歯科医院が直面する構造的課題と生成AIの可能性
数字で見る歯科医院の今:診療所6.5万・個人開設7割・衛生士の求人23.1倍
まず、国などの資料で歯科医院の今を確かめます。厚生労働省の統計と検討会の資料、歯科衛生士の養成校の団体の調査では、次のように示されています。
| 項目 | 数字 | 出典 |
|---|---|---|
| 歯科診療所の数 | 65,624施設(2025年10月1日現在)。前年より754施設減 | 厚生労働省「令和7年医療施設(動態)調査」 |
| 開設者 | 「個人」が47,539施設で、歯科診療所の72.4%。前年より「医療法人」は342施設増、「個人」は1,128施設減 | 同上 |
| 歯科衛生士の数 | 免許登録者326,651人のうち、就業者は149,579人(45.8%、令和6年)。就業者の約9割が歯科診療所に勤務 | 厚生労働省 歯科衛生士の業務のあり方等に関する検討会「中間報告(案)」(2026年7月15日) |
| 養成校への求人 | 令和7年度の卒業者7,249名、就職者6,616名に対し、求人人数152,550名。就職者に対する求人人数倍率は23.1倍 | 全国歯科衛生士教育協議会「歯科衛生士教育に関する現状調査の結果報告」(令和8年6月) |
| 養成校の入学者 | 令和8年度の入学者7,876名(前年より537名減)。入学定員の充足率79.9%、志願者倍率0.95倍 | 同上 |
求人倍率は、会員の養成校185校へのアンケートの数字です。報告書も「厚生労働省等のデータとは必ずしも一致しない」と注記しています。それでも、就職した新卒1人に対して、求人が23人分ある計算です。入学者も減っており、採用で人を増やすやり方には限りがあります。
厚生労働省の検討会の中間報告(案)は、2035年の歯科衛生士の必要数を約18万8千人と推計しました。そのうえで、生産年齢人口が減るなかで「歯科分野においても業務効率化を進めることが必要」とし、業務の効率化が3〜5%進むと仮定した推計も示しています。新人の歯科衛生士の教育体制が必ずしも整っていないこと、結婚・出産などで辞める人がいることも、課題として挙げています。
AIの活用はまだこれから:中小企業で「取り組んだ」は約3割
2019年以降の省力化投資で、AIの活用に「取り組んだ」中小企業は30.3%でした(n=5,645)。中小企業庁の「2026年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要」の数字です。取り組んでいない理由の1位は「活用する業務がイメージできていない」63.4%で、「必要な予算を確保できない」は13.8%です(n=3,888、複数回答)。歯科医院だけの数字ではありませんが、止まっている理由はお金より「どの仕事に使うか」です。
歯科医院ならではの3つの壁:なぜ使い始めにくいのか
- 受付が電話と診療の補助をかけ持ちしている:SCOグループ(歯科医院向けサービスの会社)は、受付が診療補助と並行して電話に出ている歯科医院も多いとしています。課題に挙げるのは、電話の集中による業務の中断と、診療時間外の取りこぼしです。新しいやり方を試す時間も、教える時間も取りにくい
- 自費の説明と、医療広告の決まりが隣り合っている:インプラントや矯正、ホワイトニングの説明文は、院内で渡せば説明資料です。同じ文をホームページに載せれば、広告の規制の対象になります。AIの書いた「きれいな文章」が、そのまま禁止される表現になりやすい
- 写真と画像が多い:口腔内写真やレントゲン画像は、名前やカルテ番号とひも付けば患者さんの情報。説明資料づくりに便利なぶん、AIに入れてよいかを先に決めないと誰も使えない
歯科医院における生成AIユースケース全体像
生成AIは、文章を読む・まとめる・書き直す仕事が得意です。歯科医院の仕事を場面ごとに分けると、使いどころは次のようになります。
| 場面 | AIに任せる作業の例 | 人が必ず確かめること |
|---|---|---|
| 受付・電話・予約 | 予約の変更・キャンセル・持ち物・駐車場の回答集、急患の電話を取り次ぐときの言葉、無断キャンセルを減らすための前日の連絡文 | 診療時間・予約の決まりが院内の正しい情報と合っているか。痛み・腫れ・出血など症状の電話は歯科医師に回す |
| 自費の説明・カウンセリング | インプラント・矯正・入れ歯・ホワイトニングの説明資料の下書き、費用・期間・通院回数の表、患者さんから出やすい質問と答えの案、カウンセリングの振り返りメモの整理 | 治療の内容・リスク・費用は院長が確かめる。ホームページに載せる場合は医療広告の決まりで見直す |
| 院内マニュアル・教育 | 受付・会計・予約の手順書、新人向けの確認問題、片付けや準備の手順のチェック表の清書 | 実際の手順どおりか。滅菌などの手順は、決めた歯科医師・歯科衛生士が読む |
| 採用 | 歯科衛生士・歯科助手・受付の求人原稿、見学に来た人への案内文、面接で聞く質問の案 | 給与・休日・勤務時間が実際の条件と同じか(職業安定法で虚偽や誤解を生む表示は禁止) |
| ホームページ・SNS | 院のお知らせ、ブログの下書き、医療広告等ガイドラインに照らした表現の点検 | 院長が原文で最終確認する。体験談、説明のないビフォーアフター写真は載せない |
| ミーティング | 朝礼・院内ミーティングの議事録、決まったことと宿題の整理 | 患者さんの名前や病状は書かない。担当と期限がメモどおりか |
歯科のレセプトのように、患者さんの情報をそのまま扱う入力・点検の仕事は、院内の環境と確認の手順をつくってから進めます。入力案と点検候補を出す仕組みはレセプト入力・点検支援でご紹介しています。お知らせの掲示や院内会議の議事録など、医科・歯科に共通する事務の使い方は医療事務×生成AI 完全ガイドにまとめました。
国内歯科医院・歯科向けサービスの生成AI活用事例
ここでは、歯科医院や、歯科医院と一緒に取り組んだ会社が公式に発表した内容だけを紹介します。数字は発表に書かれたとおりで、数字がない発表はそう書きます。
東和ハイシステム・日立製作所|音声で電子カルテに入力し、2人で行っていた歯周病検査を1人で
東和ハイシステムと日立製作所は2023年2月7日、歯科医院向け電子カルテ「Hi Dental Spirit AI-Voice」を発表しました。3月上旬からの販売で、AIの音声認識により、歯科医師が診療中に手袋を外さず、音声だけで電子カルテを作成・操作できるとしています。生成AIではなく音声認識のAIですが、歯科の現場の手がふさがる問題に向けた事例です。
歯周病検査では、歯科衛生士が検査をしながら音声で結果を記録できるようになり、これまで2人で行っていた検査が1人で行えるとしています。2022年6月から歯科医院でモニター検証を行い、要望をもとに改良したと書かれています。東和ハイシステムは、それまでに約3,100の歯科医院に電子カルテのシステムを導入してきた会社です。
SCOグループ・Verbex|歯科医院の予約電話をAIが受け、急ぐ電話はスタッフへ
SCOグループは2026年10月1日、「paylight X」の電話応対の機能「AIでんわ」に、Verbexの音声対話AIを採用したと発表しました。「AIでんわ」は、患者さんからの電話に24時間365日応答し、予約日時の調整から予約完了までを行う機能です。
患者さんが番号を選ぶのではなく、ふだんの言葉で用件を伝えます。AIは、予約の希望日時、名前、電話番号、初診か再診か、症状や来院の目的を聞き取ります。診療時間・予約枠・診療メニューは医院ごとの運用に合わせられ、聞き取った内容は予約や患者の情報に連携して、電話のあとの転記を減らすとしています。
大事なのは線引きの書き方です。「緊急性の高い相談や、患者さまから個別の判断を求められる場合など」はAIだけで完結させず、スタッフへ転送するとしています。さらに「診断や治療方針の判断など、診療にかかわる行為をAIが担うものではありません」と明記しています。
今後は、来院前日の予約確認と持ち物の案内、定期健診・メインテナンスの時期の案内、治療を中断した患者さんへの再来院の案内なども検討するとしています。両社で初年度に100医院、3年間で500医院への導入を目指すとしており、導入した医院での効果の数字は発表にありません。
医療法人オーラルビューティー&ヘルスケア(キレイハ)|来院前の治療・費用・期間の相談をAIが受ける
株式会社アスレバは2026年10月6日、AIが相談に応じる「ゴリラセールスAI商談」の導入を発表しました。導入したのは、岡山県岡山市の医療法人オーラルビューティー&ヘルスケアです。同法人は、一般歯科・矯正歯科などの「キレイハ」を運営しています。来院前の治療についての疑問や不安にAIが対応し、治療の内容・費用・期間などを、患者さんが自宅や移動中でも相談できるようにするものです。
Web広告、Instagram、地域の情報誌で知った人をそのまま相談につなげ、通院中の患者さんへのLINEの案内にも使うとしています。背景として「従来のカウンセリングは院内で行うことが中心」だったと書かれています。ツール自体は24時間365日対話でき、AIが最初の相談を受けて、必要に応じてスタッフへ情報を引き継ぐ仕組みだと説明されています。発表に成果の数字はありません。
なお、歯科医院が生成AIを使い、かかる時間の削減などを数字で公式に発表した例は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。病院・診療所では、紹介状の下書きや議事録で時間の数字を公表した例があります(医療事務×生成AI 完全ガイドで紹介)。歯科は、電話・カウンセリング・記録の入力で、サービスの提供が始まった段階です。
歯科医院で使えるプロンプト5選
そのまま貼り付けて使える文例です。( )の中を自院の内容に置き換えてください。どの文例も、患者さんの名前・生年月日・保険証の番号・口腔内写真・レントゲン画像は入れない前提で作っています。
①【受付・電話】予約変更・キャンセル・急患の電話の回答集を作る
できた回答集は院長が読み、「受付が答えてよい範囲」を院長が決めてから使います。問い合わせ対応の進め方全体は問い合わせ対応をAIで自動化するやり方でも解説しています。
②【自費の説明】インプラント・矯正などの院内用の説明資料の下書きを作る
院内で配る資料は、ガイドラインで通常は医療広告と見なされません。ただし、同じ文章をホームページに載せると広告の規制の対象です。その場合は文例⑤で点検し、公的医療保険が適用されない旨と標準的な費用、主なリスク・副作用などを、分かりやすい場所に書きます。
③【院内マニュアル】受付・会計のメモから、新人向けの手順書と確認問題を作る
「要確認」と出た所が、ベテランに聞くべき所です。滅菌や感染対策の手順は、決めた歯科医師・歯科衛生士が必ず読んでから使います。手順書の作り方はマニュアル作成にAIを使う方法でも解説しています。
④【採用】歯科衛生士の求人原稿を、見学したくなる中身に書き直す
職業安定法は、求人を出す側にも「虚偽の表示・誤解を生じさせる表示」を禁じ、求人の情報を正確で最新に保つことを求めています(2022年10月施行)。AIが足した条件がないか、事務の担当者が募集の条件と1行ずつ照らします。
⑤【ホームページ】歯科で引っかかりやすい表現を、医療広告等ガイドラインで点検する
AIの指摘は、見落としを減らすための下書きです。最後は院長が、医療広告等ガイドラインと事例解説書(第6版)の原文に照らして決めます。どの表現がなぜだめなのかは、次の節の表にまとめました。
歯科医院×生成AIのリスクとガバナンスをどう設計するか
歯科医院で特に気をつけたい3つのリスク
- 患者さんの情報の持ち出し:名前、カルテの内容、口腔内写真、レントゲン画像などを、院として認めていないAIサービスに入れてしまう
- 禁止される広告をつくってしまう:AIは「最新」「痛くない」「1日で完了」のような、言い切る・比べる文章を書きやすい。それをホームページやSNSにそのまま載せてしまう
- 歯科医師の判断への踏み込み:痛みや腫れの電話に、AIの答えのまま「様子を見てください」などと伝えてしまう
歯科のホームページで引っかかりやすい表現(医療広告等ガイドライン:令和8年3月30日最終改正)
医療広告等ガイドラインの正式名は「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」です。歯科医業にも同じように適用されます。ガイドラインと、厚生労働省の「ウェブサイト等の事例解説書(第6版)」には、歯科医院の例が多く載っています。生成AIで文章を作るときは、次の表の表現が出ていないかを確かめます。
| 表現の例 | どこが問題か | 原文の扱い |
|---|---|---|
| 「インプラント科」「審美歯科」を診療科名として書く | 法令に根拠のない診療科名 | ガイドライン 第3-2 4(2)が歯科の例として挙げ、診療科名として認められないとしている |
| 「当院のインプラント手術の成功率は97.5%です。」 | 調査の方法など、データの根拠を示していない | 事例解説書(2)「データの根拠を明確にしない調査結果」(虚偽広告) |
| 「1日で全ての治療が終了します。」「即日インプラント治療」 | 定期的なメンテナンスが必要なのに、全部が1日で終わるように書いている | 事例解説書(1)「治療内容・期間の虚偽」(虚偽広告) |
| 「当医院は〇〇市の他の医療機関と比較して、インプラント手術成功率が高いです。」 | 他の医院と比べて優れているとしている | 事例解説書(6)「他の医療機関との比較」(比較優良広告) |
| 「△△インプラントセンター」(医院名として、または医院名と並べて) | 国の事業や都道府県の認定などの条件を満たさない「センター」の名前 | 事例解説書(8)「〇〇センター」(誇大広告) |
| 「モデルの〇〇も効果実感!」「当院のホワイトニング!」 | 著名人との関係を強調している | 事例解説書(7)「著名人との関係性強調」(比較優良広告) |
| 実際には施術していないフリー素材の画像などを加工した、ホワイトニングの前後のイメージ | 施術していない画像で、効果があるように見せている | 事例解説書(3)「加工・修正した術前術後の写真等」(虚偽広告) |
| 患者さんの体験談、説明のない治療の前後の写真 | 体験談は、内容が広告できる範囲でも不可。前後の写真は、治療内容・費用・主なリスク・副作用などの詳しい説明を付けなければ不可 | ガイドライン 第3-1 1(6)(7) |
事例解説書は、直し方の例も載せています。インプラントの症例写真なら、写真と同じ場所に4つを並べます。「治療内容」「治療期間・回数(例:約6ヶ月間、10回)」「費用(自由診療である旨と総額)」が3つです。4つ目は「リスク・副作用(例:出血、腫張、疼痛、神経麻痺、インプラント周囲炎等)」です。画像をクリックしないと説明が出ない形や、説明をリンク先のページに置く形は認められないとしています。また、治療の効果は広告できる事項ではありません。そのため前後の写真は、このあとで説明する「限定解除」の条件を満たすホームページなどでなければ載せられません。
自由診療は、書き方にも決まりがあります。ガイドラインは歯列矯正を例に挙げています。公的医療保険が適用されない旨(「全額自己負担」「保険証は使えません」「自由診療」など)と、標準的な費用を併記する場合に限って広告できます。別に麻酔管理料などがかかる場合は、それを含めた総額の目安も書きます。
患者さんが自ら求めて見るホームページなどでは、広告できる事項の限定を外せます(限定解除)。条件は、問い合わせ先の明示です。自由診療なら、通常必要な治療の内容・標準的な費用・治療期間と回数、主なリスク・副作用も載せます。検索結果に費用を払って出す広告やバナー広告は、この対象になりません。一方、院内の掲示や院内で配るパンフレット、職員の求人広告は、ガイドラインが「通常、医療広告等とは見なされないもの」の例に挙げています。
患者さんの情報の扱い(医療・介護関係事業者向けガイダンス:令和8年4月一部改正)
- 利用目的の範囲を確かめる:利用目的はできる限り特定し、院内掲示などで公表しておく。患者さんの黙示の同意があったと考えられるのも、院内掲示などで示した「患者への医療の提供に必要な利用目的」の範囲に限られる。AIで作る文書に患者さんの情報を使うなら、その使い方がこの範囲に入るかを先に確かめる
- 院の外の会社に扱わせるなら、委託先を監督する:個人データの扱いの全部または一部を外部に任せる場合は、委託先に必要かつ適切な監督を行う。委託契約に安全管理の措置を盛り込むことや、定期的に確かめることも含まれる
- 受付での呼び出しにも配慮を:受付での呼び出しは取り違え防止に必要だが、患者さんの希望に応じて一定の配慮をすることが望ましい、とガイダンスは書いている
生成AIに医療情報を入れる場合については、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」第7.0版のQ&A(企画管理編 Q18)があります。この考え方と、個人情報保護委員会の注意喚起は、医療事務×生成AI 完全ガイドで原文に沿って解説しています。Q18は、入力した医療情報が保存されないことが契約などで担保されていることを前提にしています。そのため、院として契約し、保存・学習の扱いを確かめたサービスに絞ります。
診断・治療の判断にAIを使わない線引き
厚生労働省医政局医事課長の通知(平成30年12月19日、医政医発1219第1号)は、AIによる診断・治療支援のプログラムで診療する場合を扱っています。その場合も「診断、治療等を行う主体は医師であり、医師はその最終的な判断の責任を負う」としています。
ただし、この通知が扱っているのは医師と医師法第17条で、歯科医師には触れていません。歯科医師については、歯科医師法第17条が「歯科医師でなければ、歯科医業をなしてはならない。」と定めています。この記事では、通知の考え方と歯科医師法の条文から、歯科医院でも「診断・治療の判断は歯科医師が行い、AIは下書きと整理まで」という線を引くことをおすすめします。
| AIに下書きを任せてよいこと | AIに任せないこと(歯科医師が判断する) |
|---|---|
| 予約の変更・キャンセル・持ち物の案内 | 痛み・腫れ・出血の電話から、すぐ来院が必要かを答える |
| 自費の治療の説明資料の下書き、よくある質問の答えの案 | その患者さんにどの治療が合うかを勧める |
| 院内の手順書、ミーティングの議事録、求人原稿 | レントゲンや口腔内写真から、むし歯や歯周病があるかを読む |
| ホームページの文章の下書きと、気になる表現の洗い出し | 広告として出してよいかの最終判断(院長が原文で確かめる) |
院内ルールに入れたい5つのポイント
- 使ってよいAIサービス:院として契約し、入力した内容が保存されない・学習に使われないことを確かめたサービスとアカウントだけを使う
- 入れてはいけない情報:患者さんの名前、生年月日、保険証やマイナンバーの番号、カルテの内容、口腔内写真、レントゲン画像、職員の個人情報を具体的に書く
- 受付が答えない電話:痛み・腫れ・出血、薬、治療後の具合の電話は、AIの答えを使わず歯科医師に回す
- 院の外に出す文章は院長が読む:ホームページ、SNS、求人原稿、AIの相談窓口の答えは、院長が読んでから出す
- 困ったときの連絡先:間違えて患者さんの情報を入れたときに、誰に、すぐ何を伝えるかを決めておく
ルールはA4用紙1枚にまとめ、受付の裏にも置いておきます。書き方の全体は生成AIの社内ルールの作り方で解説しています。
歯科医院のための3段階導入ロードマップ
期間は目安です。医院の大きさや、電子カルテ・予約システムの有無、スタッフがAIを使った経験によって前後します。
段階1:患者さんの情報が入らない文章から始める(0〜3か月)
- 使ってよいAIサービス、入れてはいけない情報、受付が答えない電話を、1枚のルールにまとめる
- 院長と受付・歯科衛生士1〜2人で、求人原稿、院内ミーティングの議事録、手順書の下書きを試す
- 試す前と後で、1件あたりにかかる時間を記録しておく。求人原稿なら、書き直す前と後の応募・見学の数を残す
段階2:電話の回答集・自費の説明・ホームページへ広げる(3〜6か月)
- 電話の用件を1か月分書き出し、プロンプト①で回答集を作る。受付が答えてよい範囲を院長が決める
- 自費の治療ごとに、院内用の説明資料をプロンプト②でそろえる。カウンセリングで出た質問を足していく
- ホームページの文章を、プロンプト⑤と医療広告等ガイドラインで見直す
- 使う人を増やす前に、スタッフ向けの研修を行う
研修の内容や進め方によっては、国の助成金の対象になることがあります。対象は雇用保険の被保険者で、受給できるかどうかは労働局の審査で決まります。条件はAI研修に使える助成金で解説しています。
段階3:電話・予約・記録の仕組みを整え、患者さんの情報を扱う仕事へ(6か月〜)
- 電話の件数と用件の内訳をもとに、予約の電話をAIに受けさせるか、Web予約へ誘導するかを決める
- 安全管理ガイドラインに沿って、契約で保存・学習の扱いを確かめた環境を用意し、記録の入力やレセプトの点検など件数の多い仕事を、人が確かめる手順と一緒に仕組みにする
- 月ごとに作業時間、電話の取り次ぎの件数、手直しの件数を確かめ、続ける・広げる・やめるを決める
シス学の場合
シス学(システム経営学)は、AIエージェントを活用し、会社を「儲かるシステム」につくり変える経営学です。株式会社むさしAI研修が提供しています。
シス学では、仕事を「作業・確認・判断」に分けて考えます。歯科医院の代表的な書類の1つ、自費の治療の説明資料に当てはめると、次のようになります。
| 任せ先 | 受け持つ仕事 | 自費の説明資料では |
|---|---|---|
| AI | 作業(入力・転記・照合・下書き) | 院内の料金表と、院長の説明メモから、治療の流れ・費用・通院の目安・よくある質問の下書きを作る。ホームページに載せる版は、医療広告等ガイドラインで気になる表現を洗い出す |
| スタッフ | 確認(AIの結果を確かめ、例外に対応) | 受付が料金表と費用の数字を照らす。歯科衛生士が、カウンセリングで実際に出た質問と、メンテナンスの説明を足す |
| 院長 | 判断(方針・金額・最終の決定) | 治療の説明とリスクの書き方を決め、費用を決める。院内だけで使うか、ホームページにも載せるかを決める |
院長に集まっていた下書きや確認を、AIとスタッフに渡していく。シス学では、これを「時間創出(社長がいなくても回る)」と呼んでいます。レセプトの入力・点検のように患者さんの情報を扱う仕事は、レセプト入力・点検支援でご紹介しています。
月ごとに続けて進める形はシス学 AIコンサルティングです。月1回の定例ミーティング(90分)と壁打ち・相談会(60分)、月内のチャット相談で進め、オンラインで全国に対応しています。スタッフ向けのAI研修も、契約の時間の中で行います。
まずは30分の無料相談から。料金は、対象の業務と体制をお聞きしたうえで、無料相談でご案内します。日時を選んで無料相談を予約できます。
まとめ:歯科医院×生成AIは「求人と説明の文章」から始め、判断は歯科医師に残す
- 歯科診療所は65,624施設(2025年10月)で、7割は個人開設。歯科衛生士は養成校への求人人数倍率が23.1倍で、入学者も減っている。国の検討会も歯科の業務効率化が必要としている
- 生成AIは、電話の回答集、自費の説明資料、院内の手順書、求人原稿、ホームページの点検など、文章を読む・まとめる・書き直す仕事で使える
- 歯科向けには、音声での電子カルテ入力(歯周病検査を2人→1人)、予約電話のAI、来院前の相談のAIなどが公式に発表されている。歯科医院が生成AIの効果を数字で公表した例は、今回調べた範囲では見当たらない
- ホームページでは、根拠のない成功率、「1日で完了」、〇〇センター、体験談、説明のない前後の写真に注意する。患者さんの情報は院として確かめたサービスにだけ入れる。診断・治療の判断はAIに任せない
- 0〜3か月は患者さんの情報が入らない文章、3〜6か月で電話・自費の説明・ホームページへ、6か月〜で電話・予約・記録の仕組みへ。効果は数字で確かめる
まずは明日、いま出している歯科衛生士の求人原稿を、プロンプト④に貼り付けてみてください。最後に出てくる「応募を考える人が知りたいのに書かれていないこと」5つが、院内で採用の話し合いを始める材料になります。
よくある質問
小さな歯科医院でも、生成AIは使えますか?
使えます。専用のシステムがなくても、求人原稿、院内の手順書、ミーティングの議事録、電話の回答集など、患者さんの情報を入れずに作れる文章から始められます。料金や診療時間は院内の正しい情報と照らし、症状の電話は歯科医師に回してください。
口腔内写真やレントゲン画像をAIに入れても大丈夫ですか?
院として契約し、入力した内容が保存されない・学習に使われないことを契約などで確かめたサービスでなければ、入れないでください。名前やカルテ番号とひも付く写真や画像は、患者さんの情報として扱います。レントゲンなどから病気の有無を読むことは歯科医師の判断で、AIに任せる仕事ではありません。
インプラントや矯正の説明文をAIで作って、ホームページに載せてもよいですか?
下書きには使えますが、載せる前に院長が医療広告等ガイドラインの原文で確かめてください。根拠のない成功率、「1日で終わる」などの言い切り、他院との比較、体験談、説明のない治療の前後の写真は載せられません。自由診療は、公的医療保険が適用されない旨と標準的な費用を併記し、主なリスク・副作用なども分かりやすく書きます。
予約の電話をAIに受けさせてもよいですか?
予約の変更やキャンセルなど、決まった答えがある電話から使えます。痛みや腫れなど急ぐ相談、個別の判断を求められる電話は、AIだけで終わらせずスタッフや歯科医師に回す設計にします。歯科向けのAI電話のサービスでも、診断や治療方針の判断はAIが担わないと明記されています。
歯科衛生士の求人原稿をAIで作るときの注意点は?
職員の求人広告は、通常、医療広告に当たりません。ただし職業安定法で、虚偽の表示や誤解を生む表示は禁止され、求人の情報を正確で最新に保つことが求められています。AIが足した条件や「残業ゼロ」のような言い切りがないか、募集の条件と照らしてから出してください。
スタッフのAI研修に、助成金は使えますか?
研修の内容や進め方によっては、厚生労働省の人材開発支援助成金の対象になることがあります。訓練の計画届を出すなどの条件があり、対象は雇用保険の被保険者です。受給できるかどうかは労働局の審査で決まるため、日程を決める前に労働局か社会保険労務士に確かめてください。



PDF・11ページ/3項目の入力ですぐに読めます