、まずチームが試してから全社に広げた。現場の意見はチームが集め、専務が日々直している
  • 変わったこと:「OKADA Board」の導入で、月5,000~6,000枚分のペーパーレス化と、月530時間程度の労働時間削減。手順書は150件程度から、導入後わずか4か月で240件ほど増加し、多能工化につながった。同様のシステムを外注すれば約8,000万円かかるところ、内製ではAIの月額利用料のみ
  • 出典:中小企業庁「2026年版中小企業白書」事例2-2-14

事例2 株式会社高瀬金型(生産用機械器具製造業・従業員126名・資本金1,000万円・愛知県稲沢市)

  • 課題:10年で従業員が約2倍になり、業務管理が追いつかなくなった。受注・在庫は基幹システム、製造実績は複数のExcel、不良率は紙と、情報が分かれていた
  • 誰が:営業部長が中心になってDX推進室を立ち上げ、現場のオペレーションを熟知した社員を開発の担い手に抜てきした。その社員は、AIも活用しながら独学で開発のスキルを身につけた
  • 内製したもの:分かれていた情報をまとめる情報管理システム。自社での運用とカスタマイズを見据え、拡張性を重視した。不良率が高い製品が出ると管理者に自動で知らせる設定や、生産指示を自動で出す機能も付けた
  • 広げ方:まず2023年初めに業務フローに沿って社内の情報を見える化し、二重三重の入力を洗い出した。現場には、今の仕事がどれだけ楽になるかを丁寧に説明して協力を得た
  • 変わったこと:取組開始から2年で新システムを構築し、データを一元管理。設備稼働率と納期遵守率が上がり、不良率は大幅に低下した。今後はAIエージェントの開発にも取り組む計画
  • 出典:中小企業庁「2026年版中小企業白書」事例2-2-15

事例3 株式会社スズミ(金属製品製造業・従業員75名・資本金1,000万円・神奈川県横浜市)

  • 課題:受注が増え、段取り替えの時間が増えた。熟練技術者に頼る工程がボトルネックになり、主力工場のある福島県では専門的な人材の確保も難しくなっていた
  • 誰が:社長が2010年代前半から、おおよそ10年かけて段階的に進めた(AIではなく、ロボットや加工機を入れた省力化投資の事例)
  • 線引き:最初に、人手が集中する工程とボトルネックの工程を調べ、「自動化すべき工程」と「人が担うべき工程」を明確にしてから設備を入れた
  • 内製した力:熟練技術者に偏っていたCAD/CAMの操作やプログラム作成を、メーカー研修と社内勉強会で中堅・若手に広げ、複数人が対応できる体制にした
  • 変わったこと:段取り替えの時間が約20%削減、労働生産性が約20~30%向上、不良率が約20%低減
  • 出典:中小企業庁「2026年版中小企業白書」事例2-2-13
3社に共通する内製化の進め方(中小企業白書の事例2-2-13〜2-2-15から)
共通点岡田研磨高瀬金型スズミ
先に、困っている作業をはっきりさせた紙とExcelの転記・集計、資料探しに1~2時間業務フローに沿って、情報の置き場所と二重三重の入力を洗い出した人が集中する工程とボトルネックを調べた
担い手は現場を知る人専務+各部門の若手チーム現場を熟知した社員を抜てき中堅・若手に操作を広げた
現場の声を取り入れた若手チームが意見を集め、専務が日々直す午前中の改善要望を午後に実装設備の導入で、現場作業者の意見を丁寧に反映
1人に閉じない仕組み手順書を誰でも作れる仕組みDX推進室という部署複数人が対応できる体制

AI内製化の進め方5ステップ|期間の目安つき

期間は、1つ目の業務から始める場合の目安です。会社の大きさと業務の量で前後します。社員の育て方(スキルマップや教える順番)はAI人材育成とは?で解説しているので、ここでは「仕事の持ち主」を社内に移す順番に絞ります。

AI内製化の5ステップ(期間は目安)
ステップ期間誰がやること終わりの目印
1. 線引きの表をつくる1〜2週間社長・推進役業務を書き出し、自社で持つ仕事と外に頼む仕事に分ける線引きの表と、最初の1業務
2. 推進役と時間を決める1週間社長推進役を選び、毎週の試す時間をふだんの仕事から取り出す推進役の名前と、カレンダーの固定枠
3. 1業務で試す1〜3か月推進役・担当者指示文で試し、AIの答えを元の資料で確かめる本番で使える指示文と、効果の数字
4. 手順書と指示文を残す2〜4週間推進役手順書・指示文・設定を共有フォルダに置き、2人目に教える推進役以外の人が同じ手順で使えた
5. 2業務目へ広げ、外部を減らす4か月目以降社長・推進役2業務目を選び、外部に頼む範囲を見直す外部に頼む仕事の一覧が短くなった

ステップ1:線引きの表をつくる

社長と推進役で、時間がかかっている業務を10〜20件書き出し、線引きの節の表の形で「自社で持つ/外に頼む」を付けます。書き出しはAIに手伝わせてかまいません。業務の書き出し方は業務の棚卸しとは?で詳しく解説しています。

そのまま使える指示文(線引きの表の下書き):「あなたは中小企業の業務改善の担当です。次の業務一覧を、表にしてください。列は『業務名』『月の件数』『1件の時間』『判断に要る材料(社内にある/社外の知識が要る)』『自社で持つか外に頼むかの案』『理由』です。件数と時間が書かれていない業務は『不明』と書き、推測で埋めないでください。業務一覧:〔業務名と、分かれば月の件数・1件の時間を1行ずつ〕」

AIが出した「案」はあくまで下書きです。最後に自社で持つか外に頼むかを決めるのは社長です。

ステップ2:推進役と時間を決める

推進役は、パソコンに詳しい人より、対象の業務の流れを知っている人から選びます。高瀬金型も、現場のオペレーションを熟知した社員を抜てきしました。中小機構の調査では、推進役を置いている企業でも、多くは専任ではない担当者でした(専任ではない11.1%、専任3.0%、n=1,568)。兼任で構いません。試す時間をカレンダーに先に入れ、その間のふだんの仕事を誰が受け持つかを社長が決めます。

ステップ3:1業務で試す

最初の1業務は、毎週くり返す、書式が決まっている、間違えても社内で直せる、の3つがそろうものから選びます。始める前に、1件あたりの時間を同じ方法で測っておくと、ステップ5で外部の費用と比べられます。

ステップ4:手順書と指示文を残す

うまくいった指示文、確かめる手順、使ったサービスと設定を、共有フォルダの決まった場所に置きます。そのうえで、推進役以外の1人に教え、その人が同じ手順で使えたら、このステップは終わりです。手順書の作り方はマニュアル作成をAIでで解説しています。

ステップ5:2業務目へ広げ、外部を減らす

ステップ1の表を見直し、外部に頼んでいた仕事のうち、社内で引き取れるものに印を付けます。岡田研磨が若手のチームで試してから全社に広げたように、2業務目は1業務目を経験した人が先に試します。

AI内製化の失敗パターンと対策

失敗1:作った1人しか直せない

中小機構の調査の自由回答にあった「設定の属人化」です。外注していた属人化が、社内の1人に移っただけになります。対策:ステップ4で2人目に教えるまでを内製化の範囲に入れます。設定の一覧とアカウントの管理者を、2人以上が分かる場所に書いておきます。教える場には効果の差も出ています。2026年版中小企業白書の本文(第2-2-91図)では、AIの活用に取り組んだ事業者に評価を聞いています。「想定した効果が得られなかった」は、社員向けの研修や勉強会をしている事業者で8.6%(920社)、していない事業者で16.1%(789社)でした。

失敗2:作ったあと、直す人がいない

同じく自由回答の「継続更新に対応できる人材の不在」です。業務や取引先が変わっても指示文が古いままだと、答えの手直しが増え、使われなくなります。対策:月に1回、手直しの件数を見て、指示文と手順書を直す担当と日を決めます。

失敗3:現場が使わない

自作の仕組みでも、従業員の抵抗は起きます。岡田研磨も抵抗を受け、デジタル変革は企業戦略であり、将来必ず必要になると伝えて理解を得ました。高瀬金型は、今の仕事がいかに楽になるかを丁寧に説明しました。対策:社長が目的を伝え、現場の意見を集める係を決めます。中小企業白書によると、ITツール(AIを含まない)の活用の効果を高めた取り組みは「現場からの意見収集」が最も多い答えでした。「段階的な導入」「従業員への研修・勉強会」が続きます。

失敗4:ルールなしで社内に広がる

中小機構の調査では、AI・ITの導入でセキュリティや情報漏えいの懸念がある企業が75.2%でした(「強い懸念」と「多少懸念」の合計)。個人情報保護委員会は、2つのことを注意しています。個人情報を含む指示文を入れるときは、利用目的の範囲内かを十分に確かめること。生成AIの答えには、不正確な内容が含まれることがあることです。対策:試す前に、使ってよいサービスと入れてはいけない情報を1枚に決めます。決め方は生成AIの社内ルールで解説しています。

失敗5:判断まで内製化しようとする

中小機構の調査で、AIを入れても効率化が難しいと感じる業務の1位は「人の判断が必要な業務(営業提案、顧客折衝など)」で67.1%でした。「経営判断や戦略立案に関する業務」も31.3%ありました。対策:内製化するのは、下書き・転記・照合などの作業と、その確かめ方です。値引きや取引の可否などの判断は、社長の手元に残します。

定着|外部が抜けても回る「引き渡しのチェック表」

外部の支援を減らす前、または契約が終わる前に、次の8つを確かめます。全部に「はい」と答えられれば、外部がいなくても社内で回せる状態です。

AI内製化の引き渡しのチェック表
確かめること「はい」の目安
手順書対象の業務ごとに、誰が読んでも同じようにできる手順書が共有フォルダにある
指示文本番で使っている指示文が、手順書と同じ場所にあり、最後に直した日が書いてある
設定とアカウント使っているサービス、契約の名義、管理者の権限を持つ人が一覧になっている(2人以上)
直す担当指示文と手順書を直す担当が2人以上いて、月に1回直す日が決まっている
確かめる手順AIの答えを誰が、何と照らして確かめるかが手順書に書いてある
数字1件あたりの時間、手直しの件数を毎月記録している
社内ルール使ってよい情報と入れてはいけない情報が1枚にまとまり、全員が知っている
相談先社内で解けないときの相談先(外部の専門家、よろず支援拠点など)が決まっている

「いいえ」が残る項目は、外部の支援を減らす前に埋めます。契約の最後の1〜2か月を、この表を埋める時間にあてる、と最初の契約で決めておくと、引き渡しが確実になります。

シス学の場合|内製化の線引きも「作業・確認・判断」で決めます

シス学(システム経営学)は、AIエージェントを活用し、会社を「儲かるシステム」につくり変える経営学です。シス学 AIコンサルティングは、社内の推進役と一緒に進める月額の支援です。月1回の定例ミーティング(90分)、月1回のオンライン壁打ち・相談会(60分)、月内のチャット相談で進めます。社員向けのAI研修や、AIエージェントによる業務の自動化も、契約の時間の中で行います。

内製化の線引きも、仕事を「作業・確認・判断」に分けて決めます。手順書の更新を例にすると、次のとおりです。

手順書の更新を「作業・確認・判断」に分けた例
任せ先受け持つ仕事中身
AI作業変わった業務のメモと、手直しの記録から、手順書と指示文の直し案を下書きする
社員(推進役)確認直し案を実際の書類で試し、例外の扱いを書き足して、共有フォルダの版を更新する
社長判断どの業務を次に社内で引き取り、どこを外部に頼み続けるかを決める

定例では、上の「引き渡しのチェック表」を一緒に埋め、社内で回せる業務を1つずつ増やします。社長の判断と勝ちパターンを言葉と仕組みに残しておくことは、いつでも、高く渡せる会社にするための準備にもなります。

料金は、対象の業務と体制をお聞きしたうえで、無料相談でご案内します。自社で回せる部分が多い場合は、そのままお伝えします。まずは30分の無料相談からご相談ください。

まとめ

  • AI内製化は、AIで変えた仕事を社員が決め、使い、直し続けられる状態にすること。全部を社員が作ることではない
  • 中小機構の調査では、AI導入の阻害要因に「社内のAIノウハウ不足」42.0%、特定の推進担当者がいない企業が85.9%。運用では「設定の属人化」「継続更新に対応できる人材の不在」が課題に挙がる
  • 線引きは仕事単位で、判断の材料が社内にあるかで決める。業務の選定・指示文・手順書・確かめる手順は自社、技術と社外の実例は外部
  • 中小企業白書の岡田研磨・高瀬金型・スズミは、困っている作業をはっきりさせてから始め、現場を知る人を担い手にし、1人に閉じない仕組みにした
  • 内製化支援を頼むときは、社内が受け取るものと引き取る人を決め、最後に引き渡しのチェック表を埋める

最初の1歩として、明日、時間がかかっている業務を10件書き出し、それぞれに「自社で持つ」「外に頼む」を付けてください。上の指示文を使えば、表の下書きはAIに任せられます。「自社で持つ」が付いた業務のうち、毎週くり返すものが、内製化の最初の1業務です。

よくある質問

AI内製化とは何ですか?

AIを使った仕事のやり方を、外部に頼りきらずに社内の人が決め、使い、直し続けられる状態にすることです。仕組みを外部に作ってもらった場合でも、指示文や手順書を社員が書き換えられ、業務が変わったときに社内で直せれば、内製化できていると言えます。

AI内製化支援とは、どんなサービスですか?

外部の専門家が作業を代わりにするだけでなく、社員と一緒に業務を選び、試し、手順書と指示文を残し、社内で回せる形で引き渡すまでを支える支援です。頼むときは、契約が終わったときに自社に何が残るか、社内の誰が引き取るかを先に決めてください。

中小企業でもAIの内製化はできますか?

できます。中小企業白書(2026年版)には、エンジニアではない専務が生成AIとの対話で統合管理システムを自作した岡田研磨(従業員85名)の事例が載っています。現場を熟知した社員を抜てきし、その社員がAIも活用しながら開発スキルを身につけた高瀬金型(従業員126名)の事例もあります。最初から全部を自社でまかなう必要はなく、1つの業務から始めます。

AIの内製化には、どのくらいの期間がかかりますか?

この記事の目安では、線引きと推進役の決定に2〜3週間、1つの業務での試行に1〜3か月、手順書を残して2人目に教えるのに2〜4週間を見ています。白書の事例では、岡田研磨が約2年・1,000時間以上の対話を経て統合管理システムを完成させ、高瀬金型は取り組み開始から2年で新システムを構築しました。

内製化と外注は、どちらが安いですか?

一概には言えません。内製化しても、社員の時間とAIの利用料はかかります。高瀬金型は、システムの年間のランニングコストは人件費2人分相当だが、2人を雇ってもこの効果には及ばないとしています。開発費だけでなく、直す速さと会社に残るものまで含めて比べてください。

AIに詳しい社員がいなくても内製化できますか?

できます。推進役に向いているのは、AIに詳しい人より、対象の業務の流れを知っている人です。最初の推進役を育てる部分だけ外部の研修や相談を使い、2人目からは社内で教える形にすると、外部に頼る範囲を少しずつ減らせます。国のよろず支援拠点のように、何度でも無料で相談できる窓口もあります。

出典・参考

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