はじめに|電話対応マニュアルは「口に出す言葉」まで書く
電話の最中に使えるマニュアルには、場面ごとに「言う言葉」「確かめること」「自分で答えない線」の3つが書いてあります。よくある書き方と、電話の最中に使える書き方を比べると次のようになります。
| 場面 | 使えない書き方 | 使える書き方 |
|---|---|---|
| 保留 | 長くお待たせしない | 保留は〔30〕秒まで。超えそうなら一度戻り「確認に時間がかかっております。〔5〕分以内に折り返してもよろしいでしょうか」 |
| 取次 | 担当者に取り次ぐ | 用件の言葉で取次表を引く。表にない用件は〔総務の担当〕へ |
| 折り返し | 後ほど折り返す | 「〔15時〕から〔16時〕の間に、〔担当者名〕からお電話いたします」と時間の幅で約束する |
| 苦情 | 丁寧に対応する | 聞く → 事実を復唱 → ご不便へのお詫び → 〔責任者〕へ引き継ぐ。その場で非を認める言い方、返金の約束はしない |
近いテーマは別の記事で解説しています。メールやフォームの問い合わせに返信の下書きを作る流れと、自動で返す範囲の決め方は問い合わせ対応をAIで自動化するやり方です。手順書一般の書き方はマニュアル作成にAIを使う方法、新人の育成表や練習問題は新人教育をAIで仕組み化するやり方にまとめています。この記事は、電話で口に出す言葉と回す先だけを扱います。
電話対応マニュアルの雛形(8場面・A4 1枚)
手本にした各社の項目をまとめ、中小企業の受付・事務の1人が電話の横に置ける量に絞りました。〔 〕の数字は社内で決めます。表の数字は説明のための例で、法令や指針が定めた基準ではありません。
| 場面 | 例文(最初の一言) | 確かめること | 自分で答えない線 |
|---|---|---|---|
| 1. 名乗り | 「お電話ありがとうございます。〔会社名〕の〔名前〕でございます」。〔3〕コールを超えたら「お待たせいたしました」から | 相手の会社名と名前、用件を復唱する | ― |
| 2. 取次 | 「〔担当者名〕でございますね。確認いたしますので、少々お待ちください」 | 取次表で、用件から担当を引く | 担当がいるかどうかを先に言わない |
| 3. 保留 | 「〔30〕秒ほどお待ちいただけますか」 | 保留の時間 | 〔30〕秒を超えたら一度戻り、折り返しに切り替える |
| 4. 不在・伝言 | 「あいにく〔担当者名〕は席を外しております。〔15時〕ごろ戻る予定です」 | 伝言メモの7項目 | 不在の理由(休み・病院など)は言わない |
| 5. 折り返し | 「〔15時〕から〔16時〕の間に、〔担当者名〕からお電話いたします」 | 相手の電話番号を復唱する | 時刻を1つに決めて約束しない |
| 6. 苦情の一次対応 | 「ご不便をおかけし、申し訳ございません。詳しくお聞かせいただけますか」 | いつ・何が・どうなったかを復唱する | 非を認める言い方、返金・補償の約束 |
| 7. カスハラ | 「これ以上のご要望には、この電話ではお応えできません。〔責任者〕から改めてご連絡いたします」 | 時刻・言われた言葉を記録する | 1人で長く受け続けない。社長が決めた基準で電話を終える |
| 8. 営業・間違い・名乗らない電話 | 「あいにく、そのようなご案内はお受けしておりません」 | 相手の会社名と名前 | 担当者の名前・在席・直通の番号を教えない |
令和8年10月1日から、カスハラ対策は会社の義務
電話対応マニュアルを今つくる理由がもう1つあります。改正労働施策総合推進法により、令和8年10月1日から、事業主はカスタマーハラスメント(カスハラ)を防ぐ措置を講じなければならなくなりました。厚生労働省のリーフレットは、カスハラには電話やSNSなどで行われるものも含まれると明記しています。
| 資料 | 書かれていること |
|---|---|
| リーフレット(講ずべき措置①〜⑩) | 電話対応マニュアルに関係が深いのは2つ。②カスハラの内容と、あらかじめ定めた対処の内容を労働者に周知する。⑧特に悪質と考えられるカスハラへの対処の方針を先に定めて周知し、対処できる体制を整える |
| 指針(カスハラの例) | 「同様の質問を執拗に繰り返すこと」「長時間に渡る居座りや電話で労働者を拘束すること」 |
| 指針(対処の内容の例) | その場の対応の方針について管理監督者に指示を仰ぐ。可能な限り一人で対応させない。録音・録画する(個人情報保護法等を守る)。十分な説明をしたうえで繰り返しの要求が続く場合は、一定の時間の経過をもって電話を切る。犯罪に当たりうる言動は警察へ通報する |
| 指針(周知の例) | 顧客等への対応に関するマニュアル等に、カスハラの内容と対処の内容を記載し、労働者に周知する |
| 実態調査(回答した企業 n=7,775) | 過去3年間に顧客等からの著しい迷惑行為の相談があった企業は27.9%(令和2年度の19.5%から8.4ポイント増) |
| 実態調査(相談があった企業 n=2,167) | 相談件数が「件数が増加している」は23.2%で、「件数は減少している」の11.4%を上回る |
| 実態調査(迷惑行為に当たると判断した事案があった企業 n=1,880、複数回答) | 事案の内容は「継続的な(繰り返される)、執拗な(しつこい)言動(頻繁なクレーム、同じ質問を繰り返す等)」72.1%、「威圧的な言動」52.2%、「精神的な攻撃」44.7%、「拘束的な言動(不退去、居座り、監禁、長電話等)」20.0%。被った損害や被害は「通常業務の遂行への悪影響」63.4%が最も多い |
実態調査は令和5年度のもので、企業は従業員30人以上、言葉は「顧客等からの著しい迷惑行為」で尋ねています。指針自身が、対応のマニュアルに書いて周知することを例に挙げています。電話対応マニュアルの7番目の場面(カスハラ)は、この義務の受け皿になります。指針の対処の例は限定列挙ではなく、各事業主が実態に応じて対処の内容を定めるとされています。電話を切るまでの時間や回数の数字も、指針にはありません。中身の決め方は用途7で扱います。なお指針は、苦情のすべてがカスハラに当たるわけではないとしています。6番目(苦情の一次対応)と7番目を分けて書くのはそのためです。
この記事の10の用途と、使う順番
1週間で初版をそろえる日程の例です。初版は上位5件の用件と8場面だけで十分です。
| 時期 | 用途 | 使う人 |
|---|---|---|
| 前の月 | 1. 電話の用件を数えて、例文を作る順番を決める | 受付・事務 |
| 1日目 | 2. 名乗り・取次・保留・折り返しの基本4場面の例文を作る | 受付 |
| 1日目 | 3. 用件の言葉から引ける取次表を作る | 総務・社長 |
| 2〜3日目 | 4. よくある問い合わせ上位5件の答え方と、答えない線を決める | 担当者 |
| 2〜3日目 | 5. 不在のときの伝言メモと、折り返しの約束を型にする | 受付 |
| 4日目 | 6. 苦情の一次対応の例文と、引き継ぐ相手を決める | 受付・責任者 |
| 4日目 | 7. カスハラのときの対応と、電話を切る基準を決める | 社長 |
| 4日目 | 8. 営業電話・間違い電話・名乗らない電話の断り方を決める | 受付 |
| 5日目 | 9. 声に出して直し、A4 1枚にまとめる | 受付・責任者 |
| 5日目以降 | 10. AIをお客様役にして、電話の練習をする | 新人・受付 |
プロンプトの使い方と、AIに入れてはいけない情報
- 〔 〕の部分を、自社の言葉や数字に置き換えてから貼ります
- 使うAIサービスは、会社として使ってよいと決めたものにします。決め方は生成AIの社内ルールの作り方で解説しています
- どのプロンプトにも「材料に書かれていないことは書かない」「分からない所は〔要確認〕と書く」を入れています。電話の例文にAIが勝手な約束(「すぐに返金いたします」など)を混ぜると、受けた人がそのまま口にしてしまうからです
- AIが作った例文は、受付の担当者が声に出して読み、責任者が中身を確かめてから使います
電話のメモや着信の記録には、相手の名前と電話番号が入っています。個人情報保護委員会は、生成AIサービスを使う事業者に2つの注意を呼びかけています。1つは、個人情報を含むプロンプトを入れるなら、利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確かめることです。もう1つは、本人の同意なく個人データを入れるなら、サービスの提供者がそのデータを機械学習に使わないこと等を十分に確かめることです。例文づくりに要るのは用件の種類と言い回しだけなので、名前は〔お客様A〕、電話番号は〔電話番号〕に置き換えてから貼ります。
用途1. 電話の用件を数えて、例文を作る順番を決める【受付・事務】
こんな課題を解決
電話対応マニュアルを「よくある電話」から書こうとしても、受付の人の記憶に残っているのは、困った電話と最近の電話だけです。毎日のように来る用件ほど当たり前すぎて挙がらず、例文のない場面が残ります。
どう解決したか
1か月だけ、受けた電話を下の表に1行ずつ書きます。用件は相手が言った言葉のまま書きます。1か月たったら名前と番号を消してAIに渡し、用件の種類ごとの件数と時間帯を出させます。件数の多い上位5件が、例文を最初に作る対象です。
| 日付・時刻 | 相手の種類 | 用件(言われた言葉のまま) | 対応 | かかった分 | 回した先 |
|---|---|---|---|---|---|
| 〔10/1 9:10〕 | 取引先 | 「先週の見積の件で〔担当者名〕さんを」 | 取次 | 〔1〕 | 〔営業〕 |
| 〔10/1 10:30〕 | お客様 | 「注文した品はいつ届きますか」 | その場で回答 | 〔3〕 | ― |
| 〔10/1 13:05〕 | 営業 | 「経費削減のご案内で、社長様を」 | 断り | 〔2〕 | ― |
| 〔10/1 16:40〕 | お客様 | 「届いた商品が壊れていた」 | 苦情の一次対応 | 〔8〕 | 〔責任者〕 |
ポイント
- 記録は1か月で足ります。月末・月初に来る用件(請求、支払いの確認など)を拾うため、月をまたいで1か月にします
- 時間帯の集計は、例文づくりではなく、電話の当番を決める材料にもなります。件数の多い時間帯に、例文を覚えた人を置きます
- 「回した先がなかった用件」は、取次表(用途3)の空白です。最初に担当を決めます
用途2. 名乗り・取次・保留・折り返しの基本4場面の例文を作る【受付】
こんな課題を解決
電話の基本の4場面(名乗り・取次・保留・折り返し)は、人によって言い方がばらばらになりやすい所です。「少々お待ちください」のまま2分待たせる。「折り返します」とだけ言って時刻を伝えない。担当者が在席かどうかを先に言ってしまい、手が離せないときに断りにくくなる。こうした失敗がここで起きます。
どう解決したか
社内の数字(何コールで出るか、保留は何秒までか、折り返しの時間の幅)を先に決め、その数字を条件にしてAIに例文を作らせます。1つの場面に2〜3本、状況の違う例文を出させ、受付の人が言いやすいものを選びます。
ポイント
- 保留の上限と折り返しの幅は、社長か責任者が数字で決めます。数字があれば、初日の人でも「30秒たったから一度戻る」と判断できます
- 新人がつまずきやすいのは、保留の長さ、復唱の抜け、時刻1つでの折り返しの約束の3か所です。例文の中に、この3つを先に入れておきます
- 保留・転送の電話機の操作は、例文と別に、機種ごとのボタンの押し方を写真1枚で横に貼ります
用途3. 用件の言葉から引ける取次表を作る【総務・社長】
こんな課題を解決
取次で手が止まるのは、受付が「だれが何の担当か」を覚えていないからです。担当者の一覧表があっても、相手は「請求書の件で」「この前の工事の件で」と用件で話すので、名前の一覧からは引けません。
どう解決したか
担当者の一覧ではなく、相手が口にする言葉から引ける表にします。用途1の記録の「言われた言葉」と、担当の割り振りをAIに渡して、言葉→担当→不在のときの行き先の表を作らせます。どの言葉にも当たらないときの行き先を1つだけ決めておきます。
| 相手が言う言葉 | 担当 | 担当が不在のとき | 受付が言ってよいこと |
|---|---|---|---|
| 請求書、振込、支払い | 〔経理の担当〕 | 〔総務の担当〕 | 「担当から折り返します」まで |
| 見積、値段、納期 | 〔営業の担当〕 | 〔営業課長〕 | 金額・納期は言わない |
| 工事、修理、点検の日程 | 〔工務の担当〕 | 〔工務課長〕 | 予定表に入っている日時だけ |
| 採用、求人、面接 | 〔総務の担当〕 | 〔社長〕 | 面接の日時の確認まで |
| どれにも当たらない | 〔総務の担当〕 | 〔社長〕 | 用件を伝言メモに取る |
ポイント
- 担当の割り振りを決めるのは社長か総務です。AIが作るのは表の形と言葉のまとめまでです
- 「受付が言ってよいこと」の列が、受付の人を守ります。金額や納期を聞かれても、表を見て「担当からお伝えします」と言えます
- 担当が替わった日に、その日のうちに表を直します。表が古いと、辞めた人への取次が続きます
用途4. よくある問い合わせ上位5件の答え方と、答えない線を決める【担当者】
こんな課題を解決
「注文した品はいつ届きますか」「何時まで開いていますか」のような電話は、受付が答えれば1〜2分で終わります。けれども答えてよい範囲が決まっていないと、受付は全部を担当に回し、担当の手が止まります。逆に受付が答えすぎると、在庫のない商品の納期を約束してしまいます。
どう解決したか
用途1の上位5件について、「その場で答える」例文と「確認して折り返す」例文の2本を作ります。答えのもとになる資料(営業時間、送料表、在庫の見方)をAIに渡し、資料にあることだけで、電話で話す長さの例文にさせます。メールで返す文章と違い、電話の例文は1文を短くし、相手の言葉を復唱してから答えます。
ポイント
- 例文は上位5件に各2本、計10本から始めます。めったに来ない用件は「確認して折り返します」の一言で足ります
- 答えのもとの資料は、担当者が今の料金・在庫と合っているかを確かめます。資料が古いと、例文ごと古くなります
- 同じ電話にメールやフォームでも答えている場合は、問い合わせ対応をAIで自動化するやり方の手順書を答えのもととして共有すると、電話とメールで答えがずれません
用途5. 不在のときの伝言メモと、折り返しの約束を型にする【受付】
こんな課題を解決
伝言メモの失敗は、あとで分かります。電話番号が1けた違う、相手の会社名はあるが名前がない、「急ぎかどうか」が書いていない。担当者は折り返せず、お客様からは「伝わっていない」と2回目の電話が来ます。
どう解決したか
伝言メモの項目を7つに決め、電話を受けながら埋める順番にします。走り書きのメモは、名前と番号を伏せたうえでAIに渡し、担当者へ送るチャットの文に整えさせます。電話番号は、AIには渡さず、受付が復唱して確かめたものを最後に手で入れます。
| 項目 | 書くこと | 電話で言う言葉 |
|---|---|---|
| 1. 受けた日時 | 日付と時刻 | ― |
| 2. 相手の会社名・名前 | 漢字が分からなければカタカナで | 「恐れ入りますが、お名前をもう一度お願いできますか」 |
| 3. 電話番号 | 復唱して確かめた番号 | 「念のため、お電話番号を復唱いたします」 |
| 4. 用件 | 相手の言葉のまま、1〜2行 | 「〔用件〕の件でございますね」 |
| 5. 折り返しの要否と時間帯 | 要・不要、相手の都合のよい時間の幅 | 「何時ごろでしたらご都合よろしいでしょうか」 |
| 6. 急ぎかどうか | 急ぎ・今日中・急がない | 「お急ぎのご用件でしょうか」 |
| 7. 受けた人 | 自分の名前 | 「私、〔名前〕が承りました」 |
ポイント
- 不在の理由(休み、通院、外出先)は電話で言いません。「席を外しております」「本日は終日不在にしております」のどちらかにそろえます
- 〔要確認〕が出た項目は、その電話で聞きそびれた項目です。同じ項目で何度も出るなら、例文(用途2)に聞く一言を足します
- 折り返しをだれがいつしたかを、伝言と同じ場所に1行残します。2回目の電話が来たとき、受付がすぐ答えられます
用途6. 苦情の一次対応の例文と、引き継ぐ相手を決める【受付・責任者】
こんな課題を解決
苦情の電話を最初に受けるのは、多くの場合、担当者ではなく受付です。言葉に詰まって「申し訳ございません、こちらのミスです」と認めてしまう、反対に「担当でないので分かりません」と突き放してしまう。どちらも、あとで責任者が対応するときの足かせになります。
どう解決したか
受付の役目を「聞いて、復唱して、引き継ぐ」までと決め、その範囲の例文を作ります。お詫びは、ご不便やご不快をかけたことへのお詫びにとどめ、原因や責任の判断はしません。言ってよい言葉と避ける言葉を表にして、例文の横に置きます。
| 段階 | 言ってよい言葉 | 避ける言葉 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 聞く | 「詳しくお聞かせいただけますか」 | 「でも」「ですから」 | 話をさえぎると、怒りが強くなる |
| 復唱 | 「〔日付〕にお届けした〔商品〕が、〔状態〕だったということですね」 | 自分の言葉への言い換え | 事実を相手の言葉でそろえる |
| お詫び | 「ご不便をおかけし、申し訳ございません」 | 「こちらのミスです」「すぐ返金します」 | 原因と補償は責任者が決める |
| 引き継ぎ | 「〔責任者名〕から、〔本日17時〕までにご連絡いたします」 | 「担当でないので分かりません」 | 次にだれがいつ連絡するかを約束する |
ポイント
- 苦情を受けたら、伝言メモ(用途5)に「苦情」と書いて、その日のうちに責任者へ回します。責任者が折り返す時刻は、受付が電話で約束した時刻に合わせます
- 苦情の中身は、月に1回、用途1の記録と一緒に集計します。同じ苦情が続くなら、直すのは電話の例文ではなく、商品やサービスの側です
- 苦情がカスハラに変わる境目は、受付が決めません。用途7で社長が決めた基準に従います
用途7. カスハラのときの対応と、電話を切る基準を決める【社長】
こんな課題を解決
同じ要求を1時間くり返す電話、大声で責め続ける電話を、受付の人が1人で受け続けている。切ってよいのか分からないので、切れない。厚生労働省の令和5年度の実態調査でも、こうした電話に近い内容が上位に並びます。対象は、顧客等からの著しい迷惑行為に当たると判断した事案があった企業(n=1,880、複数回答)です。最も多い内容は、継続的・執拗な言動(頻繁なクレーム、同じ質問を繰り返す等)で72.1%でした。長電話を含む拘束的な言動も20.0%あります。
どう解決したか
令和8年10月1日に義務化された措置に沿って、社長が電話での対処の内容を決め、マニュアルの7番目の場面に書きます。指針の対処の例をもとに、AIに「社内の決まり」の下書きを作らせ、時間や回数は社長が〔 〕に数字を入れます。指針は「一定の時間の経過をもって」と書くだけで、何分・何回という数字は示していません。下の表の〔3〕回・〔10〕分・〔30〕分は説明のための例で、公的な基準ではありません。
| 決めること | 例 | 指針の対処の例 |
|---|---|---|
| 報告 | 「同じ要求が〔3〕回」「大声・暴言」「〔10〕分を超える」のどれかで、保留にして〔責任者〕に報告する | 管理監督者に直ちに報告し、その場の対応の方針について指示を仰ぐ |
| 交代 | 報告を受けた〔責任者〕が電話を代わる。受付を1人で受け続けさせない | 可能な限り一人で対応させない。必要に応じて管理監督者等が代わって対応する |
| 記録 | 日時、言われた言葉、要求、対応した人を記録する。録音するなら、社内の決まりで扱いを決める | 録音・録画する(個人情報保護法等を守る) |
| 電話を終える | 十分に説明したうえで同じ要求が続く場合、通話が〔30〕分を超えたら、決めた一言で電話を終える | 十分な説明を行ったうえで繰り返しの要求が続く場合、一定の時間の経過をもって電話を切る |
| 通報 | 脅す言葉、「今から行く」などは、通話を終えたらすぐ社長に伝え、警察へ通報する | 犯罪に該当しうる言動は警察へ通報する |
ポイント
- 回数・時間・電話を終える基準は、社長が決める「判断」です。AIに決めさせず、下書きの〔 〕に社長が数字を入れます
- 決まりは書いただけでは足りません。指針は、カスハラの内容と対処の内容を労働者に周知することを求めています。朝礼で読み合わせ、電話の横のA4 1枚(用途9)に入れます
- 指針は、対策を講じる際に、消費者の権利や障害者差別解消法に留意する必要があるともしています。障害のある方が、不当な差別的取扱いをしないよう求めることや、社会的障壁の除去が必要だと伝えること自体は、カスハラに当たりません。「話が長い」だけを、電話を終える基準にしません
- 「過度な要求を繰り返すなど特に悪質と考えられるもの」への対処の方針を先に決めて周知し、対処できる体制を整えることも、講ずべき措置です(リーフレットの⑧)。指針は対処の例に、警察への通報、警告文の発出、法令の制限内で商品の販売やサービスの提供をしないことを挙げています。どれを使うかは社長が決めます
用途8. 営業電話・間違い電話・名乗らない電話の断り方を決める【受付】
こんな課題を解決
「社長様はいらっしゃいますか」で始まる営業電話に、受付が毎回迷います。断ってよいのか、取引先だったらどうしよう、と考えているうちに社長に取り次いでしまい、社長の手が止まります。名乗らない相手に担当者の名前や在席を教えてしまうこともあります。
どう解決したか
社長が「取り次がない電話」を決め、断りの例文を3つの型で作ります。取引先かどうか分からないときのために、会社名と名前を聞いて伝言メモに取る型も用意します。判断に迷う電話は、取り次がずに伝言にして、あとで担当者が決めます。
| 型 | よくある最初の一言 | 例文 |
|---|---|---|
| 営業電話 | 「〔経費削減〕のご案内で、社長様を」 | 「あいにく、お電話でのご案内はお受けしておりません。資料はホームページのお問い合わせ先からお送りください」 |
| 名乗らない電話 | 「社長いる?」「担当の人に代わって」 | 「恐れ入りますが、御社名とお名前をお伺いできますか。担当の者から折り返しいたします」 |
| 間違い電話 | 「〔別の会社名〕さんですか」 | 「こちらは〔会社名〕でございます。お掛け間違いではないでしょうか」 |
ポイント
- 「取り次がない電話」を決めるのは社長です。受付に判断を任せると、断ったあとで「あれは大事な相手だった」と言われ、受付が責められます
- 断った営業電話の会社名は、用途1の記録に残します。同じ会社から何度もかかるなら、2回目の例文を使います
- 社長あての電話を一律に取り次がない会社では、例文に「社長あてのご用件は、〔総務の担当〕が承ります」と行き先を入れます
用途9. 声に出して直し、A4 1枚にまとめる【受付・責任者】
こんな課題を解決
AIが作った例文は、文字で読むと整っていても、声に出すと長すぎる、言いにくい、敬語がおかしい、ということがあります。また、例文が何ページにもなると、電話の最中に開けず、結局だれも見なくなります。使われなくなるよくある原因は、量が多い、置き場所が遠い、更新が伝わらない、の3つです。
どう解決したか
受付の人が、例文を1本ずつ声に出して読み、つかえた所に印を付けます。そのうえで例文と印をAIに渡し、言いにくい所の直しと、敬語の誤りの指摘をさせます。直した例文は、8場面と上位5件だけをA4 1枚にまとめ、電話の横に置きます。
ポイント
- A4 1枚は、電話の横に紙で1枚、共有フォルダの決まった場所に1つ置きます。パソコンの画面で探す手間があると、電話中には開きません
- 更新のきっかけを決めておきます。担当が替わった日、料金や営業時間が変わった日、同じ用件で例文にない電話が〔3〕回続いた日です
- 1枚の最後に、更新した日と、更新した人の名前を書きます。古い紙が電話の横に残っていないかを、更新のたびに確かめます
用途10. AIをお客様役にして、電話の練習をする【新人・受付】
こんな課題を解決
マニュアルを読んだだけでは、電話は取れるようになりません。ロールプレイが効くことは分かっていても、お客様役を務める先輩の時間が取れず、新人は本番の電話でいきなり苦情を受けることになります。
どう解決したか
AIにお客様役をさせ、文字のやり取りで練習します。音声で会話できるAIサービスを会社で使っているなら、声で練習することもできます。練習のあと、AIにマニュアルの例文と比べて点検させ、新人は直された所だけを先輩に確かめてもらいます。先輩の時間は、お客様役ではなく最後の確認だけになります。
| お客様役 | 練習すること | 使う例文 |
|---|---|---|
| 早口で、名前を1回しか言わない取引先 | 聞き返しと復唱 | 用途2・用途5 |
| 担当者が不在で、急いでいるお客様 | 不在の伝え方と、折り返しの時間の幅 | 用途5 |
| 届いた商品が壊れていたと怒っているお客様 | 聞く・復唱・お詫び・引き継ぎ | 用途6 |
| 同じ要求を何度もくり返すお客様 | 保留にして報告する合図 | 用途7 |
| 社長に代われと言う営業電話 | 断りの例文 | 用途8 |
ポイント
- 練習の役に、実在のお客様の名前や本当にあった苦情の細部を使いません。用途1の記録から、用件の種類だけを借ります
- AIの点検は下書きです。「この言い方でよいか」の最後の確認は、マニュアルを作った責任者がします
- 新人の育成全体(期間ごとの育成表、4択の練習問題、一人立ちのチェック表)は新人教育をAIで仕組み化するやり方にまとめています。電話はその中の1つの業務として組み込めます
シス学の場合|電話対応を「作業・確認・判断」に分ける
シス学(システム経営学)は、AIエージェントを活用し、会社を「儲かるシステム」につくり変える経営学です。シス学では、仕事を「作業・確認・判断」に分けて考えます。電話対応マニュアルづくりに当てはめると、次のようになります。
| 任せ先 | 受け持つ仕事 | 電話対応では |
|---|---|---|
| AI | 作業 | 電話の記録の集計、場面ごとの例文の下書き、取次表の形づくり、伝言メモの清書、声に出して直す所の指摘、練習のお客様役と点検 |
| 社員(受付・担当者・責任者) | 確認 | 例文を声に出して直す。答えのもとの資料が今の料金・在庫と合っているかを確かめる。練習の点検の最後を見る。苦情を引き継いで対応する |
| 社長 | 判断 | 保留の上限・折り返しの幅・受付が答えてよい範囲を決める。取り次がない電話を決める。カスハラのとき電話を終える基準と、通報の判断をする |
電話は、社長の時間を細かく削る仕事の代表です。営業電話の取次、受付が答えられない質問、苦情の最初の一言が、そのつど社長に回ってきます。例文と取次表と線引きを書いておけば、社長に回るのは「判断」の電話だけになります。社長に集まっていた電話を受付と担当者に渡すことは、シス学の3つのシのうち「時間創出」に当たります。
シス学 AI研修では、社員が自社の電話の記録を題材に、この記事のような例文・取次表・伝言メモをAIで作り、声に出して直すところまで練習します。研修は、条件を満たせば厚生労働省の人材開発支援助成金の対象となる場合があります。ただし、電話応対のマナーそのものを身につける講習は「接遇・マナー講習等」として助成の対象外です。令和8年8月3日以降に出す計画では、DX化に関する訓練でも同じ扱いです。対象は雇用保険の被保険者で、計画届は研修を始める日の6か月前から1か月前までに出します。受講料はいったん全額を会社が支払い、支給されるかどうかは審査で決まるため、受給を保証するものではありません。事業展開等リスキリング支援コースは令和8年度末までの時限措置です。シス学では、助成金の有無で受講料を変えません。詳しくはAI研修に使える助成金をご覧ください。
まずは無料相談から。料金は、対象の業務と体制をお聞きしたうえで、無料相談でご案内します。全国オンラインで対応しています。30分の無料相談で、御社の電話のどの場面から例文と線引きを決めるかを一緒に整理します。
まとめ|10の用途に共通する4つのポイント
- 流れ図ではなく、口に出す言葉を書く:場面ごとに「例文」「確かめること」「自分で答えない線」の3つをそろえます。保留〔30〕秒、折り返しは〔1時間〕の幅、のように数字で決めると、初日の人でも守れます
- 記録から作り、上位5件から始める:1か月の電話の記録を集計し、件数の多い5件に各2本、計10本の例文から始めます。AIには資料に書かれていることだけで例文を作らせます
- 線を引くのは社長:受付が答えてよい範囲、取り次がない電話、カスハラのとき電話を終える基準は、社長が決めます。令和8年10月1日からは、カスハラへの対処を決めて周知することが会社の義務です
- A4 1枚にして、声に出して直し、練習する:電話の横に置ける量に絞り、担当の交代や同じ用件が続いた日に直します。練習はAIをお客様役にして、先輩は最後の確認だけを受け持ちます
最初の1歩は、明日から1か月、受けた電話を用途1の記録表に1行ずつ書くことです。同時に、今いちばん迷っている場面(保留が長くなる、折り返しの約束がばらばら、など)を1つ選びます。用途2のプロンプトで例文を3本作り、受付の人に声に出して読んでもらってください。1か月後に記録表を用途1のプロンプトで集計すれば、次に例文を作る上位5件が決まります。仕事全体のどこから手を付けるかは、業務の棚卸しのやり方が使えます。
よくある質問
電話対応マニュアルには、何を書けばよいですか?
名乗り、取次、保留、不在・伝言、折り返し、苦情の一次対応、カスハラ、営業電話などの断り、の8場面を立てます。場面ごとに、口に出す例文、言う前に確かめること、受付が自分で答えない線の3つを書きます。そのうえで、よくある用件の上位5件の答え方を足します。最初はA4 1枚に収まる量で十分です。
電話対応マニュアルの例文は、何本あれば形になりますか?
8場面に1〜2本ずつと、よくある用件の上位5件に「その場で答える」「確認して折り返す」の2本ずつ、計10本から始めるのが目安です。例文にない電話が同じ用件で何度か続いたら、その用件の例文を足していきます。
電話の内容や相手の名前を、AIに入れてもよいですか?
例文や取次表づくりに要るのは、用件の種類と言い回しだけです。相手の名前は〔お客様A〕、電話番号は〔電話番号〕のように置き換えてから貼ります。個人情報保護委員会は、個人情報を含むプロンプトを入れるなら、利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確かめるよう注意を呼びかけています。本人の同意なく個人データを入れるなら、サービスの提供者がそれを機械学習に使わないこと等を十分に確かめるよう呼びかけています。
カスハラの電話は、こちらから切ってもよいのですか?
厚生労働省の指針は、十分な説明をしたうえでなお繰り返しの要求が続く場合に、一定の時間の経過をもって電話を切ることを、対処の内容の例に挙げています。指針に何分・何回という数字はありません。どのくらいの時間・回数で終えるかは、社長が会社として決め、電話対応マニュアルに書いて社員に周知します。苦情のすべてがカスハラに当たるわけではないため、苦情とカスハラの段階は分けて書きます。
電話の録音を始めたほうがよいですか?
指針は、カスハラへの対処の例として、顧客等とのやり取りを録音・録画することを挙げ、その際は個人情報保護法等を守り、顧客等の個人情報を適切に扱うよう求めています。録音するなら、録音すること、何に使うか、だれが聞けるか、いつ消すかを社内で決めてから始めます。
電話対応マニュアルは、無料のAIでも作れますか?
文章を扱える生成AIのサービスなら、この記事のプロンプトは使えます。ただし無料かどうかより先に、入力した内容がどう扱われるか(学習に使われるか)を利用規約で確かめ、会社として使ってよいサービスを決めます。例文づくりは、名前や電話番号を消した材料だけで進められます。


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