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問い合わせ対応をAIで自動化するやり方|8ステップとそのまま使えるプロンプト

会議室で、社員たちがノートPCを前に座り、講師が正面の画面の表を指しながら説明している様子

「この前と同じ質問だな」と思いながら、一通ずつ返事を書いていませんか。営業時間、送料、納期、支払い方法、使い方。1件は数分でも、件数が重なると社員の1日を細かく削ります。答えに迷う問い合わせは社長に回り、社長の手も止まります。

かといって、いきなりAIにお客様へ直接返事をさせると、間違った答えや、会社として決めていない約束がそのまま届くおそれがあります。

この記事では、AIのルール決めから自動で返す範囲の決め方までを、8つのステップとそのまま使えるプロンプトで解説します。社員がこのやり方を自社の問い合わせで使えるようになる研修は、シス学 AI研修でご案内しています。

問い合わせ対応は、なぜ社長と社員の時間を取るのか

問い合わせ対応が時間を取る理由は、1件ごとの重さではありません。次のような形で、仕事が積み重なるからです。

  • 同じ質問がくり返し届く:営業時間、送料、納期など、答えが決まっている質問に、毎回一から返事を書いている
  • 答えが担当者の頭の中にある:「この場合はどう答えるか」が書かれておらず、担当者が休むと返事が止まる
  • 仕事が細切れになる:問い合わせはいつ届くかわからず、そのたびに手を止めて返事を書く
  • 迷うものが社長に集まる:値引き、返品、納期の約束など、判断が要る問い合わせは社長の確認待ちになる
  • 返事の中身と言葉づかいがそろわない:担当者ごとに答えや言い回しが違い、お客様が戸惑う

AIに任せられるのは、この中の「返事の文章を書く作業」です。何と答えるか、お客様に何を約束するかを決めるのは、これまでどおり人です。

カスタマーサポートで生成AIを使う会社は44.7%、効果を感じるのは33.8%

総務省の「令和8年版 情報通信白書」は、日本の企業に、業務の種類ごとの生成AIの活用状況を尋ねています。カスタマーサポートの結果は次のとおりです。

カスタマーサポートでの生成AIの活用(日本の企業)
答え割合
業務の流れがAI中心に変わっている9.9%
部署内の特定の業務で活用している22.1%
社員が個人の作業の効率化で活用している12.7%
(上の3つの合計)44.7%
未導入29.4%
活用の効果を感じる33.8%

効果を感じる割合が最も高かった業務は「議事録・メール作成補助」で、72.3%でした。問い合わせへの返事も、中身はメールの文章づくりです。

そこでこの記事では、効果を感じやすい「返信の下書き」から始め、お客様に届く前に必ず人が確かめる順番で組んでいます。振り分けや記録の集計まで含めた職種全体の使い方は、カスタマーサポートのAI活用で紹介しています。

問い合わせ対応にAIを使う8つのステップ

最初から全部の問い合わせを対象にせず、件数の多い種類から始めます。各ステップで使うプロンプトの全文は、次の章にまとめています。

8つのステップと担当
ステップやること担当できあがるもの
1使ってよいAIと、入れてよい情報を決める社長社内ルール1枚
2よくある質問を棚卸しするAI+担当者種類と件数の表
3回答の手順書を作る担当者・社長種類ごとの手順書
4AIに返信の下書きを作らせるAI返信の下書き
5社員が確認して送る担当者送った返事
6答えられない問い合わせは人へ回すAI+担当者・社長回す先と期限の表
7直した所を記録し、手順書に戻す担当者・社長対応の記録、新しい手順書
8自動で返す種類を決める社長自動で返す種類の一覧

Step 1:使ってよいAIと、入れてよい情報を決める

問い合わせのメールには、お客様の個人情報が入っています。個人情報保護委員会は、事業者が生成AIに個人情報を含む指示を入力するときは、利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確認するよう注意を呼びかけています。

本人の同意なく個人データを入力し、それが答えを出す以外の目的で扱われる場合は、個人情報保護法に違反するおそれがあるとしています。そのため、AIの提供者がそのデータを機械学習に使わないことなどを十分に確かめるよう求めています。

そこで、始める前に社長が次の3つを決め、1枚にまとめます。

  • 使ってよいAI:製品名と、入力したデータが学習に使われない設定かどうか(各社の公式の説明で確かめる)
  • 消してから入れる情報:お客様の名前、メールアドレス、電話番号、住所、注文番号。〔顧客A〕のように置き換える
  • 送るのは人:AIの下書きをそのままお客様に送らない

社内ルール全体の決め方は生成AIの社内ルールの作り方で解説しています。

Step 2:よくある質問を棚卸しする

過去1〜3か月分のメール、問い合わせフォーム、電話のメモを集め、Step 1で決めた情報を消します。そのうえでAIに種類ごとに分けさせ、件数を数えます(プロンプト1)。

分けた結果から、件数が多く、答えが決まっている種類を3〜5つ選びます。これが、最初にAIの下書きを使う対象です。選ぶときの基準は次のとおりです。

最初の対象にするかの判断(例)
種類答えのもと最初の対象に
営業時間・定休日サイトの会社案内する
送料料金表する
納期(在庫がある商品)在庫表と出荷の決まりする
使い方取扱説明書する
返品・交換規約と、そのつどの判断しない(Step 6で人へ)
苦情そのつどの判断しない(Step 6で人へ)

Step 3:回答の手順書を作る

選んだ種類ごとに、回答の手順書を1枚ずつ作ります。AIが下書きを作るときの「答えのもと」です。書く項目は次のとおりです。

回答の手順書に書く項目(送料の問い合わせの例)
項目書くこと例
当てはまる質問どんな問い合わせが、この手順書の対象か「送料はいくらか」「まとめて買うと送料は変わるか」
答え会社として決まっている答え〔送料の決まり〕
根拠答えのもとになる資料料金表、利用規約の〔該当の条〕
確かめること返事の前に見ておくこと届け先の地域、注文の金額
人に回す条件AIの下書きで返さないもの〔配送の対象外の地域〕への配送、送料の値引きを求められたとき
言葉づかいお客様への書き方の決まりです・ます調、最初にお問い合わせへのお礼、最後に連絡先
更新日と更新する人いつ、誰が直したか〔日付〕〔担当者名〕

手順書の下書きもAIに作らせられます(プロンプト2)。ただし、答えと根拠を決めるのは担当者と社長です。AIが書いた答えが、今の料金や規約と合っているかを必ず確かめます。

できた手順書は、担当者全員が開ける共有フォルダなど1か所に置き、ファイル名を「種類_更新日」にそろえます。書き方の詳しい手順はマニュアル作成にAIを使う方法で解説しています。

Step 4:AIに返信の下書きを作らせる

届いた問い合わせと、当てはまる手順書をAIに渡し、返信の下書きを作らせます(プロンプト3)。指示には、手順書に書いてあることだけで答え、書いていないことは推測しないと必ず入れます。

答えられない部分には「【要確認:理由】」、返金や納期などの約束には「【担当者が判断】」と印を付けさせます。下書きの後に、使った手順書と確認が必要な点を書かせると、Step 5の確認が早くなります。

Step 5:社員が確認して送る

AIの下書きは、担当者が読んで、直してから送ります。送るのは人です。確かめるのは次の5点です。

  • 答えが、今の料金・在庫・納期・規約と合っているか
  • お客様の質問に、もれなく答えているか
  • 返金、値引き、納期など、会社として約束する内容が入っていないか
  • お客様の気持ちに配慮した言葉づかいになっているか
  • 宛名、商品名、日付、数字の取り違えがないか

確認の手伝いもAIに頼めます(プロンプト4)。ただし、AIには指摘だけをさせ、直して送るのは担当者です。

Step 6:答えられない問い合わせは人へ回す

手順書にない質問や、判断が要る問い合わせは、AIの下書きを使わずに人へ回します。誰に、いつまでに回すかを先に表にしておきます。

人に回す問い合わせと回す先(例)
問い合わせ回す先決めておくこと
苦情・強い不満社長または〔責任者〕最初の返事を出す期限
返金・値引き・補償の求め社長担当者が答えてよい範囲
契約や注文内容の変更〔受注の担当者〕変更を受け付ける期限
体調・安全・法律にかかわる相談社長専門家に相談する条件
手順書にない質問〔担当者〕答えを作り、社長が確かめる

仕分けにもAIを使えます。届いた問い合わせを読ませ、「手順書で返せるもの」と「人に回すもの」に分けさせます(プロンプト5)。迷うものは人に回す、と決めておくのが安全です。

Step 7:直した所を記録し、手順書に戻す

1件ごとに、日付、種類、使った手順書、下書きを直した所と理由、人に回したかを、表に1行ずつ残します。

月に1回、この記録をAIに集計させます(プロンプト6)。同じ理由で何度も直している所は手順書を書き直します。何度も人に回っている質問は、社長が答えを決めて手順書を足します。こうして、AIの下書きで返せる範囲を少しずつ広げます。

Step 8:自動で返す種類を決める

チャットボットやAIエージェントで、お客様に自動で返事をすることもできます。ただし、自動にするのは、Step 7の記録で「直す所がほとんどなくなった」と確かめられた種類だけです。最初から自動にしない理由は3つあります。

  1. AIの答えには、間違いが混じることがある:個人情報保護委員会も、生成AIの答えには不正確な内容が含まれることがあると注意を呼びかけています
  2. 約束は取り消しにくい:返金や納期の約束を一度返すと、取り消しはお客様との信頼にかかわります
  3. 手順書が育っていない:手順書がそろう前に自動にすると、答えられない問い合わせにもAIが答えてしまいます

自動にするかどうかは社長が決めます。判断の基準は次のとおりです。

  • 間違えたときの影響が小さい種類から(営業時間、送料、定休日など)
  • 「直近〔20〕件で直す所がなかった」のように、基準を数字で決めておく
  • 返金・苦情・契約の変更・体調や安全の相談は、自動にしない
  • 自動にした後も、月に1回、自動で返した答えを抜き出して担当者が読む

問い合わせ対応にそのまま使えるプロンプト6つ

Step 1で使ってよいと決めた生成AIに、そのまま貼って使えます。〔 〕の中を自社の内容に置き換えてください。お客様の名前や連絡先は、貼る前に消すか置き換えます。

どのプロンプトの結果も、AIが作った下書きです。お客様に送る前、手順書に入れる前に、必ず人が確かめます。

問い合わせ対応に使うAIの選び方|下書き・チャットボット・AIエージェント

「問い合わせ対応 AI」で調べると、チャットボットやAIエージェントなど、いくつかの道具が出てきます。呼び名は製品によって違いますが、使い方で分けると次の3つです。

問い合わせ対応に使うAIの形の違い(一般的な傾向)
形どう動くかお客様に届くまで向いている会社
生成AIで返信の下書きを作る社員が問い合わせと手順書を渡し、AIが返信の下書きを作る社員が確かめてから送るこれから始める会社。この記事のStep 1〜7
チャットボットサイトやLINEなどで、お客様の質問に自動で答える。決めた質問と答えから選ぶ形と、生成AIが文章を作る形があるAIの答えが、そのままお客様に届くサイトやLINEからの質問が多く、答えが決まった種類の手順書がそろっている
AIエージェント届いたメールを読み、振り分け、手順書や台帳を調べて、下書きや記録づくりまで続けて進める送る前に人が確かめる流れを組み込めるメールの件数が多く、振り分けや記録まで任せたい

どの形でも、AIが答えのもとにするのは、Step 3で作る手順書です。手順書がないまま道具だけを入れても、AIは何を根拠に答えればよいか分かりません。製品を比べる前に、手順書が3〜5種類そろっているかを確かめてください。

製品を選ぶときは、入力したデータが学習に使われるかを各社の公式の説明で確かめます(Step 1)。AIエージェントの意味や、チャット型の生成AIとの違いは、AIエージェントとは?で詳しく解説しています。

問い合わせ対応のAI活用でよくある失敗

失敗1:古い資料をAIに渡している

料金や規約が変わったのに、手順書が古いままだと、AIは古い答えで下書きを作ります。対策:手順書に更新日と更新する人を書き、料金や規約が変わった日に直します。

失敗2:すべての問い合わせを最初から手順書にしようとする

めったに来ない質問まで手順書にしようとすると、いつまでも始められません。対策:件数の多い3〜5種類から始め、Step 7の記録を見ながら足していきます。

失敗3:下書きをそのまま送ってしまう

下書きがもっともらしく読めるほど、確認が甘くなります。忙しい日ほど起きやすい失敗です。対策:Step 5の5つの確認項目を手順書の先頭に書き、送るのは確かめた担当者と決めます。

失敗4:人に回す先を決めていない

「要確認」の印が付いた問い合わせが、誰にも拾われずに放っておかれます。対策:Step 6の表で回す相手と期限を決め、担当者が毎日見る場所1か所にまとめます。

失敗5:お客様のメールを丸ごと貼ってしまう

急いでいる日ほど、届いたメールを署名ごとAIに貼ってしまいます。対策:Step 1で決めた「消してから入れる情報」を、プロンプトを置く場所のいちばん上に書いておきます。

シス学の場合|問い合わせ対応を「作業・確認・判断」に分ける

シス学(システム経営学)は、AIエージェントを活用し、会社を「儲かるシステム」につくり変える経営学です。シス学では、仕事を「作業・確認・判断」に分けて考えます。問い合わせ対応に当てはめると、次のようになります。

問い合わせ対応の「作業・確認・判断」
任せ先受け持つ仕事問い合わせ対応では
AI作業問い合わせの種類分け、返信の下書き、人に回すかの仕分け、記録の集計
社員確認下書きが手順書と今の対応に合っているかを確かめて送る。手順書にない問い合わせに対応する
社長判断返金・値引き・特別な対応をするか、手順書に足す答え、自動で返す種類を決める

社長に集まっていた返事の下書きや確認を、AIと社員に渡します。社長が判断だけを受け持つことで、社長がいなくても回る会社(時間創出)を目指します。

シス学 AI研修では、社員が自社の問い合わせを題材に、棚卸しから手順書、下書き、確認、人に回す線引きまでを練習します。職種ごとの進め方はシス学 AIカスタマーサポートにまとめています。振り分けや記録までAIエージェントで仕組みにする場合は、シス学 AI開発で進めます。

研修は、条件を満たせば厚生労働省の人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の対象となる場合があります。対象は雇用保険の被保険者です。計画届は、研修を始める日の6か月前から1か月前までに出します。

受講料はいったん全額を会社が支払い、支給されるかどうかは労働局の審査で決まります。受給を保証するものではありません。このコースは令和8年度末までの時限措置です。シス学では、助成金の有無で受講料を変えません。詳しくはAI研修に使える助成金をご覧ください。

まずは無料相談から。料金は、対象の業務と体制をお聞きしたうえで、無料相談でご案内します。全国オンラインで対応しています。30分の無料相談で、御社の問い合わせのどこからAIに任せられるかを一緒に整理します。

まとめ

  • 最初に、使ってよいAIと、消してから入れる情報を社長が決める
  • 件数が多く答えが決まった3〜5種類だけ手順書にし、AIには手順書に書いてあることだけで下書きさせる
  • 送るのは人。判断が要る問い合わせは、回す先と期限を決めて人へ回す
  • 直した所を記録して手順書に戻し、直す所がなくなった種類だけ、社長が自動にするかを決める

まずは、過去1か月分の問い合わせを書き出し、いちばん多い種類を1つ選んでみてください。その種類の手順書1枚が、AIに任せる最初の材料になります。仕事の洗い出し方は業務の棚卸しで解説しています。

よくある質問

問い合わせ対応は、AIで完全に自動化できますか?

答えが決まっている質問に自動で返す仕組みは作れます。ただし、最初から完全に自動にすることはおすすめしません。AIの答えには間違いが混じることがあるためです。まずはAIが下書きを作り、社員が確かめて送る形で始めます。直す所がほとんどなくなった種類から、社長が自動にするかを決めます。返金や苦情など判断が要る問い合わせは、人が対応します。

チャットボットとAIエージェントは、何が違いますか?

チャットボットは、サイトやLINEなどでお客様の質問に自動で答える道具です。AIエージェントは、届いたメールを読み、振り分け、手順書や台帳を調べて、下書きや記録づくりまで続けて進めます。どちらも、答えのもとになる手順書がそろっていることが前提です。

お客様からのメールを、そのままAIに貼っても大丈夫ですか?

お客様の名前、メールアドレス、電話番号、住所、注文番号は、消すか置き換えてから貼ります。個人情報保護委員会は、個人情報を含む指示を入力するときは利用目的の範囲内かを十分に確認するよう求めています。あわせて、AIの提供者がデータを機械学習に使わないことなどを確かめるよう呼びかけています。

どの生成AIを使えばよいですか?

会社として使ってよいと決めたものを使います。選ぶときは、入力したデータが学習に使われるかどうかを、各社の公式の説明で確かめてください。この記事のプロンプトは、特定の製品に向けたものではありません。

電話の問い合わせにも使えますか?

電話の内容をメモに残しておけば、Step 2の棚卸しやStep 3の手順書づくりの材料になります。手順書があれば、電話で答えるときも担当者による答えの違いを減らせます。

手順書は、どのくらいの数を用意すればよいですか?

最初は、件数の多い3〜5種類で十分です。人に回った問い合わせのうち、何度も出てくるものを社長が答えを決めて足していくと、AIの下書きで返せる範囲が少しずつ広がります。

出典・参考

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