AI研修公開 更新

Q.リスキリングの助成金はいつまで使える?条件と、AI研修で使うときの注意

会議室で、社員たちがノートPCを前に座り、講師が正面の画面の表を指しながら説明している様子

A. 厚生労働省の人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」は、令和8年度末(2027年3月末)までの時限措置です。ただし、研修を始める日の1か月前までに計画届を出さないと助成の対象にならないため、会社ごとの本当の締め切りは「研修開始日の1か月前」です。

「リスキリング 助成金」で調べると、厚生労働省の人材開発支援助成金と、経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」が並んで出てきます。会社が社員に受けさせる研修の費用を助成するのは、厚生労働省のほうです。

この記事では、厚生労働省の資料(令和8年8月3日版)にもとづいて、2つの期限、条件、経済産業省の事業との違い、AI研修で使うときの注意を順にお答えします。社員向けのAI研修の中身は、シス学 AI研修のページにまとめています。

1. 「いつまで」の答えは2つ|制度は令和8年度末まで、計画届は研修開始の1か月前まで

「リスキリングの助成金はいつまで」という質問には、2つの意味があります。制度そのものがいつまであるのか。そして、自分の会社の研修では、いつまでに何を出せばよいのか。両方を表にまとめます。

事業展開等リスキリング支援コースの期限(厚生労働省の資料より)
期限中身
制度の期限令和8年度末(2027年3月31日)までの時限措置
計画届の期限研修を始める日の6か月前から1か月前までの間に、労働局へ出します
支給申請の期限研修が終わった日の翌日から2か月以内(厳守)

制度の期限|令和8年度末(2027年3月31日)まで

厚生労働省のパンフレットには、このコースは「令和4年~8年度の期間限定の助成金として創設」したと書かれています。同じパンフレットの助成メニューの表でも、このコースと「人への投資促進コース」に「令和8年度末までの時限措置」という注が付いています。

令和9年度(2027年4月)以降の扱いは、2026年10月23日に確かめた時点で、厚生労働省の人材開発支援助成金のページには書かれていません。

参考になるのが、厚生労働省の令和9年度予算の概算要求です。人材開発支援助成金は602億円の要求(令和8年度当初予算は539億円)で、資料のコースの表は「訓練実施コース」と「休暇制度導入コース」の形で書かれています。「事業展開等リスキリング支援コース」という名前の行はありません。

計画届の提出、研修の開始、研修の終了、支給申請のどこまでを令和8年度のうちに済ませる必要があるかは、手元の資料からは読み取れません。管轄の労働局に確かめるのが確実です。なお、令和8年8月3日の改正では、新しい支給要領を使うかどうかを、計画届を出した日で分けていました。

計画届の期限|研修を始める日の1か月前まで

会社にとって本当の締め切りは、こちらです。計画届は、研修を始める日の6か月前から1か月前までの間に出します。期限は、1か月前の同じ日付です。

計画届の期限の例(研修を始める日の、1か月前の同じ日付まで)
研修を始める日計画届を出す期限
2027年1月18日(月)2026年12月18日(金)
2027年2月15日(月)2027年1月15日(金)
2027年3月1日(月)2027年2月1日(月)
  • 郵送のときは、書類が労働局に届いた日が提出日です。消印の日ではありません
  • 期限が土日や休日にあたるときは、翌開庁日が期限です
  • 電子申請(雇用関係助成金ポータル)で出すには、GビズIDの取得が必要です
  • 計画届を出す日までに、職業能力開発推進者を選び、事業内職業能力開発計画をつくって社員に知らせておきます
  • 研修の開始日を1か月以上後ろへずらすときは、変更届ではなく計画届を出し直します

研修が終わったあとも手続きは続きます。たとえば研修が2027年3月31日に終われば、支給申請の期限は2か月後の5月31日で、令和9年度に入ります。年度をまたぐ場合の扱いも、労働局に確かめておきます。日付を数える手順は、AI研修の助成金申請のやり方で解説しています。

2. 使える条件|厚生労働省の資料にある確認点

期限に間に合っても、条件を満たさなければ助成されません。厚生労働省のパンフレットのチェックリストなどから、主な条件を表にまとめました。

事業展開等リスキリング支援コースの主な条件
確かめること中身
会社雇用保険の適用事業所の事業主であること。職業能力開発推進者を選び、事業内職業能力開発計画を社員に知らせていること
受講者その事業所の雇用保険の被保険者であること(研修の期間中も被保険者であること)
研修の目的次のどれかに当てはまること。1:新規事業などの事業展開、2:社内のDX化・GX化、3:人事・人材育成の計画に基づいて、今後つく予定の職務
研修の時間実訓練時間が10時間以上であること
研修の形ふだんの仕事と分けて行う訓練(OFF-JT)。通学、同時双方向のオンライン、eラーニング、通信制など。eラーニング・通信制は経費助成のみ
受講した時間通学か同時双方向のオンラインなら、実訓練時間の8割以上を受講すること
職務との関係受講者の職務に直接関連した研修であること
費用支給申請の日までに、研修の経費を会社が全額負担していること
賃金研修の期間中も、受講者に適正に賃金を払うこと
計画届研修を始める日の6か月前から1か月前までの間に出すこと

中小企業が受けられる助成

事業展開等リスキリング支援コースの助成内容(中小企業。( )内は大企業)
項目内容
経費助成率75%(60%)
賃金助成(1人1時間)1,000円(500円)
経費助成の上限(1人1訓練)実訓練時間が10時間以上100時間未満は30万円(20万円)、100時間以上200時間未満は40万円(25万円)、200時間以上は50万円(30万円)
eラーニング・通信制経費助成のみ。上限は15万円(10万円)

支給するかどうかと金額は、支給申請のあとの労働局の審査で決まります。厚生労働省も「計画届を提出したことをもって、助成金が確実に支給されるものではありません」としています。中小企業にあたるかどうかの基準と計算の例は、AI研修に使える助成金で解説しています。

3. 経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」との違い|こちらは転職を目指す個人向け

「リスキリング」と名前の付く国の支援には、経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」もあります。名前は似ていますが、誰のための制度か、お金を誰が受け取るかが違います。

厚生労働省のコースと、経済産業省の事業の違い
項目厚生労働省 事業展開等リスキリング支援コース経済産業省 リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業
誰のための制度か会社が、雇っている社員に研修を受けさせる在職中の個人が、雇い主の変わる転職を目指して学ぶ
お金を受け取る人会社(事業主)事業に採択された補助事業者。個人は直接の補助の対象ではありません
支援の中身研修の経費と、研修中の賃金の一部キャリア相談、リスキリング講座、転職支援を一体で受けられる
額の決まり方中小企業は経費の75%、賃金は1人1時間1,000円(上限あり)講座を修了すると受講費用(税別)の2分の1(上限40万円)。転職して1年続けて働くと、追加で5分の1(上限16万円)。どちらも補助事業者に補助され、受講者の負担が軽くなる
申し込み先会社が労働局へ計画届を出す個人が補助事業者に申し込む

会社のお金で社員にAI研修を受けさせるなら、確かめるのは厚生労働省のコースです。経済産業省の事業は、個人の転職とキャリアアップを支える仕組みで、申し込みの要件にも「雇用主の変更を伴う転職を目指している方」とあります。広告や営業資料で「リスキリング補助金」とだけ書かれていたら、どちらの制度の話かを先に聞きましょう。

4. AI研修で使うときの注意|2026年8月から、汎用的な研修は対象外

令和8年8月3日以降に出す計画届から、DX化・GX化の研修でも、次の2つは対象外になりました。職務に間接的に必要な知識・技能を学ぶもの。職業や職務を問わず、職業人として共通して必要なもの。8月2日までに研修会社と契約・申し込みをした研修などには、経過措置があります。

厚生労働省が示した、生成AIの研修の例
研修の内容判断理由
生成AIで商品提案書の構成案づくり、文章生成、修正の方法を学ぶ、営業担当者向けの研修対象営業担当者の具体的な業務に直結し、そのまま使える内容のため
生成AIを使うための、汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ研修対象外特定の業務への具体的な適用を伴わない、汎用的な内容のため
DXの概念、デジタル技術の概要、データ活用の考え方を学ぶ研修対象外共通知識の習得にとどまり、業務に直接使う内容ではないため

助成を受けられる回数にも上限があります。同じ社員について1年度に3回までです。そのうちeラーニングは1年度に1回までで、令和8年8月3日以降に出した計画届の研修から数えます。年度は、支給申請の日を基準に4月1日から翌年3月31日までです。

判断の目安は、厚生労働省の例のとおり「受講する社員の具体的な業務に、そのまま使えるか」です。研修会社には、受講する社員の職務と、研修で扱う題材(提案書、見積書など)を伝えて、カリキュラムを組んでもらいます。

お金まわりで気をつけること

  • 「研修が無料になる」とうたう勧誘:厚生労働省は、助成金で研修を無料で受けさせられるとうたう勧誘に注意を呼びかけています。返金などで会社が経費を全額負担していないと、支給されません
  • 受講料は支給申請までに全額を会社が払う:受講者に一部でも負担させると、経費助成も賃金助成も受けられません
  • 助成金の有無で受講料が変わる:厚生労働省の例では、助成金を使う会社は30万円、使わない会社は10万円という設定なら、差額の20万円は対象外です。支給申請では、受講料の価格設定に関する疎明書(様式第28号)も出します
  • AIツールの導入費用:AI研修の費用は対象経費ですが、AIツールの導入費用は対象経費ではありません
  • 申請の代行:報酬を得て申請の手続きを代行できるのは、社会保険労務士だけです

厚生労働省は、場合によっては事業主名や代表者名を公表し、悪質な場合は捜査機関に刑事告訴するとしています。「助成金で受講料の負担がなくなり、利益まで出る」という営業も、注意すべき例に挙げています。助成金は払った経費の一部を助成するもので、利益は出ません。不審に思ったら、労働局に情報提供できます。

結論|「年度末まで」ではなく「研修開始日の1か月前まで」で動く

  • 事業展開等リスキリング支援コースは、令和8年度末(2027年3月31日)までの時限措置。令和9年度以降の扱いは、厚生労働省の発表で確かめる
  • 会社ごとの締め切りは、研修を始める日の1か月前の計画届。研修が終わった日の翌日から2か月以内の支給申請も必要
  • 対象は雇用保険の被保険者で、10時間以上、職務に直接関連した研修。2026年8月からは汎用的なAI研修は対象外
  • 経済産業省のキャリアアップ支援事業は、転職を目指す個人向けで、会社の研修費の制度ではない

今年度のうちにAI研修を考えているなら、まず研修を始めたい日を決め、そこから1か月前の日付を数えてください。カリキュラムづくりや社内の準備を含めると、実施したい日の2〜3か月前には研修会社と労働局(または社会保険労務士)に相談を始めておくと安心です。

関連資料

研修の前に、どの仕事にAIを使うかを決めておくと、「職務に直接関連した研修」を組みやすくなります。次の2つの資料は、資料ダウンロードから無料で読めます。

  • シス学 サービス資料(PDF):AI導入の考え方と、戦略・研修・開発の進め方をまとめた資料
  • 社長の仕事 棚卸しパック(Excel・PDF):社長と社員の仕事を書き出し、AIに任せる仕事を決めるための道具

シス学の場合|研修の日程を、計画届の期限から逆算して組みます

シス学(システム経営学)は、AIエージェントを活用し、会社を「儲かるシステム」につくり変える経営学です。シス学 AI研修は、見積書、請求書、日報、受注メールなど、受講する社員の職務に合わせた題材で、AIで仕事を終わらせるところまで練習します。

研修の日程づくりも、仕事を「作業・確認・判断」に分けて進めます。

研修の日程を決める仕事の分け方(例)
任せ先受け持つ仕事中身
AI作業研修を始めたい日から、計画届の期限と、支給申請の期限の候補を数えて、提出書類のチェック表を下書きする
社員(総務)確認期限が土日や休日にあたらないか、受講する社員が雇用保険の被保険者かを確かめる
社長判断研修を始める日と、受講する社員、研修で扱う業務を決める

研修は実訓練12時間、同時双方向(対面またはオンライン)で行います。助成金を使う場合も使わない場合も、研修の料金は同じです。料金は、対象の業務と人数をお聞きしたうえで、無料相談でご案内します。助成金の申請は社会保険労務士にご依頼ください(費用は貴社のご負担です)。

全国オンラインで対応しています。まずは30分の無料相談で、研修を始めたい時期と、受講する社員の仕事をお聞かせください。

よくある質問

リスキリングの助成金は、いつまで使えますか?

厚生労働省の事業展開等リスキリング支援コースは、令和8年度末(2027年3月31日)までの時限措置です。会社ごとの締め切りは、研修を始める日の1か月前までに出す計画届です。どこまでを令和8年度のうちに済ませる必要があるかは、管轄の労働局に確かめてください。

2027年4月以降も、同じ助成金は続きますか?

2026年10月23日に確かめた時点で、厚生労働省のページに令和9年度以降の扱いは書かれていません。令和9年度の概算要求の資料では、人材開発支援助成金のコースが「訓練実施コース」と「休暇制度導入コース」の形で示されています。ただし要求の段階で、まだ決まりではありません。厚生労働省の発表を確かめてください。

計画届の期限を過ぎてしまったら、どうなりますか?

計画届を、研修を始める日の6か月前から1か月前までの間に出していない研修は、支給されません。助成金を使いたい場合は、研修の開始日を、計画届を出す日から1か月以上あとにする必要があります。

社長や役員も、助成金の対象になりますか?

厚生労働省の資料の要件は、受講者が「雇用保険の被保険者であること」です。役員の方が雇用保険の被保険者にあたるかどうかは、管轄の労働局かハローワークで確かめてください。

経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」を、会社の研修に使えますか?

この事業は、在職中の個人が、雇い主の変わる転職を目指して、キャリア相談・講座・転職支援を受ける仕組みです。補助は事業に採択された補助事業者に支給されます。会社が社員に研修を受けさせる費用の助成を考えるなら、厚生労働省の人材開発支援助成金を確かめます。

出典・参考

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