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中小企業の生成AI活用事例19選|業務効率化の成果を業種別・目的別に紹介

打ち合わせの机で、経営者と相談相手が事例の資料と数字を見比べながら、自社で始める仕事を話し合っている様子

「生成AIが便利なのは分かった。でも、うちと同じくらいの会社が、何に使って、どれだけ楽になったのかを知りたい。」そう考える社長は少なくありません。中小企業基盤整備機構の調査(2026年3月)でも、「成功事例や活用事例などの情報が十分に入手できている」に当てはまらないと答えた中小企業は83.3%でした。

この記事では、中小企業の生成AIを中心としたAI活用事例を19件集めました。出典は、中小企業白書、経済産業省の「DXセレクション」、総務省の情報通信白書、観光庁の事例集、日本政策金融公庫と東京商工会議所の資料です。どれも原文を開いて、社名・規模・数字を確かめたものです。自社のどの仕事から始めるかを一緒に決めたい場合は、シス学のAIコンサルティングでご相談を受けています。

業種別で紹介!中小企業の生成AI活用事例10選

まず業種ごとに10件を紹介します。各事例は「会社/課題/使ったこと/変わったこと/出典」の同じ形でそろえ、数字は出典の書き方のままにしています。

業種別10選の一覧(数字は各出典の公表値)
事例業種・規模・所在地主に変わったこと
1 岡田研磨金属製品製造業・85名・石川県金沢市労働時間を月530時間程度削減
2 ニッシン・パーテクチュアル金型製作・20人・埼玉県春日部市事務作業の時間が5分の1
3 オプトサイエンス機械器具卸売業・33名・東京都新宿区広告のレスポンスが平均2倍以上
4 エヌエスケーケー携帯電話販売代理店等・61名・兵庫県神戸市請求書処理を月275分削減(DXの成果)
5 城崎温泉 但馬屋旅館・15人・兵庫県豊岡市文章作成の工数が体感で1名分削減
6 ホテルフォーシーズン徳島ビジネスホテル・5人・徳島県徳島市担当者不在でもチラシや議事録を継続
7 プーラビダ訪問看護・26名・福岡県北九州市報告書の作成が1時間→5分
8 ワイズ・リーディング画像診断の読影サービス・24人・熊本県熊本市所見の入力時間を最大30%程度短縮(生成AI以前のAI)
9 アイニコグループ住宅・介護・保育等・奈良県など全10事業部で年間2,247時間削減
10 トーシンパートナーズHD不動産業・49名・東京都武蔵野市平均空室期間を11日短縮(予測のAI)

【製造業】生成AIで社内システムや販促物を自分たちで作り、時間と外注費を減らす

事例1 岡田研磨株式会社(金属製品製造業・従業員85名・資本金5,000万円・石川県金沢市)

  • 課題:図面などの情報を紙やExcelで管理していた。工場の資料を事務担当者が別の資料へ転記・集計し、資料を探すのに1~2時間掛かることもあった
  • 使ったこと:2023年末から、専務が生成AIとの対話でウェブアプリの仕組みを学んだ。約2年間・トータル1,000時間以上の対話を重ね、統合管理システム「OKADA Board」を自作。約30種類以上のアプリで、検査実績・品質報告・在庫・生産進捗・労務・原価のデータを一元化した。AIを使った手順書管理システム「Knowledge Board」も開発
  • 変わったこと:「OKADA Board」の導入で、月5,000~6,000枚分のペーパーレス化と、月530時間程度の労働時間削減。手順書は150件程度から、導入後わずか4か月で240件ほど増加。同様のシステムを外注すれば約8,000万円かかるところ、内製ではAIの月額利用料のみ
  • 出典:中小企業庁「2026年版中小企業白書」事例2-2-14

事例2 ニッシン・パーテクチュアル株式会社(自動車部品などの金型製作・従業者数20人・埼玉県春日部市)

  • 課題:新しく始めたレーザー加工の事業は、機械を持つ企業が国内にほぼなく、知見を得る機会が限られていた。生成AIの導入当初は社員の反応が芳しくなく、勉強会の参加者も少なかった
  • 使ったこと:文章生成AI・画像生成AIなど11の生成AIツールを、従業員なら誰でも使える形で導入。ホームページの記事、展示会のブースのデザイン、販促資料や契約書の作成、海外の活用例の調査に使う。社員が相談に来るたびに、社長がAIを使った解決方法を伝え続けた
  • 変わったこと:従業員の6割がAIを日常的に使い、生成AIパスポートの取得者は11人。事務作業にかかる時間が5分の1になり、展示会のチラシや垂れ幕の内製化で数百万円の経費を削減。新規取引先は25社ほど増えた(レーザー事業との相乗効果もあるとされる)
  • 出典:日本政策金融公庫総合研究所「調査月報」2026年6月号(No.213)「中小企業におけるAI活用の実態」

【卸売業・小売業】英語資料の読み込みや広告づくり、請求書処理の時間を減らす

事例3 株式会社オプトサイエンス(機械器具卸売業・従業員33名・資本金9,600万円・東京都新宿区)

  • 課題:最先端の光学機器を輸入販売しており、解説書がない製品も多い。営業担当者が海外論文や英語マニュアルを読み込んで技術解説を自作していた。業界専門誌への広告(年12回)も、製品選びとキャッチコピーづくりに苦労していた
  • 使ったこと:2023年に生成AIを導入し、プロンプトの書き方の勉強会を開いた。論文の収集・要約、英語マニュアルの翻訳と要点の抽出、広告の商品選定・キャッチコピー案の作成に使い、営業担当者が推敲する。生成AIが示した情報は、必ずファクトチェックする
  • 変わったこと:広告のレスポンスは平均で2倍以上。広告からの問い合わせは、以前の月平均5件程度から、多い月には45件に。営業資料のたたき台、翻訳、契約書チェックなどにも使い方が広がった
  • 出典:中小企業庁「2026年版中小企業白書」事例2-2-3

事例4 株式会社エヌエスケーケー(小売業・携帯電話販売代理店等・従業員61名・資本金10百万円・兵庫県神戸市)

  • 課題:既存ビジネスの変革と、新しいビジネスモデルの創出
  • 使ったこと:社長直轄の「DX推進プロジェクトチーム」を置き、全社員が生成AIを使える環境を整備。社内勉強会で、月に一回、全部署に生成AIを使った改善成果の報告を義務付け、成功事例や使い方を全社に共有
  • 変わったこと:請求書処理業務を月275分削減、営業提案書の作成と引継ぎ業務を月300分削減。どちらもDX推進の成果として示されたもので、生成AIだけの効果とは書かれていない
  • 出典:経済産業省「DXセレクション2026」選定企業レポート

【宿泊業】返信文やチラシの下書きを生成AIに任せ、少人数でも回るようにする

事例5 城崎温泉 但馬屋(旅館・客室12室・従業員15人・兵庫県豊岡市)

  • 課題:メール返信、インバウンド対応、口コミ返信、マニュアル作成など文章の仕事が多く、若旦那・若女将・支配人が中心に作成し、確認もしていた。従業員に任せたくても、品質の担保が課題だった
  • 使ったこと:生成AIで国内外のメールや口コミの返信文を作り、情報の正確性を確認してから従業員が返信する体制にした。画像、マニュアル・雑誌用の文章、クレーム初期対応の流れも生成AIで作り、施設側で確認・修正して使う
  • 変わったこと:文章作成の工数が体感で1名分削減。代表者の役割が「作成」から「確認・最終判断」に変わり、事務作業時間は体感で半減。従業員でも一定品質の文章が作れるようになり、属人性が下がった。ポップ等の外注費が減り、外注先とのやり取りや納品待ちもなくなった
  • 出典:観光庁「宿泊施設のためのIT活用事例集」(令和8年3月)

事例6 ホテルフォーシーズン徳島(ビジネスホテル・客室23室・従業員5人・徳島県徳島市。運営は株式会社ホテルグランドパレス)

  • 課題:デザイン担当者の産休で、チラシ作成や画像加工ができる従業員がいなくなった。経営者だけが行っていた仕事も含め、属人化をなくし、品質を保つ手段が必要だった
  • 使ったこと:画像のトリミングやイラスト生成など、デザインツールの代わりに生成AIを使用。経営者だけが行っていた経営データの分析・資料作成、録音データからの議事録作成にも使い、用途で生成AIを使い分けている
  • 変わったこと:担当者がいなくても、チラシ・画像加工・議事録・経営資料の作成を続けられるようになった。生成AIの利用にかかるコストは月額数千円程度で、人件費と比べて圧倒的に安価だと感じている
  • 出典:観光庁「宿泊施設のためのIT活用事例集」(令和8年3月)

【医療・福祉】報告書の作成時間を減らし、本来のケアや診断に時間を回す

事例7 プーラビダ株式会社(訪問看護ステーションの運営・従業員26名・資本金0.5百万円・福岡県北九州市)

  • 課題:離職率が83.3%と高かった。看護師の最大の負担は報告書の作成だった
  • 使ったこと:生成AIを活用した内製のプラットフォーム「ほぽたくん」をつくり、看護師の報告書作成をAIが支援。データを経営判断と現場支援に使う
  • 変わったこと:「ほぽたくん」で、報告書の作成が90%削減(1時間→5分)、報告書の郵送手配が97%削減(2時間→3分)。離職率の低下(83.3%→7.7%)と利益率10%超の黒字化も報告されているが、これはDX全体の成果として示されたもの
  • 出典:経済産業省「DXセレクション2026」選定企業レポート

事例8 株式会社ワイズ・リーディング(CT・MRI画像の読影サービス・従業者数24人・熊本県熊本市)

  • 課題:専門医が自力で報告書を作ると、1時間に最大でも3件程度。読影ができる放射線診断専門医は全国に6,000人弱と限られている
  • 使ったこと:2015年に、文章を入力すると文脈に合う定型文の候補を出すAI「Y’sCHAIN」を開発。2024年からの健康診断のレポートでは、生成AIで医療になじみのない人にもわかる言葉にまとめるシステムを構築した。誤情報を防ぐため、出力は専門医などが確認する
  • 変わったこと:Y’sCHAIN(生成AI以前のAI)で、所見を入力する時間が最大で30%程度短縮し、同じ時間で約1.5倍の業務量をこなせるように。生成AIを使った健診レポートは、1件にかかる時間が圧縮され、人件費も減った(数字の記載はなし)
  • 出典:日本政策金融公庫総合研究所「調査月報」2026年6月号(No.213)

【建設・不動産】事業部ごとに課題を立て、問い合わせ対応や空室の時間を減らす

事例9 アイニコグループ株式会社(注文住宅・リフォーム・介護・保育・DXコンサルティング等・奈良県や京都府南部が中心)

  • 課題:ChatGPTなどのAIツールは社内にあったが、個人の利用にとどまり、業務全体への広げ方が課題だった
  • 使ったこと:外部の支援業者と連携し、全社員向けの勉強会の後、全10事業部から計21名が参加するAI活用プロジェクトを1年間実施。週1回1時間程度の勉強会で進み具合を確かめ、3か月・6か月・12か月の節目で成果を共有した
  • 変わったこと:全10事業部の合計で年間2,247時間分の業務時間を削減。内訳の例は、広報部門が複数の社内業務の自動化で年間880時間、介護事業部門が送迎ルートの最適化システム作成などで年間170時間。不動産事業部門は問い合わせ対応のテンプレート化・自動化で年間897時間
  • 出典:総務省「令和8年版 情報通信白書」第Ⅰ部第2章第1節

事例10 株式会社トーシンパートナーズホールディングス(不動産業・従業員49名・資本金100百万円・東京都武蔵野市)

  • 課題:グループ会社による、賃貸物件の早期の賃貸付け
  • 使ったこと:過去の賃貸契約データでAIモデルをつくり、最適な募集条件を提案する「IntelliRent」を実施(生成AIではなく、予測するAI)。Azure OpenAIを使った社内向けのテキスト生成AI「ChatTPG」も内製し、社員が安全に生成AIを使える環境を整えた
  • 変わったこと:予測AIの導入で、物件の平均空室期間を11日短縮し、年間約4,700万円の不稼働損を削減。同じ時期に賃料の引き上げも行い、相乗効果があったとされる。社内の生成AIは利用ユーザーを着実に伸ばしている(数字の記載はなし)
  • 出典:経済産業省「中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025(DXセレクション2025選定企業レポート)」

目的別で紹介!中小企業の生成AI活用事例9選

次に、目的(仕事の種類)ごとに9件を紹介します。東京商工会議所の事例4件は、社名を出さずに業種・人数・所在地で紹介されています。

目的別9選の一覧
目的事例主に変わったこと
経理・事務11 クリーンシステム(109名・山形県)請求書発送のコストを年約1,080千円削減
経理・事務12 プラスチック製造(22人・東京都品川区)あいさつ文・翻訳などをAIが下書き
営業・販促13 スポーツ衣料卸(7人・東京都文京区)ウェブ広告の作業が数十分に
営業・販促14 雑貨販売(2人・東京都目黒区)依頼文や商品説明をAIが下書き
情報収集15 理化学機器製造(10人・東京都大田区)新規市場や仕入先の調べもの
社内の知識共有16 川六(68名・香川県)ベテランの経験知をAIで形式知化(残業の減少はDX全体の成果)
社内の知識共有17 ヒューマングループ(53名・長崎県)全社員にAIアシスタント(会議時間75%減はDX全体の成果)
社員教育18 ネクサスエージェント(212名・大阪府)全社で年約3,000時間削減
技術継承19 タヤマスタジオ(8名・岩手県)入社3年目の若手が一人で製品を完成

【経理・事務】請求書の送付や定型の文書を、生成AIで仕組みにする

事例11 株式会社クリーンシステム(廃棄物処理業・特定建設業・従業員109名・資本金50百万円・山形県山形市)

事例12 製造業(プラスチック)(従業員22人・東京都品川区。社名は非公表)

  • 課題:資料に記載なし。日頃の文章作成が中心の使い方
  • 使ったこと:2023年4月頃から、社長を含む本社の希望者が使用。あいさつ文・お礼状の作成、文章の言い換え・類語の検索、英文の翻訳、事業アイデアの考案、製品設計のための計算にも使った
  • 変わったこと:効果の数字は記載なし。回答に誤りが含まれる可能性があるため、鵜呑みにせずアドバイザーとして使う。文章の作成に慣れていない業種・職種の人に特にすすめる、としている
  • 出典:東京商工会議所「中小企業のための『生成AI』活用入門ガイド」第7版(2025年8月)37ページ

【営業・販促】広告のキーワードや依頼文の下書きを任せ、外注や手間を減らす

事例13 卸売業(スポーツ衣料)(従業員7人・東京都文京区。社名は非公表)

  • 課題:ウェブ広告の作業を、外注や社員に頼んで時間を掛けて行っていた
  • 使ったこと:2022年11月頃から、社長が旗振り役となって会社全体で活用。ウェブ広告のキーワード文の作成・組み合わせ、米国向けSNSのたたき台の英文をカジュアルな文章に変換、経営計画書のアイデア出しと抜け漏れのチェックに使う
  • 変わったこと:ウェブ広告の業務が数十分という短時間でできるようになり、費用節減と生産性向上につながった
  • 出典:東京商工会議所「中小企業のための『生成AI』活用入門ガイド」第7版 38ページ

事例14 小売業(雑貨販売)(従業員2人・東京都目黒区。社名は非公表)

  • 課題:資料に記載なし。主な用途は文章の作成
  • 使ったこと:2023年1月頃から活用。外注先への指示は、必要事項を箇条書きにして正式な依頼文にしてもらう。商品説明などの文章の長さの調整や、キャッチコピーのアイデア出しにも使う。内容は必ず自分で確認・校正する
  • 変わったこと:効果の数字は記載なし。少しずつ業務で使うことで使い方が分かり、欠かせないツールになるとしている
  • 出典:東京商工会議所「中小企業のための『生成AI』活用入門ガイド」第7版 38ページ

【情報収集・調査】新しい市場や仕入先の「糸口」を探す

事例15 製造業(理化学機器)(従業員10人・東京都大田区。社名は非公表)

  • 課題:資料に記載なし。業界・市場の情報をChatGPTに聞いたら何が返ってくるかへの関心から使い始めた
  • 使ったこと:2023年2月頃から利用。業界課題の解決や付加価値の向上、新規市場の開拓に向けて、新規市場の例や市場規模、特定の企業の事業内容などを聞き、アイデアを出す。寸法・素材などの条件を伝えて、仕入先・発注先の候補も探す
  • 変わったこと:自分では思いつかない提案が出て、検索と違ってディスカッションできる。仕入先探しでは条件に近い実在の企業が出てきた。誤った情報もあるため、ヒント・糸口探しと割り切って使っている
  • 出典:東京商工会議所「中小企業のための『生成AI』活用入門ガイド」第7版 36ページ

【社内の知識共有】社内の資料や経験をAIに入れ、全員が使える形にする

事例16 株式会社川六(宿泊特化型ホテル・従業員68名・資本金50百万円・香川県高松市)

  • 課題:デジタルを使った競争力づくりを目的に、DXを本格化した
  • 使ったこと:毎週全店舗で、社内の資料を参照して答えるAI(RAG)の活用検討会議を開き、60代の社員やパートを含む全従業員がRAGを開発。経理業務の自動化や生成AIの活用ノウハウを「川六モデル」としてまとめ、M&Aで取得した地方ホテルにも導入した
  • 変わったこと:ベテラン従業員の経験知をAIで形式知化し、実務の負担を軽くした(数字の記載はなし)。DX全体の成果としては、一人当たり月平均残業時間が6時間49分(2023年)から3時間54分(2025年)に、離職率は13.9%から6.5%に。取得したホテルは3か月で黒字化
  • 出典:経済産業省「DXセレクション2026」選定企業レポート

事例17 株式会社ヒューマングループ(自動車教習所・観光事業・従業員53名・資本金23百万円・長崎県佐世保市)

  • 課題:コロナ禍で既存事業が停滞。30年使っていた社内システムからの脱却
  • 使ったこと:クラウドの統合業務プラットフォームに移行し、チャットに業務を集約。全社員に、自身の資質データを学習したAIアシスタントを置く「一人一ボット体制」をつくった。経営者が率先してAI開発スキルを身につけた
  • 変わったこと:53名の全社員が社内システムとチャットを使いこなす組織になった。DX全体の成果としては、会議時間を75%削減、社内電話を90%削減、決済のリードタイムは1.5日から3時間に、離職率は12%から3%に。社内システムを外販する事業も始め、導入15社・売上2,000万円(2025年~2026年)。AIだけによる数字は示されていない
  • 出典:経済産業省「DXセレクション2026」選定企業レポート

【社員教育・技術継承】全社員の研修と、職人の勘をAIに移す

事例18 株式会社ネクサスエージェント(不動産業・従業員212名・資本金100百万円・大阪府大阪市)

  • 課題:不動産取引の価格査定・書類作成・取引の進め方が人によって違う、という業界の課題にDXで取り組んでいた
  • 使ったこと:全社員を対象にした実践型のAI研修で、AIを使い、作り、自分で業務を変える人材を育成。現場から生まれた業務改善やAIの活用事例を、全社ミーティングなどで共有する仕組みをつくった
  • 変わったこと:全社の削減業務時間は年約3,000時間(レポートでは「AI活用による業務効率化」の成果として示されている)
  • 出典:経済産業省「DXセレクション2026」選定企業レポート

事例19 タヤマスタジオ株式会社(南部鉄器の製造・販売・従業員8名・資本金300万円・岩手県盛岡市)

  • 課題:技術はベテラン職人のOJTで伝えてきたため、若手職人が一人前になるまで10年ほどかかった。丁寧に教えるほど、ベテランが鉄器を作る時間が減っていた
  • 使ったこと:2023年から、岩手大学との共同研究と盛岡市の補助金を使った実証に取り組んだ。現代の名工である父へのヒアリングをもとに、鋳造の基本や不良が起きる仕組みをAIに学習させた。若手職人が基礎をAIから自主学習できるようにし、あわせて工程を簡単にした新製品も開発した(白書にAIの種類の記載はない)
  • 変わったこと:入社3年目の若手職人が、製品を一人で完成させている。白書の見出しは「従来の3分の1の期間で若手職人の戦力化を実現」(新製品とAI活用の両方による)。ベテランの指導時間の減少といった効果も見え始めている
  • 出典:中小企業庁「2025年版中小企業白書」事例1-1-1

生成AIが中小企業の業務効率化にもたらす3つの効果

19件の事例と公的な調査の数字を合わせると、効果は次の3つに分けられます。

効果1. 作業の時間が減り、生産性が上がる

中小機構の調査(2026年3月)では、AIを導入した中小企業が挙げた効果は「業務効率化/作業時間の短縮」が83.2%で突出していました。事例でも、時間の数字がいちばん多く出ています。

事例で公表された時間の変化(「DX」はDX全体の成果として示されたもの)
事例仕事変化
プーラビダ(訪問看護)報告書の作成1時間→5分(90%削減)
プーラビダ(訪問看護)報告書の郵送手配2時間→3分(97%削減)
エヌエスケーケー(小売)請求書処理月275分削減(DX)
エヌエスケーケー(小売)営業提案書の作成・引継ぎ月300分削減(DX)
岡田研磨(製造)紙の資料の管理など月530時間程度削減
ネクサスエージェント(不動産)全社の業務年約3,000時間削減
アイニコグループ(住宅・介護等)問い合わせ対応など10事業部年間2,247時間削減
ワイズ・リーディング(医療)所見の入力(生成AI以前のAI)最大30%程度短縮
ニッシン・パーテクチュアル(製造)事務作業時間が5分の1

効果2. 外注費や人件費などの費用が減る

事例で公表された費用の変化
事例何の費用か変化
クリーンシステム(廃棄物処理)請求書の発送年約1,080千円削減
岡田研磨(製造)社内システムの開発外注なら約8,000万円のところ、AIの月額利用料のみ
ニッシン・パーテクチュアル(製造)展示会のチラシ・垂れ幕内製化で数百万円削減
トーシンパートナーズHD(不動産)空室による損失(予測のAI)年約4,700万円削減
ホテルフォーシーズン徳島(宿泊)生成AIの利用料月額数千円程度

効果3. 人手不足を補い、売上を伸ばす仕事に人を回せる

中小機構の調査では、AIの導入効果として「人手不足対応」が33.9%、「付加価値創出」が22.3%でした。付加価値創出は、従来のITの導入効果(7.4%)を約15ポイント上回っています。白書の概要資料でも、売上を増やすための「成長に向けたAI活用」に取り組んだ企業は、付加価値額の増加率(中央値)が23.0%でした(2019年→2024年)。取り組んでいない企業の17.9%を上回っています。

事例では、オプトサイエンスが広告からの問い合わせを月平均5件程度から多い月45件に増やしました。ニッシン・パーテクチュアルは事務作業の時間を5分の1にして、新事業に取り組む時間をつくっています。減った時間を、売上につながる仕事に回しているのが共通点です。

中小企業が生成AIで業務効率化を進める3つのステップ

事例の会社がたどった順番を、3つのステップにまとめます。

ステップ1. 目的の明確化:どの仕事の時間を減らすかを1つ決める

2026年版中小企業白書の概要資料では、省力化の投資でAIを活用していない中小企業(3,888社)に理由を聞いています。1位は「活用する業務がイメージできていない」(63.4%)でした。中小機構の調査では、業務分野別のAI導入率は「総務・管理部門」が68.3%で最も高い結果でした。「営業・販売・サービス部門」60.3%、「経営・企画部門」58.5%、「製造・生産部門」34.9%と続きます。まずは文章や事務の仕事から1つ選ぶのが近道です。

事例から選ぶ、最初に任せやすい仕事
仕事参考になる事例最初にAIに任せる作業
メール・口コミへの返信5 但馬屋過去の返信例をもとにした返信文の下書き
報告書・日報7 プーラビダ記録からの報告書の下書き
請求書の処理・送付4 エヌエスケーケー、11 クリーンシステム請求書の確認・送付の手順を整え、定型の作業を自動化
広告・商品説明3 オプトサイエンス、13・14キャッチコピー案、商品説明の長さの調整
英語の資料・問い合わせ3 オプトサイエンス翻訳と要点の抜き出し
問い合わせ対応9 アイニコグループよくある質問への回答のテンプレート
社内の手順・ノウハウ1 岡田研磨、16 川六手順書の下書き、社内資料を参照して答えるAI

明日できる最初の1歩:社長がこの1週間に書いた文章(メール、依頼文、お礼状、報告)を書き出し、いちばん時間がかかったものを1つ選びます。次のように生成AIに頼み、「いつもの作り方の時間」と「AIの下書き+確認の時間」を比べてください。

  • 頼み方の例:「あなたは〇〇業の会社の事務担当です。次の箇条書きをもとに、取引先へ送る依頼メールを書いてください。#宛先:〇〇株式会社 △△様 #伝えたいこと:(箇条書き)#条件:丁寧だが長すぎない文で、300字以内。最後に返信の期限を入れる」
  • 入れないもの:顧客の個人情報、取引先の社外秘の情報(ステップ2で決めるルールの最初の1行になります)
  • 比べるもの:作成時間、直した箇所の数、そのまま使えたかどうか

ステップ2. 環境の整備:入力してよい情報と、確かめる人を決める

同じ白書の概要資料では、AIを活用していない理由の3位が「社内ルール・ガイドラインが整備されていない」(26.2%)でした。事例の会社は、使い始める前後に次のような決まりを置いています。

事例の会社が決めていたこと
決めること事例の会社の決め方
入力しない情報個人情報や自社・他社の情報は入力しない(ニッシン・パーテクチュアル)。個人情報を入力しない(アイニコグループ)
学習に使わせない設定オプトアウト設定を必ず行う(アイニコグループ)
安全に使える社内の環境Azure OpenAIを使った社内向けの生成AIを内製(トーシンパートナーズHD)
出力を確かめる人情報の正確性を確認してから従業員が返信(但馬屋)。出力は専門医などが確認(ワイズ・リーディング)
新しいツールを使うときセキュリティの情報を確かめ、支援業者に相談して可否を決める(アイニコグループ)
AIに読ませるデータ社内マニュアルやベテランの経験をまとめる(川六)。過去の契約データを使う(トーシンパートナーズHD)

ルールの作り方とひな形は、生成AIの社内ルールの作り方で解説しています。

ステップ3. 体制の構築:勉強会と成果の報告を続ける

同じ白書の概要資料では、AIを活用していない理由の2位が「活用を推進する人材が不足している」(40.0%)でした。白書本文(第2-2-91図)では、AIを活用した事業者に、社員向けの研修会や勉強会の有無で効果を聞いています。「想定した効果が得られなかった」は、取り組んでいる事業者で8.6%(920社)、取り組んでいない事業者で16.1%(789社)でした。約2倍の差です。事例の会社は、続け方を決めています。

事例の会社の続け方
事例続け方
アイニコグループ各事業部から21名を募り1年間のプロジェクト。週1回1時間程度の勉強会、3か月・6か月・12か月で成果を共有。終了後も月1回の勉強会を継続
エヌエスケーケー月に一回、全部署に生成AIを使った改善成果の報告を義務付け、全社で共有
川六毎週、全店舗でRAGの活用検討会議
ニッシン・パーテクチュアル資格取得支援制度の対象に生成AIパスポートを追加し、取得者は11人
オプトサイエンスプロンプトの書き方の勉強会を開き、社員がAIに触れる時間と環境を用意

生成AI導入前に知っておくべき3つの注意点と対策

注意点1. 誤った情報(ハルシネーション)は、人が確かめてから使う

生成AIは、もっともらしい誤りを出すことがあります。事例の会社はどこも、確かめる工程を外していません。オプトサイエンスは、生成AIが示した情報のファクトチェックを徹底しています。理化学機器の製造業(事例15)は、誤った情報が出ることを前提に「ヒント・糸口探し」と割り切っています。ワイズ・リーディングは、誤情報を防ぐため専門医などが出力を確認します。対策:仕事ごとに「誰が、何を確かめてから外に出すか」を決めます。

注意点2. 著作権と、入力する情報のリスクを管理する

画像や文章を外に出す仕事では、似たものがすでにないかの確認が必要です。ニッシン・パーテクチュアルは、AIで作ったデザインを公表する前に、画像検索で類似のものがないかを確かめています。同社は従業員に、個人情報や自社・他社の情報の入力も禁じています。対策:外に出す画像・文章の確認手順と、入力してはいけない情報を、使い始める前に1枚にまとめます。

注意点3. 従業員への教育と、使い方の共有を続ける

日本政策金融公庫総合研究所の調査(2025年3月実施、原則従業員20人以上の中小企業。デジタル化に「まったく取り組んでいない」企業を除いた回答)では、AIを「導入しておらず導入予定もない」企業が67.6%でした。導入時の課題を自由記述で聞いて分類すると、知識・情報の不足が32.3%、従業員や経営層のスキル不足などの人材関連が29.9%でした。ニッシン・パーテクチュアルも、最初は勉強会の参加者が少なく、社長が社員の相談のたびにAIでの解き方を見せ続けて広げました。対策:社長が自分で使ってみせ、社内でうまくいった使い方を毎月共有する場を決めます。

シス学の場合|事例の仕事を「作業・確認・判断」に分けて進める

シス学(システム経営学)は、AIエージェントを活用し、会社を「儲かるシステム」につくり変える経営学です。事例の中で、但馬屋は生成AIが返信文を下書きし、正確性を確かめてから従業員が返信する形にして、代表者の役割が「作成」から「確認・最終判断」に変わりました。シス学では、この分け方をどの仕事にも当てはめます。

例:お客様からの問い合わせメールへの返信を3つに分ける
任せ先受け持つ仕事中身
AI作業過去の返信例・料金表・社内の決まりをもとに返信文を下書きする。英語の問い合わせは翻訳もする
社員確認日付・金額・在庫などの事実を確かめ、言い回しを直して送る。例外の問い合わせは社長に回す
社長判断値引き・特別な対応・クレームへの方針など、会社として決めることだけを決める

下書きと確認をAIと社員に渡すと、社長に集まっていた仕事が減り、社長がいなくても回る時間が生まれます。シス学のAIコンサルティングでは、どの仕事をこの3つに分けるかを決めるところから、社員の研修、AIエージェントによる仕組みづくりまでを一緒に進めます。料金は、対象の業務と体制をお聞きしたうえで、無料相談でご案内します。まずは30分の無料相談からご相談ください。

中小企業の生成AI活用事例を参考に、自社の最初の1業務を決めよう

  • 公的資料で確かめた19件の中小企業の事例では、報告書・請求書・返信文・広告・社内の知識共有など、文章と事務の仕事から成果が出ている
  • 効果は「作業時間の短縮」がいちばん多く(中小機構の調査で83.2%)、費用の削減、人手不足の補いと売上を伸ばす仕事への振り替えが続く
  • 進め方は、1つの仕事を選ぶ → 入力してよい情報と確かめる人を決める → 勉強会と成果の報告を続ける、の3ステップ
  • 注意点は、誤情報の確認、著作権と入力情報の管理、社員への教育の3つ

まずは、この1週間で社長がいちばん時間をかけた文章の仕事を1つ選び、上の頼み方の例で下書きさせて、かかった時間を比べてみてください。そこで出た数字が、社内に広げるかどうかを決める最初の材料になります。進め方の全体は中小企業のAI導入の進め方、仕事の選び方は業務改善にAIを使う方法にまとめています。

よくある質問

中小企業で、生成AIはどのくらい使われていますか?

中小企業基盤整備機構の調査(2026年3月、回答1,647社)では、AIの導入率は20.4%で、導入済みの企業の82.6%が生成AIを使っていました。2026年版中小企業白書の概要資料では、2019年以降の省力化の投資でAIの活用に「取り組んだ」中小企業は30.3%(5,645社中)です。

中小企業は、どの仕事から生成AIを使い始めていますか?

2026年版中小企業白書では、どの業種でも「文書作成、要約、校正」と「業務自動化・効率化」に関する使い方が多いとされています。中小機構の調査でも、AIを導入している業務分野は総務・管理部門(68.3%)が最も多く、営業・販売・サービス部門(60.3%)が続きます。

従業員が数人の小さな会社でも効果はありますか?

事例には、従業員2人の雑貨店が依頼文や商品説明の下書きに使う例があります。従業員5人のホテルは月額数千円程度の利用料でチラシや議事録の作成を続け、従業員7人の卸売業はウェブ広告の作業を数十分で済ませています。まずは文章の仕事を1つ選んで、時間を比べるところから始められます。

社員が生成AIを使ってくれないときは、どうすればよいですか?

事例では、社長が社員の相談のたびにAIでの解き方を見せ続けた会社があります(ニッシン・パーテクチュアル)。月に一回、全部署に生成AIでの改善成果の報告を求めた会社もあります(エヌエスケーケー)。2026年版中小企業白書でも、AIを活用した事業者のうち「想定した効果が得られなかった」のは、研修会や勉強会に取り組む事業者で8.6%、取り組んでいない事業者で16.1%でした。

生成AIの導入に使える補助金はありますか?

2026年版中小企業白書では、中小企業の生産性向上に向けた投資の支援策として「デジタル化・AI導入補助金」と「省力化投資補助金」が紹介されています。公募の回や対象の条件があるため、契約の前に確かめてください。詳しくは[AI導入に使える補助金](/column/ai-donyu-hojokin)で解説しています。

出典・参考

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