AI研修とは|社員が自社の仕事でAIを使えるようにする教育
AI研修の定義と目的
AI研修とは、社員が生成AIなどのAIを、仕事の中で安全に使えるようにするための教育です。目的は「AIに詳しくなること」ではなく、決めた業務の時間が減ること、同じ品質で誰でもできるようになることです。そのため、研修の成果は「受けた人数」ではなく、研修の後に何が変わったかで確かめます。この記事の7件も、その確かめ方に注目して選びました。
企業にAI研修が求められる背景
中小企業基盤整備機構の調査報告書(2026年3月)では、AI・ITの導入を進めるために必要な公的支援を項目ごとに聞いています。「従業員向けの教育・研修(IT操作トレーニング)」を「必要である」と答えた中小企業は67.7%(1,596社)でした。「導入費用の助成」(77.9%)、「導入事例や活用事例などの情報提供」(70.5%)に続く3番目です。お金だけでなく、使える人を育てることが求められています。
研修の有無で、AI活用の手応えにも差が出ています。2026年版中小企業白書(第2-2-91図)は、AI活用に取り組んだ事業者に、その評価を聞いています。「想定した効果が得られなかった」と答えた割合は、従業員のAI活用を促す研修会や勉強会に「取り組んでいる」事業者で8.6%(920社)でした。「取り組んでいない」事業者では16.1%(789社)と、約2倍です。
AI研修の種類と対象者別の分け方
| 対象者 | 身につけること | この記事の事例での例 |
|---|---|---|
| 社長・役員 | どの仕事をAIに任せ、どこを人が確かめるかを決める | 京葉ガスは社長・常勤役員も全社員と同じ研修の対象にした |
| 全社員 | 入れてよい情報、指示の出し方、答えの確かめ方 | LINEヤフーはリスク管理とプロンプトのeラーニングを必須にし、試験合格を利用の条件にした |
| 推進役・各部署の担当 | 部署の業務をAIで回す手順を作り、ほかの社員に広げる | LINEヤフーは各部署に生成AI活用推進者を置いた。メコムは管理職にDXアドバイザー認定の取得をすすめた |
eラーニング・集合研修・自社業務の実践ワークの違いと選び方は、生成AI研修の選び方で解説しています。この記事では、実際に研修をした会社が何をして、どう測ったかに絞ります。
AI研修の事例7選|研修の形と成果を公式発表から紹介
7件は、各社・各機関の公式発表(ニュースリリース、報告書、経済産業省の選定企業レポート)で確かめたものです。キリンと住友ゴム工業は研修を提供した会社の発表、京葉ガスは研修会社との共同発表で、その旨を出典に書いています。パナソニック コネクトとLINEヤフーの数字はAI活用全体の成果で、研修だけの効果を切り分けたものではありません。各事例は「会社/研修の前の課題/研修の形/成果/何で測ったか/出典」の同じ形にそろえ、数字は出典の書き方のままにしています。
| 事例 | 対象・規模 | 研修の形 | 公表された成果 |
|---|---|---|---|
| 1 キリンホールディングス | グループ各社 約600名 | 1人約10時間+研修後の実務課題 | 月約2,200時間の労働時間削減、活用事例450件以上 |
| 2 住友ゴム工業 | 試験導入の受講者 | 基礎講座+Microsoft 365 Copilotのハンズオン講座 | 毎日使う人の割合 42.9%→85.7%(回答14件) |
| 3 京葉ガス | 全社員(社長・常勤役員を含む) | 延べ8回の集合研修 | 成果の数字の公表なし |
| 4 LINEヤフー | 全従業員 約11,000人 | 必須のeラーニング+試験合格を利用の条件に | ほぼ100%の従業員が業務で利用(2026年2月の発表) |
| 5 パナソニック コネクト | 国内全社員 約11,800人 | 「社員のAIスキル向上」を3つの目標の1つに | 2025年度に78.8万時間削減(総労働時間の3.4%) |
| 6 横須賀市 | 職員 約3,800人 | 1か月の全庁試行+職員向け通信+活用コンテスト | 業務時間の短縮を年間約22,700時間と試算 |
| 7 メコム(中小企業) | 従業員99名 | 全社員に生成AI基礎知識研修+資格の取得目標 | 営業・推進部門の提案力が強化(数字の公表なし) |
1. キリンホールディングス|約600名に1人約10時間の研修、月約2,200時間の削減
- 会社:キリンホールディングス株式会社(グループ各社の社員が対象)
- 研修の前の課題:長期経営構想「KV2027」で「価値創造を加速するICT」を掲げ、生成AIによる業務プロセスの効率化を進めていた。ビジネスアーキテクト人材を育てるプログラム(DX道場)の一環として、生成AI研修の導入を検討していた
- 研修の形:研修会社AVILENの生成AI研修(1人あたり約10時間)を、グループ各社の約600名に実施。研修の中で受講者が自分で作ったプロンプトを、実際の業務で使って確かめる「事後課題」を出した
- 成果:約2,200時間/月の労働時間削減(1名あたり約3.6時間)。「報告書のたたき台作成」「翻訳を踏まえた議事録作成・要約」「毎日更新される活動記録から好事例の抽出」などのプロンプトが作られ、活用事例は450件以上。講座のレポートとして提出させ、グループのナレッジとして蓄積した
- 何で測ったか:研修後課題で提出された活用事例の件数(行動)と、労働時間の削減(結果)。算出方法の詳細は公表されていない
- 出典:AVILEN「AVILEN、キリンホールディングスに生成AI研修を提供」(2025年2月19日、研修会社の発表)
2. 住友ゴム工業|2つの講座の試験導入で、毎日使う人の割合が約2倍に
- 会社:住友ゴム工業株式会社(兵庫県神戸市)。Microsoft 365 Copilotの展開を見据えた検証期
- 研修の前の課題:活用状況にばらつきがあり、理解度や関心度に大きな差があった。解説動画などの情報提供はしていたが、新しい技術への抵抗感と、具体的な活用イメージを持てないことが障壁になっていた
- 研修の形:研修会社スキルアップNeXtの2つの講座。1つ目の「ビジネスパーソンのための対話型生成AI講座 Microsoft Copilot編」では、プロンプトの書き方のコツ・注意点と業務共通のテンプレートを学び、最後に2つの課題で実際に操作した。2つ目の「Microsoft 365 Copilot活用講座」では、Word・PowerPoint・Excel・Outlookで使う方法をハンズオンで学んだ
- 成果:受講者のうち、Microsoft 365 CopilotとCopilot Chatを毎日の業務に使う社員の割合が42.9%から85.7%に増えた。受講後、PowerPointでの資料のたたき台作成、Teams会議の要約、Excelでのデータ加工やグラフ作成の実践例が出て、メンバーの間で共有されている
- 何で測ったか:受講者へのWebアンケート(有効回答14件、2025年3月3日〜4月7日)で、毎日使っているかを聞いた(行動)
- 出典:スキルアップNeXt「【住友ゴム】受講者のMicrosoft 365 Copilotの利用率が大幅向上」(2025年10月16日、研修会社の発表)
3. 京葉ガス|社長・役員を含む全社員を対象に、延べ8回の研修
- 会社:京葉ガス株式会社
- 研修の前の課題:2022年11月に策定した「CX・DX戦略」で「人的資本の強化・業務効率化」などを掲げていた。その中で、デジタルツールで既存業務の課題を解決できる「DX人財」の育成を進めていた
- 研修の形:研修会社インソースと共同で「生成AI(Copilot)活用による業務効率化に向けた研修」を、2024年10月2日〜10月24日に延べ8回実施。対象は社長、常勤役員、管理職、一般職の全社員。内容は、Copilotで効率化できる業務の理解、質問の仕方(プロンプトエンジニアリング)、文書・資料作成の効率化、企画・アイデア出しなど
- 成果:文章要約や企画業務などでの生成AI活用スキルの定着を目指したとしている。削減時間などの数字は公表されていない
- 何で測ったか:公表なし。公表されたのは実施期間・回数・対象者という「研修をしたこと」の記録
- 出典:京葉ガス・インソース「『生成AI(Copilot)活用による業務効率化に向けた研修』の共同実施について」(2025年1月30日、研修会社との共同発表)
4. LINEヤフー|必須のeラーニングと試験合格を、生成AIを使う条件にした
- 会社:LINEヤフー株式会社(全従業員 約11,000人)
- 研修の前の課題:業務の3割を占める「調査・検索」「資料作成」「会議」などの共通領域から生成AIの活用を進め、今後3年間で業務生産性を2倍に高めることを目標にした
- 研修の形:2025年6月から全従業員にChatGPT Enterpriseのアカウントを付与。リスク管理とプロンプト技術についての必須のeラーニング研修を行い、試験の合格を生成AIの利用条件とした。生成AI活用推進者を全部署に置き、社内表彰や社員アンバサダー制度も実施予定とした。業務ごとの使い方も決めた。調査・検索は「まずはAIに聞く」。資料は「ゼロベースの資料作成は行わない」(作る前にAIでアウトラインを作る)。社内会議の議事録作成はすべてAIで行う
- 成果:2026年2月の発表では、業務の特性上AIの利用が難しい従業員を除き、ほぼ100%の従業員が業務で生成AIを使っているとした。人事総務の部門では、新しい生成AI活用ツールで月約1,600時間以上の工数削減を見込む(見込みの数字)
- 何で測ったか:試験の合格(学習)、業務での利用率(行動)、工数削減の見込み(結果)。利用率の算出方法は公表されていない。月約1,600時間はAI活用ツールの運用による見込みで、研修だけの効果ではない
- 出典:LINEヤフー「全従業員約11,000人を対象に業務における『生成AI活用の義務化』を前提とした新しい働き方を開始」(2025年7月14日)、同「人事総務領域での生成AI活用を本格化」(2026年2月10日)
5. パナソニック コネクト|「社員のAIスキル向上」を目標に置き、総労働時間の3.4%を削減
- 会社:パナソニック コネクト株式会社(国内全社員 約11,800人)
- 研修の前の課題:2023年2月に生成AIの業務利用を始めた。そのとき「(1)業務生産性向上、(2)社員のAIスキル向上、(3)シャドーAI利用リスクの軽減」の3つを目標にした
- 研修の形:国内全社員にAI活用を推進。発表では、社員の活用スキルの向上によって利用が拡大したとしている(研修の回数や時間の記載はない)
- 成果:2025年度の削減時間は78.8万時間(前年度の2倍)で、年間の総労働時間の3.4%に当たる。利用回数は361万回(前年度の1.6倍)、1回あたりの削減時間は33分(前年度の1.2倍)、月間ユニークユーザー率は61%(前年度から12ポイント増)。2030年には総労働時間の10%をAIで削減することを目指す
- 何で測ったか:利用回数・月間ユニークユーザー率(行動)と、削減時間・総労働時間に占める割合(結果)を、毎年同じ物差しで公表している。AI活用全体の数字で、研修だけの効果を切り分けたものではない
- 出典:パナソニック コネクト「AI活用で総労働時間の3.4%削減」(2026年7月29日)
6. 横須賀市|1か月の試行を2回のアンケートで測り、年間約22,700時間と試算
- 組織:神奈川県横須賀市(ビジネスチャットでChatGPTを使える職員 約3,800人)
- 研修の前の課題:2023年4月20日から全庁でChatGPTの活用を試した。第1回の中間アンケートで、ChatGPTに向かない検索用途での利用が多く、「適切でない回答」「精度の低い回答」という声が出た。市は、正しい用途の理解と、質問する力を上げる必要があると判断した
- 研修の形:中間アンケートの後、職員向けの「チャットGPT通信」を5月15日と5月23日に配信し、使い方を伝えた。試行の結果報告では、AI戦略アドバイザーの監修による「(仮称)GPT活用スキル強化プログラム」の導入と、職員向けのプロンプトコンテストを発表。コンテストには52件の応募があり、2023年11月20日に最終審査会を開いた
- 成果:5月31日時点の利用者は1,913人(3,828人中、利用者率50%)、話しかけた数は計25,897件。最終アンケートの回答者の約8割が「仕事の効率が上がる」「利用を継続したい」と答えた。利用者へのヒアリングでも業務の短縮効果が認められ、文書作成の短縮を年間約22,700時間と試算した
- 何で測ったか:チャットの利用ログ(行動)と、2回のアンケート(中間693人・回収率約18%、最終433人・回収率約11%)。結果は、利用者ヒアリングでの1日あたりの短縮時間から出した。試算の式は「1,913人×文書作成に使っている割合29.3%×10分×243日≒22,700時間/年」と公表されている
- 出典:横須賀市「ChatGPTの全庁的な活用実証の結果報告と今後の展開」(2023年6月5日)、同 活用実証の結果報告資料、同 ChatGPT活用コンテスト(2023年11月22日)
7. メコム|従業員99名の会社が、全社員の研修と資格の目標をセットにした
- 会社:株式会社メコム(卸・小売業・従業員99名・資本金50百万円・山形県山形市)。ITソリューション、ITインフラ整備、オフィスデザインなどを提供
- 研修の前の課題:社会や経営の課題を解決するDXパートナーを目指していた。自社のDX推進で営業活動の見える化と効率化を図り、RPAや生成AIを導入していた(研修前の課題としての記載はなし)
- 研修の形:全社員を対象に、DXに関するマインド醸成研修と生成AI基礎知識研修を実施。社外研修やeラーニングも使った。目標として、情報セキュリティマネジメント試験は営業・推進部門の全員合格、DXアドバイザー認定は管理職以上の全員取得を掲げた
- 成果:社内研修を通じて、全社員が社内DXとお客様へのDX提案に向けて同じ方向を向き、営業・推進部門の提案力が強化できているとしている(数字の記載はなし)。2025年中に「AIラボ」「AIトレーニングセンター」を設ける計画も示した
- 何で測ったか:資格の合格・取得という外の基準を、部門ごとの目標にした(学習)
- 出典:経済産業省「中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025(DXセレクション2025選定企業レポート)」
中小企業がAIを使って時間や費用を減らした事例は、中小企業の生成AI活用事例19選で19件紹介しています。全社員に実践型AI研修を行い、AI活用で年約3,000時間を減らした不動産会社や、週1回の勉強会で1年間のプロジェクトを進め、年2,247時間を減らした会社などです。
AI研修の効果と効果測定の方法|「反応・学習・行動・結果」の4段階で測る
事例で公表された効果は3種類
| 効果の種類 | 事例 | 公表された数字 |
|---|---|---|
| 作業時間が減る | キリンホールディングス | 約2,200時間/月(1名あたり約3.6時間) |
| 作業時間が減る | パナソニック コネクト | 78.8万時間/年(総労働時間の3.4%) |
| 作業時間が減る | 横須賀市 | 約22,700時間/年(試算) |
| 作業時間が減る | LINEヤフー(人事総務の部門) | 月約1,600時間以上(見込み) |
| 使う人が増える | 住友ゴム工業 | 毎日使う人 42.9%→85.7% |
| 使う人が増える | LINEヤフー | ほぼ100%の従業員が業務で利用 |
| 使う人が増える | パナソニック コネクト | 月間ユニークユーザー率61% |
| 使い方が社内にたまる | キリンホールディングス | 活用事例450件以上 |
| 使い方が社内にたまる | 横須賀市 | 活用コンテストに52件の応募 |
効果測定の方法|研修の効果は4つの段階で測る
研修の効果測定の考え方として知られるのが、1950年代にドナルド・カークパトリック博士が作った4段階のモデルです。研修を受けた人の反応(よい・役に立つと感じたか)、学習(知識や技能が身についたか)、行動(職場で実際にやっているか)、結果(組織の成果が出たか)。この4つに分けて測ります。この考え方を広めるカークパトリック・パートナーズは、計画を立てるときは4段階目の「結果」から始め、1段階目へ逆にたどるようすすめています。
| 段階 | 測るもの | 測り方 | 測る時期 | この記事の事例 |
|---|---|---|---|---|
| 1 反応 | 役に立つと感じたか、自分の業務に使えそうか | 研修直後のアンケート(5段階) | 研修の当日 | 横須賀市:最終アンケートの回答者の約8割が「仕事の効率が上がる」 |
| 2 学習 | 入れてよい情報の区別、指示の出し方、答えの確かめ方が身についたか | 確認テスト、実技課題、資格 | 研修の最終回 | LINEヤフー:試験の合格を利用条件に。メコム:資格の合格・取得を目標に |
| 3 行動 | 業務でAIを使っているか、何件の使い方が出たか | 利用ログ、アンケート、活用事例の提出 | 1か月後 | 住友ゴム工業:毎日使う人の割合。キリン:活用事例450件以上 |
| 4 結果 | 対象業務の時間・件数・やり直しの回数 | 研修前と同じ方法での計測、利用者ヒアリング | 3か月後 | パナソニック コネクト:総労働時間の3.4%(AI活用全体)。横須賀市:年約22,700時間の試算 |
満足度(1段階目)だけでは、続けるか・広げるかを決められません。7件のうち、3段階目か4段階目の数字を公表しているのは5件でした。京葉ガスのように公表されたのが実施の記録だけの例もあるので、研修の前に、どの段階を何で測るかを決めておくことが大切です。
削減時間の計算式|横須賀市の式を自社に当てはめる
削減時間は、横須賀市が公表した式の形を使うと、根拠を説明できる数字になります。4つの数字を掛け合わせます。
| 掛け合わせる数字 | 横須賀市の値 | 自社での取り方 |
|---|---|---|
| AIを使っている人数 | 1,913人(利用ログ) | 利用ログ、または1か月後のアンケートで「週1回以上使う」と答えた人数 |
| 対象業務に使っている割合 | 29.3%(最終アンケートで文書作成に使った割合) | アンケートで「この業務に使った」と答えた割合 |
| 1回あたりの短縮時間 | 10分(利用者ヒアリング) | 研修前と後に、同じ業務を3回ずつ測った平均の差 |
| 年間の回数・日数 | 243日(年間所定労働日数) | その業務の年間件数、または稼働日数 |
| 計算結果 | 約22,700時間/年 | 人数×割合×短縮時間×回数 |
計算例:営業事務8人のうち6人が見積書の下書きにAIを使い、1件の作成が研修前の平均25分から15分になった(10分の短縮)。見積書が1人月40件なら、6人×10分×40件×12か月=28,800分=年480時間です。数字は、自社で研修の前と後に同じ方法で測ったものを入れてください。
そのまま使えるアンケートの設問|研修直後と1か月後
| 設問 | 答え方 |
|---|---|
| 今日の内容は、あなたの業務に関係がありましたか | 5段階(とても関係がある〜まったくない) |
| 明日から、どの業務でAIを使いますか。業務名を1つ書いてください | 自由記述(書けない人が何人いるかを見る) |
| 次の情報のうち、AIに入れてはいけないものをすべて選んでください(例:顧客の氏名・住所、自社サイトの商品説明、取引先の見積金額) | 選択式(正答率を出す) |
| AIの答えを使う前に、何を確かめますか | 自由記述(数字・固有名詞・日付の確認が書けているか) |
| 研修のあと、わからないことを誰に聞けばよいか知っていますか | はい/いいえ |
| 設問 | 答え方 |
|---|---|
| この1か月、業務でAIをどのくらい使いましたか | ほぼ毎日/週に数回/月に数回/使っていない |
| AIを使った業務をすべて選んでください | 選択式(研修で扱った業務の一覧から) |
| いちばんよく使った業務で、1件あたり何分短くなりましたか(研修前の時間/今の時間) | 数字で記入 |
| うまくいった指示文(プロンプト)を1つ貼ってください | 自由記述(社内の活用事例集にする) |
| 使わなかった・やめた理由があれば選んでください | 入れてよい情報がわからない/答えが不正確/時間がない/聞く相手がいない/その他 |
最後の設問の答えは、次の研修や社内ルールを直す材料になります。横須賀市も、中間アンケートで検索用途の多さと回答の精度への不満がわかり、職員向けの通信で使い方を伝えてから最終アンケートを取りました。
測るときの3つの注意
- 回答した人だけの数字だと書いておく:アンケートは、使った人ほど答えやすくなります。横須賀市の回収率は約18%と約11%、住友ゴム工業の有効回答は14件でした。社内で報告するときも、回答数と回収率を必ず添えます
- 「見込み」と「実績」を分ける:LINEヤフーの月約1,600時間は見込み、横須賀市の約22,700時間は試算、キリンの約2,200時間/月は「実現」と書かれています。社長に報告する数字も、どちらなのかを書き分けます
- 研修以外の変化と混ぜない:同じ時期に新しいツールや手順の見直しが入ると、研修だけの効果は分けられません。対象業務と期間を決め、研修の前と後で同じ測り方をします
AI研修を成果につなげるポイントと選び方|事例に共通する4つのこと
7件の研修の形を並べると、次の4つのやり方が繰り返し出てきます。
ポイント1:研修の中で作ったものを、研修後に実務で試させる
キリンホールディングスは、受講者が研修の中で作ったプロンプトを実際の業務で使って確かめる事後課題を出し、レポートとして提出させました。それが450件以上の活用事例になり、グループのナレッジとして残っています。住友ゴム工業の講座も、最後に課題で実際に操作する形でした。研修の最終回に「1か月後までに、自分の業務で1件試して提出する」を課題にすると、行動の段階の数字がそのまま集まります。
ポイント2:社長・役員も同じ研修を受ける
京葉ガスは、社長と常勤役員を管理職・一般職と同じ研修の対象にしました。どの業務をAIに任せ、どこを人が確かめるかを決めるのは経営者です。社長が中身を知らないと、研修で覚えた使い方を業務の手順に組み込む判断ができません。
ポイント3:研修を「使う条件」と「聞く先」とセットにする
LINEヤフーは、必須のeラーニングと試験の合格を利用の条件にし、各部署に推進者を置きました。横須賀市は、試行の途中で職員向けの通信を出し、その後に活用コンテストで好事例を集めました。研修1回で終わらせず、使ってよい条件・質問できる人・うまくいった例を共有する場を同時に用意しています。研修後の定着の仕組みは、生成AI研修の選び方の「研修の後に定着させる4つの仕組み」でも解説しています。
ポイント4:研修の前に、何を測るかを決めておく
パナソニック コネクトは、利用を始めるときに「業務生産性向上」「社員のAIスキル向上」「シャドーAI利用リスクの軽減」の3つを目標にしました。そのうえで、利用回数・1回あたりの削減時間・月間ユニークユーザー率を、前年度との比較つきで公表しています。物差しが毎年同じなので、増えたか減ったかがわかります。
研修会社を選ぶときに、効果測定について聞くこと
| 聞くこと | 答えで確かめること |
|---|---|
| 研修の前に、対象業務の時間をどう測りますか | 会社側で何を用意するか(計測表・期間)が具体的か |
| 研修の最終回で、理解をどう確かめますか | 用語の問題ではなく、自社の書類を使った実技や判断の問題か |
| 研修後の実務課題はありますか。提出物は会社に残りますか | 活用事例として社内に残る形か |
| 1か月後・3か月後に、何を集計して報告してくれますか | 利用の頻度、使った業務、1件あたりの短縮時間まで出るか |
| 削減時間は、どの式で計算しますか | 人数・割合・短縮時間・回数の根拠を示せるか |
研修の内容(自社の業務が題材か、対象者別か、情報ルールまで扱うか)の確かめ方は生成AI研修の選び方にまとめています。各社の公開料金はAI研修の費用相場、社内で講師を立てて回す場合はAI社内研修のやり方をご覧ください。
明日できる最初の1歩:研修の前に、3つの業務の時間を1週間記録する
研修の効果は、研修の前の数字がないと測れません。研修会社を決める前でも、今日から始められます。AIに任せたい業務を3つ選び、担当者に次の表を1週間つけてもらってください。
| 日付 | 業務名 | 担当者 | 件数 | 1件あたりの時間(分) | 手直し・やり直しの回数 | メモ(時間がかかった理由) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 10/26 | 見積書の作成 | Aさん | 3 | 25 | 1 | 過去の見積を探すのに時間がかかった |
| 10/26 | 問い合わせメールへの返信 | Bさん | 8 | 12 | 0 | 同じ質問への返信を毎回書いている |
| 10/26 | 日報のまとめ | Cさん | 1 | 40 | 0 | 各自の日報を転記している |
研修の1か月後に同じ表を1週間つければ、「1件あたりの時間」の差が上の計算式の「1回あたりの短縮時間」になります。
シス学の場合|研修の効果測定も「作業・確認・判断」に分ける
シス学(システム経営学)は、AIエージェントを活用し、会社を「儲かるシステム」につくり変える経営学です。シス学では、削れた作業時間を、人件費や粗利の数字で確かめることを大切にしています。研修の効果測定も、次のように分けると、集計の手間で担当者が止まりません。
| 任せ先 | 受け持つ仕事 | 中身 |
|---|---|---|
| AI | 作業 | アンケートの集計、自由記述の分類(使った業務・やめた理由)、提出された活用事例の一覧化、計測表からの削減時間の計算の下書き |
| 社員 | 確認 | 集計の数字を計測表の原本と照らす。回答数・回収率を書き添え、見込みと実績を分ける |
| 社長 | 判断 | 次にどの業務・部署へ広げるか、研修を続けるか、空いた時間を何に回すかを決める |
AIへの頼み方の文例(作業の部分):「次の表は、AI研修の1か月後アンケートの回答です。①利用頻度ごとの人数と割合、②使った業務ごとの人数、③『1件あたりの短縮時間』の業務ごとの平均、④『使わなかった理由』の件数を、それぞれ表にしてください。回答数も書き、推測で数字を補わないでください。」
シス学 AI研修は、社員が毎日行っている業務(自社の書類・メール・データ)を題材に、AIで仕事を終わらせるところまで練習する研修です。研修の前に対象業務を決め、研修後のアンケートと利用状況の確認で定着の状況をご報告します。料金は、対象の業務と体制をお聞きしたうえで、無料相談でご案内します。まずは30分の無料相談からご相談ください。
まとめ|AI研修の事例を参考に、研修の前に「何を測るか」を決めよう
- 公式発表で確かめた7件では、研修の後に「時間が減る」「使う人が増える」「使い方が社内にたまる」の3種類の効果が公表されている
- 効果は「反応・学習・行動・結果」の4段階で測る。満足度だけでは、続けるか・広げるかを決められない
- 削減時間は「使っている人数×対象業務に使う割合×1回の短縮時間×回数」で、根拠を示して出す
- 事例に繰り返し出てくるのは、研修後の実務課題、社長・役員の参加、使う条件と聞く先、毎年同じ物差しで測ること
まずは、AIに任せたい業務を3つ選び、研修前の計測表を1週間つけてみてください。その数字が、研修会社に「何を変えたいか」を伝える材料になり、研修の後に効果を確かめる基準になります。助成金を使う場合の条件は、AI研修に使える助成金で解説しています。
よくある質問
AI研修の効果は、どうやって測ればよいですか?
「反応(役に立つと感じたか)・学習(身についたか)・行動(職場で使っているか)・結果(業務の時間や件数が変わったか)」の4段階で測ります。研修直後のアンケートと確認テスト、1か月後の利用頻度と活用事例の提出、3か月後の対象業務の時間の計測を組み合わせます。研修の前に、対象業務の時間を同じ方法で測っておくことが前提です。
AI研修で、業務時間はどのくらい減りますか?
研修会社の発表では、キリンホールディングスがグループ約600名の研修で約2,200時間/月(1名あたり約3.6時間)の削減を実現したとしています。横須賀市は、1か月の試行の結果から、文書作成の短縮を年約22,700時間と試算しました。どちらも各社の業務・研修・測り方での数字で、自社で同じ数字が出る約束ではありません。自社の研修前後の数字で比べてください。
削減時間は、どう計算すればよいですか?
横須賀市が公表した試算の形では、「AIを使っている人数×対象業務に使っている割合×1回あたりの短縮時間×年間の日数(回数)」で計算します。同市は「1,913人×29.3%×10分×243日≒22,700時間/年」としました。1回あたりの短縮時間は、研修の前と後に同じ業務を測った差を使います。
中小企業のAI研修の事例はありますか?
この記事では、従業員99名のメコムが、全社員に生成AI基礎知識研修を行い、資格の取得を部門の目標にした例を紹介しました。全社員に実践型AI研修を行い、AI活用で年約3,000時間を減らした不動産会社など、中小企業の事例は[中小企業の生成AI活用事例19選](/column/chusho-seisei-ai-jirei)にまとめています。
AI研修に助成金は使えますか?
厚生労働省の人材開発支援助成金を使える場合があります。対象は雇用保険の被保険者で、計画届は研修開始の6か月前から1か月前までに出します。受講料はいったん全額を会社が払い、受給できるかは審査で決まり、受給は保証されません。事業展開等リスキリング支援コースは令和8年度末までの時限措置です。詳しくは[AI研修に使える助成金](/column/ai-kenshu-joseikin)をご覧ください。


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