社長の仕事とは?法律で決まっていること
社長の仕事は、端的にいえば、会社を経営することです。ただ、「経営」だけでは、何をする人かがわかりにくいため、まず法律で決まっている部分を確認します。
「社長」は、会社の中で使う呼び名です。会社法に、社長の定義はありません。会社法に「社長」という言葉が出てくるのは、第354条など、代表取締役以外の取締役に「社長」などの名称を付けた場合の扱いを定めた部分です。法律上の役割は、代表取締役などの立場で決まります。
| 条文 | 内容 | 言い換えると |
|---|---|---|
| 会社法 第349条第4項 | 代表取締役は、会社の業務に関する、裁判上と裁判外のすべての行為をする権限を持つ | 契約や手続きで、会社を代表する |
| 会社法 第330条、民法 第644条 | 会社と役員の関係は、委任に関する規定に従う。受任者は、善良な管理者の注意をもって、委任された事務を処理する義務を負う | 会社の仕事を、必要な注意を払って進める |
| 会社法 第355条 | 取締役は、法令、定款、株主総会の決議を守り、会社のために忠実に職務を行う | 決まりを守り、会社のために行う |
| 会社法 第423条第1項 | 役員が任務を怠ったときは、会社に対して、生じた損害を賠償する責任を負う | 任務を怠ると、会社への賠償責任がある |
| 会社法 第429条第1項 | 役員が職務を行うについて、悪意または重大な過失があったときは、第三者に生じた損害を賠償する責任を負う | 重大な過失があると、第三者への賠償責任がある |
| 会社法 第363条第2項 | 取締役会を置く会社では、代表取締役などは、3か月に1回以上、職務の執行の状況を取締役会に報告する | 取締役会がある会社では、定期的に報告する |
この表は、株式会社の代表取締役を務める社長の場合の概要です。会社の形や定款によって変わる部分があります。法律上の助言ではありませんので、個別の判断は、弁護士などに確認してください。
経営者の基本の仕事|国の資料にある4つの分野
中小企業庁の2026年版 小規模企業白書は、経営者が持つべき基本的知識を「経営リテラシー」と呼び、4つの分野に分けています。社長の仕事の全体を見る、地図として使えます。
| 分野 | 項目 | 取り組んでいる割合 |
|---|---|---|
| 財務・会計 | 原価管理 | 67.8% |
| 財務・会計 | 資金繰り計画の策定 | 24.6% |
| 組織・人材 | 従業員の労務管理 | 70.5% |
| 組織・人材 | 組織活性化 | 41.4% |
| 運営管理 | 品質管理 | 69.3% |
| 運営管理 | ノウハウの蓄積・共有 | 48.8% |
| 経営戦略 | 経営計画の策定 | 19.9% |
| 経営戦略 | マーケティング | 60.6% |
調査の対象は、小規模事業者です(n=6,911〜9,915。項目で異なる)。労務管理と組織活性化は従業員がいる事業者、ノウハウの蓄積・共有は従業員がいない事業者を除いた集計です。原価管理は、製品・商品・サービス別か、事業単位で原価を把握している事業者を指します。経営計画は、自社が現状から将来のあるべき姿に到達するための計画を指します。マーケティングは、外部環境の情報収集と差別化の取組を指し、片方だけに取り組んでいる事業者は除いた集計です。
取り組んでいる割合が最も低いのは、経営計画の策定(19.9%)で、次が資金繰り計画の策定(24.6%)です。白書は、経営計画を策定している事業者は、売上高と営業利益率が「増加」「上昇」と答えた割合が高いと述べています。また、経営計画を社内で共有している事業者のほうが、効果が得られたと答えた割合が高い結果でした。
同じ白書は、経理についても調べています。売上高の規模が小さい事業者ほど、経理業務を経営者自身が担うケースが多いとしています。また、売上高の規模が小さい事業者ほど、試算表の作成頻度が低い傾向があり、「作成していない」と答えた割合も高い結果でした。白書は、月次などのペースで実績を管理することが、目標と比べた進み具合を確かめ、的確な経営判断につなげるために重要だと考えられる、と述べています。
社長に残す仕事|社長の立場でなければできないこと
社長に残す仕事は、次の3つの条件のうち、2つ以上に当てはまる仕事です。
- 間違えると、会社の信用やお金に大きく響く判断である
- 社長の立場でなければ決められない(代表としての契約、会社の方向、後継者の選び方など)
- 毎回条件が変わり、基準を書き出せない
| 仕事 | 社長に残す理由 |
|---|---|
| 経営計画(会社の方向と、年間の目標) | 会社の方向は、代表の判断で決める。社内で共有すると、効果が得られたと答える割合が高い |
| 借入と資金繰りの最終判断 | 会社のお金と信用に直接関わる |
| 値引きや取引条件の基準づくり | 基準を決めるのは、会社の判断。基準ができれば、日々の判断は渡せる |
| 採用・評価・配置の最終判断 | 人と、会社の力に関わる |
| 重要な取引先との交渉 | 代表としての責任で行う |
| 後継者の選び方と育て方 | 会社を引き継ぐときの価値に直結する |
「値引きの判断」のように、判断そのものは社長に残っても、基準を書くことで、日々の判断は渡せることがあります。また、社長に残す仕事でも、判断の前の準備は渡せます。たとえば、借入の相談の前に、直近の試算表、返済の予定表、資金繰りの見通しをそろえる作業です。そろえる作業を渡すと、社長は、決めることに時間を使えます。後継者については、事業承継の準備はいつから何を?で解説しています。
社長がやっているだけの仕事|ほかに渡せる仕事
社長の1日の中には、社長にしかできないわけではなく、社長がやってきただけの仕事があります。次の表は、その例です。
| 仕事 | 社長に残っている理由 | 渡すために必要なこと |
|---|---|---|
| 見積書の確認 | 金額の根拠や、値引きの基準が書かれていない | 単価の根拠と、値引きの基準を、条件と数字で書く |
| 請求書と入金の確認 | 例外の処理が、社長の頭の中にある | 取引先ごとの締め日と例外を、一覧にする |
| 日報の確認 | 何を見ればよいかが決まっていない | 見る項目と、対応が要る条件を決める |
| 社員からの質問への返事 | 答えが、社長にしかわからない | よくある質問と答えを、1つの場所にまとめる |
| 取引先の定型の問い合わせへの返事 | 過去の返事が、社長のメールにだけある | 過去の返事を共有の場所に集め、文面の型を作る |
| 会議の議事録 | 「自分で書いたほうが早い」 | 録音を文字にし、決まったことと担当の一覧にする |
渡すために必要なことは、どれも、書き出すことです。手順と判断の基準が言葉になれば、社員にも、AIの下書きにも渡せます。書き出し方は、業務の棚卸しで解説しています。手順書の作り方は、マニュアル作成にAIを使う方法をご覧ください。
社長に仕事が集まる、3つの理由
- 基準が書かれていない:値引きや納期の基準が頭の中にあり、社員は社長に聞くしかない
- 「聞けば早い」が続く:聞く側も答える側も困らないので、書き残す理由が生まれない
- 「自分でやったほうが早い」:渡す手間が、自分でやる手間より大きく感じられる
3つとも、社長の能力の問題ではありません。やり方が書かれていないことから起きます。1回書けば、聞かれる回数も、自分でやる回数も減ります。
渡すことは、手放すことではありません
仕事を渡したあとも、結果を見る日は残します。たとえば、月に1回、基準を超えた件数と、例外の内容を確かめます。基準を超えた案件は、これまでどおり社長が決めます。
1週間の書き出し方|社長の仕事を仕分ける
社長の仕事を見分けるには、まず書き出します。次の手順で、1週間分を記録します。
- 仕事を1行ずつ書く:見積書の確認、日報の確認、取引先への電話など
- 回数と時間を書く:週に何回、1回で何分かかったか
- 残す条件を数える:前の章の3つの条件のうち、いくつ当てはまるかを書く
- 印を付ける:当てはまる数が0〜1つの仕事に印を付ける。これが、ほかに渡せる仕事の候補
| 仕事 | 週の回数 | 1回の時間 | 残す条件に当てはまる数 | 判断 |
|---|---|---|---|---|
| 見積書の確認 | 10回 | 15分 | 0〜1 | 基準を書いて渡す候補 |
| 日報の確認 | 5回 | 30分 | 0 | 見る項目を決めて渡す候補 |
| 社員からの質問への返事 | 15回 | 5分 | 0 | 質問と答えをまとめて渡す候補 |
| 銀行との借入の相談 | 1回 | 60分 | 3 | 社長に残す |
| 新しい取引先との条件の交渉 | 1回 | 90分 | 3 | 社長に残す |
この例では、渡す候補の3つの仕事に、週に合計375分(約6時間)かかっています。見積書の確認が150分、日報の確認が150分、社員からの質問への返事が75分です。時間が長く、当てはまる数が少ない仕事から、渡す準備を始めます。
書き出しには、無料の社長の仕事 棚卸しパックが使えます。中身は、書き出しシート、仕事の仕分け表(記入例つき)、任せる基準テンプレ、入力してよい情報の3区分表、AIへの頼み方20本の5点です。Excelと、印刷用のPDFがあります。
仕事を渡す進め方|基準を書いて、1つずつ渡す
- 1つ選ぶ:時間が長く、毎週くり返す仕事を1つ選ぶ。見積書の確認や日報の確認など
- 手順と基準を書く:社長が話し、聞き手が書き取る。基準は、「〇〇は、△△まで、□□が決めてよい」の1行にする
- 渡す相手に、その紙だけでやってもらう:つまずいた所を直す
- 結果を見る日を決める:月に1回、基準を超えた件数と、例外の内容を確かめる
| 項目 | 測り方 |
|---|---|
| 社長への確認の回数 | 1週間の回数を数える |
| 1回の所要時間 | 10回分を記録して、平均を出す |
| ミス・手戻りの件数 | 1か月の件数を数える |
渡す前の1週間に、同じ項目を記録しておくと、渡したあとに比べられます。他社の数字ではなく、自社の数字で確かめます。
仕事が人に付いている状態の見分け方は、属人化とは?で解説しています。仕組みにする全体像は、仕組み化とは?にまとめています。
AIでできること・できないこと
- できること:録音を文字にして、手順書の下書きにする。過去の見積書やメールから、よくある条件と例外を一覧にする。基準に当てはまるかを照らす下書きを作る
- できないこと:基準を決めること。最終の判断をすること
総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」は、AIを使う事業者について述べています。人間の判断を介在させることで、予期せぬ事故を防ぐことにもつながる、としています。判断は、社長に残します。
シス学の進め方|社長の判断を、会社の仕組みに移します
シス学(システムAI経営学)は、社長の頭の中にある判断と勝ちパターンを、AIでマニュアルにし、AIエージェントで仕組みにして、誰がやっても回る会社をつくる経営の方法です。株式会社むさしAI研修のAI導入支援ブランドとして提供しています。旗の言葉は「世界は、システムでできている。」です。
シス学が会社に進めるやり方は、AIで会社をシステム化し、再現性を高めることです。具体的には、次の3つです。
- 社長や一部の社員の頭の中にある、手順と判断の基準を書き出し、会社の仕組みに移します。
- うまくいったやり方(勝ちパターン)を、誰がやっても同じ品質で、何度でも再現できるようにします。ミスも減ります。
- 新たな勝ちパターンのつくり方も仕組みにして、
進化し続けられるようにします。
このやり方で、次の「シス学で叶える3つのシ」を目指します。
- 1つ目のシ:収益改善:高収益体質へ。削れた作業時間と、新たな勝ちパターンで伸びた分の両方を、数字で確かめます。
- 2つ目のシ:時間創出:社長がいなくても回る会社へ。社長は経営の判断と次の一手に、社員はお客様への対応と自分の成長に、時間を使えるようにします。
- 3つ目のシ:承継価値の向上:いつでも、高い価値で次へ引き継げる会社へ。
この記事で扱った社長の仕事の見直しは、2つ目のシ「時間創出」と、3つ目のシ「承継価値の向上」につながります。
シス学 AI戦略では、社長の仕事を書き出し、どれを社長に残し、どれを仕組みにして渡すかを、社長のお話を伺いながら一緒に決めます。社員向けのAI研修や、手順を自動化するAI開発も、同じチームで担当します。
まとめ
- 「社長」は会社の中の呼び名で、法律上の役割は、代表取締役などの立場で決まる
- 経営の基本は、財務・会計、組織・人材、運営管理、経営戦略の4つの分野。経営計画と資金繰り計画は、取り組んでいる割合が低い
- 社長に残す仕事は、3つの条件のうち2つ以上に当てはまる仕事。それ以外は、基準を書いて渡せる
- 渡すために必要なことは、手順と判断の基準を書き出すこと
まずは、1週間の仕事を書き出してみてください。書き出しには、無料の社長の仕事 棚卸しパック(Excel・PDF)が使えます。お名前・会社名・メールアドレスの入力で受け取れます。
書き出した仕事のうち、どれを残し、どれから渡すかを一緒に整理したいときは、日時を選んで無料相談を予約できます。初回は30分・無料・全国オンラインで、相談のあとに無理な営業はしません。
よくある質問
社長の仕事とは、簡単に言うと何ですか?
会社の方向を決め、お金、人、取引先に関わる最終の判断をして、会社を代表して責任を負うことです。日々の確認や定型の返事は、社長がやってきただけの仕事であることが多く、基準を書けば渡せます。
社長と代表取締役は、同じですか?
同じではありません。社長は会社の中の呼び名で、会社法に定義はありません。代表取締役は会社法の役職で、会社を代表する権限があります。同じ人が務めることもあれば、別の人のこともあります。
社長がやってはいけない仕事はありますか?
法律で禁止されているわけではありません。ただ、渡せる仕事を抱え続けて、経営計画のように社長にしかできない仕事が後回しになると、会社の方向を決める時間がなくなります。
社長の仕事が多すぎるとき、何から手をつければよいですか?
1週間の仕事を書き出し、回数と時間を記録します。時間が長く、社長に残す条件に当てはまる数が少ない仕事から、基準を書いて渡す準備を始めます。
社長の仕事を、AIに任せてもよいですか?
手順が決まった作業の下書きや照合には使えます。基準を決めることと最終の判断は、社長に残します。AI事業者ガイドラインも、人間の判断を介在させることで予期せぬ事故を防げるとしています。




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