業種別で紹介!AIでコストを削減した事例8選
まず業種ごとに8件を紹介します。各事例は「会社/課題/使ったこと/減ったお金/時間の変化/出典」の同じ形でそろえ、金額は出典の書き方のままにしています。右の列の「お金の種類」は、この記事で分けたものです。
| 事例 | 業種・規模・所在地 | 金額 | お金の種類 |
|---|---|---|---|
| 1 森羽紙業 | 段ボール製造・39名・青森県五所川原市 | 配送費・倉庫管理費で年間800万円超の削減 | 現金で減った |
| 2 ニッシン・パーテクチュアル | 金型製作・20人・埼玉県春日部市 | チラシ・垂れ幕の内製化で数百万円の経費削減 | 現金で減った |
| 3 澤田棉行 | 不織布製造・20人・兵庫県姫路市 | 全品返品なら損失は数百万円。AIの検品で返品の損失がなくなった | 損失が減った |
| 4 岡田研磨 | 金属製品製造業・85名・石川県金沢市 | 外注なら約8,000万円のシステムを、AIの月額利用料のみで内製 | 払わずに済んだ |
| 5 クリーンシステム | 廃棄物処理業・109名・山形県山形市 | 請求書の発送コストを年約1,080千円削減 | 現金で減った |
| 6 コマツ | 建設・内装業・12名・大阪府東大阪市 | 営業職1人あたり月約13,500円の人件費削減 | 時間の換算 |
| 7 トーシンパートナーズHD | 不動産業・49名・東京都武蔵野市 | 年間約4,700万円の不稼働損を削減 | 損失が減った |
| 8 クラスコ | 不動産業・資本金1億9,300万円・石川県金沢市 | 導入1年目でコスト6,800万円削減 | 内訳非公表 |
【製造業】受注予測・販促物・検品・社内システムをAIに任せ、配送費や外注費を減らす
事例1 森羽紙業株式会社(りんご出荷用段ボールの製造・従業員39名・資本金11百万円・青森県五所川原市)
- 課題:受注と製造の数を勘と経験で読んでいたため、出荷のピークに合わせて在庫を多めに持ち、配送用のトラックも余分に確保していた。当日受注・翌日出荷で、残業も増えていた
- 使ったこと:青森県の紹介でマッチングした東日本電信電話株式会社の提案で、AIによる受注予測システムを導入。過去8年分の購入履歴と、2万通りを超える製造データを学習させた。運送会社は、AIの予測をもとにトラックの必要台数を決める
- 減ったお金:令和6年度の運用結果(導入前との比較)で、「主に配送費、倉庫管理費で例年の約1割にあたる年間800万円超の削減」。出荷のピークに待機してもらう配送用トラックを2台減らし、在庫も2割減った。実際に払う費用が減った例
- 時間の変化:資料に記載なし。予測は1週間先までで、1か月先まで延ばすことが今後の課題とされている
- 出典:財務省「地域におけるAI活用を巡る現状(特別調査)」(令和8年1月29日)16ページ 東北財務局の事例②
事例2 ニッシン・パーテクチュアル株式会社(自動車部品などの金型製作・従業者数20人・埼玉県春日部市)
- 課題:新しく始めたレーザー加工の事業は、機械を持つ企業が国内にほぼなく、知見を得る機会が限られていた。生成AIの導入当初は社員の反応が芳しくなく、勉強会の参加者も少なかった
- 使ったこと:文章生成AI・画像生成AIなど11の生成AIツールを、従業員なら誰でも使える形で導入。ホームページの記事、展示会のブースのデザイン、販促資料や契約書の作成、海外の活用例の調査に使う
- 減ったお金:展示会のチラシや垂れ幕の内製化で数百万円の経費を削減。外注していた制作費が減った例
- 時間の変化:事務作業にかかる時間が5分の1に。従業員の6割がAIを日常的に使っている
- 出典:日本政策金融公庫総合研究所「調査月報」2026年6月号(No.213)「中小企業におけるAI活用の実態」
事例3 株式会社澤田棉行(繊維原料の販売・不織布の製造・従業者数20人・資本金1,000万円・兵庫県姫路市)
- 課題:2016年、マットレス用の不織布に異物が見つかり、納めた製品がすべて返品された。すべて返品されると、損失は数百万円に上る。市販の画像検査システムは価格が2,000万円程度で、容易に買えなかった
- 使ったこと:兵庫県立大学の教授と、異物を見つける画像検査システムを1年弱で開発。異物と繊維の塊のサンプルを1,000個ずつ撮影してAIに学習させ、正しく判定できる確率を98.7%まで高めた。異物の候補を見つけるだけなら、カメラもコンピューターも数万円程度のものですむと分かった
- 減ったお金:異物の見逃しがなくなり、返品による損失がなくなった(年間の金額の記載はなし)。2,000万円程度の市販品は買っていない。損失が減った例(開発にかかった総額は書かれていない)
- 時間の変化:以前は検品に従業員2人が付きっきりだったが、アラームが鳴ったとき以外はほかの仕事に取り組めるようになった
- 出典:日本政策金融公庫総合研究所「日本公庫総研レポート No.2019-5 中小企業でも始まるAIの活用」(2019年12月)事例1。生成AIではなく、画像を見分けるAIの事例
事例4 岡田研磨株式会社(金属製品製造業・従業員85名・資本金5,000万円・石川県金沢市)
- 課題:図面などの情報を紙やExcelで管理していた。工場の資料を事務担当者が別の資料へ転記・集計し、資料を探すのに1~2時間掛かることもあった
- 使ったこと:専務が生成AIとの対話でウェブアプリの仕組みを学んだ。約2年間・トータル1,000時間以上の対話を重ね、統合管理システム「OKADA Board」を自作。約30種類以上のアプリで、検査実績・品質報告・在庫・生産進捗・労務・原価のデータを一元化した
- 減ったお金:同様のシステムを外注すれば約8,000万円かかるところ、内製ではAIの月額利用料のみ。払わずに済んだ例(外注の見積もりとの比較で、払っていたお金が減ったわけではない)
- 時間の変化:月5,000~6,000枚分のペーパーレス化と、月530時間程度の労働時間削減
- 出典:中小企業庁「2026年版中小企業白書」事例2-2-14
【サービス業】生成AIで請求書の送り方を内製し、毎年の発送コストを減らす
事例5 株式会社クリーンシステム(廃棄物処理業・特定建設業・従業員109名・資本金50百万円・山形県山形市)
- 課題:請求書の発送に、毎年決まってかかる「定常的なコスト」が出ていた
- 使ったこと:生成系AIを駆使して、請求書一括送信システムを約1か月で内製
- 減ったお金:請求書の発送に係る定常的なコストを、年約1,080千円削減。現金で減った例(コストの内訳は書かれていない。毎年かかる費用なので、減らせば毎年効く)
- 時間の変化:資料に記載なし
- 出典:経済産業省「中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025」
【建設・不動産】現地へ行く回数や空室の日数を減らし、人件費と損失を抑える
事例6 コマツ株式会社(建設・内装業・従業員12名・資本金10百万円・大阪府東大阪市)
- 課題:壁紙の品番を見分けるのに、1商品あたり平均1~3時間かかっていた。目で見るために現地へ行く必要があり、移動の時間とコストが大きかった
- 使ったこと:同志社大学との産学連携で、壁紙をスマホで見分けるAIアプリ「かべぴた」を開発。職人の勘や判断を形にし、識別精度は90%以上。アプリは無償で公開し、会員数は37,000人以上
- 減ったお金:営業職1名あたりの月間平均実績として「人件費 約13,500円削減」。算出方法は書かれていないが、9時間で13,500円は1時間あたり1,500円にあたるため、この記事では時間を金額に換算した数字に分けた。移動距離も約138km減っているが、燃料代などの金額は書かれていない
- 時間の変化:営業職1名あたりの月間平均時間(移動込み)が約9時間削減
- 出典:経済産業省「DXセレクション2026」選定企業レポート 10ページ、金額は同 最終選考プレゼン資料 81ページ
事例7 株式会社トーシンパートナーズホールディングス(不動産業・従業員49名・資本金100百万円・東京都武蔵野市)
- 課題:グループ会社による、賃貸物件の早期の賃貸付け
- 使ったこと:過去の賃貸契約データでAIモデルをつくり、最適な募集条件を提案する「IntelliRent」を実施(生成AIではなく、予測するAI)
- 減ったお金:年間約4,700万円の不稼働損を削減。同じ時期に賃料の引き上げも行い、相乗効果があったとされる。損失(入ってこなかった家賃)が減った例で、支払いが減ったわけではない
- 時間の変化:物件の平均空室期間を11日短縮
- 出典:経済産業省「中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025(DXセレクション2025選定企業レポート)」
事例8 株式会社クラスコ(不動産業・資本金1億9,300万円・石川県金沢市。発表の本文の主語は株式会社クラスコ・ホールディングス。従業員数は記載なし)
- 課題:物件紹介文の作成や初期費用の計算、スライド資料・プロモーション動画・BGMの制作に、時間か外注が必要だった
- 使ったこと:2024年7月にGoogle Workspaceを全社に導入し、全スタッフが生成AI(Gemini)を使えるようにした。リスト照合、物件紹介文の作成、初期費用の算出をAIで速くし、専門スタッフや外注が必要だったスライド資料・動画・BGMの制作を内製した
- 減ったお金:導入1年目で「コスト6,800万円削減」。何の費用か、実額か試算かは書かれていないため、この記事では「内訳非公表」に分けた。同じ発表に「売上2億円増」「助成金5.8億円獲得」も並んでいるが、これらはコスト削減ではない
- 時間の変化:業務時間22,862時間削減。数時間かかっていた業務を10分以内に短縮した例もある
- 出典:株式会社クラスコ「AI導入1年で、売上2億円増・業務効率22,862時間・コスト6,800万円削減を実現」(PR TIMES、2026年4月14日)
目的別で紹介!AIでコストを削減した事例8選
次に、仕事の種類ごとに8件を紹介します。自治体の事例も入れました。議事録・翻訳・問い合わせ・文書作成は、会社の事務とほぼ同じ仕事で、委託費や人件費の数字を公開しているからです。
| 目的 | 事例 | 金額 | お金の種類 |
|---|---|---|---|
| 議事録・文字起こし | 9 静岡県袋井市 | 委託費 3,211,960円→2,772,000円 ほか | 見込み |
| 議事録・文字起こし | 10 長崎県長崎市 | 委託料削減10,400千円+人件費12,759千円(年) | 見込み・試算 |
| 翻訳 | 11 ルネサスエレクトロニクス | 年間数千万円規模の翻訳コスト削減(提供会社の事例ページ) | 現金で減った |
| 問い合わせ・相談 | 12 山形県山形市 | 人件費に単純換算すると約2,000万円/年相当 | 時間の換算 |
| 文書・メール全般 | 13 東京都中野区 | 1人あたり月約10,876円相当(利用料は4,947円) | 時間の換算 |
| 文書・メール全般 | 14 大阪府泉大津市 | 70名・7か月で約470万円 | 時間の換算 |
| 文書・メール全般 | 15 住友商事 | 年間約12億円 | 時間の換算 |
| 文書・メール全般 | 16 INPEX | 年間20億円以上(提供会社の事例ページ) | 時間の換算 |
【議事録・文字起こし】外部への委託をAIの文字起こしに替え、委託費を減らす
事例9 静岡県袋井市(市議会と庁内の会議録、紙の申請書の入力)
- 課題:市議会の会議録の文字起こしと、紙の申請書のシステムへの入力を、外部に委託していた
- 使ったこと:会議録は、音声認識AIで音声を文字にし、職員が補正する形に。申請書は、手書きの文字を読み取るAI(AI-OCR)と自動入力ソフト(RPA)をつなぎ、入力を自動化する計画
- 減ったお金(見込み):会議録は「委託からAIの活用によるコスト削減(3,211,960円→2,772,000円)」で、差は約44万円。申請書の入力は「2,383,349円→1,320,000円」で、差は約106万円。導入前の計画の数字で、実績ではない
- 時間の変化:会議録の文字起こしは約1週間→約1日。申請書の入力のうち、委託せず職員が直接行う分は、作業時間を5分の3に縮める計画
- 出典:総務省「AIを活用した自治体業務効率化・省力化推進事業」別紙2(提案者:袋井市)
事例10 長崎県長崎市(庁内の会議の会議録作成)
- 課題:職員がICレコーダーの録音を再生・停止・巻き戻ししながら会議録を作っていた(964回・作成6,030時間)。ほかに113回分を外部に委託し、委託料は10,400千円だった(平成30年度実績)
- 使ったこと:全庁の会議で使えるAI会議録作成システムを導入する予算。AIが文字に起こした会議録を、職員が修正・編集する
- 減ったお金(見込み):委託料削減額10,400千円と、人件費削減額12,759千円(3,015時間×1時間4,232円)を足して23,159千円。導入費用5,552千円を引いた「想定費用対効果」は1年目17,607千円、2年目以降19,234千円。委託料は現金、人件費は時間の換算で、どちらも予算を作る段階の見込み
- 時間の変化:会議録作成時間の50%削減を想定して、年3,015時間
- 出典:長崎市「令和2年2月市議会総務委員会資料 第9号議案 令和2年度長崎市一般会計予算」
【翻訳】外部に出していた翻訳をAI翻訳に切り替え、委託費を減らす
事例11 ルネサスエレクトロニクス株式会社(半導体・知的財産部門の特許部)
- 課題:特許の出願件数が増えるにつれて、外部に委託する翻訳のコストが膨らんでいた
- 使ったこと:2018年6月にAI翻訳(ロゼッタ「T-4OO」)を導入し、外部に委託していた翻訳の多くを社内で対応するようにした。いまは生成AIの翻訳エンジンを主に使っている
- 減ったお金:提供会社の事例ページによると、担当者は外部委託費が抑えられ、「年間では数千万円規模」の翻訳コスト削減効果があったと認識している。外部に払っていた翻訳費が減った例(金額は幅のある書き方で、担当者の認識として書かれている)
- 時間の変化:提供会社の事例ページによると、従来型のAI翻訳エンジンでは、本文のチェックだけで1件4〜5時間かかることもあった。生成AIのエンジンでは1時間もかからない程度(工数は約5分の1)になった
- 出典:ロゼッタ「導入事例 ルネサスエレクトロニクス」(2026年8月時点の取材)。AI翻訳を提供する会社の事例ページで、導入先の担当者への取材として書かれている
【問い合わせ・相談】生成AIが一次対応を受け持ち、人が対応する件数を絞る
事例12 山形県山形市(生成AIと専門スタッフによる24時間のLINE相談「つながりよりそいチャット」)
- 課題:令和4年度から、社会福祉士などの専門職がLINEのチャットで相談に乗る事業を試行していたが、相談員の人員確保に課題があった
- 使ったこと:相手の話に耳を傾ける生成AIを開発し、専門スタッフと組み合わせた(令和6年7月に運用開始)。生成AIが24時間受け、必要に応じてスタッフが会話を確かめ、人の対応につなぐ
- 減ったお金(試算):開始から約8か月で、相談9,000件程度のうち7,500件程度を生成AIが対応。人件費に単純換算すると約2,000万円/年相当。市が「単純換算」と書いている数字で、支払いが減ったという記載はない。同じ資料に、運用費(ランニングコスト)年8,891千円(税抜)と、初期費用10,600千円(税抜)が載っている
- 時間の変化:人が対応している件数の約5倍の相談に、生成AIが対応
- 出典:総務省 地域DXポータル「自治体DX事例」26(山形市)
【文書・メール全般】文書作成や要約の時間を測り、利用料と比べる
事例13 東京都中野区(Microsoft 365 Copilot を一部の職員で試し、効果を測定)
- 課題:生成AIのライセンスを広げてよいかを、費用対効果で判断する必要があった
- 使ったこと:一部の職員にCopilotを割り当て、メールの下書きや要約、区の内部文書を基にした情報の取得、文章の書き換えなどに使った。使わなかった場合と比べて削減できたと思う時間を、機能ごとに聞いた
- 減ったお金(試算):職員1人あたり月平均約166分の削減に時間単価をかけると、約10,876円に相当。Copilotの定価は4,947円(令和6年9月時点)で、費用対効果を満たすとして利用を広げた。一般職は、内部文書からの情報の取得を除いて月約114分・約7,469円相当。時間の換算を、利用料と1人あたりで比べた例
- 時間の変化:1人あたり月平均約166分。職層別では経営層・管理職の効果が最も高かった
- 出典:中野区「令和6年度庁議報告事項 生成AIの効果測定結果及び今後の活用について」(2024年10月1日)
事例14 大阪府泉大津市(生成AIを日常の行政業務で試す実証実験)
- 課題:生成AIを入れると、日常の事務がどれだけ減るかを確かめたかった
- 使ったこと:令和6年9月~令和7年3月の約7か月、グラファー社の生成AIを使った。よく使われたのは、管理職では誤字チェック・事例の検索と調査・あいさつ文の作成、管理職以外ではメール文の作成・誤字チェック・議事録やメモの要約
- 減ったお金(試算):回答者70名の業務時間が2,102時間減り、「約470万円の経費削減効果」。本庁舎の正職員約350名が1年間使った場合は、約1.8万時間・約3,800万円の削減効果額と試算。計算方法は書かれていないが、時間を金額に直した数字
- 時間の変化:回答者70名で約7か月に2,102時間
- 出典:泉大津市「株式会社グラファーとの『生成AI導入による行政業務効率化』に関する実証実験結果について」(更新日2025年3月5日)
事例15 住友商事株式会社(総合商社・海外グループ会社を含む約9,000人が利用)
- 課題:社員の日常の事務と、契約・情報収集の仕事を速くしたかった
- 使ったこと:2024年4月にMicrosoft 365 Copilotの一斉利用を開始。メールの要約、会議のまとめ、契約書の比較、業界紙のデータの読み取り・分析、出張レポートや商談メモの共有・検索に使う
- 減ったお金(試算):2024年12月時点で、コスト削減効果は年間約12億円。算出方法は「1アクションあたりの平均削減時間」(アンケートから)×アクション回数×人件費と注記されている。時間の換算
- 時間の変化:業務時間の削減効果は1か月あたり約1万時間(2024年12月時点)。月間アクティブユーザーは約90%(2025年10月時点)
- 出典:住友商事「コスト削減効果は年間約12億。住商の『生成AI活用』最前線」(2025年11月4日)
事例16 株式会社INPEX(石油・天然ガス開発)
- 課題:オフィスの仕事を、AIを前提にした進め方に変えたかった
- 使ったこと:Microsoft 365 CopilotとCopilot Studio(AIエージェントをつくる機能)で、社内のAI活用の基盤をつくった
- 減ったお金(試算):提供会社の事例ページによると、Copilotの本格導入から約1年後のアンケート結果を、同社の試算で金額に換算すると年間20億円以上。同社の森氏は、20億円の「すべてが従業員の業務時間の削減に直結しているかというとそうではありません」と話している。アンケートの実感を金額に換算した数字で、本人もすべてが時間の削減ではないと断っている例
- 時間の変化:提供会社の事例ページによると、オフィス業務で、ユーザーの実感として44%の業務時間削減、46%の業務高度化。Copilotをはじめ、さまざまなAIサービスを使った結果とされる
- 出典:日本マイクロソフト「INPEX が Microsoft 365 Copilot と Copilot Studio で AI活用基盤を構築」(2026年5月28日)。提供会社の事例ページで、導入先への取材として書かれている
AIがコスト削減にもたらす3つの効果
16件の金額を、お金の種類で分けると次のとおりです。支払いが実際に減ったと書かれているのは4件で、いちばん多いのは時間を金額に換算した6件でした。
| お金の種類 | 件数 | 事例 | 翌月の支払いは減るか |
|---|---|---|---|
| 現金で減った | 4 | 森羽紙業、ニッシン・パーテクチュアル、クリーンシステム、ルネサス | 減る |
| 払わずに済んだ(外注・購入の回避) | 1 | 岡田研磨 | 新しい支払いが発生しない |
| 損失が減った | 2 | 澤田棉行、トーシンパートナーズHD | 支払いではなく、失っていた売上や返品が減る |
| 見込み(導入前の計画) | 2 | 袋井市、長崎市 | まだ分からない |
| 時間を金額に換算(試算) | 6 | コマツ、山形市、中野区、泉大津市、住友商事、INPEX | 時間の使い道を決めた分だけ減る |
| 内訳非公表 | 1 | クラスコ | 分からない |
効果1. 外注費・委託費が減る(いちばん確かめやすい)
外に払っていた仕事を、AIの下書き+社員の確認に替えると、請求書の金額がそのまま減ります。事例では、販促物の制作(ニッシン・パーテクチュアル)、特許の翻訳(ルネサス)がこれにあたります。会議録の文字起こしと申請書の入力(袋井市・長崎市)も、委託費を減らす計画(見込み)です。岡田研磨のように、外注するはずだったシステムを内製して、支払いそのものを発生させなかった例もあります。
| 仕事 | 以前 | AIに替えたあと | 事例 |
|---|---|---|---|
| チラシ・垂れ幕・資料・動画 | 外注 | 画像生成AIなどで内製 | ニッシン・パーテクチュアル、クラスコ |
| 専門文書の翻訳 | 外部委託 | AI翻訳+担当者のチェック | ルネサス |
| 会議録の文字起こし | 外部委託 | 音声認識AI+職員の補正 | 袋井市、長崎市 |
| 紙の申請書の入力 | 入力作業の委託 | AI-OCR+自動入力 | 袋井市 |
| 社内システムの開発 | 外注の見積もり約8,000万円 | 生成AIと対話して内製 | 岡田研磨 |
効果2. 発送・配送・返品など「物と損失」の費用が減る
人の時間ではなく、発送・トラック・倉庫・返品の費用が減る例もあります。クリーンシステムは請求書の発送コストを年約1,080千円、森羽紙業はAIの受注予測で配送費・倉庫管理費を年間800万円超減らしました。澤田棉行は異物の見逃しをなくして返品の損失をなくし、トーシンパートナーズHDは空室期間を11日縮めて年間約4,700万円の不稼働損を減らしています。どれも、毎月・毎年くり返し出ていく費用を狙っているのが共通点です。
効果3. 人件費は「時間」で減る。お金になるのは使い道を決めた分だけ
IPAの「DX動向2026」は、AIを導入・試験利用して何らかの効果があった企業に、効果の中身を聞いています。「業務が効率化したり迅速化した」が91.6%、「残業時間の削減につながった」が29.2%、「売上や利益が向上した」は3.9%でした。時間は減っても、残業代や売上の形でお金に届いた会社は一部です。
事例でも、中野区の約10,876円と住友商事の年間約12億円は、減った時間に人件費をかけた数字です。INPEXの年間20億円以上はアンケート結果を同社の試算で金額に換算したもので、担当者自身が、すべてが業務時間の削減に直結するわけではないと話しています。空いた時間で残業をやめるか、外注をやめるか、売上につながる仕事をするかを決めて、初めて現金になります。
中小企業がAIでコスト削減を進める3つのステップ
事例の会社がたどった順番を、3つのステップにまとめます。出発点は「AIで何ができるか」ではなく、「どの支払いを減らすか」です。
ステップ1. 目的の明確化:会計の明細から、減らす支払いを1つ決める
中小機構の調査(令和8年3月)では、AIの導入目的に「コスト削減」を挙げた中小企業49社のうち、59.2%が具体的な削減の目標を「特に決めていない」と答えました。目標がなければ、減ったかどうかも確かめられません。まず、会計ソフトから過去12か月の明細を出し、次の科目を見ます。
| 見る科目(例) | 中身の例 | AIに置き換えうる作業 | 参考になる事例 |
|---|---|---|---|
| 外注費・業務委託費 | チラシ・記事・資料・動画の制作、文字起こし、データ入力 | 下書き・画像生成・文字起こし・読み取り | 2 ニッシン、8 クラスコ、9 袋井市、10 長崎市 |
| 支払手数料(翻訳など) | 契約書・マニュアル・海外とのやり取りの翻訳 | AI翻訳+社内のチェック | 11 ルネサス |
| 通信費・荷造運賃 | 請求書や案内の郵送 | 送り方の仕組みを生成AIで内製 | 5 クリーンシステム |
| 給与のうち時間外手当 | 月末の集計、報告書、問い合わせの返信 | 下書き・集計・一次回答 | 13 中野区、14 泉大津市 |
| 運賃・倉庫料・返品 | 余分に確保していたトラックや在庫、検品の見逃し | 受注予測、画像による検品 | 1 森羽紙業、3 澤田棉行 |
明日できる最初の1歩:会計ソフトで、去年1年分の「外注費」「支払手数料」「通信費」の明細を出してください。その中から、毎月くり返し発注していて、中身が文章・画像・入力・翻訳のものに印を付け、年間の合計額を出します。いちばん合計が大きい1つが、AIで最初に減らす候補です。
明細の仕分けは、生成AIに手伝わせることもできます。取引先名や個人名は消してから渡してください(社内のルールで入力してよい情報を先に確かめます)。頼み方の例です。
- 頼み方の例:「あなたは中小企業の経理担当です。下の表は、当社の過去12か月の外注費の明細(日付・内容・金額)です。#やること:1. 内容ごとに「文章の作成」「画像・デザイン」「データ入力」「翻訳」「文字起こし」「その他」に分ける 2. 分類ごとに件数と合計金額を出す 3. 毎月くり返しているものに印を付ける #条件:分類に迷うものは「要確認」とし、理由を1行で書く。金額は表の数字だけを使い、推測で足さない」
- AIに任せないこと:どの外注をやめるかの決定。品質や取引先との関係は、社長が判断します
ステップ2. 環境の整備:今の単価と件数を記録し、AIの費用も並べる
減ったかどうかは、始める前の数字がないと比べられません。長崎市の予算資料は、その並べ方の見本になります。委託料(現金)、人件費(時間×単価)、導入費用を分けて書き、差し引きを出しています。
| 項目 | 長崎市の数字 | お金の種類 | 自社で書くこと |
|---|---|---|---|
| 委託料の削減額 | 10,400千円 | 現金 | やめる外注の年間の請求額 |
| 人件費の削減額 | 12,759千円(3,015時間×4,232円) | 時間の換算 | 減る時間×1時間あたりの人件費 |
| 導入費用 | 5,552千円(2年目以降は3,925千円) | 現金(出ていく) | AIの利用料、機器、設定や研修の費用 |
| 想定費用対効果 | 17,607千円 | 合計 | 現金だけの差し引きも別に出す |
同じ数字で現金だけを見ると、委託料10,400千円から導入費用5,552千円を引いて、1年目は約485万円です。社内で判断するときは、時間の換算を足した数字と、現金だけの数字の両方を並べます。
ステップ3. 体制の構築:毎月、請求書の金額と確認の手間を記録する
始めたら、毎月の請求書で「外注に払った額」「AIの利用料」「社員が確認・修正にかけた時間」の3つを記録します。中小機構の調査で、AIの導入効果にコスト削減を挙げた企業(39社)のうち、削減の程度は「1~3割」が64.1%と多数でした。最初から全部をやめるのではなく、外注の一部から替えて、品質が保てた分だけ広げます。
| 記録すること | 書き方の例 |
|---|---|
| 替えた仕事 | 展示会チラシの制作(外注→画像生成AIで内製) |
| 外注に払った額 | 前年同月と今月を並べる |
| AIの利用料 | その月の請求額(人数×単価) |
| 確認・修正にかけた時間 | 担当者と社長の分を分けて記録 |
| 品質の問題 | やり直し・お客様からの指摘の件数 |
| 次の月の判断 | 続ける/広げる/外注に戻す |
AIでコスト削減する前に知っておくべき3つの注意点と対策
注意点1. 「時間の換算」を「コスト削減」と呼んでいないか確かめる
16件のうち6件は、減った時間に人件費をかけた数字でした。住友商事は算出方法を注記し、泉大津市は「経費削減効果」と書きつつ中身は時間の削減です。山形市の約2,000万円も、市自身が「人件費に単純換算」と書いている数字です。対策:社内の報告では、「現金で減った額」と「時間の換算額」の欄を分けます。他社の事例を読むときも、何の費用が、実額か試算かを確かめてから自社に当てはめます。
注意点2. AIの利用料と、確認の手間を差し引く
効果から費用を引かないと、本当の削減額は出ません。中野区は、1人あたり約10,876円相当の効果を、定価4,947円と比べて判断しました。山形市の資料には、人件費換算の約2,000万円/年と並べて、運用費年8,891千円(税抜)が載っています。ルネサスも、翻訳を外部委託からAIに替えたあと、本文をチェックする時間(生成AIのエンジンで1件1時間もかからない程度)は残っています。対策:利用料(人数×単価)と、社員が確かめる時間を、効果と同じ表に書きます。
注意点3. 「見込み」と「実績」を分け、品質の確認を外さない
袋井市と長崎市の金額は、導入前の計画の数字です。長崎市は会議録作成時間の「50%削減を想定」して人件費を出しています。また、外注をやめても、品質が落ちれば別の損失が出ます。澤田棉行のAIは、正しく判定できる確率を98.7%まで高めたうえで、残る1.3%は「念のために目で確認」する判定にしています。対策:始める前の見込みと、3か月後の実績を同じ表に並べます。外に出す文書・画像・翻訳は、社員が確かめてから使う手順にします。社内ルールの作り方は生成AIの社内ルールの作り方で解説しています。
シス学の場合|外注費の見直しを「作業・確認・判断」に分けて進める
シス学(システム経営学)は、AIエージェントを活用し、会社を「儲かるシステム」につくり変える経営学です。コスト削減では、削れた作業時間と伸びた売上を、人件費・粗利の数字で確かめることを大事にしています。たとえば、外注しているチラシや資料の制作をAIに替えるときは、次のように分けます。
| 任せ先 | 受け持つ仕事 | 中身 |
|---|---|---|
| AI | 作業 | 商品情報と過去のチラシから、キャッチコピー案と画像の下書きを作る。外注費の明細を分類し、月ごとの合計を表にする |
| 社員 | 確認 | 価格・日付・表記の誤りと、似た画像がすでにないかを確かめて仕上げる。外注に払った額と、確認にかけた時間を毎月記録する |
| 社長 | 判断 | どの外注をやめ、どれを残すか。空いた時間を何に使うか(営業、既存のお客様への提案など)を決める |
シス学のAIコンサルティングでは、会計の明細から減らす支払いを選ぶところから、社員の研修、AIエージェントによる仕組みづくり、毎月の数字の確かめ方までを一緒に進めます。料金は、対象の業務と体制をお聞きしたうえで、無料相談でご案内します。まずは30分の無料相談からご相談ください。
AIのコスト削減事例を参考に、自社の「減らす支払い」を1つ決めよう
- 金額を原文で確かめた16件のうち、支払いが実際に減ったと書かれているのは4件(配送費・倉庫管理費、販促物の外注費、請求書の発送コスト、翻訳の委託費)。いちばん多いのは、時間を金額に換算した6件
- お金が減りやすいのは、外注費・委託費と、発送・配送・返品など毎月くり返し出ていく費用
- 人件費の削減は時間で起きる。残業をやめる、外注をやめる、売上につながる仕事をする、のどれかを決めた分だけ現金になる
- 進め方は、会計の明細から減らす支払いを1つ決める → 今の単価・件数とAIの費用を並べる → 毎月の請求書と確認の手間を記録する、の3ステップ
- 注意点は、時間の換算をコスト削減と呼ばない、利用料と確認の手間を差し引く、見込みと実績を分ける、の3つ
まずは、去年1年分の外注費・支払手数料・通信費の明細から、毎月くり返している文章・画像・入力・翻訳の発注に印を付け、年間の合計を出してみてください。その金額が、AIで減らせるかどうかを試す最初の目標になります。事例の業務効率化の成果(時間)を広く見たい場合は中小企業の生成AI活用事例19選、うまくいかない会社の共通点はAI導入の失敗にまとめています。
よくある質問
AIでどれくらいコストを削減できますか?
会社と業務によって大きく違います。中小機構の調査(令和8年3月)では、AIの導入効果にコスト削減を挙げた中小企業39社のうち、削減の程度は「1~3割」が64.1%、「4~6割」が25.6%でした。この記事の事例では、請求書の発送コスト年約1,080千円、配送費・倉庫管理費の年間800万円超などがあります。
時間の削減額と、実際のコスト削減は何が違いますか?
時間の削減額は、減った時間に1時間あたりの人件費をかけた計算上の数字です。空いた時間に別の仕事が入らなければ給料は同じだけ払うので、会社の支払いは減りません。実際のコスト削減は、外注費・残業代・郵送費などの請求額が減った分です。報告では2つを分けて書きます。
従業員が少ない会社でも、AIでお金は減らせますか?
この記事の事例には、従業員12名の内装業(コマツ)、20人の金型製作(ニッシン・パーテクチュアル)と不織布製造(澤田棉行)、39名の段ボール製造(森羽紙業)があります。外注している制作物や、毎月の発送・配送の費用など、くり返し出ていく支払いから選ぶと、規模が小さくても金額で確かめやすくなります。
どの費用から見直せばよいですか?
会計ソフトの「外注費」「支払手数料」「通信費」の過去12か月の明細から、毎月くり返していて、中身が文章・画像・データ入力・翻訳・文字起こしのものを選ぶのがおすすめです。請求書の金額で、減ったかどうかをそのまま確かめられます。
AIの利用料を払っても元は取れますか?
効果から利用料を引いて判断します。中野区は、職員1人あたり月約10,876円相当の時間の削減を、Copilotの定価4,947円(令和6年9月時点)と比べて、利用を広げました。ただし時間の換算は現金ではないため、現金だけで見た差し引きも別に出しておくと安全です。計算式は[AI導入の費用対効果](/column/ai-donyu-hiyo-taikoka)で解説しています。

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