AI導入公開

AI導入のメリット・デメリットとは?7つのメリットと5つのデメリットを、公的調査の数字と事例7選で解説

打ち合わせの机で、経営者と相談相手が業務の一覧表を見ながら、AIに任せてよい仕事と人に残す仕事に印を付けている様子

「AIを入れると何が良くなるのか。逆に、何を覚悟しておけばいいのか。」社員や取引先からAIの話を聞くたびに、社長が知りたいのはこの2つです。ところが、聞こえてくるのは「劇的に効率化」という話か、「情報が漏れる」という話のどちらかに偏りがちです。

この記事では、総務省の情報通信白書と中小機構の調査の数字を使い、AI導入のメリット7つとデメリット5つを順に解説します。どの部門で効果を感じやすいか、各社が公表した事例7つ、自社の仕事でメリットがデメリットを上回るかを判定する表も付けました。自社の業務に当てはめて、どこから始めるかを一緒に決める頼み方は、AIコンサルティングのページで紹介しています。

AI導入とは?メリット7つ・デメリット5つを先に一覧で

AI導入とは、文章の下書き・要約・問い合わせへの回答・点検の確認などの仕事の一部を、生成AIやAIを組み込んだ仕組みに任せることです。人は確認と判断を受け持つ形に、仕事の流れを変えます。ツールを契約することではなく、「どの作業をAIに渡し、誰が確かめるか」を決めるところまでが導入です。

メリットとデメリットは、どの会社にも同じだけ出るわけではありません。同じAIでも、議事録の下書きと値引きの判断では、得られるものも引き受ける危険もまったく違います。まず全体を一覧で見て、自社の仕事に当てはめるのは後半の判定表で行います。

AI導入のメリット7つとデメリット5つ(主な数字は本文の各節で出典を示します)
区分中身主な数字・事例
メリット1作業の時間が減るAIを入れた中小企業の87.0%が導入目的に挙げる(中小機構)
メリット2仕事の質がそろう目的に「品質向上」32.3%(ITツールは25.5%)。ダイキンの点検の抜け漏れチェック
メリット3社内の知恵をすぐ引き出せる社内ヘルプデスクで効果を感じる 42.7%(総務省)
メリット4人手不足を補える目的に「人手不足対応」31.7%(中小機構)。アイニコグループは年間2,247時間
メリット5時間を選ばず応えられるGen-AXの音声のAIオペレーターは24時間365日対応
メリット6新しい価値・売上につながる目的に「付加価値創出」24.5%(ITツールは10.1%)
メリット7やり方が会社に残る日清食品グループは部署ごとに指示文のひな形を作り、グループ会社へ展開
デメリット1社内の情報が漏れるおそれ日本企業の懸念の1位 46.4%(総務省)
デメリット2もっともらしい誤りが出る懸念の2位 35.3%
デメリット3他人の著作権などを侵すおそれ懸念の3位 31.3%
デメリット4判断の理由が見えにくく、偏ることがある偏見の懸念 24.7%、説明不足の懸念 20.2%
デメリット5費用と、慣れるまでの手間がかかる目的に「コスト削減」を挙げたのは14.8%(ITツールは22.0%)

企業がAI導入を進める背景|日本企業の68.9%が生成AIを使う方針を持つ

総務省の「令和8年版 情報通信白書」の企業向け調査は、2026年1〜2月に実施されました。対象は、従業員10名以上でデジタル化に取り組み始めた企業の管理職以上です(日本は515社、うち中小企業162社)。この記事の総務省の数字は、すべてこの調査のものです。生成AIを「積極的に活用する」「領域を限定して利用する」方針だと答えた割合は、日本で68.9%でした。前年度の調査の49.7%から大きく上がっています。ただし、米国・ドイツ・中国よりは低い水準です。

方針を「わからない」と答えた企業を除くと、自社の何らかの業務で生成AIを使っている割合は86.4%でした。使うかどうかではなく、「どの仕事で、どこまで使うか」で会社ごとの差がつく段階に入っています。メリットとデメリットを仕事ごとに比べる必要があるのは、このためです。

AI導入のメリット7つ|時間の短縮が中心で、ITツールより「付加価値」を狙う会社が多い

中小機構の調査(令和8年3月公表)は、令和7年11〜12月に全国の中小企業1万社へ配って行われました。AIまたはITツールを既に入れている中小企業に、導入の目的を聞いています(複数回答)。この調査の「AI」は生成AIのほか画像認識・音声認識・需要予測のAIを含み、「IT」はRPA・クラウド会計・勤怠管理などを指します。AIとITツールで、狙っているものの違いがはっきり出ました。

AI・ITツールの導入目的(中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」図15、既に導入している企業、複数回答)
目的AI(331社)ITツール(920社)差
業務効率化/作業時間の短縮87.0%92.6%どちらも1位
品質向上32.3%25.5%AIが6.8ポイント高い
人手不足対応31.7%30.5%ほぼ同じ
付加価値創出24.5%10.1%AIが14.4ポイント高い
エラー・ミスの軽減24.2%41.5%ITツールが17.3ポイント高い
売上拡大・顧客獲得22.1%14.2%AIが7.9ポイント高い
コスト削減14.8%22.0%ITツールが7.2ポイント高い

決まった処理を間違えずに速く回すのは、ITツール(RPAやクラウド会計など)の得意分野です。AIは、文章や判断材料をつくる仕事で、質を上げたり、新しい価値を生んだりする目的で選ばれています。以下の7つのメリットは、この違いを前提に読んでください。

メリット1:作業の時間が減る|効果を感じやすいのは議事録・メールの下書き

AIを入れた中小企業の87.0%が、作業時間の短縮を目的に挙げています。総務省の調査では、生成AIの効果を感じる業務の1位は「議事録・メール作成補助」で72.3%でした。2位の社内ヘルプデスク(42.7%)を大きく引き離しています。日清食品グループは、部署ごとに対象の業務を選んで指示文のひな形を作り、年間32,591時間の作業の削減を見込んだと公表しています(2024年3月)。

メリット2:仕事の質がそろう|ベテランの確認の手順を、誰でも同じ水準で

品質向上を目的にした企業は、AIで32.3%、ITツールで25.5%でした。人によって出来が違う仕事で、手本の書き方や確認の手順をAIに持たせると、新人とベテランの差が縮みます。ダイキン工業は、フェアリーデバイセズと共同で、空調機の点検・修理の作業映像から抜け漏れを自動で確かめ、技術者のスマートフォンに知らせるAIの開発を進めています。熟練者の暗黙知を形にして、サービスエンジニアを早く育てるための取り組みです。

メリット3:社内の知恵をすぐ引き出せる|マニュアルと問い合わせ

「この場合はどうするんだっけ」という社内の質問に、規程やマニュアルをもとにAIが答える使い方です。総務省の調査で、社内ヘルプデスクで効果を感じる割合は42.7%と、議事録・メールに次いで2番目でした。イオンリテールは、免税の対応、商品の配送、落とし物の管理などのマニュアルを学習させた端末を一部の店舗に入れ、音声でも聞けるようにしています。社内FAQの作り方は社内FAQをAIで作るやり方で解説しています。

メリット4:人手不足を補える|採用しなくても回る仕事を増やす

人手不足対応を目的にした企業は31.7%でした。人を1人採るかわりに、今いる社員の下書きや転記の時間を減らして、後回しになっていた仕事に回します。アイニコグループは、奈良県や京都府南部を中心に住宅・介護・保育などを手がける中小企業です。10事業部の21名が1年間取り組み、合計で年間2,247時間分の業務時間を減らしました(総務省の白書が紹介)。人手不足との関係は人手不足をAI導入で補える範囲で詳しく解説しています。

メリット5:時間を選ばず応えられる|営業時間外の受付と一次回答

人が休んでいる夜間や休日も、問い合わせの受付と一次回答をAIが受け持てます。総務省の白書は、ソフトバンクの子会社Gen-AXの「X-Ghost」を紹介しています。AIオペレーターが24時間365日、音声の問い合わせに答え、システムの照会や登録の処理まで行うものです。総務省の調査では、カスタマーサポートで効果を感じる割合は33.8%でした。お客様に直接返す仕事なので、誤りへの備え(デメリット2)と一緒に考えます。

メリット6:新しい価値・売上につながる|ITツールとの差がいちばん大きい目的

付加価値の創出を目的にした企業は、AIで24.5%、ITツールで10.1%でした。売上拡大・顧客獲得も22.1%と14.2%で、AIのほうが高くなっています。総務省の調査では、研究・商品開発で効果を感じる割合が39.1%でした。サイバーエージェントは、広告の文章や画像の効果をAIで予測して自動でつくる「極予測」シリーズを開発しています。中小企業なら、提案書の下書きや商品説明の案を増やし、試せる数を増やす使い方が入口です。

メリット7:やり方が会社に残る|うまくいった指示文が、会社の手順書になる

AIに仕事を渡すには、手順と判断の基準を言葉にする必要があります。その言葉は、そのまま会社の手順書になります。日清食品グループは、営業部門で始めた取り組みをほかの部署に広げ、作った指示文と回答の例をグループ会社に展開するとしています。営業部門の月ごとの利用率は、2023年5月の28%から11月には68%に上がっています。属人化との関係は属人化を解消するには?で解説しています。

部門別|効果を感じやすい仕事と、感じにくい仕事

総務省の調査は、業務の種類ごとに、生成AIの活用状況と効果の実感を聞いています。社長が「どこから始めるか」を決めるときの目安になります。

業務の種類ごとの生成AIの効果の実感と未導入の割合(日本、総務省「令和8年版 情報通信白書」データ集 図表Ⅰ-2-1-7)
業務の種類効果を感じる割合未導入の割合中小企業での使い方の例
議事録・メール作成補助72.3%17.5%会議の録音から決定事項と宿題を下書き、返信メールの案
社内ヘルプデスク42.7%28.8%就業規則や経費精算の質問に、規程をもとに答える
製造・生産39.8%28.4%作業手順書の下書き、点検記録のまとめ
研究・商品開発39.1%27.4%新商品の案出し、競合の情報の整理
営業・販売37.5%20.5%提案書・見積の説明文の下書き、商談メモの要約
マーケティング・広報36.6%27.6%ホームページやSNSの文案、チラシの案
カスタマーサポート33.8%29.4%問い合わせへの一次回答の下書き
経理・財務29.7%30.8%請求書と入金の照合のメモ、月次の説明文
法務28.8%32.8%契約書のひな形との違いの洗い出し
社内システム開発・運用26.3%26.6%Excelのマクロや関数の作成
調達25.9%35.0%仕入先への依頼文、相見積の比較表
人事23.5%35.4%求人票・面接の質問の下書き
経営20.1%28.2%会議資料の要約、計画の叩き台

白書の本文によると、活用している割合も「議事録・メール作成補助」が約7割で最も高く、「営業・販売」が約6割、「社内ヘルプデスク」が約5割と続きます。反対に、経営(20.1%)や人事(23.5%)は効果を感じる割合が低く、経営では活用状況を「わからない」と答えた割合も21.7%ありました。白書は理由を書いていませんが、判断が中心の仕事ほど、AIの効果は見えにくいと読めます。

同じくらいの規模の会社が、どの仕事で何時間減らしたかは、中小企業の生成AI活用事例19選に業種別にまとめています。

AI導入のデメリット5つと防ぎ方|どれも「入れる前のひと手間」で小さくできる

総務省の同じ調査(日本515社の管理職以上)で、日本企業が生成AIの活用で懸念するリスクは次のとおりでした(複数回答)。「わからない」も16.5%あり、米国・ドイツ・中国の1%台を大きく上回ります。「リスクはない」は2.9%です。4か国の比較と、リスクごとの詳しい対策は生成AIのリスクと対策にまとめています。ここでは、導入を決める社長が押さえる5つのデメリットに絞ります。

生成AIの活用に関して懸念されるリスク(日本、複数回答。総務省「令和8年版 情報通信白書」データ集 図表Ⅰ-2-1-8)
懸念割合この記事のデメリット
社内情報の漏洩などのセキュリティリスクがある46.4%1
出力結果の精度に問題がある35.3%2
著作権等の権利を侵害する可能性がある31.3%3
出力結果に倫理上不適切な内容や偏見が含まれる可能性がある24.7%4
個人情報の取り扱いなどプライバシーの侵害の可能性がある24.5%1
ブラックボックス化により判断理由などの説明が不足する可能性がある20.2%4

デメリット1:社内の情報や個人情報が漏れるおそれ

社員が個人の無料アカウントに顧客の情報を入れると、その情報がどう扱われるかを会社が管理できません。個人情報保護委員会は、生成AIサービスに個人情報を含む指示を入れるときは、利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確かめるよう求めています。本人の同意なく個人データを入れ、それが回答以外の目的で扱われると、個人情報保護法に違反する可能性があるとしています。そのため、提供する事業者が機械学習に使わないことなどを確かめるよう注意を呼びかけています。

  • 防ぎ方:会社で契約したアカウントだけを使い、入力した内容を学習に使わない設定を確かめる
  • 防ぎ方:お客様・社員の個人情報、パスワード、未公開の取引条件は入れないと1枚のルールに書く(文例は生成AIの社内ルールの作り方)

デメリット2:もっともらしい誤りが出る

AIは、知らないことでも自然な文章で答えることがあります。用途を絞って作り込んだAIでも、誤りはゼロになりません。ダイキン工業の点検の抜け漏れチェックのAIは、研修施設での実験で検知精度91%、実際の現場作業での検証では76%でした。現場では、抜け漏れの4件に1件近くを検知できない計算です。両社も、今後は検知精度を上げていくとしています。社外に出る仕事は、人の確認と組み合わせて使う前提になります。

  • 防ぎ方:AIの出力を社外に出す仕事は、出す前に確かめる人の名前を手順書に書く
  • 防ぎ方:最初は社内向けの下書き(議事録・社内メモ)から始め、お客様に直接届く仕事は後に回す

デメリット3:他人の著作権などを侵すおそれ

文化庁の「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日)は、AIを仕事で使う人がすることとして、3つを挙げています。利用規約の確認、社内ルールの策定、従業員への著作権の教育です。著作権の侵害には、既存の作品との「類似性」と「依拠性」の両方が必要です。そのため、AIが作ったものを使う前に、既存の作品と似ていないかを確かめること(インターネット検索など)を求めています。社内で検討するために生成するだけなら、一定の条件で許諾なく行える場合があります。それでも、インターネットでの配信や配布などは権利制限の範囲外になることが多く、別に確かめる必要がある、とも書いています。

  • 防ぎ方:他社の文章・画像・作品名を指示に入れて「似たもの」を作らせない
  • 防ぎ方:チラシやホームページに使う文章・画像は、公開の前に検索で似たものがないかを確かめ、使った指示文を残しておく

デメリット4:判断の理由が見えにくく、偏ることがある

AIは、なぜその答えになったかを説明しきれないことがあります。偏見の懸念は24.7%、説明不足の懸念は20.2%でした。総務省の白書が紹介する中外製薬は、AIに任せたほうがよい工程と、人が責任を取らなければならない工程を見極めるとしています。そのうえで、人の判断や確認を間に入れる「ヒューマン・イン・ザ・ループ」を重視しています。

  • 防ぎ方:採用の合否、値引き、与信など、理由の説明が要る判断はAIに決めさせず、材料の整理までに留める
  • 防ぎ方:AIに理由を挙げさせるときは「根拠にした資料名とページ」を必ず書かせ、人が元の資料で確かめる

デメリット5:費用と、慣れるまでの手間がかかる

AIを入れた中小企業で「コスト削減」を目的に挙げたのは14.8%で、ITツールの22.0%より低い数字でした。AIは、入れてすぐ支払いが減る道具というより、時間を生んでほかの仕事に回す道具です。費用は利用料だけでなく、設定、社員の練習、出力を確かめる時間もかかります。

  • 防ぎ方:1つの業務で始め、入れる前の時間を1週間だけ記録してから判断する。効果の数え方と回収期間の計算式はAI導入の費用対効果で解説
  • 防ぎ方:「続ける条件」と「判断する月」を先に決める。入れた後につまずく形と見分け方はAI導入が失敗する7つの原因にまとめています

公表された事例7選|メリットごとに、どの会社が何をしたか

各社の公式発表と、総務省の白書が紹介した事例から、メリットごとに1つずつ選びました。大企業の事例が多いため、中小企業は「仕組み」をまねて、規模は1つの業務に絞って取り入れるのが現実的です。

AI導入の事例7選(2026年10月23日に原文で確認)
会社何をしたか公表された数字・中身当てはまるメリット
日清食品グループ部署ごとに対象業務を選び、指示文のひな形を作って効果を測った年間の作業時間32,591時間の削減見込み(うち営業部門25,120時間)1. 時間・7. 会社に残る
ダイキン工業作業映像から点検・修理の抜け漏れを自動で確かめるAIを、フェアリーデバイセズと共同で開発中検知精度は研修施設91%、現場76%(実証実験)。経済産業省とNEDOの「GENIAC-PRIZE」の製造業の暗黙知の部門で第1位2. 質がそろう
イオンリテール店舗の業務マニュアルを学習させた「AIアシスタント」を一部店舗に導入免税の対応、配送、落とし物の管理など。音声入力に対応3. 知恵を引き出す
アイニコグループ(中小企業)10事業部から21名を募り、週1回1時間程度の勉強会で1年間取り組んだ年間2,247時間の削減(広報880時間、不動産の問い合わせ対応897時間、介護の送迎ルート170時間など)4. 人手不足を補う
Gen-AX(ソフトバンクの子会社)音声の問い合わせに答えるAIオペレーター「X-Ghost」を開発24時間365日対応。システムの照会や登録の処理も行う5. 時間を選ばない
サイバーエージェント広告の文章や画像の効果を予測して自動でつくる「極予測」シリーズ広告主のルールに基づいてAIが確認する「審査AI」も提供6. 新しい価値
中外製薬約7,800名の社員向けに生成AIのアプリを社内で開発平均約5,400人が使う。人の判断を間に入れる仕組みを重視1. 時間・デメリット4への備え

中小企業がまねしやすいのは、アイニコグループの進め方

7社のうち、中小企業はアイニコグループです。専門の支援業者と連携し、次の順で進めました(総務省の白書から)。

  1. 全社員向けの勉強会で、AIで何ができるかを体験する機会をつくる
  2. 全10事業部から2名程度、計21名の参加者を募る
  3. 各事業部の課題から、AIで解決したい課題と目標を決める
  4. 週1回1時間程度の勉強会で、進み具合を確かめ、専門家の助言を受ける
  5. 3か月・6か月・12か月の節目で成果を共有し、12か月目に最終報告会を開く

最低限のルールとして「個人情報を入力しない」「オプトアウト(学習に使わせない)設定を必ず行う」を周知しています。メリットを取りにいく仕組みと、デメリットへの備えを同時に始めている点が参考になります。プロジェクトの後も勉強会を月1回続け、2026年4月からは各部門からAI活用の専任スタッフを選ぶ予定としています。

日清食品グループの数字は「見込み」、ダイキンの数字は「精度」

事例の数字は、そのまま自社の見込みにはなりません。日清食品グループの32,591時間は、作った指示文のひな形を使ったときの削減を見込んだ値です。ダイキン工業の91%・76%は、時間ではなく抜け漏れを見つける精度です。何を数えた数字かを確かめてから、自社の1つの業務で同じものを測るのが確実です。

自社でメリットがデメリットを上回るか|仕事ごとに決める9問の判定表

メリットとデメリットは、会社単位ではなく仕事単位で比べます。候補の仕事を1つずつ、次の9問に「はい/いいえ」で答えます。上の6問はメリットの大きさ、下の3問はデメリットへの備えの重さを測る問いです。

AIに任せる仕事の判定表(9問)
問い「はい」なら関係するメリット・デメリット
週に5回以上くり返す仕事かメリット+11. 時間
ベテランと新人で出来が違う仕事かメリット+12. 質がそろう
同じ質問に何度も答えている仕事かメリット+13. 知恵を引き出す
人が足りず、後回しになっている仕事かメリット+14. 人手不足
営業時間外にも依頼が来る仕事かメリット+15. 時間を選ばない
手順や判断の基準を、言葉で説明できる仕事かメリット+17. 会社に残る
お客様や社員の個人情報を入れないとできない仕事か備え+1(会社の契約・設定を確かめてから)デメリット1
AIの出力が、人の確認なしで社外に出る仕事か備え+1(確認する人を決めてから)デメリット2・3
金額・合否・取引の可否など、理由の説明が要る判断か備え+2(判断は人に残す)デメリット4

メリットが4以上で、備えが1以下の仕事が、最初にAIに任せる候補です。備えが2以上の仕事は、ルールと確認の手順を決めてから2番目以降に回します。記入例は次のとおりです。

判定表の記入例(従業員20名の会社を想定した例)
仕事メリット備え判定
社内会議の議事録4(くり返す・出来が違う・後回し・手順を説明できる)0最初の候補
問い合わせメールへの一次回答5(くり返す・同じ質問・後回し・時間外・手順を説明できる)2(顧客情報を入れる・社外に出る)設定と確認する人を決めてから2番目に
値引きの可否の判断1(出来が違う)2(理由の説明が要る)AIは過去の値引きの記録を整理するまで。判断は社長

最初の1歩は、明日、社長と担当者で15分、先週の仕事から3つを選んでこの9問に答えることです。最初の候補が1つ決まれば、デメリットへの備えもその仕事の分だけ考えればよくなります。洗い出しを全社で進める手順は業務の棚卸しのやり方で解説しています。

AI導入のメリットでよくある誤解3つ|「ミスがなくなる」「経営判断も任せられる」「様子見でいい」

誤解1:AIを入れればミスがなくなる

「エラー・ミスの軽減」を導入目的に挙げた中小企業は、ITツールで41.5%、AIで24.2%でした。差は17.3ポイントで、AIとITツールの差が最も大きい項目です。決まった計算や転記を間違えないのは、ITツールの得意分野です。AIは下書きを速く作る代わりに、誤りが混ざる前提で使います。ミスを減らしたい仕事は、AIの前に、入力の画面やチェックの仕組み(ITツール)で防げないかを考えます。

誤解2:経営判断もAIに任せられる

総務省の調査で、経営の業務で効果を感じる割合は20.1%で、13の業務の種類のうち最も低い数字でした。AIが役立つのは、判断の材料をそろえるところまでです。会議資料の要約や、売上の数字の比較表の下書きはAIに任せ、方針と金額は社長が決めます。社長の数字や計画への使い方は経営にAIを使う方法で解説しています。

誤解3:リスクがあるから、もう少し様子を見たほうがいい

日本企業で「リスクはない」と答えたのは2.9%です。それでも、生成AIを使う方針の企業は68.9%あり、ほとんどの会社はリスクを認識したうえで使い始めています。デメリットの多くは、入れない情報を決める、確かめる人を決める、判断を人に残す、の3つで小さくできます。導入の前に止まってしまう理由と越え方は、中小企業のAI導入が進まない理由で解説しています。

シス学の場合|メリットとデメリットの比較も「作業・確認・判断」に分けます

シス学(システム経営学)は、AIエージェントを活用し、会社を「儲かるシステム」につくり変える経営学です。この記事の9問の判定表を使って「どの仕事からAIに任せるか」を決める仕事は、次のように分けます。

「どの仕事をAIに任せるか」を判定する仕事の分け方(例)
任せ先受け持つ仕事中身
AI作業日報や予定表から仕事の一覧を下書きし、9問の判定表に仮の「はい/いいえ」を入れる
社員確認回数や時間外の依頼の有無が実態と合うかを直し、個人情報を入れる必要があるかに印を付ける
社長判断最初に任せる仕事と、AIに決めさせない判断の線を決める

社長に集まっていた下書きや確認をAIと社員に渡し、社長がいなくても回る時間をつくることが、この比較の目的です。判定から、ルールづくり、効果の確認までを一緒に進めるのが、シス学のAIコンサルティングです。社員が自社の書類でAIを使えるようにする研修はシス学 AI研修で紹介しています。料金は、対象の業務と体制をお聞きしたうえで、無料相談でご案内します。

まとめ

  • AI導入のメリットは、時間の短縮・質がそろう・知恵を引き出す・人手不足を補う・時間を選ばない・新しい価値・やり方が会社に残る、の7つ。導入目的の1位は作業時間の短縮(87.0%)
  • AIはITツールより「付加価値創出」(24.5%と10.1%)を狙って選ばれ、「ミスの軽減」(24.2%と41.5%)はITツールの得意分野
  • 効果を感じやすいのは議事録・メール(72.3%)と社内ヘルプデスク(42.7%)。経営は20.1%で最も低い
  • デメリットは、情報漏えい(懸念46.4%)・誤り(35.3%)・著作権(31.3%)・判断理由の見えにくさ・費用と手間の5つ。入れない情報、確かめる人、人に残す判断を先に決めれば小さくできる
  • メリットとデメリットは仕事ごとに比べる。9問の判定表で、メリット4以上・備え1以下の仕事から始める

判定表で最初の仕事が決まったら、試してから全社に広げるまでの手順は中小企業のAI導入の進め方にまとめています。どの仕事から始めるか迷う段階でも、まずは30分の無料相談でお聞かせください。全国オンラインで対応しています。

よくある質問

AI導入のいちばんのメリットは何ですか?

作業時間の短縮です。中小機構の調査では、AIを入れた中小企業の87.0%が「業務効率化/作業時間の短縮」を目的に挙げました。総務省の調査では、効果を感じる業務の1位は「議事録・メール作成補助」で72.3%でした。最初は文書の下書きから始めると、メリットを感じやすくなります。

AI導入のデメリットで、企業がいちばん心配していることは何ですか?

総務省の調査(日本515社の管理職以上、2026年1〜2月)では、「社内情報の漏洩などのセキュリティリスク」が46.4%で最も多くなりました。「出力結果の精度」35.3%、「著作権等の権利の侵害」31.3%が続きます。会社で契約したアカウントを使い、入れない情報と確かめる人を決めることで小さくできます。

AIとITツール(会計ソフトやRPAなど)は、何が違いますか?

導入の目的に違いが出ています。中小機構の調査では、AIは「付加価値創出」(24.5%、ITツールは10.1%)や「品質向上」(32.3%、同25.5%)で多く選ばれました。「エラー・ミスの軽減」はITツールが41.5%、AIが24.2%です。決まった処理を間違えずに回すならITツール、文章や判断材料をつくるならAIが向いています。

中小企業でも、AI導入のメリットは出ますか?

出ています。総務省の白書は、奈良県や京都府南部を中心に住宅・介護・保育などを手がける中小企業、アイニコグループを紹介しています。10事業部の21名が1年間取り組み、年間2,247時間分の業務時間を減らしました。大きな投資から始めず、1つの業務で試して広げる進め方です。

デメリットを減らすために、最初に何を決めればよいですか?

3つです。使ってよいツールと入れてはいけない情報、AIの出力を社外に出す前に確かめる人、AIに決めさせない判断(金額・合否・取引の可否など)です。個人情報保護委員会は、個人情報を入れる場合は利用目的の範囲内かを確かめ、提供事業者が機械学習に使わないことなどを確かめるよう注意を呼びかけています。

出典・参考

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